異世界戦記   作:日本武尊

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第七十五話 扶桑軍の戦闘

 

 

 

 

 

 事前の砲撃や爆撃で廃墟と化した市街地。

 

 

「……」

 

 そこでゲルマニア公国陸軍の歩兵一個小隊が廃墟と化した市街地を周囲警戒しつつ進んでいた。

 

 その上空ではヘリコプター数機が飛行して市街地を監視している。

 

 それは扶桑陸軍の汎用ヘリコプター隼と対地攻撃ヘリ小鷹、新鋭多用途偵察ヘリコプター『燕』と呼ばれる物だ。

 

 燕は史実で例えるなら陸上自衛隊で運用されている『OH-1』に酷似している。

 

 ヘリコプターとは思えない驚異的な機動力に加え、索敵能力に優れており、偵察ヘリとして地上部隊に敵情報を送る重要な役目を担っている。

 武装は機首に12.7mmの回転砲身式機関銃こと『90式12.7mmバルカン砲』を持ち、機体両側のハードポイントに89式空対空誘導弾を搭載している。

 

 隼には扶桑陸軍の兵士が乗り込み、三式重機関銃改二や85式汎用機関銃を構えて敵の出現に警戒している。

 

 上空援護を受けながらゲルマニア軍の兵士達は廃墟の中を進む。

 

 

『こちらシュヴァルベ1。前方の建物の陰に敵兵が潜んでいる、送れ』

 

 と、ゲルマニア軍の兵士が背負っている無線機より上空の燕からの無線連絡が入る。

 

「隊長。前方の建物に敵兵が潜んでいると」

 

「小隊停止。隠れろ」

 

 小隊長はすぐさま部下に物陰に隠れるように指示を出し、自身も無線機を背負う兵士と共に建物の陰に隠れて無線機の受話器を取る。

 

「こちら第5小隊。報告感謝する。敵兵の対処可能か? オーバー」

 

『ファルケ2に対処させる。終わり』

 

 するとコールサインファルケ2の小鷹が敵兵が潜んでいる建物に接近して機首を建物に向けると、機体両側に伸びているスタブウイングに提げているロケット弾ポッドよりロケット弾を発射し、建物に命中して爆発を起こし、直後に機首の20mmガトリング砲を轟音と共に放つ。

 

「前進!」

 

 小隊長の号令と共に小隊は前に進む。

 

 それぞれstg44やMP40を構えながら周囲警戒する。

 

 

 すると別の建物内に潜んでいたロヴィエア連邦軍の兵士が出てきてppsh-41を放ってくる。それを皮切りに他の建物に隠れていた兵士がモシンナガンやppsh-41、ppsを持って一斉に現れ、銃を向けて撃ち始める。

 

 突然の銃撃に小隊の数人が撃たれて倒れる。

 

「敵襲!!」

 

 兵士の一人が叫びながら建物の陰に隠れて手にしているMP40を放つと、他の兵士もMP40やstg44を放つ。

 

 ロヴィエア連邦軍の兵士は建物内に隠れて銃撃を防ぐ。

 

 すると遠く離れた建物の陰から歩兵の増援が次々と現れる。

 

「くそっ! あんなに居やがったのか!」

 

 兵士の一人が悪態をつきながら瓦礫の上にMG42のバイポッドを立てて射撃を開始する。

 

 上空にいる隼も急いで急行しようとするも、建物に隠れていた兵士の銃撃を受けてとっさに回避行動を取る。すぐさま三式重機関銃改二や85式汎用機関銃の射撃を開始して応戦する。

 

 小鷹は地上に居る兵士に向けてロケット弾と20mmガトリング砲を放ち、敵兵を一掃する。

 

 stg44をフルオートで射撃していた小隊長は物陰に隠れると空になったマガジンを外してマガジンポーチからマガジンを取り出して挿入口に差し込み、コッキングハンドルを引く。

 

「っ! 隊長!! 戦車です!!」

 

「っ!?」

 

 小隊長は物陰から前方を見ると、建物の陰からロヴィエア連邦軍のT-44が砲塔を旋回させながら出てきた。

 

「戦車だ!!」

 

 T-44が主砲をこちらに向けるのを見た瞬間、小隊長は部下に退避を命じる。

 

 そしてT-44は主砲から轟音と共に榴弾を放ち、放たれた榴弾は建物に命中して爆発し、その破片が近くに居たゲルマニア軍の兵士達を殺傷する。

 

「くそっ!」

 

 兵士の一人が背中に背負っているパンツァファウストを手にする。

 

 

 すると後方から猛スピードで何かが飛んできたT-44に命中し、その瞬間爆発を起こして砲塔が吹き飛ぶ。

 

