【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

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一般短編日間ランキング1位ありがとうございます!
評価もお気に入りもどんどん増えていって嬉しくなったので頑張って書きあげました。

次は一般総合の上位ランクインを目指しますので、応援よろしくお願いします<(_ _)>




ハマーン・カーン0歳の出会い

『わりぃ。急だけどジャンク屋やめるわ☆⌒(*^∇゜)y』

 

「ブフォッ!?……ゲホッゲホッ……はあっ!?急に何言ってんだあの野郎!!」

 

 自らのご褒美にとわざわざ用意した左岸の赤ワインを吹き出し、つい先日ジャンク屋の元締めとなった男は慌てた様子で返信を打ち込んだ。

 いや、慌てた様子、などという生易しいものではない。

 その様はまるで予備のパラシュートが開かない不具合に遭ったスカイダイバーのようだった。

 

『待ちやがれ。なにがどうしてそうなるんだ』

『実は娘ができちまって(/ω\)』

 

「はぁ!?娘ぇ!!??」

 

 やつとは長い付き合いだが、連れ合いの類がいるとは聞いたことがない。

 家族が死んでから一番長い付き合いは自分だったはずだが……、と元締めは混乱する。

 

『丸っこくて可愛いんだこの子(o´艸`)』

『てめぇの惚気なんざどうでもいい。一体全体何がどうなって娘なんざできたってんだ。……おい、まさか独りが寂しくて誘拐したんじゃなかろうな?』

『失礼な!そんな真似絶対にするかよ٩(๑`^´๑)۶プンプン』

 

 だよな、と元締めは勝手に納得した。

 あいつは家族愛に飢えている節があるが、欲を満たすために安易に他者を犠牲にする輩ではない。

 そのことは誰よりも理解していると、元締めは自負していた。

 

『つー訳でジャンク屋やめて民間の機械修理屋始めるわ。近々イズマ・コロニーに引っ越す予定なんでよろしこ(゜-^*)/』

『よろしこ(゜-^*)/、じゃねえよ!今お前に辞められると困るんだよ!』

『そういや最近出世したんだっけ?動かせる手も増えただろうしもう俺いらんやろ(^^)/~~~』

『んな訳ねーだろ!こちとらまだ足場グラッグラなんだよ。まだまだお前の力が必要だ』

『つっても最近大物取ってきたろ?あれでしばらくはお役御免だって言ってたじゃないか( -᷄ω-᷅ )』

 

 つい先日のことだが、連邦軍による宇宙海賊掃討作戦が開始された。巡洋艦だけでなく戦艦まで動員された、大規模なものだったらしい。

 実は相手は宇宙海賊ではなくテロリストだったとか、掃討作戦は隠れ蓑で別の秘密作戦が実行されていたとかいろいろ噂が流れていたが、ジャンク屋にとって重要なのは戦後の戦闘宙域だ。

 生き残った戦闘員や軍事機密の宇宙戦闘機など、民間に流れてはマズイものを連邦軍が回収した後に残るのは、大量のデブリだ。

 それらおこぼれを回収するのがジャンク屋たちの目的だ。連邦軍側もデブリ除去の手間を民間に押し付けられるし、経済活性化にもつながる一石二鳥の手として黙認している。

 大小問わず様々なジャンク屋がハゲタカのように非戦闘宙域で今か今かと待ち構えていた。欲を出して戦闘宙域に侵入するやつは自殺志願者だ、全てが終わるまで楽しもうぜ、と誰もが観戦者気分で戦争を娯楽として消費していた。

 

 しかし、やつだけは違った。

 そう、イザナ・ユズリハだ。

 

 あいつは自身のスペースポッドに迷彩を施し、単身戦闘宙域に潜入した。

 発見されれば所属不明機として連邦軍と海賊、どちらからも狙われ撃墜されるのがオチだ。

 だがやつは生き残った。それどころか、とんでもないものまで回収してきたのだ。

 

 連邦の新型宇宙戦闘機に積まれていたジェネレーターだ。

 

