灯火、使徒より賜りて   作:今津

21 / 21
番外編:みている

 

 

 

ヒーロー協会本部、応接室。

大きな窓の外に広がる荒野は夜の闇に包まれ、はるか遠くに街の灯りが小さく見える。

広い部屋の中央に置かれているL字型のソファに、手足を投げ出してだらしなく寝転がる男がいた。

 

……だらしないというか、整った顔も型なしなほど、魂が抜けて正気を失ったようにぼけーっとしていたのだが。

 

 

「……パンプキンマン?」

「はっ……!?」

 

『パンプキンマン』と呼ばれた青年は、声をかけられてはじめて誰かに見下ろされていることに気付き、無駄に大きな目を丸くしてバッと上体を起こした。

数秒呆然としたあと、ソファの前に仁王立ちしている人間を見上げて、パチパチとまばたきをする。

 

「────()()()?」

「……」

 

他人の覚えが悪いパンプキンマンにとって、顔と名前がすぐに一致する相手は数少ない。

協会幹部のシッチは、その数少ないうちの一人だった。特に個人的な関わりがあるというわけではないが、そうなのだ。

 

 

シッチは小さく息をつき、無駄に大きな目で見上げてくる青年の顔を見下ろした。

かつて覆面で活動していたA級ヒーロー、『パンプキンマン』。つい最近明かされたその素顔は……確かにイケメンだ。しかし今は顔つきに疲れが隠せていない。

 

「応接室で寝ている人間がいると部下に言われて、様子を見に来たんだが……こんなところで何をしている」

「あー……次の移動まで30分くらい休憩があって……あっ今何時だ……あと5分」

「……そうか……今日は10月31日だったな」

 

つまりは『パンプキンマン』というヒーローの、一年で最も忙しい日というわけだ。

 

特に今年は、今までほとんど広報担当だったヒーローの『イケメン仮面』がスキャンダルで消え、同じタイミングで彼の整った素顔が世間に知れ渡ってしまった。イケメン仮面に次ぐ順位だった彼に全てのしわ寄せが押し付けられているのは、シッチも把握していた。

さらにはネオヒーローズの台頭や、ハロウィン需要で競合していたゾンビマンと連絡が取れないなど、様々な要因が重なってしまっている。

 

ハロウィンという日はただでさえ民衆が浮き足立ち、それに当てられた怪人の活動も活発になる傾向にあるというのに。退治とは全く関係のないところでヒーローが駆けずり回って気疲れしているのには、“サポートする側”として不甲斐なさを感じざるを得ない。

……と、シッチが少し思考している間にも、パンプキンマンは再びぼけーっとしはじめていた。

 

「大丈夫か? 水でも持ってこよう」

「あー、いいよ、ありがとな」

「そうか……」

「挨拶回りとか一応頑張ろうと思ったんだけどさぁー……、昨日の今日でショックで全然やる気出なくて」

「昨日……? 何かあったのか」

 

放置するとそのまま五分が経ってしまいそうで目を離すのもはばかられたため、話を膨らませてやる意味で一応、尋ねてみると。

彼は気の抜けた顔のまま、視線をシッチの方によこした。

 

「信じたくないもんを視ちまって……」

「…………」

 

そこまで親しくないので根掘り葉掘り聞くという選択肢はないが、それを聞いた瞬間、シッチの脳裏には“信じたくないもの”の可能性がいくつか過ぎった。

 

「そ、そうか……」

「薄々察してても、信じたくなかったから、どうしても都合のいい解釈しちまっててさぁ……」

「そうだな……」

「あ。トリック・オア・トリート」

「え?」

 

自分の人生と重ねてしんみりしかけたが、パンプキンマンは突拍子もなく話を変えて、ソファの脇に置いてあった紙袋をシッチに押し付けた。

袋の中を見てみると、可愛らしくラッピングされたスイートポテトが大量に入っている。

 

