其れは神と紡ぐ物語   作:FF8リメイク待ってます

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ここにいる理由<シークレットトーク>

 

 

 まず、どうして私たちがグラン=パルスからコクーンへと来たのかを説明する必要があるだろう。

 

 カイアスとの戦闘訓練も兼ねた旅は二年という短くも充実した時で終わりを告げた。彼との旅では多くの発見があった。訓練を除いても、グラン=パルスの様々な植生やモンスターの種類。人の営みから世界の現状。そしてシ骸となったルシとの戦い。

 

 三人での旅は毎日が満たされていたし、カイアスも時が経つにつれて初めて会った時とは比べものにならないぐらい態度が和らいだ。訓練は容赦がなかったが、それは彼が真剣にこちらを思ってのことだ。

 

 だがある日、彼は私たち二人が基準値以上の力をつけたとみなし、別れを告げてきた。私、スフィアを真に二代目の守護者として認めると。

 

 その突然の別れに戸惑う私たちに構わず、彼はいなくなってしまった。最後に、驚きの事実を残して。

 

「スフィア、お前はおそらくコクーンのファルシだ。お前の消えた記憶に繋がるルーツは、コクーンにあるだろう」

 

 コクーンのファルシ。私の記憶には、確かに自分がコクーンかパルス、どちらかのファルシかわかる情報が不足している。旅の中で、私の記憶の欠落は破壊されたことで飛散した私の体のパーツの不足が原因だと推測はしていた。

 

 この時は自分の記憶を取り戻すことをあまり重要視はしていなかった。自分がファルシであるとわかった段階で、なぜ自分があれほど傷ついていたのかとかの真実は、ユールと共にいるという今の目的と合致していなかったからだ。

 それに、広大なグラン=パルスで自分のパーツを探すのはかなりの難事だ。人間風に言うなら気ままに探そうと言う考えだったのだが、カイアスの言葉で興味を惹かれたのだ。

 

 コクーンのファルシである自分が、グラン=パルスにいた理由。それはきっとコクーンにあるかもしれない。もしかしたら、無くなった自分のパーツも。

 

 それにコクーンという都市にも興味があるのだ。ユールはコクーンを悪魔の住む都市として教えられてきたと言うが、カイアスと出会ったことで既存の教えを重要視しなくなったおかげでコクーンという地に純粋に好奇心を抱くようになっていた。

 

 結果、カイアスがいなくなったことで目的がなくなった私たちはコクーンへと向かうことを決めたのだ。

 

 侵入は面倒ではあったが、難しいものではなかった。むしろ、コクーンに入るまでの道程で自分がコクーンのファルシであるという事実がより明白になったほどだ。

 方法は単純で、コクーンがパルスの資源を強奪に来た際に資源に混じって隠れて連れて行ってもらうだけだ。ユール曰く、誰も悪魔の住まう土地に飛び込むような真似をしないから、こんな方法を取るのは自分たちが初めてかもとのことだった。

 

 だがそれだけではすぐにバレていただろうが、自分がコクーンと呼ばれる球体の世界に入った瞬間、奇妙な同調を感じたのだ。まるで、あるべき場所に戻ってきたかのような感覚。今まで断切されていた自分の一部との繋がりが、再接続されたような。

 

 自分のパーツの反応を、確かにコクーンの何処かから感じたのだ。

 

 そして数分と経たず、私たちはどこかのゴミ置き場のような場所へと辿り着いていた。隠れ蓑に使ったパルスの資源はそこに雑多にまとめられ、私とユールは晴れてコクーンに生きて侵入を果たした初の成功者になった。

 

 が、問題はそこからだった。ゴミの山を登り、かけ分けてたどり着いた街は私たちの想像の十倍は荘厳で発展していた。全ての建物がグラン=パルスでは見たこともない材質で建造されており、地面まで土とは違う何かで構成されているのだ。

 

 その技術力の違いに、ユールは最初圧倒されていたが、ある事実に気づいてからは逆に気味悪さを感じていた。

 それは自然の有無だ。見上げる太陽は偽物で海だと思っていた水は全て立体映像だった。街に生える木々は全て自然の物とはかけ離れた造り物だった。目を凝らせば人間以外の生物が圧倒的に少ないのだ。モンスターは当然としても、鳥や小動物、虫といった人と共に生きる彼らの姿が見つからない。

 まるで、人間の繁殖に都合の良い存在以外全てを淘汰したかのような、そんな傲慢な何者かの意図が見え隠れする光景。

 

 だが、怖がっていては仕方ないと行動した私たちに待っていたのは、どうしようもない対価の違いだ。

 