 開発からそれなりに時間が経ち、その存在も広く知れ渡っているものだが、未だ民間には流れていない代物である。

 その希少性ゆえに、ブラックマーケットに流れた際にはとんでもない高値で取引されるのだ。

 

『その通りだが、こちとらお前ありきの計画を立ててるんだ。なんとかならんか?』

『無理(>人<)しばらくこの子にかかりっきりになる』

 

 こいつは参った、と元締めは頭を抱えた。

 イザナが回収してきたジェネレーターが決定打となり元締めに昇進したが、組織を掌握したとは言い難い。未だに反乱分子は存在する。

 だからこそ、情けない限りだがイザナを武器に組織掌握を進めていきたかった。いずれは彼なしでも成り立っていけるようにする計画だったが、その初手から躓こうとは夢にも思っていなかった。

 

『せめてあと一年……いや半年思い留まってくれないか?子どもの面倒くらい、シッターを雇えばいいだろう?』

『そいつはできない相談だ。つきっきりで面倒見なきゃならん』

 

 こいつは難儀だ、と元締めは天を仰いだ。

 チャットにいつも顔文字を入れる遊び心があるイザナが真面目に文を書いている以上、相当固い決意のようだ。

 しかし、こちらもはいそうですかと受け入れるわけにはいかない。

 現在自分が置かれている立場は、進退がかかっているギリギリの瀬戸際なのだから。

 

 どう説得したらいいものかと頭を悩ませていると、元締めはある懸念に行きついた。

 そして、それが突破口になり得るかもしれないと直感し大急ぎでキーボードを叩く。

 

『しかし、シッターにも頼れないならどうやって子育てする気だ?お前経験ないだろ』

『うっ、痛いところを……(;^_^A』

『頼れる身内も友人もいないんだろ?そんなんでやってけるのか?』

『……頑張る?(?´・ω・`)』

『根性論で子育てはできねーんだよ!。……交換条件だ。サポートしてやるから定期的にこっちからの依頼受けろ』

『さっすが!٩(ˊᗜˋ*)وバツイチなだけはある!』

『余計なこと言うな!』

『あ、でも条件は詰めるぞ。妥協できんからなლ(=ↀωↀ=)ლ』

『……わーったよ』

 

 その後、侃々諤々の交渉の末に納得できる着地点を見出した二人だったが、実際に顔合わせした時に娘が1歳未満だということを知った元締めは『一番大事なこと言い忘れてんじゃねーよ!』と殴りかかったとか。

 

 

 

 

 

 

 元締めとの交渉を終えた俺は、新品のベビーベッドですやすや眠っている赤ん坊に視線を向けた。一時はぐずって大慌てしたが、粉ミルクを与えてなんとかあやすことに成功した。

 ……正直、驚いている。拾った赤ん坊の為に全てを投げ出す決断を容易に下した自分に。

 通常なら、然るべき所に届け出し、保護してもらうべきだろう。加えて、この子には身分を証明する物もある。家族の所在地は別サイドなので連絡に苦労するだろうが、一度コンタクトを取れれば謝礼が期待できるうえに問題事とは簡単におさらばできるだろう。

 しかし、俺はその選択を取らなかった。

 取らないに足る理由が存在したのだ。

 脱出ポッド内に銃弾が死因と思われる女性の遺体や、彼女が書いたと思われるダイイングメッセージ。

 極めつけは、赤ん坊に添えられているペンダントに入っていた家族写真。

 そこには、ジオン政府高官であるマハラジャ・カーンとその妻レイチェル・カーン、長女のマレーネ・カーン。そして、レイチェル・カーンの腕に抱かれた赤ん坊の四人家族の写真が収められていた。

 ここまで判断材料が揃っていれば、否が応でも赤ん坊の正体に辿り着いてしまう。

 そう、脱出ポッドにいた赤ん坊の正体は、将来のネオ・ジオン実質的指導者でありガンダムZZのラスボス。

 そのあまりの人気ぶりに数々のスピンオフ作品に出演し主役まで張ることとなるハマーン・カーンその人だった。

 

