機動戦士 Gundam GQuuuuuuX ~終戦という名のAct call~   作:ぼっちクリフ

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【本作は機動戦士 Gundam GQuuuuuuXの致命的ネタバレを含みます。未視聴の方はただちに本作の閲覧を中止し本編をご覧ください】


第3章 0080.1.14 非武装中立の末路

けたたましくなるサイレン。走り回る人々。

オペレーターはまるで怒鳴るようにマイクに向かって叫んでいる。

 

「対象のジオン艦に告げます、停船して下さい! 繰り返します、停船して下さい!」

「貴艦はサイド6の領域を侵犯しています! 管制に従って下さい!」

「市民にシェルターへの避難命令を! これは、ジオンの侵攻です!」

 

 

 

1月14日、終戦に沸く地球圏に突如とんでもないニュースが飛び込んで来た。

ジオン公国軍、サイド6へ突如侵攻。軍事力を持たない同サイドをあっという間に占領下に置き、大統領以下主要閣僚は全て拘束された。公国軍のムサイ3隻が8バンチ・パルダコロニーの宇宙港に駐留しMSを展開する事態となり、すわ開戦かと市民に緊張が走る。

 

「どういう事だマ・クベ、誰がサイド6侵攻などを!?」

「命令の出所は総帥府のようです。おそらくは、ギレン総帥直々の命令かと」

 

グラナダ基地でキシリアは報告を聞き歯噛みする。

なるほど、兄の考えそうな事だ。キシリアの作り出した終戦とそれによる平和が余程気に喰わないのだろう。中立地帯であるサイド6を占領する事で己の実力を誇示すると共に、キシリアへの牽制とするつもりなのだ。

 

「連邦の動きは?」

「議会より我が方に対する非難声明が出されました。それと、終戦条約破棄を掲げる強硬派が勢いを増している、と」

「連邦軍はどうなっている」

「今の所動きは見えません。地球衛星軌道上の監視艦隊からも打ち上げの兆候は無い、と」

「ならば良い」

 

分かってはいたが、報告を聞いて安堵する。連邦が再度開戦をする様子は無い。ならば、軍事的な問題はほぼ無いと言って良いだろう。問題は外交面だ。

 

「フォン・ブラウン市より連絡です。彼らは自分達も侵攻を受けるのではないかと懸念を表明しています」

「私の名で通達を出せ。フォン・ブラウン市の接収に置いて艦1隻、MS1機たりとも市内へ侵入する事は許さんとな」

 

キシリアは忌々しそうに吐き捨てる。まったく、フォン・ブラウン市の接収すら終わっていないのにサイド6侵攻などと! いや、兄の狙いにはそれもあるのだろう。サイド6を自勢力圏に入れると同時にフォン・ブラウン市の接収に支障が出るように仕向けているのだ。いやらしい事子の上ない。

 

「マ・クベ閣下、サイド6に進駐したクワメルと通信が繋がりました」

 

副官ウラガンの言葉にマ・クベはキシリアの方を向く

 

「いかがなさいますか?」

「私が出る、モニターに出せ」

 

剣呑な視線をモニターに向けるが、そこに見出した人物にキシリアは驚きを隠せなかった。

 

「シャリア・ブル!? 貴公が何故!?」

「総帥の命です、キシリア閣下」

 

そこに映っていたのは『ソドンの英雄』の一人、シャリア・ブルだった。確かに彼は元はギレン総帥直々の命でニュータイプ部隊へと出向、そこを経てソドンへと所属していた。故に戦争が終わった今、再び総帥の命に従っても何もおかしくはない。しかし。

 

「意外だな。貴公がこんな政治的な任務を受けるとは」

「必要になった、と思いまして」

 

薄く笑うシャリア・ブルを見てキシリアは目を細めた。この男は、今までとは違う。そう思わせる何かがあった。

 

「必要とな? 何が望みだ」

「――お人払いをお願いできますか?」

 

キシリアは司令室から退出するようマ・クベとウラガンに命じる。忌々しそうにしながらもマ・クベはその指示に従い、ウラガンも彼について出て行く。

 

「もう一度聞こうか。何が望みだ?」

「シャア大佐を探しに行こうと思いまして」

「……はぁ?」

 

思わず間抜けな声を出しながらモニターを二度見する。冗談を言っているようには見えない。穏やかに笑いながら、シャリア・ブルは繰り返した。

 

「はい、シャア大佐を探しに行こうと考えております」

「おい――シャアは」

「その方が閣下にとってもよろしいかと存じます」

 

キシリアはふと考え込んだ。

シャアが見つかるなどあり得ない。ソロモン落としを阻止した後、ソロモン内部から周辺宙域まで、あらゆる可能性を考えあらゆる機材を使い、ジオンにしては珍しく人海戦術でシャアの行方を探したが、痕跡すら発見できなかった。シャア・アズナブルの失踪は確定だ。

 

だが、公式に戦死とはなっていない。

 

シャアはスペースノイドにとっての大英雄だ。その存在はあまりに大きく、誰からも反論する事の出来ない『御旗』として使える。『シャアの捜索』。それはキシリアにとって各サイドの自治に介入する絶好の口実となる。本国と行政府をギレンに抑えられているキシリアにとって、戦争が終わって一番困るのが独自の外交を展開出来ない事だ。軍部を抑えているとはいえ、公的な立場はあくまで総帥の下の軍人。その彼女が大々的に各サイドの要人と交渉する名目となるだろう。

 

「考えたな。誰の入れ知恵だ?」

「別に――大佐ならそう考えたであろう、と」

「フン、隠したいならまぁ良い。ギレン兄上はサイド6に関して私に口答えさせない為にソドンの英雄たるお前を使ったのだろう。しかしお前はギレン兄上と運命を共にする気は無い。そう考えて良いのだな?」

 

シャリア・ブルはモニターの前で大きく一礼した。キシリアはそれを見て頷く。

 

「分かった、サイド6はどうするつもりだ?」

「半年ほど占領しておく予定です。中立地帯で日和見をしていた者たちには良い薬でしょう」

「結構。ではその間にマ・クベを通じて各サイドに交渉させる。コロニー公社へのコロニー管理税の支払い、宙域およびサイド内上空でのジオン軍艦の管制権・航行権に関する優越、シャア捜索に関しての航宙データの閲覧権、シャア捜索隊に対する補給の斡旋等の条約案をまとめよう」

「ありがとうございます」

 

再び一礼するシャリア・ブルに満足しながらキシリアは回線を切った。

 

 

 

 

薄暗いモニターの明かりのみが光る部屋で、シャリア・ブルはゆっくりと視線を天井に向け、笑った。

どうやら総帥もキシリアも勘違いをしているようだ。

だが、別に訂正してやる義理も無い。

 

「私は大佐を探しに行くだけなんですがね」

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