 ユールはグラン=パルスで生まれ育ち、私もまたコクーンのファルシらしいがその記憶は曖昧だ。つまり、コクーンで生きる人々の日々の生活の仕方を何も知らないのだ。

 

 人々を観察したことで、彼らが何か小型の四角形を使って対価の交換をしているのは予想がついた。

 

 グラン=パルスで旅をしている時は、刈ったモンスターの肉や毛皮を交換することで衣食住を得ていた。人によって欲しているものを見極め、それに見合った物を差し出すことが旅人に必須の技能であった。自分は相手の細かな機微からそれを洞察し、ユールは相手の感情から押し図る。カイアスからも悪くないと褒められる程度には上達した。

 

 売り手がコクーンの通貨に沿ったと思われる値段を口にしているのは読み取れる。グラン=パルスにもわずかだが通貨交換をする大規模な集落が残っている。だが、その支払い方法だけがどうしてもわからない。

 なぜあの四角形を触るだけで物を買えるのか。あれはどうすれば手に入るのか。

 

 話し合いの末、ユールがあの四角形の謎を解き明かす係。私が衣食住に関する情報収集を行うことで別れ、そこから先はあれよあれよと親切な少女に拾われる形で彼女の家に泊めてもらうことになった。

 

「ユール、起きてる?」

「起きてるよ。これからのこと?」

「うん。今のうちに私たちの目的と、コクーンでどうやって生活するか考えないと」

 

 セラから与えられた部屋のベッドに寝転びながら、ちなみにこのベッドも信じられないくらいふかふかで驚いた、隣にいるユールに話しかける。

 

「スフィアの体の一部が、コクーンにあるの?」

「うん、間違いない。コクーンに入った瞬間、か細いけど無くなった自分のパーツの反応を捉えた。詳しい位置は、まだわからないけど」

 

 自分の記憶を探すという道筋の見えない目的に、明確な指針ができた。このコクーンにある破損した自分のパーツが自分のまだ欠けている記憶を補完する鍵だ。それは僅かな繋がりから予想されるパーツの全容と、自分の壊れた記憶領域の破損部分を比較したことで得た理論に基づく事実だ。

 

「とりあえず、私の失われたパーツはコクーンを周って探すしかない。だから問題なのは……」

「その間の衣食住。特に食の部分、だね」

 

 頷く。二年という月日は、私たちにお互いの考えを言わずとも汲み取るだけの絆を育むにら十分だった。

 

「セラの話をまとめると、コクーンの人はみんなあの端末って言うのを持ってるみたい」

「あれがないと買い物も出来ないし、働くこともできない。あんな小さな物にそれだけの役割が詰まってるなんて、あんまり信じられない」

「グラン=パルスとは何もかも違う。私がコクーンのファルシとして何かできれば……」

 

 頭を悩ますが、私はコクーンのファルシだからとなんでもこのコクーンで出来るわけではないようだ。最初に感じたあの不思議な接続感を最後に、私は自分がコクーンのファルシだと感じることができる状況に遭遇していない。

 何よりも厄介なのが、ファルシ側との交信ができないのだ。これはグラン=パルスにいた頃からパルスのファルシ相手に試したのだが、どうやらカイアスとの戦いで、というよりその前から負っていたあの壊滅的な傷の影響で私の本体たるファルシはずっと休眠状態になっているのだ。

 

 カイアスとの戦いでそれから目覚めたのは奇跡であり、今ではどれだけ覚醒させようと手を尽くしてもピクリともしない。そしてそのせいで私のファルシとしての機能は大きく制限されている。それこそ、ファルシ同士の意思疎通も不可能なほどに。

 今の私は常人離れした体力以外普通の人間と何一つ変わらない。これでユールとのルシの契約がなければ、自分がファルシであるという事実さえ夢のように思えるほどだ。

 

 コクーンのファルシ相手ならもしくはと思ったが、結果は残念なものであった。むしろ向こうが自分を同じファルシとして感知しているかも怪しい。カイアス曰く、人間体である時の私は神秘的な雰囲気こそあれど、気配は完全に人間のそれらしいのだから。

 

「心配しないで、スフィア。とりあえず、今はセラのおかげで衣食住はなんとかなってる。あとは今のうちにどうにか私たち用の端末を手に入れればいいだけ」

 

 悩む私の手をユールが握ってくれる。温かくて、心が安らぐ平穏を与えてくれる大好きな感触だ。それで、私の無表情も笑顔の形へと変わっていく。笑顔は、もう簡単に作れるようになった。

 

「そうだね。もしダメだったとしても、モンスターがいないことはないみたいだから、それを狩っていけばいい。欲を言えば、このままセラの家に居れればいいけど、そう言うわけにもーーーー」