 脱出ポッドの惨状から推察するに相当厄介な事情に巻き込まれたのだろう。

 最後の力を振り絞り、ハマーンの保護を依頼する嘆願書とカーン家への直通回線のアドレスをダイイングメッセージとして書き残した世話役らしき女性からは、愛情と忠誠が見て取れる。

 

 しかし、俺は願いの一部しか受け取らなかった。ハマーンの保護は請け負ったが、直通回線のアドレスはその場で消去した。

 ズム・シティ市長にまで登り詰め、ジオン・ズム・ダイクン亡き後はデギン・ソド・ザビの側近になった彼の娘が襲撃に遭ったこと自体、身内に裏切者がいることの証左に他ならない。しかも、当主であるマハラジャの近い位置に存在している。

 襲撃からそれほど日が経ってない現時点では裏切者を発見するに至っていない可能性があるし、うっかりアドレスに繋ごうものならコンタクトがあったこと自体握りつぶされ、逆に襲撃部隊を送られ面倒な事態になるかもしれない。

 ならば、今ここで俺が取れる最善の策は秘密裏にハマーンを保護し、カーン家が問題を片付け安全に迎えを寄こせるようになるまで自身の娘として育てることだ。

 設定だと7歳の頃にはニュータイプとして実験を受けていたらしいし、少なくともそれまでには迎えが寄こされることだろう。

 なーに、俺の娘として育てるがなんとでもなるだろう。カーン家ほどの権力を持っていれば、時間がかかっても探し当ててくれるだろうよ。

 

 …………………………………………………………………。

 

 スマン、やっぱり正直に言う。

 俺は、自分の娘としてハマーンを育てるつもりだ。原作なんて知ったこっちゃない。

 自分のエゴ全開だが、今回の出来事は運命だと思っている。

 ろくに動かない声帯と表情筋のせいで出会いが全くない以上、結婚し家庭を持てる可能性は限りなく0に近い。

 かといって養子を取ろうにも、正規市民とはいえ独り身のジャンク屋に役所が許可を出すとは到底思えない。

 蛇の道は蛇ということでブラックマーケットで子どもを買うこともできるが、人身売買に手を出すなんて言語道断である。需要があるから供給があるのだろうけど、そこまで外道に堕ちたくはない。

 

 だから、運命なのだ。

 このまま独り寂しく宇宙世紀を生きていく俺に神様が与えてくれた、遅すぎる第二の転生特典なんだろう。

 

 さて、育てると決めたからにはいろいろと用意するものがある。育児用品はもちろんのこと、二人で住む住居を探さなければいけないし、ハマーンを実子として登録する為の手続きも取らなければならない。

 幸い今は5月。ハマーンの誕生日から計算すれば彼女の年齢は生後4か月ほどだろう。小言を言われるかもしれないが、正式に出生届を出せば実子として認められるだろう。母親や入院履歴などの存在しない諸々のデータは、裏の専門業者に依頼すれば用意してくれるだろう。

 

 ……ああ、そういえば一番大事なことを忘れていたな。

 名前だ。

 実子として育てるならば、ハマーンの名は当然使えない。

 いい名前はあるだろうか……。思いつく限り名前を紙に書きなぐっていくが、しっくり来るものが出てこない。

 うんうん唸っていると、ふと自身の名前の由来を思い出した。今世の母親がまだ生きていた頃、気になって聞いてみたのだ。

 父親との新婚旅行で宇宙世紀の日本に行った際、日本神話に感銘を受けたらしい。特にイザナギとイザナミのエピソードを気に入ったとか。

 だから二人で話し合って、その二柱から名前を貰ったとのこと。誕生日から逆算すると、新婚旅行中に燃え上がった時にできた子ということで運命も感じたらしい。途中からラブラブオーラを思いっきり振りまきながらの惚気話になったので当時は辟易していたが、今となっては良い思い出だ。

 

 ---うん、そうだな。決めた。両親に習いこの子の名前は、俺も日本神話から肖って名付けようと思う。

 この子の名前は、〝アマテ〟。

 アマテ・ユズリハだ。

 

 

 

 

 

 




イザナも自覚していますが、思いっきり彼のワガママでハマーンを引き取りました。
いろいろ自己弁護してますが、結局は独りが寂しかったのです。


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