【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

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ちょっと難産でしたがなんとか投稿。
次は上手くいけば4日に投稿できそうです。
遅れたら……ごめんなさい。


アマテ・ユズリハ10歳の宇宙

 イズマ・コロニーの工業港。その片隅にあるとある個人用ドックにてあまりにも場違いな光景が広がっていた。

 その光景とは、ノーマルスーツを着た10歳ほどの少女が存在すること。

 ここが商業港ならば、それほど珍しいことではない。何かしらのツアー客か、個人的な趣味で宇宙遊泳を楽しむ家族連れの子といったところか。

 しかし、ここは工業港。加えて荒くれもののジャンク屋があつまるジャンクヤードに位置するエリア。

 仮に臆病者がこの光景を見れば、幽霊が出たと騒ぎだしてもおかしくはなかった。

 

 もちろん、この少女は幽霊ではない。

 名をアマテ・ユズリハ。

 『不死男(アンデッドマン)』の異名を持つジャンク屋イザナ・ユズリハの一人娘だ。

 

 ここで一つ疑問が発生する。

 『なぜ彼女がジャンクヤードに?』と。

 いくら父がジャンク屋といえど、娘までジャンク屋という訳でもなし。ましてや10歳の少女がだ。

 

 ジャンクヤード、10歳の少女、ノーマルスーツ。

 

 要素だけを抜き出せば、いくらでも悪い方向へと想像を膨らませることができる。天涯孤独のジャンク屋少女と言ったところか。

 

 しかし、理由はそう悪いものではない。

 いや、ある人物にとっては悪いかもしれないが……とりあえずは安心してほしい。悲運の少女は存在しない。

 

 アマテがこの場にいる理由はとても単純なものだった。

 

 お ね だ り である。

 

 

 

 

 

 

 とても……とても困ったことになった。

 端的に言えば、アマテをスペースポッドに乗せることになった。

 なぜそんなことに!?と疑問に思われるかもしれないが、理由はとても単純だ。

 

 お ね だ り である。

 

 もう一度言おう。

 

 お ね だ り である。

 

 きっかけはアマテにジャンク屋を兼任していると明かしたことだった。

 ほぼ引退している状態とはいえ、定期的に元締めからの依頼を受けて仕事している。

 今までは信頼できる人に預けたりリモートでスペースポッドを操縦したりしてなんとかやっていたが、アマテももう10歳。

 いつまでも隠し事はよくないだろうと考えーーーあと、なんとなくジャンク屋稼業について感づいてるような気がしていたのもあるーーー思い切って打ち明けたのだ。

 

 嫌われたり引かれたりする覚悟はあった。ジャンク屋なんて半分裏稼業に足を突っ込んでいる職業だ。真っ当に仕事している者もいるが、どうしても非合法なイメージが付き纏ってしまう。

 しかし、アマテの反応は意外なものだった。

 

『ふーん。そうなんだ』

 

 あまりにもあっさりな反応。思わず漫画的表現みたいなズッコケをしてしまいそうになるくらい拍子抜けだった。

 え、そんな反応?いろいろ覚悟したのに……と唖然としていると、続けてアマテは質問してきた。

 

『そんなことよりさ、お父さんに聞きたいことあるんだよね』

宇宙(ソラ)って、自由?』

 

 宇宙(ソラ)が自由かどうか……か。

 ガキの頃からジャンク屋として宇宙に出ずっぱりだった自分の経験から言わせてもらうなら、自由だ。

 宇宙ほど自由な場所は他にはないだろう。

 同時に、とても()()()場所でもある。

 大地や海と違って、どこまで行っても死しか存在しない。俺が考える中で一番平等な場所だと考えている。

 

『……あぁ、自由だ』

『じゃあさ!ジャンク屋やってたってことはモビルポッド持ってるんでしょ!?それに乗せてよ!』

 

 そして唐突におねだりされてしまった。

 いや理由はなんとなく分かるよ。以前から宇宙に興味があったんだろう。

 まぁ、嫌われたり引かれて俺の心が死ぬより全然いいんだけどね。

 でも正直このおねだりはめっちゃ困った。

 ニュータイプと宇宙は切っても切れない関係だ。ただでさえ高まっているアマテのニュータイプ能力がさらに高まってしまう可能性を考えると、安易にスペースポッドに乗せることはできない。

 単なる考えすぎ、心配しすぎという可能性はある。むしろその可能性の方が高いのでは?と考えるときもある。

 しかし、俺はニュータイプの専門家でもなければ研究者でもない。

 万が一の可能性を考えれば、このおねだりを断るのが無難というものでは……?