「いちゃったら、どうかな?」

「えっ?」

 

 ユールの悪戯っ子のような笑みを形作った口から出た提案に、私は呆気に取られてしまう。確かに、それが出来れば最善だ。セラはコクーン人で端末を持っている。見ず知らずの私たちに部屋を提供してくれるような親切さを持っていて、何か勘違いしているようだが私たちの素性を探ろうとしない。私が失った自分のパーツを見つけるまでの宿として、これ以上ないほどの好条件である。

 

「とりあえず、自分たちの食事代の代わりとなる物を稼がないとね。相手の求める物を察してそれを叶える。私たちがやってきたことだよ」

 

 そう言われると、思わず納得してしまいそうになる。だけど今回は物の交換とは勝手が違う。食事代の代わりとなる物を差し出しても、相手から提供してもらうのは住居も入ってるのだ。それを賄える分の何かを、ただでさえ端末がないため出来ることが限られている私たちが用意できるとは思えない。

 

「多分だけど、私たちがここに滞在することはセラなら許してくれると思うよ」

「どうして?」

 

 しかし、その懸念をユールは問題ないと言う。彼女は私と違って他人の感情を察することができる。もしかしたら、今日の付き合いだけで何かわかったのだろうか。

 

「セラはね、寂しいんだと思う。この家は部屋がいっぱいあるのに、いるのは彼女だけ。あの感じだと、元々ここにいた誰かが亡くなったか帰ってこれないか、その両方か」

 

 その推測を聞いて、私は少なからず驚いた。私の目に映ったセラはとても親切で優しく、笑顔の似合う少女だった。確かに彼女ほどの年の子が一人で家にいるのは不思議だったが、ユールほどの考察につなげる事はできなかった。

 

「だからセラは私たちを泊めてくれたんだと思う。困ってた私たちを助けてあげたかったのは本当だと思うけど、きっと誰かと一緒に居たかったんじゃないかな?」

「…………まったくわからなかった。セラは、寂しがっていたのか」

 

 思えば、最初に会った時も偽物の海に沿った道を一人物憂げに歩いていた。あれが寂しいという表情だったと言われれば、確かに過去にユールに教えてもらった表情に近いものを感じた。

 頭のメモリーへとあの時のセラの表情を記憶する。感情の表現がおぼつかない自分は、出来るだけ多くの人の表情や仕草を記憶して学ばなければならないからだ。

 

「私の考えとしては、私たちがこのままここでしばらく暮らすことについては、彼女のお姉さんはわからないけど。セラはきっと気持ちの面では反対しない。でも三人分の生活の負担を考えると、反対せざるを得ないはず。だから私たちはその負担を無くす方法を考えれば良い。あとは、交渉かな」

 

 そこは、二人で磨いたカイアスも納得の交渉術の出番だね、と笑うユールに私も頷いてしまう。食が問題という事は変わらないが、それを解決すれば他の衣と住も何とかなると思えば気が楽になる。とりあえずの展望は決まったと言えるだろう。

 

「あ、そうだ。セラはどうやら前のユールみたいに私の性別を勘違いしてるみたい。明日ちゃんと訂正しないーーーー」

「それはしちゃダメ」

 

 私の言葉をユールが強引に遮る。首をブンブンと横に振った彼女は、どうしてと疑問を浮かべる私の目を見て、親が子に教訓を伝えるように言葉を発した。

 

「いい? スフィア。女の子が、知らない男の子と同じ屋根の下で暮らすのは、とってもいけないことなの。今バレたらどんな事情があれ、少なくともセラのお姉さんに追い出される。だから、言うにしてもセラやそのお姉さんともっと仲を深めてからにすること」

「悪いこと? なら、私は今セラに悪いことをさせている? それは、ダメだ。あんな良い人を悪者にはさせられない!」

 

 人に魅せられ、ルシにされる彼らの苦痛に共感をした唯一のファルシとして、不条理な運命による垢を認めることはできない。それが私と言うファルシに原因があるのなら、尚更その不条理を訂正しなければならないだろう。

 

 ユールの言葉に、私は即座にベッドから立ち上がってセラに自分は男だと伝えようと彼女の元へと行こうとした。だがそんな私の腕を慌てた様子でユールが強く引き留めてくる。

 

「ま、待ってスフィア! 違う、いや違わないけど、そこまで悪いこと……じゃない……とにかく、伝えちゃダメ!」

「私たちの都合で彼女に不名誉なレッテルを付けていいの?」

「そこまでの問題じゃないから! ああ、言葉を間違えた……!」

 

 夜の10を回った時間帯。

 結局この押し問答が終わりを告げるのはそれから1時間後となった。

 

 

 

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