【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

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第4話を見てアイディアが浮かび衝動的に書きはじめ、ようやく完成しました。
なんとか第5話放映までに間に合わせられた……。


機動戦士Gundam GQuuuuuuX外伝~Witch's son~

 僕の母は、その昔『魔女』と呼ばれた凄腕のパイロットだったらしい。

 その話を聞いたのは、士官学校に入学する前夜。

 神妙な顔つきをした父さんから、大事な話があると一枚の写真と共に切り出された。

 

「そこに写っているのは、結婚する前の父さんと母さんだ」

 

 写真を手に取り、じっと見る。そこには若かりし頃の父さんと母さんがいた。

 場所はMSが格納されているハンガーだったが、お互い制服を着ていることから察するに非番の時に撮影されたものなんだろう。

 

 正直に言うと、母さんについて僕はほとんど覚えていない。僕のことをぼうやと呼び抱き上げてくれた感触を、朧げに覚えているだけである。

 物心つく頃に事故で亡くなったと聞いているので、仕方のないことだ。

 だからこそ、母さんのことを知りたくなった。

 一体どんな人となりで、どんなことをしていたのか。

 自らの母について知りたいと子が欲するのは自然なことだと思うし、だからこそ父さんは僕の願いを快く聞き入れいろんな思い出話をしてくれた。

 初めて出会った時のこと、初めてデートに誘った時のこと、初めて喧嘩した時のこと、意外なきっかけで仲直りした時のこと。

 父さんは、たくさんの僕が知らなかった母さんの姿を教えてくれた。

 

 でも、母さんの仕事場での話は一切してくれなかった。

 

 連邦軍のパイロットとして、一年戦争に参加した。

 覚えている限りでは、これだけの情報しか教えてもらえなかった。

 もちろん、これだけで満足するような僕ではない。

 今の時代、ほぼ全ての情報がネットで閲覧できると言っても過言ではない。

 もちろん軍事機密などの例外や情報の捜索難易度など壁はいくつも立ちふさがるだろうが、根気強く探せばいくつか情報が出るだろう。

 しかしーーー小指の先ほども情報は全く出てこなかった。

 何十分も何時間も何日も、時間をかけネットの海を泳いでも。

 知りたい情報の影すら踏めなかった。

 やっぱり軍関係の情報を得るのは容易くない。これは方法を変えねば……と親戚に話を聞こうとしたところで父さんにバレてしまい、こっぴどく叱られてしまった。

 

 母さんについて話を聞いた今なら、何故あれほどまでに怒ったのか理解できる。

 きっと父さんは、母さんだけでなく僕までも戦争の闇に連れ去られてしまうと危惧していたんだろう。

 

 一年戦争中にマヴを赤い彗星に墜とされ、戦後まで引き摺りついにはクランバトルで命を落とす末路に至ってしまう。

 そんな悲劇の渦に、万が一にも息子まで巻き込まれてしまっては耐えられない、といったところだろう。

 傍から見れば過剰反応で知る権利を害していると非難されても仕方がないかもしれないが、それほど母さんを唐突に失った衝撃は計り知れないものだったんだろう。

 

 正直に言えば、父さんの心配は的中していた。

 母さんについて知ろうといろいろ調べていった結果、僕は軍に興味を持ち、最終的には士官学校を第一志望にするに至った。

 きっと父さんは、徐々に軍隊に惹かれていっている僕の心の機微を敏感に感じ取っていたんだろう。

 

 そして、生まれて初めて殴り合いの大喧嘩までしてまでお互いの胸の内を曝け出した結果、父は母について話す決心がついたのだ。

 

 ……ぶっちゃけて言えば、父さんがあそこまで激昂したのも無理ないと思った。

 なにせ、僕が門戸を叩こうとしているのは母さんが所属していた連邦軍が運営している士官学校ではない。

 ()()()()()の士官学校なのだから。

 

 

 

 

 

 

 士官学校のカリキュラムにおいて、MS操縦技術訓練は二年目から組み込まれることになっている。

 理由は複数挙げられるが、一番大きいものとしては『MS操縦に耐えられる身体』を1年かけてじっくりと鍛え上げている点だ。

 一年戦争から始まる数々の戦争において絶大な戦果をあげているMSを操縦する技術は、軍人に置いて必須技能と言える。

 万が一在籍中に何らかの理由でMS操縦に不適格と見做された場合、問答無用で除籍させられると聞けば軍がどれほど重要視しているか解るものである。

 

