原作知識がほとんど役に立たないんですけど……   作:10年待ちました

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フリーダムウォーズ、リマスター版発売おめでとうございます!


驚くほど役に立たない原作知識

「"扉"の解放を確認した。目標、煉国製アブダクター。仮称:ペルタトゥルム」

 

 思い出されるのは、触鎖を入口で撃つ苦行。本当にあれは……吸い込みから突っ込んでくる鎖をどうにかしろ。Vitaを何度ベッドに放り投げたことか。

 

「全面三基のバリアユニット破壊後、背部の箱を破壊する。射撃部隊は触鎖の処理を」

「天罰実行。ワルキューレ部隊、行動を開始」

 

 そう告げるとともに、フードで顔を隠した女性たちが竜のアブダクター──ディオーネからニライカナイPT最上部へと降下する。天井は扉が開いた時のエネルギーで破壊されており、そのまま降りることができた。彼女らが降りるのを確認し、俺もディオーネから飛び降りる。腕を横に振って空間の狭間を作り、転移。

 

 それにしても、ワルキューレ部隊ってなんだよ……原作で一言も言及されてないぞ。とりあえず、力場を投射しバリアユニットを内側から切断しておいた。呪術というか、新感覚魔法バトルみたいになってるな……

 


 

 念のために記録を残しておく。この体で死ぬことはないだろうが、記憶喪失や記憶改竄のための備えだ。記録へのアクセス回数が多いと疑われる可能性があるので、特筆すべき事のみを記す。

 

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 前提として、俺は前世の記憶を持っている。西暦2000年代の日本に暮らしていた男性のものだ。

 変わってこの世界はWill'O(ウィルオー)なる万能新資源が各種エネルギーの代わりに使われている空中都市文明。このウィルオーによって雷や氷、純エネルギーといった属性武器が作れたり、魔法のような使い方が出来たりするから、技術レベルは前世と比べるべくもない。

 社会体制については管理社会というか、ディストピア的とでも言うのだろうか。食事は味のしない合成完全食で、職業は適性によって自動的に振り分けられる。特に男女の差異で何かあるわけでもなく、前世とは異なる性別になった俺が生活で困ることはなかった。というより、そもそも人間ですらないらしい。デザインドヒューマンというか、天使と呼ばれている。

 なにか既視感がある気がしたがピンと来ることもなく、割り当てられた職業をこなす生活だ。

 ドラゴンや蜘蛛、虎などをモチーフにした巨大ロボ──アブダクターの研究と強化をして敵対勢力と戦う、明らかに戦闘職と研究職を兼業しているのだが……割り当ておかしくない? 自分が強化したアブダクターと一緒に前線で戦うのは、気分が高揚するからいいけれど。

 それにしても、蜘蛛型の型番がパラドクサだったり、もしかして天獄って遥か未来の地球に属してる? なんか天獄上層部は"至高存在"だか"神"だかの再現にご執心のようだし。

 ちょうど、友人にそういう神話とかに造詣が深いやつがいる。なんか知ってるかもしれない。

 

「というわけなんだけど。こういう談義をルキウスに振っても神の御業がどうのこうのとしか答えないだろうからさ。こういう雑談は、キミとした方が楽しいんだよね」

 

「神話の類型について細かく語ったところで、お前は興味を持たないだろう。必要としているのは俺の所感だな」

 

 立つと二メートルくらいの身長で見下ろしてくるCV山寺さんの男ことサイモンが答える。イタリアのマフィアみたいなスタイルの服装だ。それに、ホントにCV山寺さんなんだよな。

 天獄上層部の同僚としてよく話す相手というか、彼は比較的前世の価値観に近い考えを持っているから話しやすいのだ。他と圧倒的な差をつけて。他がひどいともいう。

 

「神話において、神とは力だ。そして力は闘争によって発揮される以上、我等だろうと神だろうと戦いを求めるのは本能と言えるだろう。もちろん、人もな」

 