「っ!」

 

 誰もが後方を見ると、そこには戦車の様な形状をした装甲車が二輌砲塔を向けていた。

 

「扶桑の装甲車か!」

 

 小隊長が声を上げると、装甲車二輌は前進しながら砲塔に搭載している機関砲と同軸機関銃を放つ。 

 

 扶桑陸軍で運用されている『85式歩兵戦闘車』はゲルマニア軍の兵士の脇を通り過ぎると砲塔の30mm機関砲と同軸の85式汎用機関銃をロヴィエア連邦軍の兵士に向けて放つ。

 

 すると更にもう一輌のT-44が出てくるも、二輌目の85式歩兵戦闘車が砲塔脇に搭載しているコンテナから74式対戦車誘導弾を発射し、ロケットモーターで加速した誘導弾はT-44の砲塔に直撃して貫徹し、砲塔内部で爆発して乗員を殺傷した後弾薬に誘爆して砲塔が吹き飛ぶ。

 

 そして二輌が停車すると、車体後部のハッチが開いて扶桑陸軍の兵士が次々と降りて周囲警戒に入る。

 

「申し訳ありません。準備に手間取って遅くなりました」

 

 85式歩兵戦闘車から降りた扶桑国軍の小隊長が敬礼をしつつゲルマニア公国軍の小隊長に謝罪する。

 

「いえ、むしろちょうど良いタイミングでした。ありがとうございます」

 

「この後更に二個小隊が合流します。ここは一旦我々が請け負います。あなた方は一旦後退して戦力を立て直してください」 

 

「そうですか。では、お言葉に甘えて」

 

 ゲルマニア公国軍の小隊長は敬礼した後、部下を連れて元来た道へと戻っていく。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わって別の廃墟。

 

 

 

「……」

 

『……』

 

 瓦礫や建物の陰に隠れているリベリアン軍の兵士はM1ガーランドやM1カービン、トンプソンM1A1、M1918自動小銃、M1919重機関銃を構えて待ち伏せていた。

 

 地響きがする中、ロヴィエア連邦軍の歩兵を乗せて共に前進するIS-3とT-44が廃墟の中を縦列を組んで進んでいた。

 

「……」

 

 近くで建物の上に潜んでいる扶桑陸軍の兵士は89式小銃や72式軽機関銃、85式汎用機関銃を構えており、手にしている洗濯ばさみの様な形の装置をいつでも押せる様に戦車の列を見張る。

 

 

 そして戦車の車列の後ろを歩いてる歩兵達がある場所に差し掛かった瞬間、装置を力いっぱい押し込む。

 

 すると歩兵の近くの瓦礫が大爆発を起こし、飛び散った破片がタンクデサントしている歩兵を含めて殺傷する。

 

 それと同時にリベリアン軍と扶桑軍の兵士は一斉に射撃する。

 

 突然の襲撃にロヴィエア連邦軍は混乱して浮き足立つが、すぐに態勢を整えて反撃する。

 

「後方安全確認良し!」

 

「発射!」

 

 建物の上に陣取る扶桑軍の兵士が担ぐ76式対戦車噴進砲の引金を引き、後方から勢いよくガスを噴射して弾頭が飛び出し、IS-3の砲塔天板に直撃して貫通し、内部で爆発して黒煙が隙間から漏れ出す。

 

 遠くの建物の上ではリベリアンの兵士がM1903A4狙撃銃のスコープを覗いて敵兵の頭に狙いを定めて引金を引き、銃声と共に放たれた銃弾が敵兵の頭を撃ち抜く。

 別の建物では扶桑軍の狙撃兵が九九式狙撃銃改二を構え、引金を引いて銃声と共に放たれた銃弾が敵兵の頭を撃ち抜く。

 

「カルロス! ミラー! 下がるんだ!」

 

 リベリアン軍の小隊長は指示を出すとM1ガーランドを敵兵に向けて連射する。

 

 指示を受けた兵士二人はすぐに射撃していたM1919を抱えてその場を離れる。

 

 直後に後ろで立ち往生していたT-44が扶桑軍の76式対戦車噴進砲から放たれた弾頭の直撃を受けて内部で爆発し、砲塔が吹き飛ぶ。

 

「隊長! 3時の方向から戦車が3輌迂回して接近していると!」

 

 兵士の一人が建物の上に陣取っている狙撃兵からの報告を隊長に大声で伝える。

 

「くそ。扶桑にも伝えろ!」

 

「大丈夫です! 扶桑軍が対応に当たると!」

 

「そうか!」

 

 兵士の報告を聞き、小隊長は実包8発を纏めたクリップをM1ガーランドに押し込んでボルトを前進させる。

 