 そして、お世辞にも優等生とは言えない平凡な成績を修めていたレン・スガイにとって、この授業はまさに天国のようであった。

 

「レンはすげーよなぁ」

「な、なに急に……?」

 

 金髪の少年が、一緒に歩いている黒髪の少年を褒めたたえる。

 

「だってよぉ、今日の訓練でも負けなしだったじゃねーか。しかも教官相手でも勝っちまう」

「いやぁ、運が良かっただけだよ。それに、何度もやってるから教官のクセも知ってたし」

 

 レンと呼ばれた少年は謙遜するが、同室である金髪の少年---アレックスは知っている。

 口では殊勝なことを言っているが、その胸の内は自信で溢れかえっていることを。

 自主練習にとシミュレーターが解禁されたその日から、一日たりとも休むことなく限界まで訓練し続けていることを。

 MS操縦に必要とあらば、図書室に籠ることも教官や先輩に教えを乞う為に頭を下げることも厭わないことを。

 その日々の積み重ねが、MS科目において主席の座を一度たりとも他に明け渡していない結果に繋がっていることを。

 

 レン・スガイという少年は、まさにMSを操縦するために生まれてきたと言っても過言ではないとアレックスは感じていた。

 軍人である以上、命の危機に晒される状況に必ず身を置くことになる。

 そんな鉄火場で確実に頼れるものといえば、自身の技量のみ。

 だから兵士は訓練に精を出す。成績に直結する士官候補生ならばなおのこと訓練せねばならない。

 しかし、人間というものは理解していても行動に移すことができないものである。それが苦痛を伴うものであるならなおさらのこと。

 しかし、レン・スガイは違う。MS限定ではあるが、目的のための苦労は厭わない。

 そんな男と同室なことを、彼は神に感謝していた。

 いつでも主席にアドバイスを頂ける環境は、自らの操縦技能向上に一役買っており、次席には食い込めないもののトップ10に食い込むことに成功していた。

 

 だからだろう。

 その日の夜に限られた士官候補生に送られるメールリストに、レンと共にアレックスの名が記載されていたのは。

 

 そして、アレックスはレンと共に士官学校卒業まで地獄を見るハメになった。

 

 

 

 

 

 

 翌日、全てのカリキュラムが終了した後。

 シミュレーター訓練室に、12名の士官候補生が集められていた。

 レンやアレックスなどMS操縦に長けた者が多いように見受けられるが、中には落第一歩手前の烙印を捺されている者もいる。

 ノーマルスーツ着用のうえ集合と条件付けされていた点も踏まえると、おそらく特別訓練の類いを受けさせられるのだろう。それも、教官との1対1という形のものを。

 一機のシミュレーターが起動済みなのを見て、レンはそう推測した。

 そして、その推測は当たっていた。

 

「これより特別訓練を開始する!名前を呼ばれた者は順にシミュレーターに入り、模擬戦を行うように!……最初は、スガイ候補生!」

「はい!」

 

 教官に呼ばれ、シミュレーターに入る。

 コックピットに腰を下ろし、所定の操作を完了させるとモニターが起動し漆黒の宇宙空間と小惑星帯が映し出される。どうやら、フィールド設定はスタンダードな宇宙Aのようだ。

 そして、対戦相手も確認できた。

 ゲルググだ。

 ガンダムのマスプロモデルであり、現在は訓練用にと士官学校に配備されている機体である。

 通常ならばジオンの量産機に用いられることが多い緑を基調としたカラーリングが施されているはずだが……何故かトリコロールカラーにリペイントされている。

 しかし、相違点はそれだけではなかった。

 通常ならば、ゲルググの装備はビームライフル2丁にビーム・サーベル1つである。訓練機として配備された機体でも、変更点は加えられていない。

 しかし、対戦相手のゲルググにはそれらが見当たらず、右手にヒートホークが握られているのみであった。

 もはや骨董品の類いになりつつある代物のみ装備するとは、一体どんな意図がある?

