異世界戦記   作:日本武尊

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第十七話 グラミアム来国

 

 

 

 翌日の朝に将軍達は準備した一式陸攻で城塞都市ハーベントへと戻り、そこから王都グラムへと戻って国王達との話し合いをするという。

 結果は少なくとも二週間以内(最大でも三週間以内)に城塞都市ハーベントに駐留している部隊に伝えると言い残した。

 

 

 

 

 そうして連絡が無いまま二週間がちょうど過ぎた……

 

 

 

「……しかし、ここはいい眺めだな」

 

 俺は軍港の一角にある事務所で湾内に停泊している戦艦大和を自分でも分かるぐらいにやけた様子で見つめていた。

 

 大和他にも様々な戦艦、重巡、軽巡、空母、駆逐艦が停泊しており、壮観な眺めを作っている。

 ちなみに言うと、最近就役したばかりの大和型戦艦二番艦『武蔵』が大和の隣に停泊しており、その姿は対空兵装を増設したレイテ沖海戦仕様である。

 

(この世界に来る前では絶対に生で見ることなんか無かったと思っていたけど、生きていると何が起こるか分からないもんだな)

 

 現実では全てが失われた軍艦ばかり。それが今まさに目の前に広がっている。マニアからすれば狂喜乱舞物だろう。

 それを独り占めできるという優越感が俺にあった。

 

「顔がにやけていますよ、総司令」

 

 呆れた様子で隣に立つ品川が俺に対して口を開く。

 

「いやぁ、何時見ても飽きないなぁ」

 

「……はぁ」

 

 全く気にしない様子の総司令に浅くため息を吐く。

 

 確かに扶桑の軍艦はどれも造形が美しいけれど、にやけるほどは……

 

 

 呆れながらも品川が手にしている報告書を読み上げる。

 

「総司令の指示通り、大和型戦艦三番艦『信濃』は航空母艦として改装しています。続く四番艦の建造も順調です」

 

 信濃は史実と違い、戦艦並みの装甲を持ち、艦載機の搭載数も正規空母並みにある装甲空母として建造する予定で、運用も色々と試験的な意味合いの強いものになるので、任務は特殊なものが多くなる。

 

「そうか」

 

「岩木型巡洋戦艦一番艦岩木が進水し、現在は艤装の75%を完了しています。続く二番艦『淡路(あわじ)』、三番艦『日高(ひだか)』、四番艦『若狭(わかさ)』の建造も予定されております」

「そして『雲龍型航空母艦』も大鳳型航空母艦二番艦『大峰』と共に建造を開始。パイロットの育成も順調で、就役と同時には数を揃えられます」

 

「うむ。戦力は揃いつつあるな」

 

「はい。最後に20インチ砲についてですが……」

 

 と、品川の表情に暗さが浮かぶ。

 

「少なからず色々と問題があるそうで、完成には程遠いと」

 

「そうか。船体設計の方は?」

 

「大和型戦艦の設計を基に拡大発展させていますが、それでも多くの変更点があるので、建造に至るにはまだ時間が掛かるかと」

 

「……ふむ。まぁ、今は大和型が居るだけでも、よしとしよう」

 

 まぁ、大和型を超える前代未聞の巨大戦艦だ。難関だというのはある程度予想はしていたが、今は気長に待つとしよう。

 

 

「最後に、計画されている金剛型、扶桑型、伊勢型戦艦の改装計画ですが、順調に下準備は進んでいます」

 

 改装計画は主に武装面と船体面におけるものであり、主砲を全て16インチ(=41サンチ)砲に換装させたり、16インチ主砲を搭載させるために船体の拡大および搭載装備を変更したりするものだ。

 伊勢型については飛行甲板の増設などがある。

 

「そうか。そのまま続けるように言ってくれ」

 

「分かりました」

 

 

 

 すると俺達が居る事務所の黒電話が鳴り、品川が電話に取る。

 

「私だ。・・・・・・分かった。伝えておこう。総司令」

 

 品川は受話器を本体に置き、俺に向き直る。

 

