異世界戦記   作:日本武尊

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第二十六話 エール王国奪還戦

 

 

 

 

 翌日の夜……

 

 

 

 星が広がる空に、陸軍の四式重爆撃機が目標の空域まで飛行している。

 

 

「では、作戦を伝える」

 

 機内では、全身黒ずくめの男性『黒下玄』大尉が同様の格好をした隊員に作戦説明に入る。

 

 彼らは扶桑軍の中で、最も厳しく過酷な特殊訓練を受けてきた……通称『忍者部隊』と称される特戦隊だ。本当の忍者という訳じゃないが、全身真っ黒でマスクで顔の殆どを隠した見た目や身のこなし方、隠密性が高いから、そう称されている。

 彼らの主な任務は敵地への潜入工作、そこからの破壊工作である。と言っても、彼らにとって今回が初陣なのだが……

 

「今回我々の目的はエルフ族の国で、現在帝国軍に占拠されている『エール王国』を奪還することにある」

「本作戦では、本隊と別働隊、我々特戦隊に分かれて遂行される」

 

 現在の状況から攻略部隊は寄せ集め的な感じは拭えないが、その攻略部隊が正面から、別働隊には精鋭を揃えた部隊をとある人物が率いて市街地へ向かう。

 そして特戦隊は直接城へある方法で潜入することになっている。

 

「そしてこれがエール王国より脱出し、保護した第二王女が可能な限り伝えた城の見取り図だ」

 

 黒下はボードに簡易的に描かれた城の見取り図を広げる。しかし簡易的と言えどその見取り図はかなり正確に描かれている。

 

「我々特戦隊の目的は、城に捕らえられているであろう人質を無傷で奪還。更に指揮官の暗殺による指揮系統の混乱を招き、城を制圧する」

 

「隊長。人質が監禁されている場所は、判明してないのでありますか?」

 

「あぁ。残念だが、時間の関係もあって人質がどこに監禁されているかは判明していない。まぁ、大体牢獄に入れられていると考えられるが」

 

 時間さえあれば事前に潜入して調べることができたのだが、今回は時間というものがまったく無かったので、情報不足の中でやるしかなかった。

 

「だが、別の現地で情報を収集するのに問題は無い。落下傘で城へ降下後、帝国軍兵士から情報を聞き出せ」

 

 言わば、ほぼアドリブでやるしかないと言う、初陣である彼らにとってかなり無茶なものだった。しかもその潜入方法が落下傘による降下なのだから……

 

「初陣である我々には厳しいものになるだろうが、今回は最重要なものだ。総司令の期待に背くわけにはいかん。各員心して掛かれ」

 

『応っ!!』

 

 黒下の言葉に隊員達は声を揃えて返す。

 

『目的地が見えてきたぞ。そろそろ準備に掛かれ』

 

 四式重爆撃機の機長がそう伝えて、黒下達特戦隊は準備に取り掛かる。

 

 

 

 

 そうして四式重爆撃機は目的のエール王国の上空に到着し、黒下達は落下傘を背負い、扉を開けて降下準備に入る。

 

 空は黒い雲で覆われて月と星は顔を見せていないので、ほぼ空の光はほぼ無に等しく、黒ずくめの彼らにとって絶好の条件だった。

 

「いいか。訓練通りにやればいい」

 

 マスクで目元以外を覆われた黒下は隊員の人数と装備の再確認をしながら言い聞かせる。

 

『降下開始! 御武運を!』

 

 機長の合図とともに、黒下達特戦隊は四式重爆撃機から漆黒の空へと次々飛び込み、降下していく。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 特戦隊が降下する少し前……

 

 

「……」

 

 私は愛銃の九九式小銃の点検をしながら、胃が締め付けられるような感覚に襲われている。

 

 今回のエール王国奪還のため自分の部隊から数十人ほど腕の立つ隊員を抜粋し、司令部から攻略部隊と獣人や妖魔族、翼人族などで構成された義勇部隊を引き連れ挑む。

 義勇部隊は荒くれ者が多いようで、戦闘前から彼らの士気は殺気立つほどの高さを見せている。しかし彼らは帝国軍と戦うために猛訓練に励み、錬度は陸軍の中でも結構上に入るほどのものである。

