遊戯王 film Original Sin 作:ヤッサイモッサイ
特に罪宝シリーズなんてイラスト以外での説明が皆無なので、勝手に自分の解釈で1回世界観だけ作りました。
主人公テーマだから書きましたが、中身はフレーバー以外の何物でもないので、流し見程度で結構です。自分もかなり適当にしか書いてません。
なんでこの状況でこのカードが光ってるんだ!?
なんでこの主人公のデッキが罪宝になるんだ!?
なんでこのカードが実態化しているんだ!?
みたいな展開に対して、理解を深めていただくためのメモ書きとして理解くださいませ。
巷で騒がれる悪い魔女と善い魔女の噂話。凶暴にして非道、略奪と破壊を振りまく賞金首「黒魔女ディアベルスター」。
清廉かつ潔白、救済を差し伸べる白き魔女「原罪のディアベルゼ」。
そんな噂もものともせず、黒魔女ディアベルスターは今日も風に流され「罪宝」の在処を求め町を流離う。
襲ってきた賊は返り討ち、罪宝らしき物があると聞き付ければ脅して暴き、何処にあろうと襲撃しては強奪。その様な行動が自身の悪評の原因ということもいざ知らず。
日課の情報収集(恐喝)に勤しむディアベルスターは1つの情報を手に入れる。
魔物が住み着くと言われる蛇目神殿のその最奥、妖しく輝く蛇の一つ眼の存在を。
求める罪宝であると確信したディアベルスターは善は急げと神殿へと向かう。
変容した神殿の防衛機構や魔物を退け、最奥に辿り着いた彼女を睨み統べるは件の罪宝《反逆の罪宝スネークアイ》。
求めるものは得たと手を伸ばしたその時、神殿が鳴動する。宝が、一際強く瞬いた。
罪宝が意思を持って盗人たる彼女を拒絶し、排除せんと蠢き出したのだ。
“これはマズイ”━━━圧力を増す罪宝の魔力に耐え切れず、神殿が軋んでいく。一先ず脱出を優先したディアベルスターが、神殿の倒壊する音に振り返ると、そこには身を起こした理外の化生《蛇目の炎龍》が存在した。
罪宝を手に入れるには、目の前の化け物を打倒しなければならない。理解するが早いが黒魔女は手持ちの罪宝、《死の罪宝ルシエラ》《裏切りの罪宝シルウィア》を解放し蛇目の炎龍を追い詰める。牙と爪、研ぎ澄まされたそれらを持って龍を拘束し、瞬く間に頭へと駆け上がると、手にしたダガーを一閃━━━掲げられた罪宝を容赦無く破壊する。
悍ましい断末魔と共に沈む炎龍を余所に、踵を返したディアベルスターの視界に、舞い散る小さな火の粉が焼き付いた。
辿った先には、額にスネークアイを宿した精霊《蛇目の炎燐》が居る。
無害化を確認した彼女は彼を連れ、帰路に着く。
長い冒険だったと、疲れを隠しもせず街道を歩く彼女の元に、立ちはだかる影がひとつ。
噂話に上がるもう1人の魔女、原罪のディアベルゼである。
彼女らしか与り知らぬ因縁に火花を散らす二人の脇で、罪宝の気配に当てられ蛇目の大炎魔と化していた炎燐がディアベルゼへと飛び掛る。
しかし、不意を着いたはずのその攻撃はいとも容易く受け止められ、炎燐は返しの罪宝の攻撃により眠りに落ちてしまった。
略奪された炎燐の存在に、1層気炎を上げてディアベルスターも切り掛る。
“お馬鹿さん”
無策にも突っ込んできた黒魔女をあしらうなど、白魔女にとっては造作もないこと。再度起動した彼女の罪宝《微睡の罪宝モーリアン》の直撃を受け、ディアベルスターは夢の世界に落ちていく。
懐かしい顔を見たからだろうか、夢の中で彼女は過去の姿を幻視する。
其れは自身が《黒魔女ディアベルスター》になるより以前の姿、ただのアステーリャ《ほし》出会った頃の、少女の姿。
全ての罪宝はかつてひとつの森の中に眠っていた。
そこは不思議な森、物怪が住むとされ、人里より隔絶された空想の世界。
“白き森”━━━世界の奥深くにあるそこは、舞い上がる雪によって白く染められ、それでいて積もった雪によって光が遮られた完全なる異界。
かつてディアベルスターとディアベルゼはそこで共に過ごし、研鑽した友人同士であった。
その頃はまだディアベルスターはアステーリャとして、ディアベルゼはリゼットとして共に一人前の魔女を目指し、三人の師に師事していた。
