灯火、使徒より賜りて   作:今津

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エイプリルフールネタの会話文です。
ネタバレですが、夢オチです。




番外編:予知夢?

 

 

 

 

昔々……あるところに、おじいさん(バング)が住んでいました。

ある日、独り身のおじいさん(バング)が山へ芝刈りに、川へ洗濯に行くと、川の上流から大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。

 

おじいさん(バング)がその美味しそうな桃を家に持ち帰り、さっそく食べようとすると、桃がひとりでに割れて──中から一人の赤ん坊が出てきました。

 

赤ん坊は元気な産声を上げました。おじいさん(バング)がその赤ん坊に「桃から生まれた『桃太郎』」と名付けると、赤ん坊は次の瞬間には青年の姿へと成長し、「鬼ヶ島へ鬼退治にいかなければならない。勝てる勝てないじゃなく(以下略)」と言いました。

 

桃太郎の熱意に感動したおじいさん(バング)は、道中の食事用にときびだんごをこしらえ、コスチュームを用意し、一台の自転車を『桃太郎』に与えました。

 

桃太郎(無免ライダー)』は立ち漕ぎモードで野を越え山を越え、道中出会うはずのおともたちを全て無視し、紆余曲折を経て鬼ヶ島へとたどり着きました────そして案の定、タンクトッパー鬼の一撃でやられてしまいました。

 

桃太郎(無免)』は全治三ヶ月の怪我を負いながらも鬼ヶ島から逃げ出しましたが、故郷へと引き返す途中で疲れ切り、力尽きようとしていました。

そんなとき、『桃太郎(無免)』はひとりの若者に出会います。

若者の名はサイタマ。『桃太郎(無免)』はそれまでの紆余曲折をかくかくしかじか彼に話しました。

 

話を聞いたサイタマは、『桃太郎(無免)』からきびだんごを預かり、怪我人である彼の代わりに鬼退治に行くことにしました。

サイタマは山を越え海を渡った先にあるという鬼ヶ島に向かいます。が、山を越える途中で道に迷ってしまいました。

その道中で出会ったサイボーグ犬(ジェノス)不死身の猿(ゾンビマン)エスパーキジ(タツマキ)にきびだんごを与えると、彼らはサイタマが頼んでもないのに鬼退治に無理やり着いてくることになりました。

他にも忍者みたいな猫(音速のソニック(笑))や百獣の王のライオン(キング)(重複表現)などと出会いましたが、彼らはサイタマのおともとはなりませんでした。

 

ようやく森を抜けて一晩を明かし、サイタマたちが小舟で海に漕ぎ出すと、小舟はたちまち大シケに襲われ、転覆。空を飛んでいたキジ(タツマキ)以外は海に投げ出されてしまいました。

 

しかしサイタマ、(ジェノス)(ゾンビマン)は幸運にも──目的地であった鬼ヶ島へと流れ着いたのでした。

みな命は助かりましたが、目を覚ましたのはサイタマだけでした。サイタマはピッチピチのタンクトップを着た大勢の鬼たちに囲まれていました。

 

サイタマの前に、大勢いる鬼たちの中でも一際タンクトップを着こなした鬼が現れました。鬼ヶ島の長(タンクトップマスター)は鬼たちの中でいちばん強い鬼でしたが、サイタマは彼をワンパンでどこかへとブッ飛ばしてしまいました。

鬼ヶ島の長(タンクトップマスター)も決して弱いわけではありません。

ただ、この若者──サイタマは、この宇宙でいちばん強かった。

それだけのことでした。

 

 

 

 

 

 

 

『桃太郎』のお話と『浦島太郎』のお話を混同していたことを知ったサイタマが気を落としていると、鬼ヶ島の岩肌の山から大きな声が響き渡りました。

 

「待ちくたびれたぞォーーーー!! サイタマぁーーーー!!!」

「は……! こ、この声はまさか……!」

 

それを聞いた鬼たちが、声を震わせてうろたえます。

 

「なんだよ今度はぁ。また鬼か? テンション下がってんだよこっちは」

「ち、違う! 奴は俺たち鬼がここに住み着く前からこの島に住んでいた妖怪で……!」

「え、()()?」

「最強の長でさえも勝てないから、あいつが住んでる山にだけは誰も手を出さなくなったんだ! いつも引き篭ってるあいつが山を下りてくるなんて! 悪いことは言わない、お前も逃げろ! あいつが暴れだしたら俺たち、いやこの世界の終わりだ!」

「いや、今の声、俺の事がっつり名指しで……」

 