 レンが疑問符を浮かべていると、教官から通信が入った。

 

『レギュレーションはスタンダードAだ。両名は所定のポイントに移動するように』

 

 スタンダードA……十分に距離が離れたAエリアとBエリアに配置され、撃墜判定が出るまで続行される。

 名称通り、シミュレーター訓練で最も採用されているルールであり、レンが最も得意としているレギュレーションでもある。

 

 バーニアを吹かし、所定のポイントに移動する。

 その間、意外なことにレンは対戦相手に苛立ちを感じていた。

 リペイントされてはいるが、訓練である以上専用機のようにチューニングされていないはず。

 つまり、自身が乗っているゲルググと性能差はない。

 ならば勝敗を分けるのは操縦技術の腕である。

 さすがに特別訓練でわざわざ呼ばれるような教官より上だと自惚れるつもりはないが……宇宙空間で目立つトリコロールカラーにヒートホークのみのいわゆるブレオン装備は、学年主席のプライドに大きな傷を付けられた。

 

 指定されたエリアAに移動し、小惑星を背にエリアB方面に目を向ける。

 セオリー通りであるならば、相手も小惑星に隠れてこちらを伺っているはず。

 有視界における戦闘では、初撃という条件付きだが先に相手を見つけた方が圧倒的に有利である。

 しかし、その初撃で勝負が決まる可能性がある以上、隠れて相手の視界から外れて待機するのは常識であり、レンたち候補生はみなそうするように教えられてきた。

 だが……相手パイロットは小惑星に身を隠さず、その身をさらけ出していた。まるで狙ってくださいと言わんばかりに棒立ちで。

 ハンデだとでも言うつもりなのだろうか?

 その様子が、さらにレンの苛立ちを増幅させた。

 

 ビームライフルを構え、照準を敵機に合わせる。開始前の攻撃は認められてはいないが、照準を覗く程度は許されている。

 加えて無防備にその身を晒しているのだ。文句を言うものは誰もいないとレンは判断した。事実判定を務める教官からの警告はなく、観戦している候補生からも非難の声はあがらなかった。

 

 そして、事前に与えられたインターバルが終了し開始の合図が戦場に響き渡ると同時にーーーレンは、操縦桿の引き金を引いた。

 ビームライフルの銃口が光り、亜光速の弾丸がトリコロールのゲルググ目掛けて突き進む。

 事前に回避運動を取っているならともかく、棒立ちのゲルググに回避する術はない。

 十分に狙いを定める時間があった以上、ビームが外れるといったミスが起こるはずもなく、数瞬後には敵パイロットは己の油断に後悔しながら撃墜されるーーーはずであった。

 

「う、ウソだろ!?」

 

 勝ちを確信したレンが見た光景。

 それは僅かに機体を傾け、紙一重でビームを回避しているゲルググの姿だった。

 

 グイン!と敵ゲルググの顔がこちらに向き、補足されたことをレンは一瞬で悟る。

 同時に引き金を引く。初撃が躱され優位性は失われたが距離はまだ十分ある。

 じっくり狙いを定めることは不可能だが、近接戦の間合いに持ち込まれるまでにビームを連射することは可能である。

 カタログスペック以上の勢いを感じるゲルググの接近に合わせて、ビームライフルを連射する。

 しかし、当たらない。

 教本通りの回避行動を取らず、わずかに機体を傾ける程度で全て紙一重で躱されていく。

 

「くそッ!一体何者なんだこいつ!?」

 

 敵パイロットの恐るべき操縦技術に慄きながらも、ビームサーベルを起動させる。

 敵機がブレオン装備な以上、引き撃ちで応対するのが鉄板である。相手の射程距離外から一方的に攻撃できる以上、負ける要素はほぼない。

 いくら凄腕であろうとも、パイロットが人間である以上疲労は溜まり、いずれミスを犯してしまい被弾するものである。

 しかし、レンにはそんなイメージがどうしても湧かなかった。今相対しているゲルググのパイロットは、己相手にそんな隙を絶対に晒さない。

 だからこそ、一か八かビームサーベルによる接近戦を仕掛け……。

 レンが駆るゲルググはあっけなく首を刈られ、撃墜判定が下されるのであった。

 

 

 

 

 

 

 それから数十分後。

 シミュレーター室の床には特別訓練に召集された12名のパイロット全員が息絶え絶えに転がっていた。

 まさに死屍累々といった様相である。

 

 レンが撃墜された初戦以降、代わる代わる模擬戦を行い12人目を終えた後もインターバルを挟まず何巡も模擬戦をこなし……最終的には1対12の変則マッチを仕掛けるもかすり傷程度しか負わせることができなかったという事実は、実際の疲労感以上の物をレンたちに重くのしかけていた。

 