「だから、人間は天使に勝てないって?」

 

 もちろん違うだろうけど。円滑的な会話のためには対立意見の発信もまた効果的……っといけない。面倒な知り合い(ルキウス)の話し方が移ってきてる。

 

「お前の思っている通りだ。人間は、時に思いがけない成長や躍進を遂げる」

 

 ……元人間としては同感。なんかすごい成果上げる偉人とかいるよね。サイモンも俺の考えは理解しているようで、会話もスムーズに進んでいく。

 

「戦いこそが人間の可能性だってやつ?」

 

 前世でやったゲームからの引用を口にしてみると、サイモンは珍しく目を見開いた。驚いた顔を見るのは初めてだ。

 

「……そうかもしれないな、エイワス。変革の可能性だ」

 

 魔法みたいな技術があるんだ。世界を単騎でひっくり返すような、主人公じみた人間もどこかに存在するかもしれない。今のそれなりに安定した生活が壊れるのは少し残念だが、その光景を見てみたい気もある。

 というより、人間の英雄はいつか現れるだろう。なんか人間を失敗作と断じてる天使とか、明らかに敵じゃん。

 

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 そうしていい感じに働きつつ日々を過ごしているとだ。

 ──天使に異世界転生したと思ったら、転生した国が異世界の地球に転移した。それも、西暦10万年くらいの世界に。

 

「もしかしなくても、これってなにかの物語だったりする?」

 

 現地の人間勢力とどうするかは上層部の会議でも揉めていて、友好派と急進派に分かれた感じだ。

 選民思想拗らせた金髪ロン毛(ルキウス)がいわば急進派であり、あいつカリスマと個の武力はあるから勝手に地上を襲撃しに行った。付け加えるなら、こいつが上層部の主流派だ。人間のことを、神の作った唯一の失敗作とか言っている。実際、地上にある人間文明は滅びかけだし。8回くらい滅亡の危機に面しているっぽい。

 地上と友好関係を築きたいと言っていたサイモンは、なんか地上に降りて大量の技術を無断で流出させていたし。あいつ友好派というより自国の内憂って呼んだ方が適切だと思う。間違いなく打倒天獄が目標でしょ。

 どいつもこいつも好き勝手しているせいで内部抗争一歩手前だ。やっぱり個人主義共が運営する管理社会はダメだな。

 俺も権力闘争に巻き込まれるし、地上侵攻とウィルオー収奪に不可欠なアブダクター関連技術を扱っていることから急進派寄りと見做されている。ルキウスが会議とかブリーフィングとかで散々呼びつけてくるのも、その印象操作だろう。

 襲撃ついでに見てきた感じ、資源不足だとか諸々で人類滅亡一歩手前という印象を受ける。とはいえこのあたりはサイモンがなにかしら働きかけているようで、完全環境都市(アーコロジー)システムや最新のウィルオー技術を流しているようだ。……最新技術を理解しやすいよう纏めるのは俺の仕事だったが。俺個人としてのスタンスは黙認であり、別にルキウスに対する義理は一片たりとも存在しない。派閥の面倒な会議にわざわざ呼びつけたりしない分、サイモンの方が好感度が高いとまで言える。ルキウス側についているのは、人間の想像力を元に思考存在──神を再現するとかいうプロジェクトが面白そうだからだし。これで、再現された神が捧腹絶倒のマヌケ面だったら笑える。結果として、ルキウスの方が俺の目的に合致しているというわけだ。

 閑話休題。粒子凝集による超高火力攻撃以外の無効化や無意識領域まで含めた意識共有による連携操作など、本当に渡していいのかって技術まで詰め込んだわけだが、いつか誰かが使いこなせるの一点張りだった。

 あと、俺が個人的に進めていたプロジェクトに関心を持っていたようで、幽界──死と生の境界を探査するための人造知生体のデータも引っ張っていた。これは聞く権利があるだろうと聞いてみたら、人類に提供するAI技術に使うらしい。それと、後々必要になるだろうとか言っていたが……