「俺の手作りだから。信用してくれていいぜ」

「あ、ああ。ありがとう」

 

「(言う方が渡すのか?)」と困惑するシッチをよそに、パンプキンマンはソファから立ち上がってカボチャを被った。

そうしていれば、見慣れた姿だ。やつれている顔は隠される。

 

「俺も、あんたのことは信用してるからさ」

「……我らの『パンプキンマン』にそう言ってもらえるなら光栄なことだな」

「はっはは」

 

その時、応接室の扉が開いた。扉の向こうに、地味だが見慣れない顔の職員が立っている。

 

「パンプキンマン……さん。お時間です」

「おー……じゃあな、シッチ」

「パンプキンマン。私が言えたことじゃないが、無理は禁物だ。君の本分はヒーローで、怪人との戦いなのだから」

「俺としてもそうしたいのは山々だけどな」

 

長い足で歩き出したパンプキンマンは、応接室を出る直前、振り返る。

 

「あんたが死ぬ未来が視えないように、祈ってるよ」

 

 

 

「…………『未来』?」

 

 

 





オリ主:悪い やっぱ辛えわ

あの世界の暦がよくわからないのですが、とりあえず10月31日がハロウィンということにしておきます。
突貫工事が間に合いませんでした。
ONE版……10月30日更新……第156話……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

GET BACK(作者:今津)(原作:ジョジョの奇妙な冒険)

▼ジョニィ・ジョースターの兄に憑依転生したオリ主が、訳あって弟の代わりに『スティール・ボール・ラン』(SBR)レースに出場する話。▼次の更新→二期配信の秋までには……。▼※基本原作沿い。ジョニィ不在。原作死亡キャラ生存予定。▼※宗教、競馬について不勉強なことをお許しください。▼※オリ主は「多重転生者」です。(前世の描写はありません)▼※pixivにも投稿して…


総合評価:2094/評価:9/連載:7話/更新日時:2026年03月19日(木) 20:00 小説情報

現代にTS転生したけど馴染めないから旅に出た(作者:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次))(オリジナル現代/日常)

――――――――――――――――――――――――――――▼【NEW!】▼2026/4/20:全話のリライト、推敲を行う。それに応じ、姉妹のイメージ画像を人物紹介にて投稿。▼※注意:リライトした物はタイトルに「新:〇〇」のようにしてありますので、そこじゃない所を流れで読むと混乱するかもです。▼4/8 本編完結。現在アフターストーリー更新中▼4/13 2章の構…


総合評価:13836/評価:8.74/完結:29話/更新日時:2026年04月20日(月) 01:19 小説情報

レミリア・スカーレットの杞憂(作者:アステリアスエ)(原作:HUNTER×HUNTER)

レミリア・スカーレットは、HUNTER×HUNTERの世界にいた。▼そんな紅い悪魔の、だいたいろくでもない冒険物語。▼※本作は、葛城様の『伊吹萃香もどきが行く』から影響を受けています。


総合評価:659/評価:7.62/連載:9話/更新日時:2026年07月23日(木) 19:02 小説情報

ようこそ慎重至上主義の教室へ(作者:GC)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

「レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)――たとえ相手がただの高校生であってもな」▼【挿絵表示】▼希望する進路、就職先がほぼ100%叶うという全国屈指の名門校・高度育成高等学校。▼最新設備が使用でき、毎月10万円相当のポイントが支給される夢のような学園に、一人の新入生が入学する。▼彼の名は、竜宮院聖哉。▼容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群。すべてにおい…


総合評価:646/評価:7.04/連載:27話/更新日時:2026年05月25日(月) 23:08 小説情報

白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。(作者:キング・クリムゾン!!)(原作:ONE PIECE)

とんでもなく長い話にする予定なのでどうかよろしくお願いします。


総合評価:505/評価:6.89/連載:20話/更新日時:2026年07月04日(土) 20:44 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>