異世界戦記   作:日本武尊

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第六十五話 新鋭艦の情報

 

 

 

 

 派遣される戦力を乗せた第一陣の輸送船団と共に出港した聨合艦隊は途中柱島に待機していたリベリアンの艦隊と合流し、共にリベリアン合衆国本土を目指す。

 

 その道中でリベリアン海軍の拠点のある諸島へと立ち寄り、補給を行った後再び本土へ向けて出発する。

 

 

 

 そして聨合艦隊が扶桑国を発ってから五日近くが経過……

 

 

 

 長い航海を経て艦隊はリベリアン合衆国本土付近の海域に到着する。 

 

 

「あれが、リベリアン…」

 

 原子力空母赤城の艦橋から双眼鏡で覗く品川はその視線の先にある景色を見て言葉を漏らす。

 

 ここからでも薄っすらと見えるぐらいに多くの建造物が立ち並び、その中には一際目立つ高さのあるビルも含まれる。

 

(相変わらずな光景だ)

 

 さすが工業力ダントツのリベリアン。扶桑とは発展具合が違う。 

 

(しかもこれでも俺達より後に来ているって話だからな。それなのにここまで発展しているとはな)

 

 ホント羨ましいぐらいだ。

 

 

「艦長! リベリアン艦隊旗艦モンタナより入電! 駆逐艦の誘導に従い港に入港されたし、です!」

 

「うむ」

 

 後ろでは通信兵からの報告を聞き艦長が航海長に指示を出す。

 

 

 リベリアン側の駆逐艦の誘導に従って軍港へと扶桑海軍の艦隊が入港し、輸送船団は順番に埠頭へと着いては兵員と物資を降ろし、軍艦は港から離れた所で停泊して投錨する。

 

 

 

「どうだ? 俺が用意したここは」

 

 しばらくして俺は赤城から降りて派遣軍の司令部となる建物にある一室に入って荷物の整理としていると、トーマスがやってきた。

 

「俺達のために用意したのか? これだけの規模の港と施設を?」

 

 窓から見える港の規模と停泊している艦隊を見ながら呟く。

 

「元々は軍港拡張を目的に作っていたんだが、扶桑に使ってもらうために色々と作り変えたのさ」

 

「そう軽く言えるのもリベリアンの国力だからこそだよな」

 

「そういうこった」

 

「で、わざわざどうした?」

 

「この後扶桑とリベリアンの陸海軍で今後のことを話し合いたいんだ。対連合軍戦として、各戦線に送る戦力の分配とかな」

 

「分かった」

 

「あぁそれと、早くて明後日にはゲルマニア公国へ行くぞ。その頃にはスミオネからあいつもゲルマニアに来れている頃だろうし」

 

「早いな」

 

「今は時間が惜しいからな。出来れば今すぐにでも扶桑の戦力を使いたいところだが、とても行ける状態じゃないからな」

 

 窓の外へと視線を向け、輸送船からクレーンで次々と下ろされていく兵器群を見ながら呟く。

 

「ここから編成するのに大分時間を有するからな。戦力の逐次投入だけは避けたい」

 

「だな」

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 その後扶桑国の陸海空軍とリベリアン合衆国陸海軍の司令官達による今後の話し合いが行われた。

 

 内容は陸海軍における作戦行動を主に、扶桑陸海空軍の各地への戦力配備数などが話し合われた。

 戦力が全て揃い次第各戦線へと送られる予定だ。

 

 話し合いが終わった後、俺とトーマスによる正式な同盟締結を行った。ゲーム内では同盟締結をしているが、この世界ではまだなので改めてしている。

 

 とまぁ、簡潔にだがリベリアンとの話し合いはとりあえず纏まったのであった。

 

 

 

 

「しかし、この光景を見るととても異世界とは思えんな」

 

「あぁ」

 

 話し合いを終えた後俺とトーマスはリベリアン海軍と陸軍の基地をジープで見て回っていた。

 

 今は陸軍の基地を回っており、格納庫には多くのM26パーシングやM4A3E8といった戦車やM18にM36といった駆逐戦車が整備を受けている。

 

「次の作戦に向けて戦力を増やして近日中には全てが整う。戦車は新鋭のM48を実戦投入する。それと試験的にだが、T30やM103を何輌か送る予定だ」

 

