異世界戦記   作:日本武尊

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構想は出来ているのに執筆が思うように進まない……この状態は一体何だろう?


第四十九話 状況の一変

 

 

 

 一発目の特爆を要塞に投下してから二日後……

 

 

 

 

「富嶽2号機から報告です。先ほどヴァレル基地に到着して燃料補給を開始していると」

 

「そうか」

 

 特爆の2号機を載せた富嶽の到着の報告を聞き、俺は深くゆっくりと息を吐く。

 

「しかし、想像以上の威力だな」

 

「えぇ」

 

「……」

 

 帰還した富嶽一号機からの報告書から、特爆の想像以上の威力に驚かされた。

 

 要塞は特爆の爆発から放たれた膨大な熱量に跡形も無く消滅し、その周辺は爆風や衝撃波によって多大な損害を被らせているが、味方の被害は無い。

 

「これを帝都に落とすとなると……」

 

「……」

 

 結果は言わずもがな、だ。

 

「あれを見て戦意が喪失しないとは考えづらいのですが、何ら動きを見せないのもおかしいですね」

 

「うむ……」

 

 まさかまだ戦うつもりなのか。

 

「富嶽二号機の発進は何時頃になる」

 

「補給作業が順調ならば、1時間半後には発進できます」

 

「そうか」

 

 何を言おうとも、何があっても、次で全てが終わる。

 

 

 

 しばらくして富嶽の燃料補給が終わったとの報告が入った。

 

 それは俺は富嶽に発進命令を下そうとしたときだった。

 

 

「っ! 総司令! 緊急入電です!」

 

「どうした?」

 

「陸軍第二師団第三機甲大隊が帝国の使者と名乗る者と接触したとの報告が入りました!」

 

「なに?」

 

「使者、だと?」

 

「今になって……」

 

 思わぬ報告に俺と品川、辻は思わず声を漏らす。

 

「……使者は何と言っている?」

 

「ハッ。どうやら、帝国は扶桑に降伏する、そう言っているようです」

 

「……」

 

 本当なら待ちに待った返答なのだが、素直に喜べる状況ではなかった。

 

「どう思いますか?」

 

「タイミング的には考えられる。だが、時間を稼ぐための陽動、とも考えられる」

 

「特爆の威力を目の当たりにして抵抗する気力があるとは思えませんが」

 

「……」

 

 

「っ! 大隊から更に入電! 今度は帝国の代表と名乗る者が現れたと!」

 

「何?」

 

「代表だと」

 

「……」

 

 なんかきな臭い展開になってきたな。

 

「どうやら、転送魔法によって代表が来た模様です」

 

「……」

 

「罠、でしょうか」

 

「いよいよ分からんな。わざわざ使者を送っていながら今度は代表と」

 

「……」

 

「代表は大隊が保護していますが、いかがしますか?」

 

「……」

 

 俺は一考し、オペレーターに問い掛ける。

 

「大隊は現在どのあたりに居る」

 

「えっ? は、はい! 少々お待ちを!」

 

 オペレーターは慌てて大隊に現在地点を聞き出して報告する。

 

「現在大隊は一番近い基地でヴァレル基地から北東68km先の仮設前線基地に駐留しています。使者と代表もそこです」

 

「その仮設前線基地には飛行場はあるか?」

 

「は、はい。滑走路は良い状態に、とは言い切れませんが、あります」

 

「そうか。品川」

 

「ハッ」

 

「すぐに一式陸攻を1機回してくれ。すぐに飛び立つ」

 

「本気ですか?」

 

「怪しいという点では俺も同感だが、一応話を聞いてみよう。もし本当に降伏の為に差し向けてきたのなら、むしろこちらとしては都合が良い」

 

「ですが……」

 

「もし仮にもこれが陽動ならば、そのときは予定通りにやればいい話だ」

 

「……」

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その後俺と辻、品川を乗せた一式陸攻は紫電と疾風に護衛されながら飛行場を飛び立ち、途中で飛行場のある基地に立ち寄って燃料補給を行い、目的の仮設前線基地を目指す。

 

 

 約7時間ほどの飛行を経て目的の仮設前線基地に到着し、飛行場に降り立った一式陸攻から降りた俺たちは司令部に向かう。

 

「お待ちしておりました! 西条総司令!」

 

 司令部の前には岩瀬大佐と倉吉准尉を含む数人の兵士達が陸軍式敬礼をして出迎える。

 

「帝国からの使者と代表と接触したのは、大佐の部隊だったのか」

 

 ホントこの二人とは何かと縁があるな。

 

「はい。この基地に立ち寄る前に彼らと接触してこの基地に連れてきました」

 

「そうか。それで、帝国から来た者達は?」

 

「宿舎に居てもらっています」

 

 それを聞き品川は俺の方を見ると俺は軽く頷く。

 

「では、すぐに司令部の会議室に連れてきてくれ」

 