大きな着地音が響き、砂埃が巻き起こります。鬼たちは悲鳴をあげて、蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出しました。

やがて砂埃が引くとそこには、()()()()()()()()()()()()()()()()が立っていました。

 

「……あ、お前もしかして」

「俺の名は、『パンプキンマン』!」

「いや名前で拾うとこもっとあっただろ」

「ああ、何十年も待って……いい加減待ちくたびれてたぞ、サイタマ。ようやく会えたな!」

「え? 俺、牛の知り合いいねーんだけど……」

「……」

「……」

「……え、お前、まさか俺をただの牛だと勘違いしてない?」

「違うのか」

「全然違う。俺は牛じゃなくて、妖怪の『(くだん)』だ。人面の牛、あるいは牛の頭で人の体を持つ妖怪のことだ」

「へー。……ん? じゃあそのかぼちゃ脱いだら人の顔ってこと?」

「そうだけど」

「ええぇ、こっわ」

「だからかぼちゃ被って隠してんだよ! もーいいよ人の姿に化けるから」

 

そう言うと、牛は“ぼふっ!”と音を立ててたちまち人の姿に化けました。

 

「なんだかんだ人の体の方が動きやすいんだよな。ちなみにこの形態だと顔の方が牛になるぜ。ほら、見てみろ。イケ牛だろ、この毛並み、睫毛」

「あ、そう……牛の顔がどうなればイケてんのかわかんねーけど、人面牛よりまだいいと思うぞ、絵面的に……」

「牛形態の時は普通にイケメンなんだけど」

「いや見せなくていいから」

「そうか」

「鬼ヶ島にかぼちゃを被った強い奴がいる……ってのはライオン(キング)から聞いてたんだけど、まさか牛とはな」

「キングかー。あいつのことは可愛がってるんだ。猫好きだし、届かないとこ掻いてやると喜ぶから」

「迷惑してそうな口ぶりだったけどな……。……で、お前、なんで俺のこと知ってたんだ?」

「ああ。それは『(くだん)』という妖怪が、未来を予知する力を持っているからだ。サイタマと名乗る男がこの島に来ることを、俺はずっと前から()()()いたからな」

「へえ、それはすごいな。ずっと待ってたってのも……」

「…………」

「…………」

「…………」

「………………え……なんの用で?」

「お前は伝説の強さを持つんだろ?」

「ああ、……うん……」

「俺もだ」

「……は?」

「だから。俺も、強いんだよ。俺は妖怪だから、“幻の”強さって言った方がいいか」

「……ええと、つまり、なんだ。お前は、どうやら強いらしい俺と力比べがしたくて、何十年もずっとここで待ってたってことか?」

「うん」

「そうか。……んじゃかかってこい。さっさと終わらして、竜宮城を探しに……」

「“さっさと”? フフ、そうか、そういうことか」

「え、なに」

「いーや。……やっぱり、孤独なんだな────サイタマぁッ!!!

「(……ッ!!? コイツ、速ッ────!!)」

 

 

 

ドガァン!!!

 

 

 

「っっ……っぁ────っ痛、ってぇ……!! くっ、……ぁ、鼻血……」

「……はっはっ……くう、わりと強めに殴ったけど、この程度じゃ吹き飛ばないか。しかもちゃんとカウンターかましてきやがって、カボチャが壊れた……。やっぱり、()()()()──……強い」

「く、そ……周り全部バッキバキになってんじゃねーか……。おい、パンプキン……じゃねえか、もう。てめー……どういうつもりだ……!」

「ああ、本名はウィルだ。────決着をつけようじゃないか。どちらが宇宙最強の存在か。これは他でもない、お前自身が求めたものだろ?」

「……は?」

「お前は、孤独の果てに……対等な存在との『本気』の勝負を……自分が遊んでも()()()()相手を望んだ。俺はこの世界に産まれ落ちてそれを()()()

 だから、俺はお前の為に死に物狂いで鍛え続けて、お前を待ち続けた。他でもない、サイタマ。お前ただ一人の、孤独のために!

「っ……!?」

「このなーんにも無い島で一人で鍛え続けるのはまあまあ苦痛だったぞ。むさ苦しいタンクトップの集会しかいなかったし。お前が現れた時の俺の歓び、お前に分かるか!」

「っ……てめーこの……自分が何言ってるのか分かってんのか!? 激烈にストーカーじゃねーか! 気持ち悪いんだよ、この牛!」

「あ!? 悪口で牛って言ったかコラ! イオまでぶっ飛ばしてやろうか、エウロパの方がお望みか!? ちくしょう……そもそもこれ状況的に与太だし、タンクトップマスターが悪役な時点で配役くっそ適当だろうが……くそっ、許せねえ! こんな世界全部滅ぼしてやる!!