 

「・・・・・・」

 

 もっとも、私の胃を締め付けるほどの緊張の元は彼らではなく・・・・・・

 

 

 

「本当に、立場を弁えてください。だいたい国の国家元首たる総理である総司令が前線に出るなど、非常識もいいところです」

 

「今回ばかりは辻大将に同意見です。そもそもを言えば――――」

 

 戦闘服を身に纏う辻と品川は100式機関短銃や『五式自動小銃』を点検しながら四式自動小銃(試作型)を点検する俺をジトッと睨みながら説教を加える。

 

 ちなみに品川が持つ五式自動小銃とは、扶桑陸海軍で四式自動小銃と正式採用を競った半自動小銃の試作品であり、四式が正式に採用された為五式は試作された極僅かのみが残って、その中の一つを品川が愛用している。

 史実では旧大日本帝国海軍が開発した四式自動小銃で、M1ガーランドを元にした四式と異なり、ドイツの『ワルサーGew43半自動小銃』を元にして、オリジナルと異なってM1ガーランドと同じエンブロッククリップ式を採用している。

 

 

「そりゃ、非常識だとは思っているさ。ただな……」

 

 俺はクリップに九九式実包を10発入れて、腰のベルトに下げている弾薬箱に入れる。

 

「もしエルフが最高責任者を出せと言ってきた場合、すぐに対応できるだろ?」

 

「なら、前線出らず後方で待っていてください。戦闘は我々に任せて―――」

 

 

「大事な部下が前線に赴くというのに、黙って後ろで指をくわえて待っていろというのか」

 

「……」

「……」

 

 大事な部下と言われ、二人の顔が少し赤く染まる。

 

「それに、俺がそう簡単にやられると思っているのか?」

 

「そう言っているのではありませんが……」

 

「なら、問題は無いな」

 

「……」

 

「……」

 

 強引に推し込んだ俺に二人は呆れてため息を吐く。

 

 

(……うぅ。胃痛が)

 

 ……いくら他の部隊が作戦行動中で動かせられないと言って、総司令自らが側近である辻大将が第二師団とは別に率いる扶桑陸軍の精鋭を集めた陸軍親衛隊と、品川大将の率いる海軍陸戦隊の精鋭を集めた海軍親衛隊を引き連れたのだから。

 

 確かにこれほど心強い味方はいない。が、あのときのように心労の種が……何より胃痛がガガ……

 

「岩瀬大佐」

 

 と、私のもとに西条総司令がやってきて、すぐに姿勢を正して陸軍式敬礼をする。

 

「今回俺は別働隊の指揮を執る。攻略部隊の指揮は任せるぞ」

 

「は、ハッ!! ご期待に沿えるように、全力を尽くします!」

 

「期待している」

 

 西条総司令が答礼をした後、別働隊を率いて目標の場所まで移動を開始する。

 

 

 

 

「……」

 

 西条総司令が部隊を引き連れていくのを見ながら、自分は四式自動小銃の点検を終えて、スリングを肩に掛ける。

 

「まさか扶桑の長が自ら部隊を率いるなんて、結構度胸あるじゃないの」

 

 隣では動きやすい格好に着替え、準備運動のように身体を動かすガランド殿が別働隊を引き連れる西条総司令を見ながら口を開く。

 

「今のご時世戦場に国のトップが出てくることなんて殆ど無いわよ。大体が自分だけが安全な場所に引きこもってギャァギャァ喚いていることだろうし」

 

 ある意味的を射ている彼女の言葉に苦笑いを浮かべる。

 

「でも、フソウには感謝しないとね。国を取り戻せるだけじゃなく、あの帝国の愚か者達をぶっ飛ばせるチャンスをくれたんだから」

 

 ある意味悪い笑みを浮かべる彼女は広げた右手に左手で作った拳をぶつける。

 

「そんなに、でありますか?」

 

「当然よ。あいつらは人の好意を踏み躙ったんだから。それにエルフはプライドが高いからね。やり返さないと気が済まない性分なのよ。特に私はね」

「あっ、別に他種族を見下しているって意味じゃないのよ」

 