 

 後々に関する真相はすぐに分かった。サイモンの動きが流石に派手過ぎたということで、上層部とサイモンで抗争が発生した。俺はルキウスの派閥に半ば取り込まれていたようで、上層部側という認識になっている。ただでさえ異世界の地球に転移して力が弱まっているのに、さらに内乱だ。なんならいくつかの重要プロジェクトの責任者がサイモンなので、倒すなり捕らえるなりするだけでも悲惨なことになる。もうメチャクチャだ。

 

 高層の果てに俺&ルキウスVSサイモンで決戦になったわけだが。ルキウスの有するウィルオー技術の精髄たる剣、フロレント。サイモンの振るう術式魔槍、ミストルテイン。戦端はそれらの激突によって開かれた。

 フロレントの斬撃が立ち並ぶビルをいくつも切り裂き、サイモンが周囲一帯を凍結させて氷震で都市区画を粉砕していく。俺も転移や空間回帰、アブダクターを即興で構築して戦わせたりと色々とやった。最終的に全員が出し惜しみせず、時間遡行による因果律抹消斬撃に事象改変、暗黒物質による虚数刃といったウィルオー技術の極致が飛び交う戦場となる。俺たち以外であれば足を踏み入れるだけでも消滅する空間。当然この区画がそんな状態に耐えられるわけもなく、崩落を開始した。あそこは今も立ち入り禁止エリアだ。

 

 ことの顛末を語るなら、サイモンは幽界深淵へ追いやられた。このために俺のプロジェクトの資料を読んでたのか? 反骨精神はすさまじく旺盛なようだ。必要なのは、自分の代わりに動ける手駒だろう。あるいは、可能性を自分の元まで連れてくる存在か。"原初の堕落者"とかいう大層な異名までつけられていた。

 

 数年後、アリエス・Mと名乗る少女が夢に出てきたのだが……容姿が妙に俺に似ていた。俺の個人プロジェクトだから、実際に構築される知生体の外見は、暫定的に俺のデータを使っていたわけだし。ともかく、"変革"がどうこう言っていたのを見るに、天獄の打倒を諦める気はないらしい。思わず苦笑してしまった。

 

 

 10万と500年頃。人類はようやくアーコロジーシステムを活用できたようで、パノプティコンという都市国家をいくつも樹立し始めた。伝承由来の名称が多く、最初の方にできたパノプティコンの名前はホウライだったりする。名前が長いってことでPTと略しているようだが、どこかで聞き覚えが……

 資源の枯渇している世界だからか、浪費するだけの下層階級が咎人と呼ばれるようになり、100万年とかいうバカみたいな桁の懲役を背負うようになったらしい。

 

 ──これ、フリーダムウォーズか!




■エイワス
主人公。名前の元ネタはアレイスターの守護天使。ドロップアイテムがどうこうどころか、ドロップアイテムを作る側になった。アリエス・Mの基礎設計担当であり、彼女の容姿はエイワスが元となった。

■サイモン
最初の堕落者。過去改変したりとなんでもありな存在。幽界の最下層に幽閉されていることからも、多分ルシファーがモチーフ。なら、コキュートス的な感じで氷を使うことにした。完全に捏造。

■ルキウス
原作では名前だけ出た。カルロスの本名がクロイツ・テオドシウスでローマ皇帝の名前なので、ルキウスは『アーサー王の死』のルキウス・ティベリウスが由来のはず。誰こいつ?

■西暦とPT紀元
PT法基本条文が整備終了した10万500年からPT紀元がカウントされているので、西暦からPT紀元に切り替わったタイミングはここだと本作では設定しています。

■至高存在
神。設定資料集に名前だけ出てた。失われているらしい。何これ?

■ワルキューレ
設定資料集に載ってた。原作では影も形もない。何これ?
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