灯火、使徒より賜りて   作:今津

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以降はボーイズラブ要素(?)が気持ち濃いめです。






3-2

 

 

 

 

『ありがとう……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗闇に包まれたZ市。

 

一面の瓦礫の上に黒い雨が降り注ぐ。

 

 

怪人協会を打倒するため、数多くのヒーローが招集された。彼らの奮闘により、怪人協会は倒れた。

だが最終的に。人間怪人としておぞましい変貌を遂げたガロウを前にして立っていたヒーローは、わずか三名だけだった。

パンプキンマン。ブラスト。そしてサイタマ。

 

あとは全員倒れていて、もう動かない。

彼らに何が起こったのか、サイタマは知る由もなかったが────ヒーローたちはみんな、顔から血を吹き出して、折り重なるように死んでいた。

 

 

 

 

光を失ったサイボーグの(コア)を手に、サイタマは問うた。

 

「何してんだ、お前」

 

お前という者が居ながら、なぜ。

 

「ウィリアム」

「……………………」

 

奴は、ヒーローたちの遺体を背に突っ立って、サイタマをただ見つめた。

暗い瞳。

黒い髪から黒い水が滴り、白い肌を伝った。

足元にはカボチャが転がっていた。

 

二人が視線を交わすだけの、ほんの僅かな時間。誰も動かなかった数秒が過ぎた後。

ウィリアムは、……全てを諦めたような顔で、ふっと笑った。

 

「……過去で会おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木星の衛星にて。

感情の昂りによって指数的に成長し、やがて宇宙的恐怖(コズミックフィアー)モードのガロウをも軽くあしらうようになったサイタマは、攻防のさなか、ほんの一瞬だけ、ただひとり地球に残してきたウィリアムのことを考えた。

 

……ああ、たとえあの男がかつてどんなに強かったのだとしても、きっと今の自分は、もうずっと引き離してしまっただろう。

ガロウを倒した後にでも、一発本気で殴ってやらなきゃ気が済まないと思っていたのに、もうそんな気も失せてしまった、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

────因果は逆転し、すべてなかったことになる。

 

 

 

 


 

 

 

『ありが……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、だからまあ……俺はそういう体質なんだ。この世界の最強はサイタマだから、そこは越えられないのが(ことわり)だけど、俺はそこを越えないギリギリのところまで攻めてるって感じだ。……えーっと、これでも分かりにくい? じゃあ……そうだな……」

 

「サイタマは"最強"と定義された存在でそれ以上はない……つまりサイタマは天井であり、同時に蓋でもあるってことだ。俺はまだポテンシャルを持ってるから、そこまでは天井にぶつからないギリギリの高さで追随して強くなれる。けど、俺が天井と同化したり、天井を突き破ることはできないってことで……あれ? これわかるか?」

 

「サイタマと俺は、今はほぼ同じ強さだと思う。そこは保証できる。だけどサイタマが無限に成長するのに対して、俺はあくまでポテンシャルの分だけ……上限(カンスト)までしか成長できない。だから俺たちが本気で戦ったら、お互いを成長させあってどんどん有り得ないくらい強くなっていって、でも最終的には俺は限界を迎えて、限界のないサイタマに完全に置いていかれるだろうな。まあそれで俺が限界を迎える頃には、余波で地球とか太陽系とか銀河系とかが消し飛んでるけどな」

 

「そういうわけだからさ……。俺はあれからくしゃみするのも怖いよ……」

「俺はたった今聞いた事実が怖いです」

 

まるで意味がわからん。ジェノスお前……今のでわかったのか? すんなり受け入れるなよ!

