【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

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右肩上がりにUAもお気に入りも増えてきていて嬉しくなったので頑張りました。
あと、今回から連載に切り替えようと思います。
今作品は本放送までの鮮度ですが頑張っていこうと思います。


ハマーン・カーン改めアマテ・ユズリハ1歳の記録

 サイド6、イズマ・コロニーのとある一角に一組の父娘(おやこ)が引っ越してきたことは、噂としてすぐに近所の奥様方に広まった。

 単なる父親と娘なら、『親子が引っ越してきたようだわ~』程度で済んだだろう。しかし、父親があまりにも強烈すぎた。

 なにせ、引っ越しの挨拶で表情をピクリとも動かさず「引っ越し……挨拶です」の一言と共に洗剤を押し付ける無口な黒髪大柄男性だ。抱っこ紐で抱えた赤ちゃんが可愛かっただけに、強烈なギャップが発生してしまっている。

 それに加え、洗剤入りの袋に付属していたチラシ。これもまた話題の種として機能していた。

 

『リモコンから車まで。機械ならなんでも直しますbyユズリハ工房』

 

オープン告知と宣伝文句、〝楪〟というマーク、そして初回限定の半額クーポン付きのシンプルなチラシだ。

『あんな男が機械修理屋を?』『確かに開店準備を進めているようだけど……』『ぼったくられるんじゃないの?』

 本人が聞いていないことをいいことに好き勝手話していたが、最終的には一度利用してみよう、という結論に至った。

 子供連れならそんなに悪い人ではないかもしれないし、何かあれば軍警に届け出ればいい。

 なにより『半額クーポン』という魅力的すぎるアイテムが、奥様達の腰を軽いものにしていた。いつの時代も、割引クーポンは奥様方の心を掴んで離さないものである。

 

 そしてオープン当日。

 案の定閑古鳥が鳴いている中、勇気ある奥様軍団が店の扉の前に立った。その表情は興味と恐れが半々に混じり合っている。

 それも仕方のないことだろう。いくら集団で入店するとはいえ、相手は得体のしれない大男だ。可能性は限りなく低いだろうが、万が一を嫌でも想像してしまう。

 誰が示し合わせるわけでもなく、お互いの顔を見やる。

『扉開けなさいよ』『あなたが行けばいいでしょう?』『ここは若者が先陣を切るところでしょう?』

 そんな会話が聞こえてくるようだった。貧乏くじというわけではないが、誰もが躊躇していた。

 しかし、いつまでも店の前で立ち止まっている訳にはいかない。リーダー格の奥様が意を決してドアノブに手をかけ開けると……。

 

 そこには猫耳を装着しガラガラを振って一生懸命赤ん坊をあやしている店主がいた。

 

 

 

 

 

 

 ハマーン……いや、アマテを拾ってから激動の1年が経過した。

 引っ越し先の選定や出生届などの諸々の手続き、他ジャンク屋との遺恨を残さない為の根回し、現住所の引き払いetcete……。とにかくやることが多すぎて、金田一少年の犯人の気持ちが分かったような気がした。

 特に大変だったのは子育てだ。前世も含めて初めての経験であり、何もかも手探り状態から始めるしかなかった。

 だが、幸いにも俺には心強い味方がいた。元締めだ。

 やつはああ見えても一児の父だ。かなり前に奥さんに愛想を尽かされ娘と共に出て行かれたそうだが、子育ての経験があることには変わりない。

 組織掌握に忙しく、直接指導を受けた回数は少なかったが、育児本を読むだけでは足りなかった部分を的確に指導してくれて大助かりした。金に飽かせて揃えた育児グッズとの合わせ技で、これで怖いものなしだと慢心してしまった。

 そう、慢心だ。最初の1か月を上手く乗り越えてしまったせいで、『なんだ案外上手くやれるな』と自惚れてしまった。

 それを自覚したのは2か月目に突入してからだった。世の母親が必ず直面し苦労する育児イベントに、俺は死ぬほど苦労することとなった。

 勘のいい者ならば、アマテの年齢からすでに悟っているかもしれないな。

 そう……夜泣きである。

 大半の赤ん坊が生後6か月目前後から始める生理現象は、俺を大いに苦労させた。

 なにせ、こちらの都合などお構いなしに泣くのだ。世の中にはあまり夜泣きをしない子もいると聞くが、アマテはめちゃくちゃするタイプだった。ほぼ毎日夜泣きし、酷いときには2時間おきに泣くこともあった。

 話には聞いていたが、実際に体験するとこれほどまでにキツイのか……。

 1か月目には余力が残っており他の用事を片付ける余裕もあったが、2か月目からは夜泣きによって俺自身の生活リズムもアマテにどんどん寄って行った。

 つまり、アマテが起きれば俺も起きる。アマテが食事を始めれば俺も食べる。アマテが寝れば昼夜問わず俺も寝る。

 育児初心者であるゆえに夜泣き以外にも全力で取り組まざるを得ず、開店準備などの当初の予定は全て白紙に戻さざるを得なかった。

 

 ……え?今更後悔してるのか、だって?

