Rebirth Of Gashly 作:KUNIEDAの植木鉢
午後7時、とあるアパートにて事件は起こった。
(ピンポーン)
「おや、誰だ?」
被害者は一人暮らしの大学生。
玄関先に大量の血痕が残されていたことから、ドアを開けた直後に殺害されたと思われる。
「はーい、どなたで──」
被害者の喉元に、鈍い光を放つナイフが突き刺さる。
「・・・」
犯人は室内に侵入し、被害者の遺体をリビングまで引き摺っていった。
何かを床に擦り付けるような音が聞こえたと、下の階の住人が証言している。
「・・・ふむふむ、なるほど。『再誕』と言うだけはあるね」
リビングにて、犯人は被害者の遺体を解体。
右足、左手首など遺体の一部を放置したまま、その場を立ち去った。
アパートは人通りの少ない通りに面していたため、犯人の目撃証言はなし。
ただ、現場付近に設置されていた防犯カメラに、“ダツゴク“の1人である“嬰児樹“ギャシュリーの姿が映っていたため、警察はギャシュリーを犯人と断定。
ギャシュリーの捜索に力を入れることになる。
やぁ諸君、ごきげんよう。
あれから少し検証してみて、分かったことがある。
私の個性『再誕』によって召喚できる『赤子』達は、どうやら放り込んだ死体に限りなく近い存在であるらしい。
血液型やらDNAやらの検査を行った結果、死体と『赤子』が同一人物であるということは疑いようがない。
さらに、死体の全部を黒い霧に放り込まずとも、死体の体積の70〜80%ほど放り込めば『赤子』の数は増える。
「あとは『赤子』が死体と同じ個性を持ってるかどうかだけど・・・オール・フォー・ワンの『強制発動』みたいな個性で検証してもらうしかないかな」
Prrrrr・・・
「おや・・・はい、もしもし」
『やぁ、ギャシュリー。自由を楽しんでいるかい?』
噂をすればなんとやら。
電話を掛けてきたのはオール・フォー・ワンだった。
最終決戦まではもう少し時間があったはずだけど・・・?
「ええ、おかげさまで。本日は一体どんなご用で?」
『少し、頼みたいことがあってね・・・。レディ・ナガンという元ヒーローを知ってるかい?』
おいおい、マジか。
雨が降りしきる夜。
あるビルの屋上に、3人の人影があった。
「・・・あんたがギャシュリーか。とりあえず、今回はよろしく」
「オヤジ・・・」
ダークブルーとピンクの髪の女、レディ・ナガン。
治崎廻を連れた彼女は、オール・フォー・ワンから緑谷出久を捕らえるよう依頼されていた。
「こちらこそ、よろしく頼むよ?元公安直属ヒーロー、レディ・ナガン」
そう挨拶を返したのは、現在連続殺人犯として指名手配されている
“ダツゴク“の1人である彼女もまた、オール・フォー・ワンから緑谷出久を捕らえるよう依頼されたのだった。
「なんかあんた、思ってたのと感じ違うな・・・。もっとこう、陰気な奴かと思ったよ」
「ふふ・・・まぁ、間違いじゃないさ。無駄話はこのくらいにして、早速仕事に取り掛かろう」
ギャシュリーが個性を発動し、大量の『赤子』が溢れ出す。
「オール・フォー・ワンによれば、アレは『危機感知』という個性も持っているらしい。君の狙撃にも反応する可能性があるから、私の『赤子』が殺気をばら撒いて感知されずらくしてあげよう」
「・・・そいつも個性複数持ちか。闇が深ぇな」
気色の悪い化け物の群れから目を逸らしつつ、ナガンは呟いた。
『ふむ・・・やはりナガンは裏切ったか』
「ええ。例の場所もちゃんと教えていました」
私の『赤子』の影響もあってか、ナガンは原作よりも善戦。
緑谷出久にもそこそこダメージを与えたが、まぁ原作通りに敗北した。
『そうかい。なら、もう用済みだね』
