先生が嫌いな捻くれ孤独生徒   作:ぱぶし

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7. だから私はこの欺瞞に塗れた世の中と大人と、自分が嫌いだ。

 

 

 

「無言...ということは肯定と捉えていいのですよね?」

「性格悪いって周りから言われたことありませんか?」

 

本当に失礼だなこの中学生...。

私は眉を顰めそうになるのをなんとか耐えながら言葉を続ける

 

「こうしましょう、トリニティへの入学を約束していただけるのなら、何か1つ要望を応えましょう」

「...何かって、お金とかそういうのもですか?」

「ええ、もちろん。」

 

即座に肯定した私に引き気味になる彼女。

 

「...そんなに何故私をトリニティに入学させたいんですか?あんまり貴方に好かれるような事してないつもりなんですけど。」

「そうですね、現に私は貴方の事があまりすきではありません。」

 

私は真っ直ぐと彼女を見据える。

 

「ですが好きか好きじゃないかだけで決める程、トリニティは落ちぶれていません。」

「はぁ...」

 

いまいち納得してなさそうな表情のまま、ため息混じりに相槌を打つ彼女。

 

確かに性格が良いとはお世辞にも言えないだろう。

目上に対する姿勢。捻くれた思考回路。人に嫌われる属性を練り集めたような性格のように感じる。

これまでどうやって生きて来たのか疑問に感じる程だ。

 

しかし、それ故に彼女は揺るぎない信念がある。

 

同調せず、曲げず、そして正しい。

誰のどんな思想も干渉されない真っ直ぐとした自分の信念。

そんなものを、彼女は持っているのだ。

 

彼女の持っている一筋の信念がトリニティに必要と私は考える。

嘘と差別と虚構に包まれたあの学園は、普通の人間が先導して変えることは出来ない。

彼女のような明確な答えを持っている”変革者”が必要だ。

 

「トリニティは、貴女を歓迎します。」

 

しばらくの沈黙。

彼女はこれまで以上に冷めたような目線でこちらを見つめ直し、口を開いた。

 

「...紅茶ばっかり飲んで頭おかしくなったんですか?」

「いえ、紅茶はリラックス効果はもちろんのこと、抗菌作用に高血圧予防にもなるのですよ。飲んで困ることなど1つもございません。」

「...紅茶鳥」

 

「その呼び方はやめてください。」

 

 

 

 

――――そして、来たる4月。

彼女はトリニティ総合学園へと入学してきた。

 

 

 

 

「彼女が優秀なのは成績を見れば分かる。テストの点数は学内首位を継続。運動能力には乏しいが、トリニティでも稀に見る秀才である事は当然理解している。」

「そうです、だから」

「問題はそこじゃないのだよナギサ。先程も言ったが、ティーパーティーがどのような物か、君も分かっているだろう?」

 

そう言ってセイアはこちらを見つめる。

反論の言葉は出ない。

正論だ。

 

だが。

だからといって簡単に諦める訳にはいかない。

トリニティには、彼女が...

 

「茶会中失礼致します。ナギサ様、コマチ様が...」

 

 

――――そして、今に至る。

 

 

「怪我は!?」

「...いや...見たら分かると思うんですけど治療済みなんで大丈夫ですよ。」

 

――なんなんだこの状況は。

何がどうしてこうなった。

医務室にティーパーティーに先生、情報過多にも程があるだろう。

 

「あ...先生もいらっしゃったんですね...なら安心です。」

「...」

 

ナギサは小さなため息をついて心底安心したように胸を撫で下ろす。

勝手に心配されるのは些か気分が悪い。

あの来賓室以来会っていないというのになんなのだこの紅茶鳥は...。

 

大体何が安心なのだろうか?

この大人の、どこにそんな信頼性があるのだろうか?

勝手に妹に近付き入院中なのに関わらず暴露し、それに留まらず気持ちが悪いほどに私を詮索してくるストーカー気質の変態の大人。

私には、そうとしか映らない。

 

本当に、何が。

何がどうして、この大人を肯定しているんだろうか?