 

『……ダメ?』

『…………(グッ)』

『やったー!ありがとうお父さん!大好き!』

 

 しかし、俺はあっさりとアマテのおねだり攻撃(上目遣い)に陥落してしまった。

 仕方ないやん!可愛い可愛い愛娘のおねだり断れる訳ないやん!

 ……言い訳させてもらうと、今まで複数回宇宙遊泳の訓練を学校で受けているので大丈夫だろうと思ったのもある。

 複数回宇宙に出ても変化がなければ、よほどアマテに影響がある事件が起きなければ問題ないだろう。

 

 

 

 という訳で、2人で個人所有してるドックに来た訳だ。

 これは余談だがここに来るのに裏口を使っている。

 わざわざアマテの存在を同業者に明かす必要はないし、噂を広められていい気分はしないし面倒だからだ。

 

「お父さ~ん。はやくはやくー!」

 

 こちらに向かってブンブン手を振るアマテに癒されながら、手元の端末でスペースポッドの状態を確認する。幸い、データ上は異常は見当たらなかった。

 だがここで安心してはいけない。外装やデータに表示されていない異常があるかもしれない。

 うっかり見逃して事故が起ころうものなら死んでも死にきれないしな。

 急かすアマテを適当に相手しながら点検を進める……うん、問題ナシ。定期的に整備してたおかげだな。

 コックピットを開放し、いそいそと乗り込むアマテに続く。

 スペースポッドは一人乗りを前提としたモビルポッドだが、詰めれば成人男性2人乗れるくらいのスペースはある。

 ましてやアマテは10歳で小柄だ。俺は身長186センチと大柄な方だが、問題なく二人乗りできた。

 

「えぇっと……ここがエンジンでここが推進器の……」

 

 そして、発進前のチェックを()()()が行う。

 普段なら俺が行うところだが……今日のメインはアマテだ。

 つまり、この子がスペースポッドを操縦するのだ。

 いくら一年戦争の戦渦に巻き込まれなかったサイド6でも、なにかしらの事件が発生する可能性は否定できない。

 うろ覚えになってしまっているが、ポケ戦のルビコン作戦はサイド6のどこかのコロニーだった気がする。

 ならば、今からでもスペースポッドの操縦に慣れさせるのも早すぎるということはあるまい。

 いざというとき、逃走手段は一つでも多い方が良いのだ。

 

「よし!これでいい?」

「…………(グッ)」

 

 アマテのチェックが問題なく終了したことを確認した俺はサムズアップで返答し、操縦桿を握った。さすがに発進はまだ早い。

 そしてドックのハッチを開け、宇宙(ソラ)へと飛び出した。

 

 

 ---この選択が、後悔へと繋がることを知らずに。

 

 

 

 

 

 

 ●月▲日

 

 今日はアマテのおねだりに応えてスペースポッドで宇宙を飛んだ。

 ドックから発進し、宇宙を飛ぶ感触に目を輝かせていたのを見て、連れてきてよかったと感じた。

 そして、ある程度飛んで周囲に船舶やモビルポッドがいないことを確認した俺は操縦桿をアマテに預けた。

 最初こそおっかなびっくりでのろのろ運転しかしていなかった。

 しかし、あの子は才能の塊だった。

 何度か手取り足取り教えていると、すぐに一般的なジャンク屋程度の操縦技術を会得した。一を聞いて十を知るとはこのことかと驚愕したもんだ。

 

 ……ここでやめればよかった。操縦技術を会得した時点で、さっさと帰投すればよかった。

 俺は楽しそうにスペースポッドを操縦するアマテに目が眩んで、もっと見たいと欲を出して……。

 それが、あの結果に繋がってしまった。

 