「試作戦車にファイティングモンスターか。だが、なんでわざわざ重戦車を送るんだ? M48があるなら必要ないんじゃ」

 

 弘樹は手にしているハンバーガーを食べてから問い掛ける。

 

「向こうの重戦車は下手するとM26……まぁ中身はM46パットンに準じているがとにかく、パーシングの砲が通じないってぐらい頑丈なんだぞ。何とか弱点を狙い撃って撃破しているって聞いているが、それでも撃破数は少ない」

 

「頑丈ねぇ。この前の上陸戦のときはIS-2が確認されているが、あれってそんなに頑丈だっけ?」

 

「いや、俺が言っているのはIS-3だ」

 

「IS-3か」

 

「しかもこいつは未確認情報なんだが、これまでのロヴィエア連邦の重戦車とは異なる姿をした新型重戦車の姿も報告に上がっている。こいつは防御のみならず主砲の威力もまるで違うみたいだ」

 

「新型と来たか。短期間での技術力の向上はやはりゲームと同じか」

 

「厄介なものだ」

 

「あぁ」

 

 このままいくと軽く冷戦期の兵器技術を超えるな。まぁその頃になると扶桑国の技術レベルは現代レベルまでに至っているだろう。

 

(帰ったら新型の配備を急がせるか)

 

 恐らく主力戦車同士による戦闘もそう遠くはないだろう。

 

 そう考えながら空を眺める。

 

 

 

 リベリアン陸軍より扶桑軍へと付与された飛行場に着くと、その一角で扶桑空軍の航空機と扶桑陸軍の回転翼機が次々と運び込まれていた。

 今後扶桑空軍の爆撃機や戦闘機がここにやってくる予定だ。

 

「なぁ、弘樹」

 

「どうした?」

 

「一つ聞いていいか?」

 

 トーマスは前を見つつ滑走路に並べられている扶桑空軍の航空機を見ながら弘樹に問い掛ける。

 

「あの機体、どうみてもあれだよな?」

 

 視線の先には先のロヴィエア連邦軍による上陸作戦時、その終盤で活躍した襲撃機がいた。

 

「10式襲撃機 雷電か? まぁ、あれを参考にしているから、大分似ているな」

 

「大分どころか色以外まんまじゃねぇか」

 

 そう。この10式襲撃機 雷電はあの『A-10 サンダーボルトⅡ』をモデルにして開発している。

 

 機首に7本の銃身を持つ30ミリ回転式機関砲を一基搭載し、両翼に6基ずつ計12基のハードポイントを持っており、爆弾やロケット、武装などを搭載できたりと拡張性は高い。機体構造も頑丈さを求めて一部を除きあえてローテクの技術で開発されているので、精密機械を持つ新鋭航空機と違って荒っぽい扱いをしても問題ないし、生半可な損傷では墜落しない。そして何よりローテクの技術を詰め込んでいるとあってコストも他の航空機と比べると若干安い。

 機体形状はモデルとしているとあって結構似通っているが、性能はオリジナルより恐らく高い、はず。

 

「まぁ外見はな。でも、中身はほぼ別物だ。オリジナルより頑丈だし、翼下のハードポイントも爆弾やロケットの他にも、小鷹の積んでいる20mm回転式機関砲やその他兵装を搭載できるようにして、拡張性を向上させている。

 あと、時代に逆行してローテクの技術を詰め込んでいる。今のやつと比べれば生産性は高い」

 

「……どんだけだよ」

 

 トーマスはため息を吐くと近くに置かれている回転翼機に視線を向ける。

 

「しっかし攻撃ヘリねぇ。しかもあれコブラとアパッチそのものだな」

 

「形状はな。だが、性能は恐らくオリジナルより高い、はず」

 

 さっきの10式襲撃機 雷電もそうだが、はずなのは比べたことがないからだ。まぁ、今はまだ出来ないだろうが、いずれできるようになる。

 

「いいなぁ。なぁ、コブラ、じゃなくてそっちだと小鷹だったか? 一機だけサンプルにくれないか? そこからは俺達で調べて作るからさ」

 

「俺は考えてもいいが、陸軍の連中は首を縦に振らないだろうな」

 

「だよな」

 

 トーマスはガクッと肩を落とす。まぁ一国の軍事機密を流す馬鹿はいないだろう。まぁ、いないとは限らないか。

 

