【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

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ギリギリだけど宣言通りに4日投稿!
……いや実質5日か?
急いで書き上げたので後日改稿するかもです。ご了承ください。


アマテ・ユズリハ11歳の感応

 アマテ・ユズリハは無類の猫好きだ。

 どれくらい猫好きかというと、身の回りの小物は猫系で統一されており、パジャマは猫耳フード付き。

 スマホのフォルダには厳選した膨大な猫画像がジャンル別に収められており、昔父親とペットロボットを一緒に製作した際には数ある候補の中から真っ先に猫型を選んだほどだ。

 何故アマテがここまで猫好きになったかは割愛するとして……ここまで猫好きなのに、ひとつだけおかしな点があることにお気づきだろうか?

 

 それはーーー実物の猫を飼っていないことである。

 

 先に断っておくが、アマテもイザナも猫アレルギーではないし、ハウスダストアレルギーでもない。

 体質的な問題ではないのだ。

 ならば何故猫を飼っていないのか……?

 理由はごく単純だ。

 ()()()()()()が原因である。

 機械修理という業務を扱っている以上、体毛やほこりには敏感にならざるを得ない。

 万が一機械に入り込んで故障でもしたら信用問題である。

 だからこそユズリハ家では生体ペットを飼っておらず、猫型のペットロボットを飼育している。

 アマテも多少の不満はあれど、父親の邪魔をしてはいけないと割り切り納得していた。

 

 しかし、それでも。

 アマテの猫に対する欲求は抑えきれるものではなく……。

 

 彼女は毎週末の日曜日。父親を引き連れて繁華街のとあるカフェへと赴いていた。

 カフェと言っても、普通のカフェではない。入店時に用意されている複数のプランから一つ選び、前払いをする。

 そして店内で放し飼いされている生き物をただ眺め、ある時にはちょっかいをなすがままに受け入れる。

 そのちょっかいも客によって千差万別だ。ある客には積極的にかけていくが、ある客には全く見向きもしないこともある。

 そして、アマテは前者だった。

 いや、前者というには少し語弊があるかもしれない。

 ちょっかいを積極的にかけられてはいるが、その()がすさまじかった。

 

「し、しあわせ~」

 

 仰向けになったアマテは十数匹もの()に包まれ、まるで一個の毛玉のようになっていた。 

 

 

 

 

 

 

 宇宙でのあの一件以降、アマテのニュータイプ能力が鋭敏になっている気がする。

 今まで以上に物事に対して鼻が利くようになったというかなんというか……。

 とにかく、生命の機微に鋭くなったのだ。

 あと、幸いにもアレがトラウマになることはなかったようだ。

 あれから学校の宇宙遊泳訓練にも問題なく参加できていたからだ。

 さすがにスペースポッドに乗せるようなことはしていないが……アマテが希望するなら乗せてもいいかもしれない。

 正直めっちゃ心配だが、あの時みたいな事故はそうそう発生しないだろうしな……発生しないよね?

 

 話を戻そう。

 前述した通り、生命の機微に鋭くなった。

 具体的には迷子を発見したり、曲がり角の死角にいる猛犬を避けたり、俺がコーヒーを欲した時にちょうどよく淹れてきてくれたり。

 極めつけは、今目の前で起こってるコレだ。

 

 仰向けになって寝転がってるアマテを包んでいる大量の猫である。

 

 以前から猫カフェには通っていたが、これほどまでに猫に囲まれている姿は見たことがない。多くてもせいぜい3、4匹と言ったところだ。

 しかし、ここ最近になって猫の心を掴むのが異様に上手くなった。入店し席に座りちょいちょいとおもちゃを振ると、他の客にちょっかいかけてた猫までも引き寄せられ、あっというまに猫の塊が完成してしまう。