 

 

 

「……失望したのかな?」

 

「もしかしたら、自分のライバルになるかも……と思って。でも、他でもない俺が「絶対に敵わない」と断言したから」

 

「俺が言ったのはあくまで仮説だから、実際どうなるかはその状況になってみないと分からない。それに……普通の人間には、無限と無量大数の違いなんて一見して判別不可能だろ?」

 

「銀河系を滅ぼせる化け物と、太陽系を滅ぼせる化け物がいたところで、それは一括りだ」

 

 

「俺たちは……孤独を分け合えるよ」

 

 

あと、口説いてくるな!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやあってZ市の自宅を破壊されたサイタマは、A市のヒーロー協会本部に新設されたマンション練に引っ越した。

すると、本部のアクセスの良さから、キングとウィリアムは自然とサイタマの部屋に集まるようになってしまった。隣の部屋に住み着いたジェノスも度々来る。ただでさえ狭い部屋なのに、成人した男が三人も四人も集まるとさらに狭く感じてしまう。

 

例によって格ゲーに勤しんでいるサイタマとキングの後ろで、ウィリアムは漫画を読みながら好き勝手くつろいでいる。そしてそれをジェノスが見ているという状況だ。

ジェノスは最近自分の強さに行き詰まりを感じているらしく、サイタマだけではなくウィリアムからも何かヒントを得たいと言っていた。そんなことをしてもやってることに大差はないと思うのだが。

 

「ウィルさん」

「ん?」

「……その……不躾な質問なんですが」

「え? なんだよ改まって」

 

なんか話し出したな、と背後へなんとなく聞き耳を立てると、話題はあらぬ方向へとかっ飛んだ。

 

 

「ウィルさんにとって……男性は恋愛対象に含まれますか?」

「は?」

 

 

「(……!!?)」

 

────その時、部屋に緊張が走る!

 

絶句するサイタマの隣で、キングが動悸(エンジン)を鳴らし始めた。精神的動揺がゲームプレイに現れないのはさすがキングと言ったところか、こっちの操作キャラが一瞬でボッコボコにされたが、それどころではない。

 

マジで不躾だし、なんでそれを俺たちの前で聞くんだ──?

 

サイタマもキングも、なるべく気配を消すために動きを止めた。今振り返るわけにはいかない。ジェノスが何を考えているのかはさっっぱり分からないが、巻き込まれたくはなかった。

 

「え……? なんで……?」

「いえ…………」

 

「(ホモじゃないからなぁって言え……!)」

「(オトコに興味ねーぞって言え……!)」

 

「あー……えっと……まあ……確かに性別にこだわりは無いけど」

 

「「((!?!!?))」」

 

まさかの新事実。恋愛対象の性別にこだわりが無いとはつまり、……バイセクシャルだということだろう。

いやなにをあっさり答えてるんだこいつは。

 

「そうなんですね……」

「うん……」

 

そしてこのやたらと神妙な相槌。聞き耳を立てているだけなのに無駄にハラハラしてしまう。手汗でコントローラーが濡れていた。

 

「あ……ちょっと待ってくれ。俺は別にアマイとはそういうんじゃないぞ」

「はい」

「……そこを疑ったわけじゃないのか? ……じゃあマジでなんで?」

「それは……」

 

口篭るジェノスに、ウィリアムは困惑した声色で続ける。

 

「あー、あのな、いくら性別にこだわりがないからって、その気もない奴にモーションかけたりとかしないから安心していいぞ……男も女もさして変わんないってだけで、男の方が好きとかでもないから……」

「では、」

 

「つーかそもそも弱いやつをそういう目で見れないしな」

 

────それを聞いた瞬間、それまで俯いていたキングがハッと顔を上げてサイタマの方を見た。

 

「……!!?」

 

キングが何を言わんとしているのか────察したサイタマは、自分の全身からドッッと冷や汗が吹き出るのを感じた。

 

()()()()とそれ以上静観しているわけにもいかず、おそるおそる振り返ると、気付いたウィリアムがジト目で睨んでくる。

 

「なんだよその顔は……。お前だって、多少気を抜いても死ななそうな相手の方がいいだろ」

「……それは…………」

 

ちょっとわかる気はするかもしれないけども……。

それでもせめてなにか文句をつけてやろうとして、──天啓のように、ハッと思い出したことがあった。

 

「……いやおい、お前、この前抱きついてきたのってそういうことか!?」

「は?」

「え?」

「…………この前?」

 

ウィリアムは無駄に目力の強い瞳を見開いてきょとんとしているが────。

 

 

 

あれはタツマキが超能力で暴れまくって、サイタマをフッ飛ばしながらギュインギュインと縦横無尽に飛び回り破壊の限りを尽くしていたときのこと。

 

