機動戦士 Gundam GQuuuuuuX ~終戦という名のAct call~ 作:ぼっちクリフ
後にジオン独立戦争(連邦での名称は一年戦争)と呼ばれるジオン公国と地球連邦の戦争は連邦軍の完全撤退という形で幕を閉じた。
この戦争の最後の戦場となったのが月面都市グラナダである。
連邦軍のソロモン落とし、それを阻止するジオン公国軍の勇士達。そして「英雄」シャア・アズナブルの起こしたサイコミュ現象「ゼクノヴァ」。後にジオン・ズム・ダイクンから始まる建国神話の最終章だ。
そして神話が終わり、独立国家ジオンの歴史が始まる。
その最初の戦場となったのもここ、グラナダであった。
ジオン公国と地球連邦の終戦協定。その事前交渉の為に3人の人物がグラナダで顔を合わせた。
ジオン公国代表
マ・クベ准将
地球連邦代表
アデナウアー・パラヤ
仲介およびサイド6代表
カムラン・ブルーム
地球圏の命運を左右する会談が始まろうとしていた。
「以上が草案になります」
カムラン・ブルームが読み上げた終戦協定案を聞き、連邦安全保障会議員アデナウアー・パラヤはハンカチで汗を拭った。想像以上に厳しい条件を如何に緩和するか。彼に与えられた権限でどこまで出来るのか。想像もつかない。
「……その。私の一存では何とも」
「我々は時間をかけるつもりは無い」
低く、よく通る声でマ・クベが告げる。アデナウアー・パラヤは一瞬硬直しながらもマ・クベの視線を伺い、再び書類に目を通す。
・ジオン公国および各サイドの完全独立
・地球連邦軍の宇宙からの完全撤退
・スペースノイドが宇宙移住に際し連邦から借りた引っ越しローンの全額免除
・各コロニーへの禁輸品目の廃止および関税撤廃
このあたりは予想できたし十分認めるつもりであった。しかし、以降の条文は地球連邦にとって看過しがたいものだ。
・コロニー管理省を民営化しコロニー公社とする。コロニー公社の開業資金は連邦政府が負担する
・コロニー公社は半官半民とし、ジオン公国が管理運営する
・コロニー公社は各サイドの復興および再生を担当する
今までコロニーに対し空気税・水税・エネルギー税等の諸々のコロニー税をかけていた悪名高きコロニー管理省。それを解体し民営化、その資金を連邦に出せという。しかもコロニー公社が各サイドの再建を担う以上、その初期費用は莫大なものとなる。実質的な賠償金だ。
さらに条文は続く
・フォン・ブラウン市の割譲およびそれに伴いジオニック社によるアナハイム・エレクトロニクスの買収を認める事
・ジオン公国軍および連邦軍の大幅な軍縮
・ジオン、連邦それぞれの戦争責任の免責。ただしソロモン落としの責任者は処分する
フォン・ブラウン市の割譲は仕方がない。そもそも宇宙からの完全撤退をする以上、フォン・ブラウンに駐留する部隊を派遣する事が出来ない。しかも月面に対しソロモン落としを敢行しようとした連邦に対し、月市民の怒りは頂点に達していた。この状況でフォン・ブラウン市を維持できるわけがない。
問題は他3つだ。連邦軍に対し武器を供給するアナハイム・エレクトロニクスの買収、一方的な軍事比の取り決め、とどめにソロモン落としを理由とした軍上層部の更迭強要。要は地球連邦軍を骨抜きにしようというのだ。
(しかもお前が南極条約違反を指摘するのか……!)
アデナウアー・パラヤは書類越しにマ・クベの顔を睨みつける。オデッサ撤退時に核を使用したとされる男が、したり顔で南極条約違反を指摘する。その厚かましさに思わず怒鳴りそうになる。しかしアデナウアーも外交官であった。可能な限り平静を装いながら告げる。
「……では、せめて随行員と相談を」
「早めに戻る事だな。我々のビグ・ザムがダカールに降り立つ姿を見たいなら、いくらでも時間をかければ良いが」
無言で立ち上がったアデナウアー・パラヤは急ぎ足で退室する。一部始終を見ていたカムランは大きくため息を吐きながらマ・クベにたずねた。
「吹っ掛けすぎでは?」
「断る事など出来んよ。政府と軍部が決別しておいて戦争が続行できるわけがない」
度重なる連邦軍の醜態――V作戦漏洩、オデッサにおけるエルラン中将の裏切りによる大損害、ルナⅡ失陥。これらの失態の数々に対し、連邦議会は堪忍袋の緒が切れた。軍のさらなる予算申請を全て却下し独自に終戦交渉を開始したのだ。ソロモン落としはその終戦交渉を潰す為の連邦軍最後の足掻きだった。しかしそれも失敗したとなった今、連邦軍の権威は地に墜ちた。
マ・クベの予想は当たった。アデナウアー・パラヤは一部の修正のみを求め、それ以外の条件を飲むと言ってきたのだ。
「コロニー公社の開業資金の件ですが、一度に全てをお支払いする事は財務上不可能です。サイド3およびサイド6の管理運営に支障のない範囲での開業資金を一括提供し、その後各サイドの復興状況に合わせて順に予算を承認するという形で如何でしょう?」
要はサイド3およびサイド6の運営が支障ないようにはするが、各サイドの復興資金提供は議会審査が長引くなどと言った理由で予算執行が出来ない――つまり踏み倒すつもりだろう。この期に及んで賠償金を値切ろうとする努力をマ・クベは心の中で嘲笑った。
だが、最終的にマ・クベはこの提案を飲む。要はジオンが各サイドの復興責任から逃れられれば良いのだ。「各サイドの復興が遅れているのは連邦が資金を出し渋っているから」。この大義名分があればジオンの面子は潰れず、また連邦という「敵」を維持できる。困るのは宇宙難民達であって、ジオン国民ではない。
会議室の三者三様、出来上がった条約文を眺める。
マ・クベは満足そうに
アデナウアー・パラヤはほっとして
カムラン・ブルームは重苦しい表情で
それぞれ本国へ条約締結の打診を行った。
宇宙世紀0080.1.03
月面都市グラナダにてジオン公国と地球連邦による終戦協定が結ばれる。
それは独立戦争の幕が下りたのと同時に、『戦後』という新たな地獄の
GQuuuuuuXを見て脳が焼かれたので書きました。
この後は終戦から戦後にかけての交渉や政治模様をポツポツと書いていく予定です。