「わかんねー話すんな!! ったく、こんなめちゃくちゃ寿司の気分の時に、過去イチ歯ごたえのありそうな相手が現れるなんてッ……!」

「え、ようやく現れたライバルである俺の優先度、寿司以下なの!? マジかよ、なんかテンション下がってきた……」

「でも寿司食いたくね? 竜宮城ってとこに行けば食い放題ってウワサを聞いたんだけど」

「てめー、竜宮城をなんだと……うん、いや、久々に食いたいわ……寿司」

「だよな。なあ、よかったら一緒に探しに行かないか? 竜宮城。気遣わせて、ずっと待たせてたみたいだし」

「えぇ……俺、一応鬼ヶ島の裏ボスなんだけど」

「じゃあ、きびだんごやるから。これ、犬とか猿とかキジとか、猫には好評だったんだぜ」

「えぇ〜いくら体か頭が牛とはいえそんな……」

「どうだ?」

「うっ、美味っ……」

「だろ!」

「うん、うん、もういいわぜんぶどーでもよくなってきた。よーし、待ってろ深海王! かっさばいて寿司のネタにしてやる!」

 

 

◆◆

 

 

「まさか竜宮城が既に荒らされてボロボロで、襲った犯人らしい変な魚みたいな奴らをぶっ倒したら、ウィルがそいつらを捌いて寿司を握ってしまうなんてな……しかもうまい」

「ああ、たしかにうまい。だけど……俺もいただいてしまってよかったのか?」

「結局、場所を知ってる無免がいなきゃたどり着けなかったわけだからな。その権利はあるだろ」

「ネタもシャリもいっぱいあるから遠慮すんなよ。あとこれ、あの昆布頭からむしった昆布で出汁とった吸い物」

「うめえ〜、染みる〜」

「ああ、温まるよ、ウィルさん。ありがとう」

「うん」

「この……青いの?特に脂のっててうめえな」

「…………うん、俺、なにやってんだろな……」

 

 

 

「それじゃあ、失礼するよ。ご馳走様でした」

「おう。気をつけて帰れよ、無免」

「またな」

「ああ、また!」

 

 

 

「……で、ウィルはこれからどうすんだ? 家、自分でぶっ壊してたけど」

「あー。もう、あの味気ないところに住む理由もないしなぁ。どうしようか……」

「俺ん家とか来るか?」

「ええ? 遠慮しとくよ。こんな牛頭の奴連れて帰ったら村八分待ったなしだぞ。妖怪らしく、どっかの森で暮らすかな。ほら。ハイカロリー山の、豚神の森とかさ」

「ああ、あそこ。ヤブ蚊とかすげーいたぜ」

「嫌なこと言うなよ……」

「……」

「……」

「…………」

「まあ……そうだな。いつでも会いに来てくれ。寂しくても、そうじゃなくてもな」

「やめろよ。そう言われるとなんか行きにくくなる」

「はっはっは、気にするタマかよ」

 

「…………」

「……なあ」

「ん」

「勿論そんなこと望んでないし、そんなことにならないように頑張らなきゃいけないけどさ。

 ────決着は、世界が滅びた後につけようぜ」

「……。……なんだそれ」

「つまりだな。もし世界が滅びても、俺はお前を独りにしないから、楽しみにしとけってことだ!」

「なんっで余計気持ち悪い言い方すんだよやめろぉ! っつーか、予知者のお前が言うと縁起悪いんだよ!」

「あーはっはっは、だから()()()()んだろ! ほら、早く起きろ! 多分もう昼過ぎくらいだぞ! 『必殺マジシリーズ』、マジデコピン────」

 

バチィン!!!!

 

い゛っっっっ……てえっ!!! おまっふざけっ────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今日見た夢ぇ?」

「おう」

「夢なんて見たっけ? ああ、夢っていうか、新しい『予知』ならあったぞ。まさかの激アツ展開が畳み掛けてきてさぁ、俺興奮して全然寝れなかっ……なんだよその顔」

「うん。まあ俺も今日見た夢の内容なんて詳しくは覚えてないんだけどさ」

「ああ」

「なんかムカつくから、一発殴らせてくれ」

「え……いやっちょっ待っ……」

 

 





出典:単行本9巻特装版ドラマCD「桃太郎?」
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