其れこそが白き森に住まうとされる怪異、御伽噺のその正体、妖魔ディアベルとその従者シルヴィ、ルシアである。
時に喧嘩をし、されど仲睦まじく確かに平和な時が、そこでは流れていた。
ある日、リゼットはアステーリャを誘う。
“ねぇ、もっと森の奥へ行ってみない”
其れは罪を求める罪、理性を持つもの全てに課せられた原罪の囁き。
“ダメだよリゼット”
禁忌として教えを受けてきたアステーリャは当然それを否定する。
然し、其れが却ってリゼットの意地に火をつけた。
“ふーん、ならいいもん。私ひとりで行ってくるから”
駆け出したその背に手を伸ばすも、時は既に遅く、彼女の小さな背中は既に森の奥へと消えてしまっていた。
アステーリャの脳裏で“教え”と“友達”が天秤に掛けられるも、すぐ様天秤は“友達《たいせつなリゼット》”へと傾く。
その背を追ってアステーリャも森の奥へと駆け出していく。お気に入りの灯火を持って、昏く深い、森の奥…禁足地へと。
平和な時は、既に崩れ始めていた。
奥へ、奥へ、さらに奥へ。
隠されたものを暴きたい、知らないものをもーっと知りたい。なんだろう、何があるんだろう。
期待半分恐怖半分、更には自分よりも教えを優先した友達への怒りも更にもう半分。
リゼットは最早“教え”等頭の片隅にもなかった。
やがて拓けた場所に出て目に付いたのは、真っ赤な果実。森の中で、異彩を放つ白以外の色彩。
周囲の異様な空気もあって、足を止めたリゼットへ、漸くアステーリャが追いついた。
“ダメだよリゼ、早く戻ろう”
然し、アステーリャもそこで其の紅を目の当たりにしてしまう。
“━━━ねぇ、アステーリャあの果実”
“━━━えぇ、リゼあの赤色”
““とっても綺麗””
囁きの赤色に魅せられて、2人は同時にその果実へと手を伸ばし…そして━━━触れてしまった。
白き森のいいつたえ、わざわい、その教えの正体に。
“原罪とは、誰しもが持ちえる原初の罪。それ故に、誰も触れてはならない”
白き森が常人を拒絶していたのは、優しき師達が化け物として恐れられてまで、ただ人を遠ざけていたのは。
“あなた達みたいな子が、生まれないようによ”
白き世界を、黒が飲み込む。
森の異変に気がついた魔女ディアベルが反応するよりも先に、従者が2人、罪の影に呑み込まれた。
“いいから、行ってください”
“二人の、下へ”
自身へと迫る茨を払い除け、ディアベルは一瞬の逡巡の後に奥地へと駆けた。
其の間も茨に囚われながら、振り払うその度に身を削りながら、彼女はやがて辿り着く。
そこでは二人の弟子が眠りについていた。同じく茨の影に囚われて、原罪の影に呑まれようとしていた。
最後の力を振り絞り、茨より彼女らを解放するも、リゼットは既に手遅れであった。
ある種の素質と言うべきか、殆ど侵食の見られないアステーリャに対し、リゼットは既に肉体の多くを罪によって蝕まれている。
“少し、早すぎるけれど”
魔女ディアベルは自身の魔力を、罪宝の管理者としての力を二人へと流し込む。
緑の色彩はアステーリャへ、紫の色彩はリゼットへ。
最早枯れ落ちるのを待つばかりの自身が持つよりは、二つの新芽に期待するが良いと。
“なら、その身体をいただくわ”
自身の身体から力が流れ落ちるにつれ、傷がより痛み出す。誰よりも抗い、誰よりも傷ついたが故に、その変質は全身に及ぶ。
最早その姿にかつての気高さがどれ程残っているだろうか。
“それでも、この子達は渡さない”
陽の光すら届かぬこの森の中に置いて、それでも輝いていた2つの星。その輝きは曇らせない、と。
白き影が2人をさらう。
死力を尽くしたのは魔女だけでは無い。2人の従者も共に、地上で輝く星の為に立ち上がった。
薄らと意識を取り戻したアステーリャの耳に、魔女の慟哭が遠く響いた。
“なによ、コレ”
数刻の後、奥地より離れた森の浅瀬にて、リゼットが目覚める。
周りには再び眠ってしまったアステーリャのみ。
森は普段とは全く異なる顔を見せている。
そして、自分の姿も。
罪に犯され、罪を犯した。