「ハーベントに駐留している部隊より報告です。アーバレスト将軍が戻ってきて、話し合いの結果が伝えられました」

「どうやらグラミアムの国王が総司令に御会いになるそうです」

 

「そうか。それで、日時は?」

 

「色々とこちらと向こうとの都合を合わさなければならないので、今から話し合いとなります。無線は通信室にて繋がっています」

 

「分かった」

 

 俺は頷くと、品川と共に事務所を出て司令部に向かう。

 

 

 

「では、来国と会談は一週間後でよろしいですね?」

 

『はい。では、お待ちしています、サイジョウ総理』

 

 話し合いの結果、お互いの準備の時間を考慮して扶桑は一週間後にグラミアム王国へと来国する事になった。

 しかし向こうで話し合いが長くなったのには、やはり扶桑という未知の国に対する警戒心が多くあったようで、来国に反対する輩が多かったとか。

 

 まぁ国王がかなりの好奇心旺盛な性格の持ち主らしく、反対を押し切って扶桑の来国を承認したそうな。

 

「そういうことだ。直ちに準備に取り掛かってくれ」

 

「了解しました」

 

「では、今すぐ」

 

 品川と辻はすぐさま来国への準備に取り掛かる。

 

 

 主に準備とは、来国するための艦隊編成にある。

 

 当初は陸路から向かう予定だったが、ハーベントから王都グラムへの距離が意外とあり、ここからハーベントまでの距離を加算するとかなりの大移動となる。そのあいだに何が起こるか分からないので、陸路を移動する案は棄却する。

 しかし、グラミアムは海洋国家であり、王都グラムの近くに巨大な港町がある。海からなら陸より距離が短いので、海からグラミアムへ向かうこととなった。

 

 扶桑海軍の軍艦ならあらゆる状況でも対応が可能であるというのがあるが、他に扶桑海軍の軍事力の高さを示すという面もある。

 

 

 当初は来国艦隊の旗艦を大和にしようか考えたが、冷静に考えて取りやめた。

 

 ただでさえ大和は建造されたばかりで、最新鋭軍事機密の塊。たとえ見られるだけでもできれば避けたいところだ。何より現在の聨合艦隊旗艦を長門より移譲しているので、旗艦を来国のために使用するのは気が引ける。

 まぁ大和を来国艦隊の旗艦にしたかった理由としては、例えるなら子供が新しいおもちゃを他の子供に見せびらかす。そのような心理に近いかもしれない。

 

 長門型や天城型などの主力戦艦は現在動かすことができないので、候補から外れている。

 

 正規空母も主戦力であるため、論外だし、何より平らな空母ではどうにも威圧感というものがない。

 

 金剛型か伊勢型でも良かったが、最終的には扶桑型戦艦一番艦『扶桑』を旗艦にした。

 

 理由は国と同じ名前であるのが大きいし、色々とインパクトも大きい。

 

 と言うかあの戦艦の違法建――――ゲフンゲフン。あのアンバランスな造形の艦橋が好きなんだよな。

 もうあれ芸術って域だろ。第一印象としては十分威力があるだろう。

 

 

 扶桑他二番艦『山城』と伊勢型戦艦二隻、高雄型重巡洋艦四隻、川内型軽巡洋艦三隻、吹雪型駆逐艦特Ⅲ型四隻、飛鷹型航空母艦二隻の構成となっている。

 ちなみにこれは機密事項なのだが、艦隊にはとある潜水艦隊が護衛のために秘密裏に随伴することとなっている。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 四日を費やして出港準備を整えて、湾内には来国艦隊が停泊していつでも出航できる状態で待機していた。

 

 左胸に勲章を下げた礼服に着替えた俺と品川、辻を乗せた内火艇が旗艦の扶桑へと向かい、接舷する。

 それと同時にラッパが鳴り響き、弘樹がタラップを上がってその上に立っている水兵が手にしている三八式小銃を捧げる。

 

 俺はその乗員に対して海軍式敬礼をする。

 

「捧げぇぇぇぇ!! 銃ッ!!」

 

 甲板に並んでいた乗員達が三八式小銃を掲げると、楽器を持つ乗員達が演奏を始め、マストに大将旗が上がる。

 