「了解」
通話を終了し、黒焦げのナガンとそれを掴むホークスに目を遣る。
このまま生かしておけば、最終決戦にて彼女はヒーロー側に助力することとなる。
「それじゃあ困るから、確実に始末する。それが私の仕事ってわけさ・・・」
ビルのガラスを破壊しながら、無数の『赤子』達が2人に襲いかかった。
「危ない、避けて!!」
緑谷出久の叫びにホークスが反応し、ホークスが怪物の波を辛うじて回避する。
「この個性・・・例の“ダツゴク“か!」
エンデヴァーが『赤子』を焼き払いながら、敵の姿を探す。
しかし、見渡す限りの異形の群れで敵の姿は見えない。
「██████!!」
「チッ・・・」
奇怪な叫び声を上げる『赤子』達の一際大きな波が、エンデヴァーに迫る。
この恐るべき肉の壁に飲み込まれれば、生きて帰ることはできないだろう。
「赫灼熱拳 プロミネンスバーン!!」
されど、所詮は肉の塊。
鉄筋コンクリートのビルすら熔解させるエンデヴァーにとって、大した脅威にはなり得ない。
しかし、ギャシュリーもそれは理解している。
「なにっ!」
肉の津波から這い出た黒い影──ギャシュリーが、『赤子』の上を滑るように移動し、緑谷出久へと急速に接近する。
「『強制発動』・・・過ぎた力というのも、考えものだね」
万全の状態であれば反応できただろう。
しかし、ナガンとの戦闘で少なくないダメージを負った彼では避けきれなかった。
「ガアぁぁぁっ!!」
『黒鞭』が、『煙幕』が、歴代継承者達の個性が彼の意に反して発動させられ、肉体が悲鳴を上げる。
「デク!」
「後はナガンか」
『赤子』の群れがギャシュリーを乗せ、ホークスとナガンに襲い掛かる。
「クソッ・・・」
荼毘に焼かれた羽根が回復しきっていないホークスでは、『赤子』の絶え間無い攻撃を捌ききれない。
大ダメージは避けているが、小さなダメージと疲労は蓄積していく。
エンデヴァーも助けに向かおうとするが、膨大な量の『赤子』達がそれを阻む。
「・・・もらった」
「ぐあっ・・・」
ギャシュリーに一瞬の隙を突かれ、ホークスの手からナガンが離れる。
その瞬間、ナガンは『赤子』の群れの中に飲み込まれ、消えた。
「任務は完了。後は帰るだけだね」
「逃がすか!赫灼熱拳 ヘルスパイダー!!」
凝縮された熱線が『赤子』の群れを切り裂き、ギャシュリーが空中に放り出される。
「『強制発動』・・・さらばだ諸君」
ギャシュリーが懐から小型の『赤子』を放り投げると、『赤子』は激しい光を放って爆発。
エンデヴァー達の視界が回復する頃には、ギャシュリーの姿はどこにもなかった。
「ふう・・・なんとかなったね」
エンデヴァー達から逃れた私は、下水道を通って移動していた。
万全の状態でタイマンでやり合えば、エンデヴァーやホークスに私では勝てない・・・少なくとも今の私では。
だが、相手が全力を出せないと分かっている状況であれば、逃げるだけなら何とでもなる。
「『強制発動』があそこまで効くとはね・・・これはオール・フォー・ワンにも伝えたほうが良さそうかな」
コントロールが難しく、体力の消耗も激しい個性を無理矢理発動させられれば、当然体は悲鳴を上げる。
「そして『赤子』にも有効、と・・・」
目眩ましに使った『赤子』のように、『強制発動』を使えば『赤子』の個性を発動することができる。
ただし最大出力で撒き散らすだけなので、爆弾のようにしてしか使えないが。
「今日は実に実りのある1日だった・・・
そう呟いて、私は一匹の『赤子』──治崎廻の成れの果てを撫でた。
個性『強制発動』
ギャシュリーがオール・フォー・ワンからもらった個性。
触れた相手の個性を強制的に発動させることができる。