 本来ならばここで醜態を見せる士官候補生に活を入れる為に訓練教官が檄を飛ばす場面であるが……当の本人は候補生を一瞥するだけですぐに持っているバインダーに目を落としただけであった。

 

「くそッ……相手は……バケモンかよ……」

「…………(コクリ)」

 

 息も絶え絶えに悪態をつくアレックスに同意するように、タオルを顔にかけたレンが短く頷く。

 12人の士官候補生相手にたった1人休憩も挟まず相手をする正体不明の特別教官に、レンは心底慄くと同時に、ポッキリと天狗の鼻が折れた感覚を覚えた。

 どうやら、知らないうちに自分は調子に乗っていたようだ、とレンはタオルの下で口を歪ませた。

 

 その時だった。

 警告音と共に、レンたちを鎧袖一触にしたパイロットが乗っているシミュレーターのハッチが開いた。

 さきほどまで散々苦汁を飲まされた相手は、一体どんな人物なのか。

 その場にいた士官候補生全員が、一斉にシミュレーターへと視線を向ける。

 そして、全員が驚愕した。

 

 教官の手を借りシミュレーターから降りてきたパイロットは、どこからどうみても()()だったのだ。しかも、この場の誰よりも背が低く、ぱっと見150センチくらいと思われる。

 

「貴様らいつまで座り込んでるつもりだ!?全員整列!!」

 

 てっきり男性だと思い込み衝撃を受けている士官候補生たちを叱咤する教官の声に反射するかのように、レン達は体に鞭打ち無理やり整列する。

 その様子を見て、女性パイロットはおぉと感嘆の声をあげた。

 

「教育が行き届いているようで結構。操縦の腕もなかなかのものだったし、ガイア中佐の指導の賜物かな?」

「いえ、こいつらはまだまだひよっこです」

「厳しいところは相変わらずね」

 

 クスクスと鈴を転がすような声で笑う。

 

「それより大佐殿。そろそろこいつらに自己紹介していただけないでしょうか?」

「それもそうね。いつまでもヘルメット被ってる訳にもいかないし」

 

 パチリとロックを外し、ヘルメットを脱いだ女性の顔が露わになる。

 そして。

 その場にいた士官候補生たちは、入学以来最大の衝撃を受けることになった。

 

「はじめまして。私はアマテ・ユズリハ大佐。今日からあなたたちの教官に就任することになったわ」

 

 乱れたセミロングの赤髪を整えながら、ジオン軍伝説のパイロットは呆然とする士官候補生達に挨拶するのだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

   ~予告~

 

 

 

 ジオン伝説のパイロットが教官に就任した報せに揺れる学園

 

「なぁなぁ!ユズリハ大佐ってどんな教導するんだ!?」

「すごく……大変です……」

 

 苛烈な訓練に音を上げ、次々と倒れこむ士官候補生たち

 

「ほら、がんばれ♪がんばれ♪」

「…………(もはや突っ込む気力もない)」

 

 秘密裏に開催される、アマテ大佐ファンクラブの集い

 

「アマテ大佐のここが可愛い選手権開催ィィィィィィ!!」

(言えない……とっくの昔に本人にバレてるなんて言える訳がない……)

 

 夜のBarで判明する、教官就任の契機

 

「大佐殿は、なぜ教官をお引き受けになったので?」

「贖罪……いや、自己満足みたいなものかな」

 

 ついに明かされる、レンの母シイコとの関係

 

「あなたの母親を殺したのは、私たちなのよ」

「そんな……ウソだ……」

 

 そして、母の仇と対面したレンが取る選択とは?

 

「やぁ、ようやく会えたね。レン・スガイくん」

「……………」

 

 さ~て、この次もサービスサービスゥ♪

 

 




人妻子持ちエースパイロットアマテ・ユズリハという概念。
シイコさんは私の胸にもとてつもない衝撃を与えてくれました。

なぜシイコさんの息子がジオンの士官学校に入学しているか。
それはこの時代、宇宙の覇権はジオンが握っており、宇宙を守る軍人になるためには自動的にジオンしか選択肢がないためです。
あとジオンに対する憎しみとかもないからですね。そこはシイコさんの旦那さんが頑張りました。

ガイアが教導機動大隊出身ということでなんとなく士官学校の教官に据えてみましたが、第5話で死んだら笑っちゃいます。


面白いと感じていただけたら、ぜひ感想と高評価、推薦をお願いします<(_ _)>
『面白かった』の一言だけでも作者は泣いて喜びます。

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