【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

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ちょいとスピードアップしてアマテが12歳になるまでは閑話はナシの予定でお送りします。
なんで12歳になるまでかって?
それは後々のお楽しみということでひとつ……。


アマテ・ユズリハ9歳の能力

 小学生の価値観において、なによりも重要視されるものはなにか?

 テストの点数?確かに100点満点を取れれば鼻高々だろう。

 しかし違う。

 容姿?確かに見た目がよければチヤホヤされるし人も集まってくる。

 しかし違う。

 親の金?確かに自分の財布と直結する要素だし、自由に使える分おしゃれにも気を使えるだろう。

 いやその発想はヨゴレすぎてないか……?

 

 とにかく、上に挙げた要素は重要ではあるが1番にはなりえない。

 もっと単純で、万人にも分かりやすく子供時代にしか通用しない要素が存在するのだ。

 それはーーー

 

「アマテちゃんおねがい!」

「任された!」

 

 Aチームのアンカーとしてバトンを受け取ったアマテが、力強く地を蹴り先行するBチームアンカーの男子を猛追する。

 彼我の距離は約10メートル。通常なら逆転の芽は皆無と言っていいだろう。

 しかし、そんなのは関係ないと言わんばかりにアマテはぐんぐん加速し差をあっという間に縮めていき……。

 ゴールまで残り10メートルの位置で逆転を果たした。

 

「すごーいアマテちゃーん!」

「アンカー任せて正解だよー!」

「やっぱすげーよなおまえ!」

 

 バトンを掲げながらドヤ顔するアマテの周りに、男女関係なくチームメイトが集まる。

 その様はまるで英雄を迎える民衆のようだった(大げさ)。

 

 この状況を見れば、もうお分かりだろう。 

 ーーーそう、足の速さ。つまりは『身体能力』である。

 

 

 

 

 

 

 

「おねがいユズリハさん!バレーボール部に入って!」

「いやうちのソフトボール部に!」

「バドミントン部に!」

「水泳部に!」

 

 放課後。アマテは複数の女子生徒に囲まれていた。全員、上級生である。

 理由は彼女たちの言動からも察せられるだろう。

 部活動の勧誘だ。

 

 アマテの身体能力が非常に高いことは、小学校においては周知の事実だった。

 入学当初から体育の授業で頭角を現し、体力測定では男子顔負けの好成績。

 部活動が解禁される4年生となった彼女が放っておかれる訳がなかった。

 

「ごめーん!入る気ないからー!」

 

 しかし、当のアマテは全くその気はないようだ。

 彼女は素早く荷物を纏めると、するりと人込みをすり抜け教室を飛び出した。

 

「あーんまた逃げられたー!」

「逃がすな追えー!!」

「せめて話だけでもー!」

「スク水ってとっても可愛いんだよー!」

 

 一部心惹かれる誘い文句があったものの、アマテは足を止めることなく階段を駆け下りる。

 今日はイザナと一緒に一からペットロボットを作る予定なのだ。煩わしい勧誘も友達からの誘いも全て蹴るに値するイベントなのだ。

 下駄箱で靴を履き替え、勢いよく正面玄関を飛び出す。

 

 ---そして、頭上から植木鉢がアマテ目掛けて落下してきた。

 

 まさに不運としか言いようがない。放課後の掃除当番が悪ふざけで箒を振り回し、うっかり窓際に置かれていた植木鉢を叩き落してしまったのだ。

 さらに不運なことに、アマテ目掛けて落下している植木鉢の存在に誰も気づいていなかった。誰もが数秒後に訪れるであろう惨劇を回避させる術を持っていなかった。

 しかしーーー

 

「よっと」

 

 アマテは視線をずらすことなく一歩横に移動し、植木鉢から身を躱した。

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 ガチャンと壊れる音で、ようやく周囲の人間が植木鉢が落下したことを認識する。遅れて3階の教室窓から男子生徒が慌てた様子で身を乗り出し、誰も怪我していないことを確認し胸を撫で下ろす。

 幸か不幸か、一人の少女に命の危機が迫っていたことなど、誰一人認識することはなかった。

 

 

 

 

 

 

 店内の掃除を終え、一息つくべくコーヒーメーカーの電源を入れる。

 フィルターをセットし、コーヒー粉と水を入れる。あとはスタートボタンを押し数分待つだけだ。

 シュッシュシュッシュとコーヒーを抽出する音を尻目に、ソファーに座りながら天井をぼーっと見つめる。

 ……実をいうと、ここ最近深刻な悩みができてしまったのだ。

 いや、より正確には『ずっと目を逸らし続けていた問題』を直視せざるを得なくなった、と言うべきか。

 とにかく、ひとりになるとずっとその問題について考えこんでしまうようになっていた。

 その問題とはーーーアマテのニュータイプ能力についてだ。

 