 彼女の様子から見れば、相当怒りが溜まっているんだろうな、と内心で納得する。

 

「今回は自分がガランド殿をお守りします。総司令からの直々のご命令でありますから」

 

「ふーん。まぁ、期待しているわよ」

 

 素っ気無く彼女はそう言うと、そっぽを向く。

 

 むぅ……本当に王女なのか疑いたくなる……

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「はぁ……暇だな」

 

「あぁ全くだ」

 

 その頃、城のバルコニーにて警戒をしている帝国軍兵士二人は思わず口から言葉を漏らす。

 

「もうここに用は無いだろう。手に入れたいものは手に入れたって話だっていうのに」

 

「だよな。何に拘って残っているんだか」

 

 目的を達してもいつまでもここに留まる指揮官に若干の苛立ちを覚えていた。

 

「このままだとフソウが来ちまうかもな」

 

「ハッハッ。かもしれんな」

 

 と、右の方に視線を向けると――――

 

 

「ムグッ!?」

 

 突然反対側でくぐもった声がして視線を外していたもう一人がとっさに声がしたほうに視線を向けると……

 

 

 

 漆黒に包まれたナニカが兵士の首をあらぬ方向に曲げていた。

 

「ヒ―――」

 

 叫ぼうとした瞬間、その兵士も後ろから口を塞がれ、そのまま暗闇の中へと引きずり込まれた……

 

 

 

 

「……」

 

 暗闇の中で黒下は隊員にハンドサインで指示を出すと、分解して背負っていた二式小銃(九九式短小銃を銃身部と本体を分けて持ち運びやすくした空挺部隊仕様の小銃)を取り出して組み上げる。

 他の隊員も二式小銃や投げ短刀、100式機関短銃、『一式拳銃』と言った、自らの得物を取り出して戦闘準備に入った。

 

「隊長。兵士から得た情報ですと、やはり国王と王妃などの王族は地下牢に捕らえられているとのことです」

「あと、敵指揮官は食堂にて酒をたらふくと飲んでいるとのことです」

 

 その他にも大雑把に敵兵の位置についての情報があった。

 

 ちなみ情報を吐かせた兵士はどうなかったかは……まぁ言わずもがなだがな。

 

「そうか。それだけあれば、十分だ」

「手筈通りに動くぞ」

 

 黒下は隊員にハンドサインを送り、足音を立てずに城へと突入する。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 時系列は忍者部隊が突入してしばらく経った時まで下る……

 

 

 

「……」

 

 部隊を城の側面にある森へと移動させている中、私は左腕の腕時計を月の光に照らして時刻を確認する。

 

 部隊は城の側面に待機させ、その時を待つ。

 

 今回密かな行動が要求されるとあり、戦車などの戦闘車両を使うことができず、持って機関銃を備える装甲車輌ぐらいだ。しかし万が一に備えて対戦車兵器を多く持ってこさせているので、戦車もどきに対応はできる。

 

「……」

 

 私の周りでは義勇部隊が、その時を殺気立てて今かと待っている。

 

(総司令の言う通り、この辺りでガス抜きした方が良かったな)

 

 思わずそう思って、苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 すると城から何かが上空に向けて放たれ、空高く舞い上がった所で緑色の光を放つ。

 突入部隊が城内部に居る敵戦力制圧をしたという合図だ。

 

「……突撃!!」

 

 間を置いてから、私は突撃命令を下す。

 

 

 同時に義勇部隊の獣人や妖魔族たちが身を潜めていた森から雄叫びを上げて突撃し、翼人族の兵士達が小銃と軽機関銃、機関短銃を持って飛び立つ。

 

 先ほどの信号弾に呆気に取られていた帝国軍兵士達は雄叫びを聞いてとっさに身構えるが、空に舞い上がった翼人族の持つ銃火器による爆撃が襲い掛かって反撃する間も無く命を散らせ、城壁の上から落下する。

 

 帝国軍は慌てて反撃をするも、狙いを定めたものでは無いため見当違いの方向へ弾や矢が飛んでいき、お返しと言わんばかりに一式半軌装兵員装甲兵車2輌に備え付けられた三式重機関銃改2基計4基の銃撃を受けて赤い花を散らす。