 

 

 立ち往生したT-44三輌の戦車隊は後退して別方向から敵兵を迎撃しようと接近しようとしていた。

 

 しかしそこで待ち構えていた扶桑陸軍の兵士が建物の天井や瓦礫の陰から76式対戦車噴進砲を放ち、三輌のT-44は瞬く間に全滅した。

 

 

「急げ急げ!!」

 

 ロヴィエア連邦軍側の歩兵は建物の中を走り、前へと進んでいた。

 

 建物と建物の中を進んでいき、敵の背後を突こうとしていた。

 

 

 しかし次の建物に小隊が入った直後、彼らの足元に何かが落ちる。

 

「手榴弾!!」

 

 歩兵の一人が叫ぶと全員が物陰に隠れようと下がる。

 

 しかし直後にそれから放たれたのは爆発ではなく、眩い光と轟音であった。

 

 眩い光と轟音によって目と耳を奪われた兵士は床に転げて悶え苦しむ。

 

 その間に突入した扶桑軍の兵士が89式小銃を倒れているロヴィエア連邦軍の兵士に向けて次々と射撃を行い、射殺していく。

 

「レフトクリア!」

 

「ライトクリア!」

 

 扶桑軍の兵士達はその場を確保して、前進する。

 

「っ! 前方敵兵!」

 

 扶桑軍の兵士の一人である倉吉大尉は89式小銃の被筒下部に取り付けている85式携帯擲弾筒を向けて引金を引き、40mmの榴弾が放たれて姿を現した敵兵の前の床に着弾して爆発を起こし、破片が敵兵を殺傷する。

 

 倉吉大尉はすぐに銃身のロックを外して後ろを右にずらして空薬莢を排出し、次弾を装填して元の位置に戻す。

 

 その後小隊と共に前進して周囲を確保する。

 

 

 

 その後扶桑陸軍の要請で小鷹と大鷲が廃墟街へと向かい、ロヴィエア連合国軍に打撃を与えた。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わって平原。

 

 

 ブリタニア帝国陸軍のセンチュリオンと新型の重戦車で構成された大隊はゆっくりと平原を前進していた。

 

 

 

『敵戦車発見』

 

 偵察小隊からの報告が伝えられ、第十一戦車連隊の指揮官『池田末男』大佐は自身の搭乗する90式戦車の車内で組んでいた腕を解く。

 

「全車砲撃用意」

 

 ヘッドセットのインカムを手にして池田大佐は全戦車に指示を告げると、茂みに隠れている自身の搭乗する90式戦車と同じ連隊の戦車のエンジンが始動する。

 

「弾種徹甲。目標、先頭の戦車」

 

 淡々と指示を飛ばし、自動装填装置がAPFSDSを弾薬庫から戦車砲の薬室へと送り込み、120mm滑空砲の砲口がセンチュリオンに向けられる。

 他の90式戦車もそれぞれAPFSDSを装填し、それぞれの目標に狙いを定める。

 

「……撃て!!」

 

「発射!」

 

 池田大佐の号令と共に砲手は復唱すると同時に発射スイッチを押すと、轟音と共に120mm滑空砲が吠える。

 

 放たれた弾頭はサボットを脱ぎ捨ててダーツ状の弾体が飛び出し、勢いよくセンチュリオンの車体正面に直撃し、貫徹後弾体の破片が車内の乗員を殺傷し、先頭のセンチュリオンは停車後、砲弾が爆発して砲塔が吹き飛ぶ。

 

 直後に他の90式戦車も砲撃を行い、次々とセンチュリオンの車体や砲塔に直撃し、中には大爆発を起こす車輌も現れる。

 

「命中! 続けて撃て!」

 

 池田大佐は続けて指示を出し、90式戦車の主砲から次々と砲弾が放たれる。

 

 90式戦車から砲撃が行われる度にセンチュリオンは次々と撃破されて、ブリタニア軍は混乱する。

 

「前進! 行進間射撃にて各個撃破! 戦車、前へ進め!!」

 

 池田大佐の指示と共に90式戦車のディーゼルエンジンが唸りを上げ、50t以上ある車体が前進して茂みから姿を現す。

 

 

 

 

『6号車がやられたぞ!』

 

『くそっ! どっから撃って来ているんだ!?』

 

『早く火を消すんだ!!』

 

 無線は混乱した内容が混雑していた。

 

「各車落ち着け! 敵の発砲炎を見つけて反撃するんだ!」

 

 新型のコンカラー重戦車に乗る指揮官は各車に指示を送る。

 

『前方! 敵戦車が!』

 

 すると味方の戦車からの報告が入り、指揮官はペリスコープから前方を見ると、茂みから次々と敵戦車が現れる。

 