 アマテの正体がハマーン・カーンというのは事実であり動かしようのない真実だ。ニュータイプとしての高い素養を持っていることを、俺は重々承知していた。

 だからこそ、俺はその素養を目覚めさせないよう『一般人』として育ててきた。原作のハマーンのように、研究を兼ねた育成を受けさせなければ目覚めることはないだろうと。

 しかし、それはあまりにも楽観視しすぎたものだった。

 アマテがニュータイプ能力に目覚めていると初めて感じたのは、今からちょうど1年前ほどに起こった出来事だ。

 

 休日に二人でショッピングモールで買い物している際、いつの間にかアマテがいなくなっていたことに気が付いた。

 まさか迷子か!?と一瞬焦ったが、幸いなことにあの子はすぐ近くにおり、べそをかいている3歳くらいの男の子と話していた。周囲に親らしき人物がいないことを鑑みるに、おそらく迷子なのだろう。

 泣いてる迷子を放っておけないなんてなんていい子!と娘を内心褒めそやしながら、二人の元へと向かう。このまま放っておくのも目覚めが悪いし、アマテひとりでは持て余すこともあるだろうと思ったからだ。ここは大人としてしっかり迷子センターに送り届けなければ、と。

 しかし、結論から言うと俺の助けは全く必要なかった。

 

 何故なら、アマテは自力で男の子の両親を見つけ出してしまったからだ。

 

 あの子は男の子と2、3会話したと思ったら、迷いなく男の子の手を引きズンズン歩き、あっという間に必死に我が子を探している男女へと辿り着いたのだ。

 家族連れでごった返している休日のショッピングモール、というかなりの悪条件にも関わらずにだ。

 

 両親と手を繋ぎながら去る男の子を見送りながら、俺はアマテになぜ男の子の両親を見つけ出せたか質問した。

 するとあの子は、とんでもないことをさらりと言ってのけた。

 

『あの子を一生懸命探している人を感じたから』

 

 正直眩暈がした。普通の親なら冗談とさらっと受け流し運が良かっただけと結論付けるだろう。

 しかし、俺にはソレが真実だとはっきり確信した。

 そして、なぜ男の子の親を感知できたかも理解した。

 間違いなく、その感覚は『ニュータイプ能力』だった。

 

 

 宇宙世紀に於いて『ニュータイプ』とは決して良いものではない。平凡な日常は約束されず、波乱万丈な人生を送る羽目になっている。

 もちろん、例外はあるかもしれない。もしかしたら画面外で平凡な一生を送ったニュータイプがいたかもしれない。

 しかし、IFを論じ始めてもきりがないどころか不毛である。なによりアマテの正体はネオ・ジオンの実質的指導者であり、22歳という若さで壮絶な最期を迎えるハマーン・カーンなのだ。楽観視するわけにはいかない。

 アマテがニュータイプに目覚めたと認識したその日から、俺は毎晩苦悩することになった。

 

 

 

 

 

 

 〇月◇日

 

 おそらくだが、アマテはニュータイプ能力に目覚めている。

 思い返せばいろいろ兆候はあった。

 嫌いな食べ物を察知する能力が高かったし、俺がなくしたと思った物をすぐに見つけ出してくれている。

 あの子には幸せな一生を過ごしてもらいたいと考えているが……俺はどうすればいいんだ?

 

 ◇月〇日

 

 そういやニュータイプに目覚める条件ってなんなんだろうな?

 ジオン・ズム・ダイクンによれば『宇宙空間に適応した新人類』とのことだが、それなら宇宙に出なければ覚醒しないということか?

 だったらアマテの覚醒は不可避ということになるが……これ以上ニュータイプ能力を高めない為にも宇宙には行かせないべきなのだろうか?

 でもなぁ……コロニーに住んでいる以上、宇宙と全くの無関係でいられるわけがないんだよなぁ。

 しかも学校のカリキュラムには宇宙遊泳の訓練も含まれている。非常時を想定したものなのだろう。

 ……マジでどうすればいいんだろう。

 

 γ月×日

 

 あれからいろいろ考えたが、良い方法はなにも思いつかなかった。

 しょせんは一介のジャンク屋。研究者でも何でもない俺がどうこうできるものではなかった。

 だけど、俺にできることはある。

 それは、アマテをただの一般人として育て上げることだ。

 その為ならば、俺はどんな犠牲でも払ってみせよう。

 




なお、アマテが新作ガンダム主人公だと判明した瞬間に単なる一般人として育て上げることは不可能になると思い知らされる模様。

面白いと感じていただけたら、ぜひ感想と高評価をお願いします<(_ _)>
『面白かった』の一言だけでも作者は泣いて喜びます。
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