Rebirth Of Gashly   作:KUNIEDAの植木鉢

4 / 7
追い詰められてからの逆転はアツい。
万葉集にもそう書いてある。


ギャシュリーの『再誕』

「はぁ、はぁ・・・数が多い分、いかんせん時間がかかるね」

 

膨大な量の『赤子』に四苦八苦するヒーロー達を眺めながら、私は『オーバーホール』でなくした右腕(・・・・・・)を再構築しようと試みていた。

 

地上に展開される『赤子』を無視して接近できるのは、空を飛べる面々のみ。

故に飛べる連中から始末しようとしたんだけれど・・・。

 

「『手負いのヒーローが最も恐ろしい』か・・・全く、本当にその通りだな」

 

瀕死の重傷に追い込まれ、『オーバーホール』で体を吹き飛ばされる寸前になっても、彼女──リューキュウは諦めなかった。

彼女の最期の悪足掻きによって、私は右腕を食い千切られたのだ。

 

「尾拳・“沼田打旋風“!!」

 

『赤子』が纏めて吹き飛ばされ、こちらまで飛んでくる。

 

「チッ・・・抜けるのが早いな!」

 

向こうの『赤子』を破壊する速度が速すぎて、再召喚が間に合わない・・・不味いね。

 

「シュガーマン!!」

 

「おう!!」

 

アレは・・・砂藤力道だったか?

遠距離攻撃も持たない奴が何を──

 

「ふん!!」

 

「──はっ?」

 

佐藤がテイルマン──尾白猿夫をぶん投げた。

こっちに。

 

「まずっ──」

 

「尾空旋舞!!」

 

強烈な一撃が、私の胴体に突き刺さった。

 

「ぐっ・・・クソッ!」

 

地面と『赤子』の上で何度かバウンドした後、競技場の壁に叩きつけられる。

 

「ゴフッ、ゲホッ・・・」

 

口から血が溢れ出る。

肋骨やら何やらも折れ、立っているのがやっとの状態。

『超再生』とか欲しいねほんと。

 

「やって・・・くれるねぇ・・・。ここまでとは・・・」

 

このままでは戦闘不能・・・だけど、まだ手はある。

使うのはもう少し後だろうと思っていたけど、まさか“奥の手“をここで切らされるとはね・・・。

 

「少しだけ、時間を稼いでくれよ?子供たち・・・」

 

現在召喚可能な『赤子』をありったけ呼び出し、『オーバーホール』で儀式の場(・・・・)を整える。

 

「何もさせるな、畳み掛けろ!!」

 

突っ込んでくるヒーローと、『赤子』の群れが再度激突した。

 

 

 

 

私の個性『再誕』は、“死体“を『影』の中に放り込むことで効果を発揮する。

ある時、この個性における“死体“の定義とはなんなのか、気になって検証してみたことがある。

脳死なのか、全臓器の機能停止なのか、呼吸の停止なのか・・・。

して、その検証の結果。

私の個性の“死体“判定が下る基準は、『心臓の鼓動が10秒間に1回以下』であることだった。

 

で、あるならば。

某奇妙な冒険の主人公の如く自分の心臓の拍動を止めれば、生きたまま『再誕』できるはずだ。

 

『再誕』することによる恩恵としては、純粋な身体能力の向上が挙げられる。

『赤子』は鉄筋コンクリートくらいなら余裕で破壊できる。

このズタボロの肉体も、『再誕』によって再構築されるだろう。

 

「重要なのは『意識』・・・自分の『意志』だ」

 

意識を保ち続けていなければ、それは死体と変わりなく、おそらく私は『赤子』として蘇ることになるだろう。

それは御免被るので、『再誕』する間意識を保つ必要がある。

 

「歌え・・・『赤子』・・・」

 

最期の瞬間まで残る感覚は聴覚であるという。

適当に歌でも大声で歌わせておこう。

無論大声で。

 

「ぐぅっ・・・早く、再誕を・・・」

 

『オーバーホール』で体の構造を変形させ、無理矢理心臓の鼓動を押し留める。

 

「がっ・・・ぐ・・・」

 

胸の激痛を堪えて個性を発動し、私は『霧』の中へ飛び込んだ。

 


 

「何だ・・・ありゃあ・・・」

 

ヒーロー達は、突然出現した建造物・・・『赤子』の肉体で構築されたドームに唖然としていた。

時折うめき声をあげ、ミチミチと蠢く奇怪なドーム。

 

「奴は相当ダメージを受けているはず・・・何かされる前に確保を!!」

 

『赤子』の群れをかき分け、ヒーロー達は前進する。

次から次へと襲い来る異形の群れに、1人、また1人と倒れていく。

それでも、彼らは止まらない。

 