 まぁ反省はしてるよ。()()()()()()()()()

 でも後悔はしていない。

 俺のエゴで引き取った以上、後悔なんて罰当たり以外の何物でもない。

 それに、俺はこの苦境に満足している。

 今世では完全に諦めていた家族を作る、という夢を叶えてくれたこの子はまさに福音、天使だ。

 アマテを戦争には関与させず、一般人として育て上げる。

 それが俺がこの子に示してあげられる、最上級の愛情表現だ。

 

 

 

 

 

 

 イザナの私室、その中でも厳重にロックが掛かっている棚の中に日記帳はあった。まるで、持ち主以外には読まれたくないかのように。

 しかし、錠前があるということは鍵穴もあるということ。

 適切な鍵が差し込まれるとロックはいとも簡単に解除され、容易に日記は開かれることとなった。

 

 

 〇月×日

 

 突然だが、今日から日記を付けようと思う。

 マジで突然だが、ちゃんと理由がある。

 これはアマテの成長日記でもあるのだ。

 筆不精な俺だが、何とか頑張ってやってみるつもりだ。

 とりあえずは愛でも叫んでみるか。

 アマテ可愛い!世界一!

 

 〇月□日

 

 あいつにアマテを紹介したらぶん殴られた。

 まぁしゃーない。アマテの年齢を伝えていなかった俺の落ち度だ。

 でも痛いのは勘弁だから避けてやったぜ( -`ω-)✧ドヤッ

 しっかし、バツイチってことは知ってたが予想以上に博識だったな。

 ミルクを用意するのもオムツを交換するのもめっちゃ手際よかったし、食後のゲップも上手く出させていた。

 あそこまで育児上手なのになんで離婚したんだろうか?やっぱ女癖か?それとも酒癖?

 

 □月×日

 

 アマテを拾ってから1か月が経過した。

 アイツのサポートもあり、今のところ問題なく子育てできている。

 買い揃えた育児グッズのおかげもあるだろうが、もしかして俺って育児の才能あるのかも?

 この分なら口酸っぱく言われてる夜泣きにも対応できそうだな。

 どんとこい夜泣き!俺は必ずお前に対処してみせるぜ!

 

 λ月γ日

 

 ……………………………………………………。

 ……あー……超久しぶりに日記を付けてる。

 なんでこんなに久しぶりになったかというと……夜泣き、めっちゃやべえ。

 全然余裕ぶっこいてたけど、分からせられちゃったわ……。

 1時間~2時間おきに泣くもんだからその度にあやすことになる。結果めっちゃ疲労溜まる。

 ……でも嫌じゃないんだよね、この疲労感。

 一生体験できないと思ってた苦労を重ねていくって、めっちゃ嬉しいことなんだよね。

 それに、寝返りだけじゃなくハイハイもできるようになったんだ!

 俺に向かって必死にハイハイして来るのを見ると、脳内麻薬めっちゃ出るんだよね。多幸感はんぱねぇ。

 だから頑張れる。これは強がりなんかじゃない。

 でももう限界だから寝

 

 Ω月Δ日

 

 前回は寝落ちして中途半端なとこで終わったけど気にしないことにする。修正もしない。

 ある意味これも貴重な記録だからな。

 さて本題に入ろう。

 ついに!つ い に!!アマテが俺を『パパ』って呼んでくれたんだ!しかも1歳の誕生日当日に!!

 今まではあーやうーなどのいわゆる『喃語』ってやつだったが、1歳の誕生日を祝うパーティーでケーキのろうそくを吹き消した様子を見てはしゃいでた俺をじっと見ながら『パパ』って呼んでくれたんだ!!

 もうこの喜びをなんて表現したらいいか!?もうこの言葉と残りの人生を引き換えにしたっていい!!

 ……いやいや言い過ぎたな。引き換えにしたらアマテが独りになっちまう。せめて成人するまでは見守っていきたい。

 とにかく今めっちゃ嬉しいんだ!アマテの誕生日から結構経ってるけど未だに当時の瞬間を思い出してニヤニヤしてしまう。

 ヨシ!この気持ちをあいつにぶつけよう!この多幸感を共有しないなんて間違ってる!!

 

 Ω月〇日

 

 あいつから着拒されちゃったテヘペロ☆(・ω<)

 

 □月□日

 

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

 立った!!!!!歩いた!!!!!

 ふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!

 宴じゃああぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 □月λ日

 

 今日はついに新居に引っ越す日だ。

 3階建ての雑居ビルだ。丸々買い取り1階をぶち抜いて店に。2階3階を住居としてリフォームした。

 金は多少かかったが、それだけに満足する結果となった。

 近所に引っ越しの挨拶で洗剤とチラシを送ったけど、大丈夫だったろうか?

 傍から見れば無口の大男だから怖がられていないといいが……無理だろうなぁ。

 頑張って溶け込めるように町内会のイベントにも積極的に参加しないとな。

 

 □月Ω日

 

 \(^o^)/オワタ

 猫耳付けてアマテをあやしてるところ、近所の奥様軍団に見られた……油断した……。

 俺を見た瞬間固まってたし、挨拶したら逃げるように出て行かれてしまった。

 絶対変な印象持たれてるよ……はぁ、鬱だ……。

 アマテ~ダメなパパを慰めておくれ~(´;ω;`)ウゥゥ

 

 □月Δ日

 

 なんか見覚えのあるお客さんめっちゃ来た。近所の奥様軍団だ。

 しかもこちらに嫌な顔一つしてないし、世間話も積極的にしてくれる。なんなら子育てのアドバイスもしてくれる。

 なんかあったのか?皆目見当つかない。

 

 




【補足】
奥様軍団が見たのは猫耳を装着したCV速〇奨です。


日間総合ランキング21位ありがとうございます!
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