 演奏の中俺は海軍式敬礼をしながら甲板に敷かれた赤い絨毯を歩いて進むと、一人の男性が待っていた。

 

「お待ちしておりました、西条総司令官!」

 

 戦艦扶桑の艦長である『鶴岡啓蔵』大佐はすぐに海軍式敬礼を行い、俺と品川、辻の三人はすぐに答礼する。

 

「準備ごくろう。いつでも出港できるな?」

 

「ハッ! いつでも出港できます!!」

 

「よし。では、頼む」

 

 俺達は副長に案内されて艦内へと入ると、すぐに僚艦へ出港を告げる。

 

 

 そしてその一分後に各艦が抜錨して出港し、グラミアムへ向け出発する。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 それから三日間の航海を経て、王都グラムの港町ミランから25km離れた海域までやってくる。

 

「港町が見えたな」

 

 芸術的な造形の扶桑の艦橋より弘樹は双眼鏡を覗き、港町を観ていた。

 

 海洋国家とあって、港の規模はかなり大きく、木造の民間船や貨物船など多くの船が停泊している。

 隔離されたエリアにはグラミアムの海軍の戦列艦が数隻停泊している。が、海洋国家にしては軍艦の数が少ないのも、恐らく帝国との戦争によって失われているのだろう。

 

「それにしても、随分と我々のことを宣伝しているようですね」

 

 城塞都市に居た冒険者、商人達があのときの戦闘を言い伝えたのだろうか、港町には帝国軍を退かせた国の艦隊を見るべく、大勢の国民が待っており、遠くの海域を航行している扶桑の艦隊を見ていた。

 

「別に構わんだろう。見たいのなら、見せてやればいい」

 

「……」

 

 

 その後他の艦船の航行の邪魔にならないように投錨して停泊し、弘樹達は辻と品川、護衛の陸戦隊と共に駆逐艦響に乗り換え、港へと接岸する。

 

 俺達が港に下りると野次馬達は歓迎ムード……というか興味津々といった感じで出迎える。

 

 まぁ殆ど鉄で出来た軍艦や見たことの無い服装や装備をした俺達だから、当然と言えば当然か。

 

「お待ちしておりました、サイジョウ総理」

 

 港にはアーバレスト将軍が直々に出迎えに来ており、その右斜め後ろに小尾丸が付いている。

 

「随分と賑やかですね」

 

「えぇ。噂というのはあっという間に広がりますからね。あれだけの戦闘があれば、尚更でしょう」

 

「まぁ、確かに」

 

 苦笑いを浮かべながら呟く。

 

 

 

 将軍が用意した馬車に俺達はそれぞれ乗り込み、城へと向かう。

 当初は車輌を持ってくるはずだったが、当たり前だが降ろすためのクレーンが無いので、仕方なしに向こうに移動手段を準備するように言っていた。

 

 

 俺達を乗せた馬車は大通りを通って城へと到着し、将軍に案内されて城内を歩く。

 

 中世ヨーロッパにありそうな派手な感じはなく、中も大理石ではなくただの石材を用いているなど、かなり地味な雰囲気はあったが相当年季の入った立派な城であるのに変わりは無い。

 

「こちらの玉座の間にて国王様が待っておられます」

 

 少し歩いて立派な扉の前で将軍が国王が居る事を告げる。

 

「二人と護衛はここで待っていてくれ」

 

「分かりました」

「はい」

『ハッ!!』

 

 俺は城に入る際に脱いで左脇に抱えるように持っていた制帽を品川に渡すと同時に辻、護衛の歩兵にそう言って、国王の姿を少なからず色々と予想しながら扉が開かれて中に入る。

 

 

「……あれ?」

 

 しかし中に入るも、国王がいるはずの玉座には誰も居らず、思わず声が漏れる。

 

「おーい。こっちだこっち」

 

 と、首を傾げたときに右斜め前より声を掛けられてそちらに視線を向ける。

 

 そこには俺の予想とは裏腹に、一人の女性が窓際に置かれた椅子に座っていた。

 