「それに、お前のところならすぐにでも作れるだろ」

 

「それはそうだけどさぁ、今は対戦車ヘリほど有効な兵器はないからな」

 

 頭の後ろを掻いて苦笑いを浮かべる。

 

 

 

 陸軍の基地から移動してリベリアン海軍の港に入る。

 

「やはり大きいな」

 

 埠頭から弘樹は停泊しているモンタナ級戦艦2隻とアイオワ級6隻を眺める。

 

「今のところ我が海軍最大の軍艦だからな。二番艦オハイオが就役、近日中には三番艦メインと四番艦のルイジアナが竣工する」

 

「モンタナ級は4隻のみか?」

 

「あぁ。本当なら6隻は建造を予定していたんだが、2隻キャンセルして4隻までにした」

 

「アイオワ級は6隻も建造しておいてか? 戦艦としてはバランスの悪いのに?」

 

「バランスの悪さはさて置き、足の速い戦艦は機動部隊防衛のために随伴できるから、貴重だ。まぁ、モンタナ級は足の遅さもあるが、別の理由がある」

 

「と、言うと?」

 

「実を言うとな、既にモンタナの次の戦艦を現在設計中だ」

 

「新型を?」

 

「あぁ。ロヴィエア連邦のソビエツキー・ソユーズ級に、ブリタニア帝国の新鋭戦艦に対抗するためだ」

 

「モンタナでも十分じゃないのか?」

 

「そう思っていたんだが、そうはいかなくなった」

 

「?」

 

「OSSからの情報だ。ブリタニアとロヴィエアで大型新鋭艦の建造計画が上がっている」

 

「建造計画?」

 

「あぁ。艦種までは特定できなかったが、大型艦であることは間違いないみたいだ」

 

「大型艦か」

 

 弘樹は腕を組みながら呟く。

 

「空母の可能性もあるが、戦艦でないという可能性も無いとは言えない」

 

「航空戦に主流になりつつある中で戦艦を新しく建造するとは思えんが?」

 

「まぁ普通はな。だが、警戒するに越したことはない」

 

「だからと言って新鋭戦艦を作る意味は」

 

「まぁこいつはソビエツキー・ソユーズ級、もしくはそれ以上の戦艦に対してだ」

 

「ソユーズ級か。そういやあの戦闘で1隻だけ降伏してその後拿捕したな。その調査結果を見てか?」

 

 あの戦闘の最中ソユーズ級が殆ど沈められる中1隻だけ降伏し、その後拿捕した。

 拿捕した艦はテロル諸島にあるドックに入れられ徹底的に調査された。時間の関係で弘樹とトーマスはその調査結果を見たのは一部のみだ。

 

「モンタナ級でも十分戦えるが、18インチ砲にも耐える装甲は想定外だ。向こうの砲の性能はまだ分からんとしても大体こちらとほぼ同じと考えれば、同じ距離で撃ち合えば向こうに利がある」

 

「だろうな」

 

「だから18インチクラスの方を持つ戦艦が欲しいんだ。まぁ、モンタナ級を18インチ砲を持つ戦艦として設計を変更すればよかったんだろうが、さすがにそれは無理があるからな」

 

「コロラド級みたいな失敗はしたくはないからか?」

 

「あぁ」

 

 

 二人はしばらく戦艦や空母について語り合った。

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「なぁ弘樹。この後時間は空いているか?」

 

「ん?」

 

 ジープを駐車場に置いて降りたときにトーマスが弘樹に問い掛けた。

 

「急にどうした?」

 

「いや、こうして久しぶりに会えたんだ。あのときは忙しくて暇が無かったからな。飲みながらゆっくりと話をしようじゃないか」

 

「ふむ」

 

「どうだ?」

 

「まぁ、特に何かあるわけじゃないから、大丈夫だ」

 

「そうか。それを聞けて安心したよ。で、何時からなら大丈夫だ?」

 

「残った作業を終わらせないといけないからな。品川には悪いが残ったやつを任せても、そうだな」

 

 弘樹は顎に手を当てて考える。

 

「2100あたりなら大丈夫だ」

 

「分かった。その時間に着くように迎えを向かわせるよ」

 

「おうよ」

 

 二人は約束をつけて一旦別れた。

 

 


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