 

 城門前に止まっている戦車もどきが大砲を放ってくるも、砲弾はあらぬ方向へと飛んでいって外れ、三式重機関銃改の銃撃を受け、装甲を貫通して中の乗員をミンチにした。

 そのあいだにも身体能力に物を言わせた獣人たちが戦車もどきに肉薄し、車体の後ろに回り込んで扉の前の足置きに足を置いて角を掴むと、九七式手榴弾の安全ピンを抜いて車体と砲塔が一体化した戦闘室の扉を開けて中に放り込んで扉を閉めると、中で手榴弾が破裂して悲痛な叫びとともに乗員を殺傷する。

 

 更にオーガなどの妖魔族が岩を手にして戦車もどきに近付いて、砲口から岩をぶち込んだ直後に戦車もどきが発砲するも、岩にぶつかって砲身が破裂する。車内では阿鼻叫喚なことになっているだろう。

 直後にその戦車もどきの後部の扉を開けて安全ピンを抜いた九七式手榴弾三つを放り投げて扉を閉めると、直後に車内で破裂して残った乗員を殺傷する。

 

 戦車もどきが次々と撃破されていく中、翼人族の兵士による爆撃で城の城門前の防衛戦力は殆どを削られ、その隙に私は残った帝国軍兵士を九九式小銃を構えて引き金を引き、ヘッドショットで仕留めたあと進軍を命じる。

 その後に八九式重擲弾筒を持つ歩兵十人が一斉に榴弾を城門へ向けて放ち、同じくして九糎噴進砲5基を持つ歩兵も放ち、城門を粉々に吹き飛ばす。

 

 先に城の敷地内に入ったのは義勇部隊であった。

 

 最初に翼人族による上空からの狙撃で待ち構えていた帝国軍兵士を射殺していき、その隙に地上部隊が雄叫びとともに突入した。

 

 それにしても、総司令は本当に良いタイミングで義勇部隊を投入したと思う。

 

 なぜかって? 殺意剥き出しで雄叫びを上げ、恐れ無しに突入していくのだから。そして乱戦ともなればそこからは彼らの十八番だ。帝国軍兵士に為す術はない蹂躙戦だ。

 味方でも恐怖を感じる光景だから、本当に彼らが味方で良かったと思う。

 

 そしてそのさっきをこちらに向けられていたかもしれないと思うと、恐怖を覚える。

 

 

 義勇部隊の突入後、自分は四式自動小銃を放ちながら敷地内へと侵入し、帝国軍兵士を次々と仕留めていく。

 

「……本当に頼もしい、けど怖い」

 

 言葉で表せないほどに義勇部隊は荒ぶっており、ミノタウロスが帝国軍兵士にタックルをぶつけて地面に叩き付け、チーターの特徴を持つ獣人が素早い動きで帝国軍兵士を翻弄し、手にしている九九式短小銃に取り付けた銃剣を心臓へ突き刺したり軍刀で首を刎ね飛ばしたり、虎の姿をした妖魔族が自身の牙で帝国軍兵士に噛み付いて肉を噛み千切ったり、オーガが思いっきり帝国軍兵士の首が180度回転するまでに殴ったりと、阿鼻叫喚な光景が広がっている。

 そんな光景に恐怖を感じながらマガジンを外し、新しくマガジンをセットしてコッキングハンドルを引いて薬室に弾を装填する。

 

「喰らいなさい!! ファイアーボム!!」

 

 近くではガランド殿が上に掲げた右手よりいくつかの火の玉を出すと、それを投げるようにして放ち、戦車もどきの残骸を盾にしていた帝国軍兵士を残骸諸共火の玉を爆発させて吹き飛ばす。

 

「ハッハッハッ!! どうだ帝国軍共! 私の力の前にひれ伏せたか!!」

 

 微妙に性格が変わっているガランド殿は更に火の玉を出し、投げるようにして放ち、次々と爆発を起こす。

 

「ガランド殿! 前に出すぎです!!」

 

 しかし彼女は自分が護衛対象だと言う事を忘れてか、どんどん前に出て立ち止まり、呪文と思われる言葉を呟く。

 