 金髪のストレートを椅子に座って床に先端が触れるぐらいの長さを持ち、ルビーのような赤い瞳をしており、身体のスタイルは中々いい方な上、外見からだと年は20代半ば辺りと思われる。

 彼女が獣人族であると一目で分かるように、頭には狐の物と思われる耳が生えており、椅子の背もたれと座席の間の隙間からフサフサの尻尾が……二本?も出ている。しかし、その両腕は金属の義手になっていた。

 

 それ以外に家臣が二人ほど居たが、予想より圧倒的に少ないことが意外だった。

 

 国王の意外な姿に呆気に取られるも、姿勢を正して深々と頭を下げる。

 

「国王様。いつも申し上げていますが、常に玉座に座られないと示しが……」

 

「あれ狭い上に硬いから尻が痛いんだよな。それに尻尾だって挟まれて痛いし。それに外の景色だって見れないし」

 

 忌々しげに国王は部屋の奥にある玉座を睨む。

 

「ですが……」

 

「それに、私のことを言わなくていいのか?」

 

「……そ、そうですね」

 

 アーバレスト将軍は咳払いして弘樹に向き直る。

 

「サイジョウ総理。この御方が我がグラミアム王国第25代国王『ステラ・フォーロックス』陛下です」

 

「話はアーバレストから聞いているぞ、フソウの長よ」

 

「は、はい。お初お目にかかります、国王陛下。自分が扶桑の総理、西条弘樹と申します」

 

 右手を真っ直ぐに伸ばして左胸に当てて、頭を下げる。

 

「国王陛下か。私はあんまり堅苦しいのは苦手なんだよな。フォーロックスでもステラでも自由に呼んでもいいぞ」

 

 苦笑いを浮かべるも、国王はニカッと親しげな笑みを浮かべる。

 

「は、はぁ……」

 

 やけにフレンドリーだな。サバサバしていると言うか、何て言うか……

 

「アーバレスト。ヒロキと話がしたいから、空けてくれないか? お前達もだよ」

 

 早速呼び捨てかい……

 

「はい。畏まりました」

 

「「ハッ!」」

 

 頭を下げてアーバレストと家臣二人は王室を後にする。

 

 

 

「い、意外でしたね。国王って厳格な雰囲気があるとばかり思っていましたが……」

 

「言っただろ? 堅苦しいのは苦手だってな」

 

「そ、そうだな、ステラ」

 

「おや? てっきり敬語で言い続けると思ったが?」

 

「……正直に言うと、俺も堅苦しいのは苦手なんだ」

 

「おっ、気が合うねぇ」

 

 人懐っこい笑みを浮かべ、ステラは椅子から立ち上がる。

 

「改めてよろしくな、ヒロキ」

 

「あぁ。こちらこそ」

 

 二人は右手を差し出して握手を交わす。

 

「それにしても、城の年季の入り方や国の発展具合にしては、代は少ないんだな」

 

「まぁうちは長生きが多いんだ。歴史は長いが、長生きが多いからそれほど代はいないんだ」

 

「なるほど。失礼で承知で聞くが、何年生きているんだ?」

 

「私か? 私はもう500年経つな」

 

「なっがっ……」

 

 驚きのあまり思わず声が漏れる。

 

「まぁ人間からすれば長いんだろうが、これでも若い方だぞ」

 

「500年も生きて?」

 

「あぁ」と得意げにニカッと笑みを浮かべる。

 

「人間に例えるなら、500で二十歳ぐらいだな」

 

「しかもわっかっ!?」

 

 もはや次元が違う。てか人間視点で考えてはいけない気がしてきた。いや、気にしたら負けなんだろうな。

 

 ちなみにステラの一族は獣人族の中で狐族に当たるが、どうも特殊であるらしく、異常なまでに長生きな一族だと言う。そして250年ぐらい経つたびに尻尾の数が増えていき、500年生きているステラは二本となっている。

 

 話によれば九本ほど尻尾が増えた代も多く居たらしい。ってかもう九尾じゃないかそれ……

 

「まぁ、細かい事は気にするな。気にすると疲れるぞ」

 

「……確かに」

 

 やっぱこの世界じゃ俺の世界の常識は通じないな……今更だけど。

 

