機動戦士 Gundam GQuuuuuuX ~終戦という名のAct call~   作:ぼっちクリフ

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【本作は機動戦士 Gundam GQuuuuuuXの致命的ネタバレを含みます。未視聴の方はただちに本作の閲覧を中止し本編をご覧ください】


第4章 0080.7.25 かくて火種は撒かれ

「それで貴公はおめおめ帰還したのか! 平和が戻りめでたしめでたし、とでも言うつもりか!」

 

総帥府主席補佐官エギーユ・デラーズ中将は目の前でしれっと報告するシャリア・ブルに対し一喝する。

折角進駐したサイド6は併合される事もなく、むしろキシリアの手により再度独立の条約が結ばれてしまった。シャリア・ブルは総帥の意を受けてサイド6に進駐したにも関わらず何の手も打たなかった。デラーズは怒りをあらわにするが、シャリア・ブルは穏やかに語り始める。

 

「別に良いでしょう、軍事力を持たないサイドひとつ、勢力圏にする事に何の意味があるのですか」

 

虚を突かれたようにデラーズは怒りを忘れる。ギレンとキシリア2人の政争は今後『人』と『場所』、その取り合いになると踏んでいたからだ。しかしシャリア・ブルは『場所』など意味が無いと言外に主張している。

 

「貴公は何を考えている?」

 

そもそもデラーズはニュータイプというものに懐疑的だった。主であるギレン・ザビが主張する優勢人類生存説。それはジオン・ズム・ダイクンの唱えた人類の革新『ニュータイプ論』を元にしているが、所詮は統治の為の方便だと考えていた。キシリアの設立したフラナガン機関も優秀なパイロットを囲い込む為のものだとしか捉えていない。目の前のニュータイプ、シャリア・ブルに関しても、優秀な事は疑いないがニュータイプというのは胡散臭く感じていた。

 

「実はこちらに関して提案がありまして」

 

シャリア・ブルが示したのはサイド6からの撤退および再度独立に関してキシリアが交わした条約の一項目だった。

 

『サイド6はその独立にあたり軍警を組織し自らの手で治安維持を行い、他勢力の力を借りない』

 

という一文。

要は連邦の拠点とならぬよう釘を刺し、かつあくまでもその規模は『軍警』に留め自らの軍隊は持たないという枷を嵌めた条文だ。

 

「この条文がどうした」

「サイド6軍警に対し、我が軍のMSを払い下げる提案を内密に打診しました。向こうも乗り気のようです」

 

デラーズは目を見開いた。目の前の男は一体何を言い出すのか!?

 

「貴公、正気か!? MSをサイド6に渡すだと!?」

「もちろん旧式のザクのみです。ガンダムほか最新鋭機は渡しません」

「それが何を意味するか分かっているのか!?」

「逆にお聞きしますが……何を意味するのです?」

 

デラーズは再び言葉に詰まった。

MSは最新鋭の軍事技術。それを渡せばサイド6の軍事力は飛躍的に高まり、ジオンの脅威となる……

 

そこまで考え、思考を巡らせた。

 

軍警規模の組織にザクを与えた所で、何の脅威になると言うのか。

ザクは確かに名機だが、流石に旧式化しているのは否めない。纏まった数があれば脅威になるのは確かだが、それはジオンの脅威となる数……例えば連邦と協力し彼らがジオンに反旗を翻せばの話だ。サイド6と地球を繋ぐ衛星軌道はジオンの勢力下にある。直接の脅威になる事は、ない。

 

「――確かに、ジオンの脅威になる事は無いかもしれん。だが、旧式機を払い下げる事に何の意味があるのだ」

「払い下げるザクは旧宇宙攻撃軍および突撃機動軍から抽出します――キシリア様の力を削げるではないですか」

 

確かにその通りだ。先の独立戦争で肥大化したジオン公国軍は、国力に比して軍の規模が大きすぎる。軍縮が必要なのだが軍を握るキシリアは己の勢力を削られる事を嫌い、作業は遅々として進んでいなかった。しかしこの条約はキシリアが結んだものだ。その条約実現のためにザクを払い下げろ、と命じれば条約を結んだキシリア自身が断る事は出来ない。労せずして彼女の持つ戦力を吐き出させる事が出来る。

 

「考えたな、シャリア・ブル。てっきり貴公はキシリアについたものと考えていたが」

「私はそこまで上手く立ち回る事などできません」

「抜かすわ。このような策を考えておいて立ち回れないなどと、片腹痛い」

 

シャリア・ブルは一礼する。そこでデラーズは目を細め、たずねた。

 

「それで?」

「それで、とは」

「隠すな。このような策を献上するからには、貴公にも何か望みがあるのだろう」

 

現状、軍部内でギレン派は不利な状況にある。そんな中でキシリア派に一度組した男が再度ギレン派に献策をするのだ。何か望みがある筈だった。

シャリア・ブルは穏やかな態度を崩さず口を開く。

 

「総帥府直属の部隊を結成したく存じます」

「直属部隊? 何をするつもりだ」

「大佐を探しに」

 

大佐とは間違いなくシャア・アズナブルの事だ。シャア・アズナブル捜索隊。確かに、結成されてもおかしくは無い。救国の英雄たるシャアは公式では行方不明、その行方は何としても突き止めなければならない。

なるほど、とデラーズは頷く。ギレン総帥の泣き所は実働部隊を持たぬ事だ。親衛隊と本土防空隊というふたつの組織は持つが、この両部隊をサイド3から動かすにはそれなりの理由が居る。おいそれと動かす事は出来ない。対して「総帥直属のシャア・アズナブル捜索部隊」ならば自由に動く事が出来る。その存在はギレンにとっても貴重なものとなるだろう。その指揮官ともなれば、ギレン派の中でも重要な地位を占める事になる。

 

「貴公も意外と俗なようだ。出世欲とは無縁な男と思ったが」

「私は大佐を探しに行きたいだけです」

「まぁ、そういう事にしておこうか」

 

デラーズは満足そうに頷いた。この男は総帥の役に立つ。そう確信し、彼の案を纏めて自分の名を書き加え、総帥への提言書として提出する事に決めた。

 

 

この『MS払い下げ政策』は後に民間にも拡大し、後世において宇宙世紀0080年代の治安を決定的に悪化させた原因として批判される。

しかし当事者たちにとって、後世からの批評など何の意味も無かった。

 

 

「……ええ、MSを払い下げれば当然治安は悪化するでしょう。各地でMSを使った戦闘、テロも頻発します。そうなれば――『赤いガンダム』にとって、格好の活躍場所となるわけです。目撃情報も出てくるかもしれないでしょう?」

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