もしかしたらこんなことがしばらく続くかもしれないので投稿が遅れるかもしれませんので、その点はご理解をお願いします。
バ号作戦開始から九ヶ月が過ぎようとしていた……
現時点における勢力図は圧倒的に扶桑軍側に傾いており、何があっても帝国が戦局をひっくり返せるような要素は殆ど残されていない。
史実で例えるなら第二次世界大戦末期の日本軍より悪いと思えばいい。
しかし、帝国に成す術は無い、とは言えないのが戦場というものだ。
いや、今回の場合は日本人である
人間は追い詰められれば、たとえ狂気な行いでも躊躇わずに行えるのだから……
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鉛色の雲が空を覆い、太陽の光がその雲の切れ間から差し込んで海原を照らしている中、扶桑海軍の戦艦2隻、航空戦艦2隻、重巡3隻、軽巡4隻、駆逐艦8隻で構成された第5艦隊が目標海域を目指して航行していた。
その後方には軽空母飛鷹、隼鷹、千歳、千代田、龍譲が続く。
『前方3万6千に敵艦隊発見!』
二番、三番砲塔を三連装砲に換装した戦艦長門の監視所から伝声管を通して報告が昼戦艦橋に伝達される。
「全艦対水上戦闘用意!」
「対水上戦闘用意!!」
副長が復唱して艦全体に指令を伝達すると鐘が鳴り響く。
すぐさま艦隊の陣形も変更し、空母を守るように航空戦艦と駆逐艦、軽巡が周りに配置して戦艦と重巡、駆逐艦が前へと出る。
「っ! 敵艦隊直上で転送反応! 来ます!」
と、敵艦隊の上で空間が歪み、そこから多くの竜騎士が出現する。
「あれだけの数をまだ残していたのか」
「と言うより、寄せ集め感がありますね。大小の竜にグリフォン、鳥、虫などと、色々といますね」
艦隊の真上に現れた竜騎士が跨っている生物は竜でも体格や大きさがばらばらで、グリフォンや大きな鳥、虫といった生物が混じっている。
明らかに寄せ集めたと言っても過言ではない。
「しかし、なぜわざわざ艦隊の上に転送を? どこにでも転送が出来るのなら、我が艦隊の上にでもすればよいものを」
「うむ……」
敵はどこにでも転送できる転送魔法があるはずなのに、なぜか自分の艦隊の上に竜騎士達を転送させてきた。
(転送魔法を使いこなせる魔法使いがいないのか? それとも何か意図があるというのか)
艦長の胸中では言いようのない不安が渦を巻いていた。
「だが、相手がどんな状態であろうと我々のやる事に変わりは無い。陸奥、伊勢、日向に打電!『新三式弾』用意!」
「ハッ!」
すぐさま指令が各砲塔に伝達され、長門の41cm連装砲と41cm三連装砲に新三式弾なる新型砲弾が装填され、砲塔が右へと砲身をゆっくりと上げながら旋回する。
同じくして戦艦陸奥と航空戦艦伊勢、航空戦艦日向も各砲塔を右へと旋回させる。
「電探連動射撃! 諸元入力!」
長門と陸奥、伊勢、日向の電探で竜騎士の群れの位置を数値化して各砲塔に伝達し、砲身の角度を調整する。
『砲撃準備完了!』
報告が入り、艦長はすぐに指示を飛ばす。
「全艦! 撃ち方はじめ!!」
直後に轟音と眩い光とともに計38発の新三式弾が放たれる。
放たれた砲弾は竜騎士の群れへと飛んでいくが、竜騎士達はそれなりに対応策を編み出してか砲撃の瞬間に散り散りになって飛んでくる砲弾をかわす。
砲弾は竜騎士の傍を通り越そうとした瞬間、突然破裂して全方位に無数の釘状の鋭利な物体を飛ばし、回避した竜騎士達を撃ち貫き、一瞬にしてその殆どを殲滅する。
扶桑海軍が三式弾の発展型として開発した『新三式弾』は、三式弾より広範囲且つ確実に目標を仕留めるというコンセプトで開発されており、砲弾の先端には新鋭の近接信管を搭載しているので高確率で目標の付近で発動するようになっている。
三式弾との大きな違いは砲弾の中から出すのが焼夷弾から釘状の鋭利な物体になっており、言うなれば全方位に攻撃範囲を持つフレシェット弾のような構造をしている。
しかし三式弾は対地攻撃も可能だが、新三式弾は対空迎撃のみを主眼に設計されているので、対地攻撃で三式弾は今後とも使用されていく予定となっている。
38発から放たれた無数の釘状の物体は多くの竜騎士を撃墜したが、その中で運良く生き残った竜騎士が尚艦隊に接近していた。
「各空母に打電! 艦載機の発艦を急げと!」
「ハッ!」
すぐに指令は各空母に伝わり、すぐさま各軽空母から補助ロケットブースターを用いて烈風と近代化改装が施された天山が飛び立つ。
同時に伊勢型航空戦艦2隻から爆装した彗星と流星がカタパルトから飛び立つ。
烈風はすぐに生き残りの竜騎士と戦闘に入り、その間に魚雷や爆弾を抱えた天山や彗星、流星が敵艦隊の側面を突く。
装甲艦は側面のカノン砲やガトリング砲を放って砲弾を海面に着弾させて水柱を上げさせるも魚雷を抱えた天山は数機が水柱に巻き込まれて海面に叩きつけられる。
そのあいだに爆弾を抱えた天山と彗星、流星が装甲艦上空や急降下爆撃で爆弾を投下し、装甲艦の甲板を貫通して艦内で爆発し、数隻が轟沈する。
