灯火、使徒より賜りて   作:今津

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1-7(おまけ)

 

 

 

ジェノスが無許可で食器を洗っていると、ふと、ウィルが近寄ってきて隣に並んだ。

 

リビングの方では、サイタマとキングがレースゲームで対戦し、それを見ているアマイマスクが何やら野次を飛ばしている。

 

「ジェノス、ありがとな」

「いえ、これくらい当然です」

「……」

「…………どうかしましたか?」

「うーん……」

 

明らかに何かを言い淀んでいる。家事に独自のこだわりがあったのだろうか? そういう風には見えないが。

手を動かしつつ次の言葉を待っていると、しばらくして、彼は口を開いた。

 

「少し、未来の話をしてもいいか?」

「……!、はい」

 

泡にまみれた手を止める。

『予知』は、ウィリアムについて最もデリケートな部分の一つだ。万が一にも聞き漏らすようなことは許されない。

これはジェノスの勘だが、彼は『予知』について二度は語らない気がするのだ。

 

ウィリアムは長い睫毛を伏せて、心を決めたように、瞼を上げた。

 

「お前は近いうちに、激しい怒りに襲われるかもしれない。人生が揺れるほどの激しい怒りだ」

「……!!? ……っそれは、まさか────」

「まあ聞けよ。でさ、お前はサイタマを頼るだろ。その時、少しでいいから、俺の事を思い出して、二人で動く前に連絡を入れてほしいんだ」

「………………」

「そしたら……お前の大事な人をひとり、守ってやるから」

 

とん、と、ウィルの拳がジェノスの胸を叩いた。

 

「……!!!」

 

裏を返せば。

これは、ジェノスの"大事な人"が近いうちに害されるという警告だ。

それも、サイタマ先生の力だけでは足りず、命に関わる。

 

「約束してくれるか?」

 

ウィリアムは多くを語らない。予知能力者の不用意な言葉は周囲を不安に陥れるからだ。そのうえ、最近は『予知』の精度があまり良くないとぼやいていたのを知っている。

そんな彼が、わざわざ言葉にして打ち明けている。……その事の重大さがわからないジェノスではない。

 

「はい」

 

聞きたいことは数え切れないほどあった。

詰め寄りたい気持ちもあった。

ジェノスはそれら全てを飲み込み、頷いた。

 

「約束します」

「うん」

 

彼は薄く笑って、ジェノスを見つめた。

 

「借りは返すよ。……必ず」

「…………」

 

 

 

「何コソコソ話してんだ?」

 

────背後から声が聞こえた。

 

「ッ──!!? せ、先生ッ!!」

「あ」

 

慌てて振り向いた拍子に泡で滑り落ちたコップを、サイタマが空中でキャッチする。

 

「何してんだよ」

「す、すみません先生」

「ちょっと大事な話があってな、ジェノスと話つけてたんだ」

「大事な話ぃ?」

 

首を傾げるサイタマに、何を思ったか、ウィリアムはにやりと笑った。

 

「サイタマには秘密」

「は?」

「……」

「え? 何? ……めちゃくちゃ気になるんだけど? ジェノス?」

「先生。申し訳ありません」

「はー!?」

 

「言っておくが!!」

 

大声に振り向くと、キッチンの出入口で、アマイマスクがビシリとこちらを指さしていた。

 

「スキャンダルは厳禁だ」

 

「…………」

「…………」

「…………」

「……」

 

「……ふっ……ウィルさんも貴様には言われたくないだろうな……」

「……!!!!」

「いいぞ〜ジェノス〜言ってやれ〜」

「付き合ってらんねぇ……キング、対戦しようぜ……カワイイ系のモンスター重点的に育てたからさ……」

「ウィル氏さぁ……せっかく気配消してたのに話しかけてくるよね……うん、そういうとこあるよね……」

 

 

 

 





前編は終了です。
ここまで閲覧ありがとうございます。

あとはアマイマスク視点の中編と、
サイタマ視点の後編です。
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