 さすがに猫の独占を長時間続けるのは気が咎めるのか数分ほど堪能したら解散させているが、その指示に迷いなく従う猫の姿に店員含め他の客もびっくりしていた。

 傍目からは異様に猫に好かれる少女、って感じだが俺には分かる。

 確実にアマテはニュータイプ能力を使用している。

 生存能力に特化している俺にはできない芸当だが、猫の機微を敏感に感じ取り上手い具合に対応しているのだろう。

 

 ニュータイプがこんな芸当できるなんて知らなかったから、初見時にはめちゃくちゃびっくりしたものだ。

 思えば俺が抱いているニュータイプ像は全てガンダム作品から得ていた。つまり、戦場での活躍が印象的だった。

 もちろんララァのように戦場とは関係ない要素が強調されたキャラもいるが、対象は人間だった。

 だから動物相手にも通用することに驚いたのだ。

 

 

 

 ちなみに俺の周りには一匹も存在しない。

 アマテが傍にいる時は周囲でくつろぐくらいには存在していたが、猫と戯れる為に遊び場へと移動すると釣られるようにさーっと俺から離れていくのだ。

 嫌われて……ないよね?

 アマテに吸い寄せられて結果的に0になるだけ……だと信じたい。

 

 

 

 

 

 

 ●月△日

 

 例の一件から数日経った。

 幸いにもトラウマになることはなく、いつも通りの日常を取り戻している。今日も元気よく学校に行っている。

 しかし、表面上は平気に見えるだけかもしれない。

 しばらくは注意しておこう。

 

 ◇日α日

 

 例の一件の後遺症はまったくなかった。

 あれから1カ月以上経過していてもなにも問題が発生していないところをみるに、そう断定してもいいだろう。

 しかし、新しい悩みが発生した。

 あれがきっかけになったのか、アマテのニュータイプ能力により一層磨きが掛かった。

 人間だけでなく動物までにも働くようになった。

 正直これ以上強化していってほしくないが、どうすることもできない。祈るしかない。

 だけど、俺にもなにかできるはずだ。

 とにかくアマテを脅威から守り、遠ざけるしかない。

 

 

 

 U.C.0079/01/01

 

 年が明け、アマテと二人で近場の神社に初詣に行ってきた。

 今年も着物姿が可愛かったなぁ。

 毎年新調してるけど後悔は全くない!

 あと、アマテには秘密だけど今年の誕生日はかなり豪勢にする予定だ。

 以前からずっと行きたがっていた遊園地に行った後に晩御飯は高級ステーキ店で優勝するのだ!

 もちろんケーキも忘れていない。事前に店に許可をもらい食後のデザートとして渡す予定だ。

 アマテが喜ぶ姿が目に浮かぶぜ。

 

 

 

 

 

 

 U.C.0079、1月3日。

 毎日のルーティーンである食後のコーヒーを飲みながらスマホでSNSを眺めていると、垂れ流していたテレビに効果音と共にニュース速報のテロップが差し込まれた。

 なんだなんだと目線をテレビへと向けると、そこには思わず目を疑う、想像を絶するニュースが表示されていた。

 

 

 『ジオン公国、地球連邦に独立を宣言。同時に宣戦布告』

 

 

「……は?」

 

 あまりの衝撃に、手に持ったカップを落としそうになる。

 ジオンが連邦に独立宣言と宣戦布告。

 あまりの異常事態に誤報を疑ってしまうような速報だ。誰かがイタズラで差し込んだと説明されても信じる者が多数だろう。

 チラリとSNSへと視線を戻す。案の定タイムラインが物凄い勢いで更新され、ニュース速報に対する疑問と衝撃で埋め尽くされていく。ざっと見て判断するに、誤報派が優勢だろうか。

 しかし、この速報が誤報ではないことを俺は確信していた。

 俺は、この宣戦布告によってこの先巻き起こるであろう戦争を知っている。

 一年戦争だ。

 一年戦争が始まってしまったのだ。

 