サイタマがしばらく街中の上空を飛ばされていると、いきなり斜め左下から突っ込んできたウィリアム──その時はカボチャを被っていたのでパンプキンマンだった──が、体当たりでぶつかるようにして無理やり軌道を変えてきて、タツマキに向かって「いい加減にしろ!!」と怒鳴りつけた。

その際、ウィリアムはサイタマの左脇の下に手を入れて反対側の肩を掴むようにして"ぎゅっ"と抱きついた……というか片手で持ち上げるような姿勢を取ったのだ。

超能力で別々の方向に吹っ飛ばされたら面倒だったので、ウィリアムとタツマキがやいやい口論している間もされるがままくっついていたが、今になって「弱いやつをそういう目で見れない」とか聞いてしまっては。

 

 

 

「お、おまっ、だからあんなガッチリ密着して……!」

「……ハァ!? いや違う!! あれはタツマキを止めるために……!」

 

ウィリアムはようやく思い出したようで露骨に焦りだした。焦るということは後ろめたいことがあるということではないのか、そう邪推せずにはいられない。

 

「俺が軌道を逸らさなきゃビルを三棟もぶっ壊してたんだぞ? 別に抱きつこうと思って抱きついたわけじゃねーよ! つーかアレは肩組んでただけだ、抱きついてねえ」

「は!? さすがに無理あんだろ! あんなずっとくっついてる必要あったか!?」

「あ!? あれは超能力に吹っ飛ばされないためで、お前も抵抗しなかっただろ! 今更なんだ! 繊細か!」

「抵抗しなかったのはお前が信じられないくらい力込めてきたからだよ!! そこまで全力出して離れたがったらなんか俺が変に気にしてるみたいじゃねーか!!」

「力込めたのはタツマキが無理やり引き剥がそうとしてきたからだ!! 実際そうだろ! 見損なったぞサイタマ! 図太さが取り柄のお前が……!!」

「いやお前が変な事言うから……!!」

やめろ!!! それだと俺がタツマキに対抗してこれ見よがしに抱きついたみたいになるだろ!!! 俺は! そんな! 恥ずかしいことは! しない!!!」

 

ピンポーン、とチャイムが鳴った。

 

ヒートアップするうちいつの間にか立ち上がっていたサイタマとウィリアムは、ひとまず口を噤んで玄関の方を見る。

なお、事の発端となったジェノスは空気を読んで完全に沈黙し、キングはウィリアムが叫んだ時の圧で白目を剥いて気絶しかかっていた。

 

「…………」

「…………誰だ」

「近所の人が注意しに来たんじゃないか」

「えぇ……じゃあお前出ろよ」

「家主はお前だろ。俺は顔出しNG」

「カボチャ被れ」

 

そう言いつつ、サイタマは玄関へと向かった。

もし騒音を叱られたら謝らないとなと思いながら扉を開けると、そこには。

 

「ヒマそうだなサイタマ。マナコを探すのを手伝え。怪人協会の重要参考珍獣だ」

 

金髪で長い髪の男が……。

 

「使えるようならお前を俺の弟子にしてやってもい」

 

サイタマは玄関の扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、フラッシュが弟子云々と発言する度に、パンプキンマンがカボチャの中で吹き出して腹を抱えて笑っていたのがめちゃくちゃ鬱陶しかったのはまた別の話だ。

 

「っ……! ……、ブフォ(笑) ……で、弟子って、こいつを、で、弟子……(笑)、ハッハッ、フフッ、生で見ると余計おもしろ、アッハッハッハッハッ、ハッ、アッハッハッハッハッハッ、あー涙出てくる、はー、フフッ、ハッハッハ、ハッハッハッハ」

 

他人事だと思いやがって!!

 

 






オリ主「つーかそもそも弱いやつをそういう目で見れないしな (……ボロスくらい強ければギリ?)」
サイタマ「!!?」←無意識に自分とオリ主以外の全存在を『弱い』と思っていて一番タチが悪い


オリ主は男女どちらにも産まれた経験があります。原作キャラクターであれば性別問わず愛しているので、恋愛するうえで相手の性別にはこだわりません。
あとは強くなりすぎて『我以外皆異性也』的な感じ。
サイタマのことはいい友人だと思っています。
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