「・・・█████?」

 

「████!」

 

突然、『赤子』達が会話をするようにうめき声をあげる。

 

「何だ・・・!?」

 

「████・・・lala〜♪」

 

「la〜♪」

 

「lalalala〜♪」

 

大音量で響き渡る、異形達の讃美歌。

 

「うっ・・・!?」

 

それと同時に、『ドーム』の中に悍ましい気配が出現した。

感知系の個性でなくとも分かる、圧倒的『邪』の気配。

 

「何だ・・・あの中に何がいる(・・・・)!?」

 

そして、次の瞬間。

 

パチンッ

 

「はっ・・・?」

 

あれほどいた『赤子』が、一瞬で消失した。

無論、『赤子』で構築されていた『ドーム』も消え去る。

 

そこには、1人の少女が立っていた。

ボロボロの黒い布切れを纏っており、側に落ちていた傘と本から、それらがギャシュリーの物であることがわかった。

 

問題は、それを身に纏っている少女である。

 

「ふふふ・・・あははははっ!!」

 

彼女は大声で笑ったかと思うと、ベラベラと意味不明な内容を叫び始めた。

 

「あぁ、なるほど!『赤子』は『向こう』から来ていたのか!!なるほどなるほど、あぁ素晴らしい!!」

 

さらに『向こう』へ(Plus Ultra)とはよく言ったものだな、限界を超えて死んだ先がああ(・・)だとは!」

 

「あははははっ!!」

「何を・・・言っている・・・?」

 

明らかに正気ではない様子の彼女に、ヒーロー達も困惑する。

 

「なぁに、君達も行けば分かるさ・・・」

 

「来るぞ!構え──」

 

べシャッ

 

次の瞬間、血やら内臓やらが混じったモノが、空中に撒き散らされる。

哀れなヒーローの1人が、物言わぬ肉片となって撒き散らされた。

 

「おやぁ・・・少し力を入れすぎたかな」

 

腕に付着したモノを手で払い落とし、ギャシュリーはそう呟く。

 

「まぁいいか。的はこんなにいるんだし、ね」

 

獲物(ヒーロー)の数を数え、彼女はニヤニヤした笑みを浮かべた。

 


 

「ふっ、ふふふっ、ははははっ・・・」

 

おっと、いけない。

自分の意に反して笑い声をあげる口を抑え、気持ちを落ち着かせる。

 

結論から言えば、私の『再誕』は成功した。

肉体強度は以前と比べ物にならない程高くなったし、『赤子』と私の繋がりが深くもなった。

 

問題だったのは、『霧』の向こう側。

口にするのも悍ましいような冒涜的光景が広がっていて、私はSAN値チェックに失敗してちょっと発狂した。

もう二度と見たくないね。

 

「今はどこまで戦いが進んだのか・・・オール・フォー・ワンが生きていればいいけど」

 

そこら中に飛び散ったミンチを『霧』の中に放り込む。

哀れなヒーロー達は、私の『再誕』後27秒で全滅した。

 

『再誕』した肉体と『赤子』を『オーバーホール』で融合させたことにより、私は正真正銘の化け物へと昇格した。

腕を肥大化させたり、融合している『赤子』の個性を自由に使えたりも可能。

やろうと思えば死柄木がやったような個性なし戦闘もできるだろう。

・・・もうこれオール・フォー・ワンを助けなくてよくないか?

 

「いや、駄目だな」

 

一応タルタロスから出してくれた恩がある。

私は義理堅い性格なんだ。

 

それに、私一人で全世界と戦うのは、『赤子』を解き放てば出来なくもないけどまぁキツい。

逃げるだけなら余裕だろうけど、指名手配されて逃げ隠れしながらコソコソなんかしたくない。

 

「しょうがない・・・助けに行こうか」

 

確か、戦闘の様子を中継してるヘリがいたんだっけ。

全世界への威圧の意も込めて、『赤子』で全てを踏み潰しながら行こうか。

 


 

「・・・多古場との連絡は?」

 

「依然、繋がりません・・・やはり、全滅したものかと」

 

スピナーは確保、荼毘は完全沈黙、増殖していたトガも消滅。

残るは死柄木弔とオール・フォー・ワン、ギャシュリーだけという所で、その凶報は飛び込んできた。

 

「・・・ッ、中継の映像を見てください!」

 

モニターに映し出されるのは、ヘリからの中継の映像。

 

『なに・・・これ・・・!?』

 

そこに映し出されていたのは、大地を埋め尽くす『赤子』の群れだった。




次回、逆襲のオール・フォー・ワン。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。