 その後は怒涛の展開だった。

 すぐさまサイド6政府から戒厳令が発令され、民衆は自宅待機を余儀なくされた。

 もちろんイズマ・コロニーも例外ではなく、俺とアマテは全ての予定をキャンセルし自宅待機していた。

 

「お、お父さん……これからどうなるの?」

「……大丈夫。父さんがいる」

 

 不安そうに縋りつくアマテを抱きしめながら、頭を撫でてやる。

 路上にはパトロールしている沿岸警備隊(コーストガード)しかいないとはいえ、ここは住宅街。

 おそらくアマテは近所の住人の不安感などを察知してしまい、心が不安定になってしまっているのだろう。

 

「だから、安心するんだ」

「……うん」

 

 アマテを抱っこしながらキッチンへと向かう。

 温かいスープを飲めば、いくらか落ち着いてくれるだろうという判断だ。

 実際、スープを飲んだアマテは落ち着きを取り戻してくれた。ずっとつきっきりでいたのも有効だったのかもしれない。

 結局その日はずっと家にこもり切り、夜は二人で同じベッドに入り就寝した。

 

 

 

 ベッドの中で、不安に苛まれながらも眠るアマテを見つめながら、これからについて思案する。

 一年戦争が始まり、これから大勢の人間が死ぬ。

 これは避けられない現実だ。神でもなんでもないただのニュータイプである俺に止めるなぞ不可能だ。

 ……だが、正直に言うと一年戦争の犠牲者については気にしても仕方ないと思っている。なんなら、どうだっていいと考えている悪い自分もいる。

 問題はアマテだ。

 良くも悪くも、高レベルニュータイプであるこの子は人の感情を敏感に感じ取る。

 そして10歳の頃にあった事件を鑑みるに、絶望や死の予感など強い負の感情に引っ張られて心が不安定になってしまうことは容易に想像できた。

 つまり何が言いたいかというと、Ζガンダムのカミーユみたいにならないかと懸念しているのだ。

 幸いにもここイズマ・コロニーは原作では一文字も出てこなかったコロニーだから戦渦に巻き込まれる可能性は低いと考えている。

 カミーユの精神崩壊も戦場に身を置いた結果だと思われるので、ずっとイズマ・コロニーに引きこもっていれば安全だと思われる。

 しかし、それでも。

 俺は不安感をどうしても拭えなかった。

 戦場とは何万キロも離れていて、人の想念を感じ取ることなんて不可能だと頭では分かっているのに。

 俺の心に潜んでいる不安感は、刻々と存在感を増していた。

 

 ……いけないけない。俺が不安定になってどうする。

 アマテの一番近くにいるのは俺なのだ。

 俺が不安に苛まれれば、それを敏感に感じ取ってこの子も不安になってしまう。

 弱気と不安なんて吹き飛ばして、この子が安心して生活できるように気を引き締めなければ。

 

 掛け布団を整え、瞳を閉じる。

 時間は全てに平等だ。抗おうとも逆らえず、いずれ明日がやってくる。

 ならば一刻も早く眠りにつき、明日に備えるのが今俺にできる最善の行動なのだ。

 

 おやすみ、アマテ。

 願わくば、この子がずっと安らかに過ごせますように。

 

 

 

 

 

 

 ぺらり、ぺらりと日記を読み進める。

 内容のほとんどは家族エピソードで占められ、そのほとんどが他愛のないものだった。

 今日はオムライスを食べただの、作文コンクールで賞を取っただの、公園でこんなことがあっただの……。

 日記の最初に宣言した通り、アマテ・ユズリハの成長日記だった。

 懐かしいエピソードに、思わず顔がほころぶ。

 しかし、日付がU.C.0079に到達すると、内容はがらりと激変した。

 最初こそ新年の親バカ炸裂と言ったところだったが、徐々に雰囲気は変節していき……。

 とある日付の日記により、それは決定的となった。

 

 

 U.C.0079/01/10

 

 アマテが倒れた。

 

 




次話はなるべく早く投稿する予定です。
できれば5日に投稿したいところです。


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