「了解しました!」

 

 岩瀬大佐はすぐさま宿舎へと向かう。

 

「……」

 

「総司令」

 

「何も言うな。何も、な」

 

「はい」

 

「……」

 

 俺は気を引き締めて、二人を連れて司令部の会議室へと向かう。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 一方基地の敷地内にある宿舎には、クーデターを起こして皇帝の座に着いたアトリウスと、その側近のセアがベッドに腰掛けて、重々しい雰囲気を醸し出している。セアが最初に使者として来ていたが、ジッとできなかったアトリウスが急遽代表として転送魔法でセアのもとに飛んできた。

 

「彼らは、信じてくれたのでしょうか」

 

「難しいだろうな。いきなり敵である我々が現れて、使者や代表だと言って降伏するためにやってきたと言っても、すぐに信じるわけが無い」

 

「……」

 

「罠と見られている、と思ったほうがいいかもしれん」

 

「……」

 

「下手をすれば、始末されるかもしれんな」

 

「……」

 

 それを聞きセアは両手を握り締める。

 

 

 すると扉が開き、岩瀬大佐が入ってくると二人は顔を上げる。

 

「先ほど総司令が到着された。どうやらあなた達の話を聞くようだ」

 

「ほ、本当なのか?」

 

「えぇ。あまり時間を掛けていられないので、すぐに」

 

「あ、あぁ。分かった」

 

 岩瀬大佐がその場を離れるとすぐにその後を追うように二人は立ち上がって部屋を出る。

 

 

 

「西条総司令。帝国からの使者と代表をお連れしました」

 

「そうか。入ってくれ」

 

 岩瀬大佐から報告を聞き、俺はその二人を部屋に入れさせる。

 

「……」

 

 俺は立ち上がり、二人を見る。

 

「あなたが、フソウの?」

 

「えぇ。自分が扶桑の長たる総理で、軍の総司令である、西条弘樹だ」

「そして後ろの二人は側近で陸軍と海軍の大将、辻晃と品川愛美だ」

 

 後ろの二人は静かに頭を下げる。

 

「サイジョウヒロキ……」

 

 アトリウスは彼を上から下を見る。

 

(自分も言えたことではないが、若いな)

 

 しかし自分より年下とあって、戸惑いが生まれる。

 

(しかし、ただ者ではないのは確かか。あのフソウを率いているのだからな)

 

 そう思っただけでも身震いが止まらなくなる。

 

 

「御会い出来て光栄だ、サイジョウ総理」

 

 アトリウスはその場に膝を着いて頭を下げ、立ち上がる。

 

「あなたが代表の?」

 

「あぁ。バーラット帝国新皇帝、アトリウス・グランスだ。こちらは側近のセアだ」

 

 セアは左胸に右手を当てて頭を深々と下げる。

 

「新皇帝?」

 

 最近になって世代交代でもあったのかねぇ?

 

「……それには、深い事情があってな」

 

 アトリウスはこれまでの事を話した。

 

 

 

「反乱、ですか」

「まぁ、そのような皇帝に任せれば帝国は滅びていたでしょう」

 

「しかし救いようの無い無能者ですね」

 

 アトリウスより聞かされた前皇帝と言えばホントひでぇな。精神障害でも起こしているんじゃないかって疑うぐらい。

 

「反乱を起こして手に入れた地位であってこうした交渉に臨んでいるのは承知している。その点は、分かってほしい」

 

 やはり反乱で手にした地位とあって、負い目はあるのだろうな。まぁ、状況的に仕方無いと言えば仕方無いのだがな

 

「分かりました。ですが、こうして決断してくださったのだ。たとえどういった経緯があろうとも、十分です」

 

「そう言ってもらえれば、助かる」

 

 申し訳ないように頭を深々と下げる。

 

「講和交渉の前に、まずやってほしいことがあります」

 

「何をすればいい?」

 

「まず、今も戦闘を続けている軍に停戦命令を言い渡してください。もし命令に背いて戦闘行為を続けたときは、我々が相応の対処をします」

 

「分かった。そちらの手を煩わせないようにしよう」

 

 アトリウスはセアに視線を向けると、彼女は頭を下げて後ろに数歩下がり、何かの術式を唱えると忽然と姿を消す。

 

「今のが転送魔法ですか」

 

「あぁ。彼女ならあの程度容易いものだ」

 

「なるほど」

 

 

 

 それからしばらくしてセアが会議室に現れて、アトリウスに耳打ちする。

 

「全軍に停戦命令を下しました。しかしその全てが命令を受け入れたとは言い難く、最悪は―――」

 

「分かっています。向こうがその気なら、こちらは全力を以って当たらせてもらうだけです」

 

「……申し訳ない」

 

 アトリウスは深々と頭を下げる。

 

 

 

「……では、始めましょう」

 

 こうして扶桑国とバーラット帝国による講和交渉が始まった。

 

 

 

 

 


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