『お、大きい!? コンカラー並みはあるぞ!?』

 

『あんな戦車見たこと無いぞ!?』

 

『あの図体であの速さかよ!? 』

 

 現れたのは見たことの無い大きな戦車であり、その上コンカラー並みはある巨体でありながら平原を猛スピードで駆け抜けている。

 

 センチュリオンとコンカラーはすぐさま90式戦車に向けて砲撃を行うも、向こうは重戦車な見た目によらずの速さもあって砲塔旋回が追いつかず、照準が付けられなかった。

 

 大して90式戦車は早く駆け抜けながら素早く砲塔を旋回させて主砲の照準をセンチュリオンとコンカラーに定め、次々と砲撃を行う。

 

 放たれたAPFSDSの弾体はセンチュリオンとコンカラーの車体や砲塔を貫き、次々と撃破していく。

 

 するとコンカラーの一輌が90式戦車の一輌に狙いを定めて砲撃を行い、放たれた徹甲弾が90式戦車の砲塔正面に着弾するも、轟音と共に弾かれて90式戦車の車体を揺らした。

 

「なにっ!?」

 

 砲弾が弾かれたことに車長は目を見開いて驚くが、直後に90式戦車が砲撃を行い、APFSDSの弾体がコンカラーの車体正面に突き刺さってそのまま貫通して車内を突き進み、エンジンに突き刺さる。その際に乗員の大半が破片を受けて死傷し、直後にエンジンが爆発して弾薬庫に誘爆して砲塔が吹き飛ぶ。

 

 

 新鋭の90式戦車はその性能を余す事無く発揮し、ブリタニア陸軍の戦車部隊を壊滅させた。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 それから数日後のブリタニア帝国。

 

 

 

「扶桑軍の反撃。ここまで手痛いとはな」

 

 執務室で報告書を見ていたジャックは苦虫を噛んだように顔を顰める。

 

(陸でこれだけの損害だ。海ではどうなるだよ)

 

 内心呟きながら報告書を執務机に置き、椅子の背もたれにもたれかかる。

 

 ただでさえ扶桑国は海軍国家だ。故にその戦力は陸とは比べ物にならない。その上技術レベルがこちらより上なのだ。戦えば火の目を見るより明らかなことだ。

 

(こうなったら、しばらく戦力回復の為に一度戦力を退かせるしかない、か)

 

 さすがに容認できる損害ではなくなってきたので、前線の部隊を退かざるを得なかった。

 

(しかし、向こうの海軍の動きが無いのは怪しいよな)

 

 彼は読んでいた報告書から、同盟軍の海軍の動きが少ないのに疑問を抱く。

 

(あるとすればUボートによる被害が少し多くなった事ぐらいか)

 

 最近ゲルマニアによるUボートによる被害が多くなっていた。輸送船団はそうだが、その次に多いのは一定の海域を哨戒している軍艦の被害が多い。

 

(あの女のことだ。無策にやっているとは思えない)

 

 彼は腕を組んで静かに唸る。

 

(これは、もう少し様子見だな)

 

 そう内心呟きながら、紅茶の入ったカップを手にして一口飲む。

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 所変わり、ロヴィエア連邦。

 

 

「……」

 

 執務室でジャック同様アリシアも前線から送られた戦闘結果の報告書を見ていた。

 

(まさか、ここまで差ができるとは)

 

 彼女は内心呟くが、その表情は苛立つ所か、逆に嬉しそうだった。

 

(いいぞ。その調子だ。それだけの技術レベルがあるのなら、アレ(・・)を作っていてもおかしくないな)

 

 口角を上げて彼女は報告書を机に置く。

 

(だが、可能性の段階で決めるのは愚か者のすることだ。使っているところを確認しなければまだ次の計画に移せない)

 

 彼女は舌打ちをすると、右肘を机に置いて頬杖を付く。

 

(あの男の事だ。そう簡単に使いはしないだろう。だが、使ってもらわなければ、こっちが困る)

 

 彼女は静かに唸る。

 

(やつが怒りに任せて使ってくれれば、楽なのだがな)

 

 そう呟くと、ふとある事を思い出す。

 

(……そういえば、あのクズが逃げた場所は確か)

 

 彼女は少し前に国を滅ぼし、その国から逃げた者の事を思い出す。

 

(なるほど、これは使える。クズでも、使いようはあるみたいだな)

 

 ニヤリと悪い笑みを浮かべる彼女は、ある事を思いつく。

 

(うまくいけば、事が進むな)

 

 そしてアリシアはすぐに行動に移し、執務机に備え付けられている電話の受話器を取り、どこかに繋げる。

 

 

 

 


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