その直後に魚雷を抱えた天山が魚雷を投下して上昇し、装甲艦の上を通り過ぎたところで魚雷が装甲艦に直撃して水柱を高く上げて船体を真っ二つに折って撃沈する。
装甲艦らは烈風や天山を迎撃しながら岩壁を伝って逃走を図ろうとしている。
「敵艦隊! 撤退します!」
「あっけないですな」
「うむ」
艦長と副長は双眼鏡を覗いて損傷して逃走する敵艦隊を哀れに見る。
「だが、このまま逃すわけにはいかん。これより敵艦隊を追撃する!」
すぐに戦艦長門と軽巡酒匂、他重巡1隻、駆逐艦4隻が逃走する敵艦隊追撃に入り、残りは軽空母の護衛の為周囲に移動する。
「フソウの軍艦が食い付きました!」
装甲艦では乗員の一人が追撃する軍艦を指差しながら上官に報告する。
「うむ。それほど多く食い付いていないが、まぁいい」
まるで死んだ魚の目のような目をしている上官は空を見上げる。
(何ということを考えるのだ、上の連中は)
これから起こることを考えると、上の連中の考えていることが理解できない。
(申し訳ない、閣下。あなたの計画の参加できずここで果てるのを……)
遠く、帝都に居る閣下の姿を思い浮かべ、目を瞑る。
敵艦隊追撃の最中で長門と酒匂、加古の主砲が火を吹き、岩の陰に逃げ込もうとする装甲艦らの周囲に砲弾が着弾して水柱が上がる。
装甲艦らが岩の陰に隠れて、追撃艦隊も急ぐように岩の陰の向こうへ向かう。
そして岩の向こう側へと艦隊が入ると、岩の向こう側にピタリと接近して隠れていた装甲艦が大砲を放ち、長門の左舷艦首側に命中するも鈍く高い音とともに報弾は弾かれる。
その直後に長門の左舷副砲群が一斉に火を吹き、全ての装甲艦を沈める。
「敵艦隊の撃滅を確認!」
「うむ……」
しかし艦長の顔色はどこか優れない。
(なぜあんなところで待ち構えて……それに、まるで誘い込むような動き――――)
その瞬間艦長の背筋に悪寒が走り抜け、とっさに空を見上げる。
「っ! 魔力電探に感あり! 艦隊直上に転送反応!!」
魔力電探を見ていた電探員が声を上げると、艦隊の直上が歪むとそこから一隻の飛行船が突然出現する。
「っ!? 待ち伏せか!」
「くそっ! こいつらは囮か!」
長門の甲板では甲板要員達が慌てふためき、急いで銃座に着く。
すると飛行船は突然高度を下げつつ艦首を下ろしてこちらに向かってくる。
「っ!まさか、突っ込む気か!?」
「機関全速! 回避急げ!!」
昼戦艦橋では誰もが慌てふためき命令が飛び交う中、艦長は一人冷静に突っ込んでくる飛行船を見る。
「……もう、間に合わん」
今から回避行動をとっても、回避は間に合わない。
長門や酒匂、加古の他駆逐艦から対空機銃と高角砲が放たれて砲弾や弾丸が飛行船の船体を抉るも飛行船は構わず突っ込んでくる。
「貴様ら諸共、道連れだ!! バーラット帝国に栄光あれぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
飛行船に乗っていた船長は破片で腕を吹き飛ばされながらも最後に何かを叫ぶと、突然飛行船から光が放たれる。
そしてその光は瞬く間に長門を含む追撃艦隊を包み込んだ。
「っ!?」
軽空母を護衛していた艦隊は突然の光と衝撃波に襲われ、戦艦陸奥が衝撃波でその巨体を揺らす。
「な、何だ!?」
誰もが眩い光に腕で目を覆いながら衝撃波で尻餅を付いて居た者は立ち上がる。
「追撃艦隊が向かった場所からです!」
「っ!」
陸奥の艦長は腕で目を覆いながら長門が向かった方向を向くと、光が収まる。
「……」
『……』
そこで目にした光景に、誰もが呆然となる。
艦隊を隠すほどの高さはあったであろう巨大な岩壁は粉々に粉砕され、空高くに舞い上がったきのこ雲があった。
「これは、いったい……」
しばらくのあいだは誰もが状況を理解できず、その場に立ち尽くした。
だが、異変は海のみならず陸でも起きていた。
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帝国領の奥深くにある荒野。
周囲の破壊された建造物から煙が上がる中をティーガーと61式戦車、五式中戦車、四式中戦車の戦車大隊が砂煙を上げながら前進していた。
前日に市街地を自走砲による絨毯砲撃と爆撃機による爆撃を行った後に戦車部隊が歩兵を載せた装甲兵車を連れて破壊された市街地を越えてその先の要塞を目指していた。
その要塞も前日に5台の六十一糎列車砲による砲撃で多大な損害を被らせている。
「・・・・・・」
その中のティーガーに搭乗する西中佐はキューポラの覗き窓から周囲を警戒する。
(妙だな……)
西中佐はとある違和感を覚えていた。
(敵の姿を見ない。いつもならここで戦闘が起きているはずだが……)
これまでなら敵兵や戦車もどきが無謀な突撃をしてくる頃だが、それが今に至るまで全く無い。
「……」
これまでに無いことに西中佐の胸中に不吉な予感が渦を巻く。
――――ッ!!!!