 

「っ! 危ない!!」

 

 しかしその隙を狙って帝国軍兵士が弓矢を放とうとして、自分はとっさにその場から走り出し、ガランド殿を庇うようにして抱えて地面に倒れる。

 

「っ!」

 

 その瞬間左肩に激痛が走る。

 

「イタっ!! 何するのよ!」

 

「な、何って、それは・・・・こちらの台詞であります、よ!」 

 

 助けたのに文句を言ってくる彼女に返しながら、左肩に突き刺さった弓矢を滅茶苦茶痛かったけど、思い切って引き抜く。

 

「っ・・・・!」

 

 ガランド殿はそれを見て目を見開く。

 

「あ、あんた・・・・私を、庇って・・・・」

 

「あなたをお守りするのが自分の役目であります」

「っ! そもそも、戦場で突っ立つ馬鹿がどこに居るんですか!!」

 

「ば、馬鹿って何よ!?」

 

 自分はガランド殿の文句を聞きながらも彼女の手を持ってその場から離れると、敷地内にあるレンガの壁の陰に隠れる。

 

「それはガランド殿に決まっているじゃない、ですか!!」

 

 レンガの壁の陰に隠れて大声を出した途端激痛が左肩から激痛が走って歯を食いしばって壁の陰より出て四式自動小銃を連続して放ち、帝国軍兵士を次々と撃ち抜く。

 

「っ……!」

 

 撃つ度に衝撃が左肩に響き、最後の一発を撃った後に壁の陰に戻り、マガジンを外す。

 

「……」

 

 しかし痛みのあまりか、力が入りづらくなっていて、新しいマガジンを取り出せなかった。

 

「って、無茶しすぎよ。ジッとしてなさい」

 

 そんな自分の様子を見かねてか、ガランド殿は後ろを向かせて矢が突き刺さった左肩を見ると、両手を傷に翳して呪文を唱え出す。

 

「聖なる光よ。この者の傷を癒したまえ」

 

 と、青い光が両手より発して、次第に左肩から痛みが引いてくる。

 

 魔法というのは便利だな……

 

「……これでいいはずよ」

 

「……申し訳ないであります」

 

 痛みが引いて呼吸を整えながら、マガジンを取り出して差し込んでコッキングハンドルを引き、薬室に弾を装填した後レンガの壁から上半身を出して四式自動小銃を構え、周囲を確認する。

 

「ですが、気をつけてください。自分にはガランド殿をお守りする特命があるのですから」

「それに、もしガランド殿に何かあったら、どうするのですか」

 

「……それは」

 

 

 

「非人共に与する愚か者共が!!」

 

 と、帝国軍兵士が後ろから右手に剣を持って自分に切りかかってくるも、とっさに振り返って四式自動小銃を構えて引き金を引き、剣を持つ右手首に命中すると衝撃で右手首が吹き飛ぶ。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 兵士は左手で血が噴き出す右手首を押さえながら倒れるが、自分はお構いなしに四式自動小銃を構えて引き金を引き、心臓を撃ち抜く。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

 と、更に右から剣を持つ兵士がガランド殿に向かって剣を振るおうとしていた。

 

 ガランド殿はさっきのことがあってか、反応が遅れてしまった。

 

「っ!!」

 

 自分はとっさに走って彼女の前に出ると、四式自動小銃を前に出して攻撃を受け止める。

 

「ガランド殿に、何をするか貴様!!」

 

 強引に兵士を押し返し、とっさに身構えて四式自動小銃のストックで兵士の頭を思い切って殴りつけてバランスを崩させると、すぐに銃口を向けて発砲する。

 

「あ、あんた……」

 

「御安心を!」

 

 更に向かってくる兵に四式自動小銃のストックで殴りつけると、先端に取り付けた銃剣を勢いよく突き出して胸に突き刺す。

 

「ガランド殿は、自分が守り抜きます!!」

 

「……」

 

 その光景に、彼女は呆然と見つめていた。

 

「ここに居ては危険です! 行くであります!!」

 

 自分は彼女の手を取り、その場を走って離れる。

 

 

 

 


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