 

 別に意識していたわけじゃないんだが、つい視線はステラの両腕の義手に向けられていた。

 

「ん? こいつが気になるか? まぁ、目立ってるし、気にはなるだろうな」

 

 ステラはガチャガチャと義手を動かす。

 

「気に障ったのなら、謝るが?」

 

「別にいいよ。ちょっとした事故で両腕を失って、この国随一の鍛冶職人と魔道士によって作られた私の力と魔力に耐えられる一品物だよ」

 

 一瞬表情に影が差したように見えたが、今は聞けるような空気ではないな。

 

「そうか。だが、義手がでかくて不便じゃないのか?」

 

 見た限り俺の1.5倍近くの大きさはあるし、指先は尖っている。日常生活では不便しかなさそうなんだが。

 

「最初はそうだったけど、慣れたらそうでもないぞ。自慢じゃないがこの手で裁縫だってできるぞ」

 

 それは地味で凄い。ってか国王なのに裁縫ってなんぞ?

 

 ステラの不可思議な発言に首を傾げていると、彼女は窓から港の停泊している扶桑海軍の軍艦を見ていた。

 

「しっかし、ここから見てもあの大きさ。凄いな」

 

「あれでも我が海軍の中では小さい方だな」

 

「あれよりデカイ船があるのか?」

 

「機密上詳細は言えないが、何隻かは居る、とだけ言っておこう」

 

「そりゃ凄いねぇ。いつか見てみたいもんだね」

 

「そのときがあれば、な」

 

 

 

「話が結構外れたけど、あらためて小尾丸とリアスを救ってくれた上に、帝国軍に対して戦ってくれた事を感謝するよ」

「お陰で一時的とは言えど、連中に痛手を負わせた上に重要拠点を守ることができた」

 

 ステラは深々と頭を下げる。

 

 一国の国王が頭を下げるという重大なことを受けて俺は一瞬と惑うも、冷静を装う。

 

「気にするな。俺達は偶然に出会ったとは言えど、当たり前のことをしたまでだ」

「だが、その言い方では、すぐに敵は攻めてくるようだな」

 

「あぁ。戦力を立て直すのに他の戦域から招集するのに時間を有するだろうけど、向こうの国力を考えるなら僅かな時間と考えるべきだな」

 

「……」

 

「悔しいけど、帝国との戦いで疲弊した今の私たちじゃ帝国を押し返すだけの兵力はない。自慢だった海軍も帝国によって多くの軍艦を沈められてしまったし」

「だからこそ、ヒロキたちと話し合ってフソウと協力関係を築き、可能ならば同盟を組みたいと思っている」

 

「ふむ」

 

 俺は顎に手を当てて考える。

 

「無論タダで協力を申し入れるわけじゃない。それ相応の対価を支払うつもりだよ」

 

「対価ねぇ。例えば、出すとすれば何を出すつもりだ?」

 

「まぁ大きいもので鉱山だな。グラミアム領内の鉱山では良質な鉱石が多く採掘できるからな」

 

「……」

 

「もちろんフソウ側から何か必要とあらば、可能な限り揃える」

 

「そうか」

 

 この申し出は扶桑にとってはありがたいものだ。いくら鉱山と油田を持つ前哨要塞があるとは言えど、限りがある地下資源がいつ途絶えるか分からない。

 

「だが、正式に同盟を組むかどうかは、まだ分からんぞ」

 

「だろうね。まだお互いのことを知らないんだ。その話はもう少し親しくなってからだね」

 

 さすがに会っても間もない国と同盟を組むとなると国民の不安を煽ることになりかねないし、何より人間に対して憎しみを抱いている国民も少なくも無い。すぐに同盟を組むと不満をもたれる可能性がある。

 なので、しばらく両国は協力体制にある、として行動する。それで国民の反応を見極めることとした。

 

「それがいいだろう」

 

「そういうことで」

 

 そうして二人は再度握手を交わす。

 

「改めて、よろしくな」

 

「こちらこそ」

 

 その瞬間で、今は仮として扶桑国とグラミアム王国は協力関係へとなった。

 

 

 

 

 


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