すると突然戦車大隊と要塞のあいだにある森から大声とともに帝国軍兵士が飛び出てきた。
「っ敵襲!」
西中佐はすぐさま敵襲を叫ぶと、各戦車は車載機銃と同軸機銃を一斉に放つ。
曳航弾交じりの弾幕がこちらに向かってくる敵兵を薙ぎ払い、瞬く間に多くの屍を量産していく。
続けて砲身を下げて榴弾を放ち、地面に着弾させて爆風と破片を飛ばし、更に屍を量産していく。
西中佐はハッチを開けて上半身を出すと、三式重機関銃改のコッキングハンドルを引き、こちらに向かってくる敵兵群に向ける。
「っ!」
機関銃を撃つ前に、ある事に気付く。
それは突撃してくる敵兵の中に、武器も防具も何も持っていない老人や女子供が多く混じっていた。
「くっ!」
総司令部の命令でこちらに敵意を持っているのなら、民間人であろうとも敵勢力と断定して排除せよとのことだ。
酷な命令であるが、何かがあってからでは遅いのだ。
戸惑いはあったが何をして来るか分からないので中佐はU字トリガーを押し込んで爆音とともに銃弾を放つ。同時に他の戦車のキューポラマウントの三式重機関銃改、一式重機関銃改が一斉に火を吹く。
銃弾は敵兵や老人、女子供に命中すると同時に風船が破裂するかのようにして赤い液体とともに粉砕されていく。
戦車が屍を越えようとした瞬間、突然四式中戦車が爆発とともに車体が浮かび上がる。
「なっ!?」
爆風で西中佐は腕で顔を覆いながら浅く仰け反る。
その瞬間五式中戦車と61式戦車も突然の爆発で車体が吹き飛ばされるか履帯と転輪を吹き飛ばされる。
(地雷原!? いや、違う!)
一瞬地雷かと思ったが、場所が場所とあってすぐに違うと分かった。
(まさか、こちらは!?)
西中佐はすぐさま各戦車に無線で伝える。
「各車! 排除した敵兵の死体の上を通るな! こいつらは神風だ!」
そう言った瞬間61式戦車の車体の下へ敵兵が潜り込んだ瞬間61式戦車が爆発とともに車体が浮かび上がって撃破される。
更にティーガーの車体の下に敵兵が潜り込もうと地面に倒れるが、操縦手はとっさにティーガーの方向を変えて敵兵をそのまま履帯で踏み潰す。
「歩兵は前へ! 敵兵を決して近づけるな!」
すぐさま装甲兵車が戦車の前に出て搭載された三式重機関銃改が一斉に火を吹き、そのあいだに歩兵が降車して64式小銃と四式自動小銃を一斉に放って敵兵を次々と排除していく。
しかし、帝国軍兵士は一人でも道連れにしようとしてか死ぬ前に何かを叫ぶと突然身体から光が放たれると破裂して自爆するも距離があって扶桑側に被害は出なかった。
それを皮切りに撃たれた敵兵は次々と自爆をして辺り一面をスプラッターな光景に変えていく。
「バーラット帝国に栄光あれぇぇぇぇぇぇッ!!」
弾幕を潜り抜けた敵兵は大声とともに身体から光を放った瞬間に爆発し、爆風と衝撃波が血と肉片とともに扶桑軍兵士に襲い掛かる。
『……』
誰もが目の前の光景に驚愕しながらも、小銃や軽機関銃、重機関銃を放ち、特攻してくる敵兵を次々と仕留めていく。
戦局は想定外の流れに変わっていく……
そういえば『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のアニメが始まりましたね。最近好みのジャンルとあって今後が楽しみです。ある程度話が進んだらこんな感じのノリの番外編を書いてみようかなぁ、なんて思ったり