 アマテが急にスペースポッドを停止させ、何かに気が付いたように三時の方向を見詰め始めたのだ。

 デブリや隕石でも飛来してきたのか?とセンサーを確認してもそれらしき反応は見当たらない。変わらず、周囲にはごく僅かなデブリしか存在せず、アマテの目線の先には遠目に民間宇宙船があるだけだ。

 その宇宙船がどうかしたのだろうか?と質問すると、『嫌な感じがする』と返答された。

 なんじゃそりゃ、と疑問符を頭に浮かべるも、すぐに異常を察知する。

 アマテの顔色がどんどん悪くなっていくのだ。

 これは一大事だと大丈夫かと声を掛けようとして……強烈なイメージが脳内に飛び込んできた。

 それは、非常灯で赤く染まった宇宙船内だった。複数の人間が泣き叫び、もがく様子だった。

 モニターから警告音が鳴り響き、どうにか対処しようにも打つ手がない。

 焦燥感と絶望感が船内を渦巻き……死の予感が場を支配する。

 そんな地獄を、俺は見た。

 そして直感的に理解してしまった。

 この光景はあの民間宇宙船内の様子であり……アマテが感じているイメージを、アマテを介して俺が受け取っているのだと。

 

 おそらく宇宙というなにもない空間に身を置くことによって、ニュータイプ能力が鋭敏になっていたのだろう。

 そして、障害物や人間がほとんど存在しないからこそ宇宙船の乗組員の思念をダイレクトに受け取ってしまったのだ。

 

 俺とアマテは死の恐怖に苛まれる乗組員のイメージにたじろいでしまった。

 しかし、俺はアマテの父親だ。なんとか立ち直り、乗組員の思念から解放させようと何度も呼びかけた。

 幸いなことに、アマテもすぐに思念の影響から脱することができた。こちらの呼びかけに反応し、平静を取り戻すことができた。

 そして、すぐに俺はイズマ・コロニーの沿岸警備隊(コーストガード)に通報し、宇宙船に接近した。

 すぐに救助隊が駆けつけてくるだろうが、その間に宇宙船が致命的なエラーを吐き出し機能停止する可能性もある。

 そうなれば、あとはこの広大で孤独な宇宙を漂流するはめになる。その絶望感は想像するだけでも苦しくなる。

 ならば気休め程度かもしれないが、救援を要請したことを乗組員に伝えた方が安心感を得られるだろうという判断だ。

 幸いなことに宇宙船は機能停止することもなく、無事に沿岸警備隊(コーストガード)によって救助された。

 俺とアマテはその様子を見届け、ドックへと帰投した。

 

 スペースポッドをハンガーにかけ、疲労困憊のアマテを連れ出しすぐにベッドに寝かせた。

 あの子は無事に帰れたことに安心したのかすぐに眠った。

 

 安らかに眠るアマテを見ながら、俺はずっと目を逸らし続けていた事実を直視した。

 それは……俺自身もニュータイプだということだ。

 今までは特別勘が良いと思い込ませることによって平静を保ってきたが、もう言い逃れできない。

 自らに降りかかる困難、危機を回避し続けることができたのは、この能力のおかげなんだろう。

 

 親子揃ってニュータイプ、か。

 笑えない冗談だ。

 いや、冗談であればどれほどよかったか。

 

 とにかく、しばらくアマテを宇宙に行かせることは控えよう。今は時間が必要だ。

 このことがトラウマにならなければいいのだが……そこはこの子の心の強さを信じるしかない。

 問題は山積みだが……一つ一つ解決していくしかない。

 俺は、アマテのたったひとりの父親なんだから。

 

 




イザナは気づいていませんが、ニュータイプである自分とアマテが長く関わっている影響で、共鳴するようにお互いニュータイプ能力が成長しているという裏設定があります。


面白いと感じていただけたら、ぜひ感想と高評価をお願いします<(_ _)>
『面白かった』の一言だけでも作者は泣いて喜びます。
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