その姿は醜く変質しており、ディアベルより受け継いだ紫の色彩が辛うじて彼女をつなぎ止めている。
“…いかなきゃ”
森の奥で、愛すべき師の気配を感じる。
何が起きたのか、理解は追いついていないが、何をしたのか、何をしなきゃ行けないのかは驚く程に頭が回った。
責任を取らなくてはならない。
自分が何とかしなくてはならない。
そして何よりも、こんな姿をアステーリャに見られたくない。
追うように、逃げるように、森の奥地へと再び踏み出した。
身体の調子がいい。流れ込んだ罪の力と、魔女の力…その双方が作用して、今ならばなんでも出来るような全能感が身体を支配する。
それでも彼女の心は重く冷え切っていた。
その代償と、責任が彼女を縛り付ける。
やがてそれ等が形として自身の視界に映る頃には、覚悟は決まっていた。
“…ディアベル、ごめんね”
四肢を振り乱し、殺戮にて祝福する意思無き人形…其れが彼女の払った代償であり、責任であり、かつての師であった。
涙を堪え、携えた力で師と対峙する。
せめて、その肉体は弔わなければと。
戦いは熾烈を窮め、景色をねじ曲げる。
やがて決着が着き、人形がその動きを停めた頃、リゼットは理解した。自身が解き放ってしまった存在の事を、そしてそれも、師も、倒すにはもっと強力な罪の力が必要であることも。
おそらくはなり損ないであろう今の師ですら、自分では殺しきってあげることが出来ない。紫ではなく、黄金の色彩に沈んだ人形を見てそれを理解する。
もう、ぬるま湯に浸るのはやめよう。
甘ったれで、みんなに囲まれて幸せなリゼットは、もう居ない。
みんなの幸せを貪り食った罪を背負い、そして師の役目を、私が果たす。
私の名は━━━ディアベルゼ。
結局、強がりな少女が人前で涙を流したのは其れが最初で最後であった。かつて師であった、鋼鉄の人形の前で。
“━━━思い出した”
時同じくして、ディアベルを襲名したかつてのアステーリャは呟いた。
最悪の目覚めだ。殺風景な景色、息苦しい閉鎖空間、漂う悪臭、圧迫感のある鉄格子…監獄なんて言うところで目覚めた事もそうだが、何よりも━━━あのリゼット《ボケ》に助けられたなんてことを今更思い出したことが何よりも腹立たしい。
私も、リゼットもまたディアベル。たとえ眠っていたとしても、まだ完全に別れきっていなかった当時の事は魔女の力が記憶していた。
“2人とも、知ってたの?”
全力で頭を振る2人の姿に、自省する。
2人とて肉体を奪われ、瀕死の重体であったのだ。魂だけとなっていたのを、ディアベルの力で探り当てて罪宝化させるのが、少しでも送れていれば今の2人すらここにはいなかっただろう。
シルヴィもルシアも、きっと本当に知らなかったのだ。
そして、思い出した今だからこそわかる。
なぜ今このタイミングで思い出したのか。それはきっと確かにあのムカつく顔を見たからということもあるし、リゼットが持ってるディアベルの力の片割れの事もあるのだろう。
でもそれよりも何よりも、私の中のディアベルが憤っているのだ。そして、心配しているのだ。
“あの時、私たちに囁きかけてきた影に、あのボケはまたひとりで挑んでる”
勝算はあるのだろう。きっと。だからまぁずっと1人でいた事とか、勝手にやってる事とか、そういうのはまぁ、許す。
だが、しかしだ。
“この私を、こんなブタ箱にぶち込んでくれやがった事…これは話が別だ阿婆擦れェ”
罪は罪、であれば、この手で叩き斬ることになんの躊躇いもない。
“行くよ、二人とも”
私の中のディアベルに引き寄せられて、雑兵が監獄を破って流れ込んでくる。
きっとこれはかつての因縁の清算、向こうには本命がいて、こっちには雑兵が来てるんだろう。
手にしたダガーで枯れ木を切り飛ばし、伸ばした爪で蝙蝠を叩き落とし、開いた顎にて狼を噛み砕く。
“どこまでも人をコケにして”
体の調子はすこぶる良い。かつての記憶が、力の正しい使い方を教えてくれているのだろう。
リゼットの場所もまた、私の中のディアベルの力が教えてくれる。
“今いくわ、ボケリゼ”
罪宝狩り悪魔、最後の仕事よ。
後編にそのうち続く