 

 

 

――――あれから私はなんとか騒動を切り抜け...

いや、医務室から出られてはいないから、結果的には切り抜けられてはいないが...。

あれから散々抗議したが、半ば強制的に一日医務室で監禁されることになってしまった。

 

「はぁ...クソ...」

 

微かに感じる頭の痛みに苛立ちながら、私は気を逸らせるためスマホを取り出しイヤホンを付ける。

 

どうしてこうなってしまったのだろうか。

 

まあ、大方理由はシャーレの先生にあるだろう。

愚図共の私への不満を爆発させるトリガーとなったのは紛れもなく、あの大人だ。

あの大人が余計な事をしなければこんなことにはなっていなかった。

そしてここに縛り付けているのもあの大人。

さっきから医務室の生徒に白い目で見られているのも...元を辿れば全部アイツのせいだ。

 

何も分かってないくせに勝手に干渉してきて、勝手に同情して、勝手に行動して...!!

アイツが、アイツが余計な事をしなければ...。

 

「...ロクでもないクソ野郎だ、全く。」

 

...

 

リナは、どうしているだろうか。

流石に今日は病院には行けそうにない。

さっきまでドーパミンが大量分泌していたのか、頭の痛みを除けばいつもの調子とあまり変わらなかったが、

今はもうだめだ。体が怠過ぎる。更には少し吐き気も感じてきてしまっている。

 

寂しがるだろうか、それとも心配するだろうか。

ああ、余計な心配なんて掛けたくないのに。

それに容態が急変して今日にもいなくなってしまう可能性だってある。

そうなってしまったらもう、もう私は...

ああ、もう嫌だ。

現状が憎い。

自分も憎い。

 

そしてあのクソ野郎も。

 

憎い。

 

憎い。

 

 

 

 

 

 

――――『先生、コマチさんが言っていた事って...』

「うん、でも憶測で彼女に何か言うのは良くない。そう判断できる証拠が無いと。」

 

トリニティの休憩室にて、私は一人椅子に腰掛けアロナと話していた。

 

――雨宮コマチ。大方プロフィールはアロナの協力のもと確認済み。

ティーパーティー...というかナギサの頼みで彼女と接触してみたが、あの手榴弾の一件で虐められていることは確かだろう。

これを解決する手段は無いことは無いが、ここで大人の私が事を強引に解決するのも、どこか筋違いのようにも感じる。

...どちらにせよ、彼女が関係の回復を望んでいない場合は意味が無い。

 

彼女を見て思ったことは、極度の人間不信だという事だ。

他人を軽蔑し、信じず避け、そして何よりも恐れている

私はメンタリストでも心理学者でもないが、そんな私でも分かるぐらいには他人と接することに抵抗があるように感じられた。

 

『過去にトラウマがあったりするんでしょうか...?』

「そうなのかな...でもこればっかりは本人に聞いてみないと分からないね。」

 

まああの状態の彼女が簡単に口を開いてくれるとは思えないが...。

そして何より...

 

「何故か私すっごく嫌われてるしなぁ...」

 

初めて彼女と目を合わせた時の、あの敵意。...というか殺意。

エデン条約時のアリウススクワッドに引けを取らない眼差しだった。

特段彼女に何かしたつもりは無いのだが...どうしてだろうか?

 

それに、あの”病院”についても気になる。

 

「...でも大人である私がこの状況をどうにかしないとね。」

 

――コンコン

 

「どうぞ。」

 

私はアロナにアイコンタクトで一旦別れを告げシッテムの箱を鞄に仕舞う。

ドアが開くと少し落ち込み気味な表情のナギサが立っていた。

 

「...先程は失礼いたしました、先生。」

「ナギサは別に悪いことなんてしてないよ?」

 

ナギサは会釈すると私の前の席に座り少しの沈黙の後、口を開けた。

 

「先生、コマチさんの妹に会ったって、本当ですか?」

 

 

 

「――会ってないよ、これは間違いない。」

 

 

 

 




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