この二次小説もU.C.0085までたどり着けるように頑張ります!
「いーやー!いーやー!」
テーブルをバンバン叩き、アマテは全力で拒絶の意思を示している。対面に座っているイザナは、その姿を見て困り果てていた。
「ワガママ……言わない」
「いぃーーーーやぁーーーーー!!」
イザナが優しく諭すが、アマテは頑なに意見を翻さない。10分前から根気強く説得しているが、通じる気配は微塵も感じられなかった。
今までお利口で、怒られれば素直に反省するアマテからは想像もできないほどの頑固ぶり。
一体、彼女をここまで意固地にさせる原因とは何なのか。
それはあらゆる幼児に発生する不可避の事象であり、古今東西全ての親を悩ませているラスボス的存在。
幼少期に克服させなければ生涯にわたって後遺症を患う可能性がある人類最大の疾病。
そうーーー
「ピーマン……」
「いいぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁああ!!!」
---食わず嫌いである。
◆
参った……こいつは本当に困ったぞ。
今までほんとにいい子でいてくれたから大丈夫だろうと高をくくっていたが、例に洩れずアマテも発症してしまった。
食わず嫌いだ。
正直俺も昔は好き嫌いが酷かった。宇宙世紀という全くの別文化の食事は魅力的であると同時に恐れも感じており、どうしても食べる気にならないものも多数あった。
独り身となり困窮した時代に好き嫌いなど贅沢を言ってられず無理やり喉を通らせていたおかげで、今ではなんでも食べられるようになったが、気持ちが分かる以上アマテに強く言えないのが現状だ。
それに、無理やり食べさせれば今以上に嫌う可能性もある。食べさせればあとはどうとでもなる、と楽観視するほど能天気にはなれない。
大好きなハンバーグを口に運ぶ際に、隠すように小さく切ったピーマンを添えたこともあったが、何故か口に入る直前で感づいてしまい失敗している。
幸い野菜ジュースは気に入っているようだし、最終手段としてビタミン剤を混ぜるという方法も取れることには取れるのだが……俺はアマテの食わず嫌いをなるべくなくしたいと思っている。
そんなつもりは毛頭ないが、将来アマテが困窮し食べ物に困ることがあるかもしれない。そんな時に嫌いな食べ物だからと食事を取らず衰弱してしまうようなことはあってはならない。
なんとか克服させることはできないだろうか……せめて口に入れてもらわないと始まらない……。
……仕方ない。ここは彼女たちの力を借りよう。
いつの世も、母というのは強いのだ。
という訳で初めてユズリハ工房に来店してくれた縁から親しくなった奥様軍団に助力を求めた。
断られやしないかと少々心配していたが、快く引き受けてくれた彼女たちには感謝しかない。
「お利口なアマテちゃんも、やっぱり食わず嫌いができちゃったのね」
あらあら、と頬に手を当てているのはルナさん御年「イザナくん?」……やめておこう。女性の年齢はむやみに明かさない方がいい。鋭い勘で失礼の気配を察知したのか、目が笑っていない。
……ゴホン。気を取り直して紹介しよう。
まずは1人目。専業主婦で二児の母でもあるルナさん。
「うちの子も大変だったから、気持ちわかるわ~」
2人目は水泳のインストラクターをしているハスネさん。彼女の娘たちも食わず嫌いが激しかったらしく、同情してくれている。
「微力ながら、お力添えします」
3人目は華道の師範でもあるウェストさんだ。今日は稽古がお休みということで付き合ってくれた。
以上3人の奥様が今回の心強い援軍である。
あ、今のうちに言っておくが未亡人は1人もいないからな。そして略奪婚する予定もない。
「ありがとうございます……」
「いいのよ。イザナさんにはいつもお世話になってるから♪」
「そうそう、メーカーに出したら最短でも1週間は戻ってこないし」
「夫も喜んでいました」
世間話をしながら、エプロンを装着し食材を冷蔵庫から取り出す。
ピーマンの食わず嫌いを治すとっておき料理を学ぶ為だ。
彼女たちの子供の食わず嫌いを治した一品ということらしいが、一体どんな料理なのだろうか?
事前に用意するよう指示された食材は、ピーマン、合いびき肉、玉ねぎ、塩コショウ、味噌、マヨネーズ、パン粉、ケチャップ、ウスターソース。
推察するにピーマンの肉詰めだろうか?でもすでに試したことあるんだよな……。
もしや俺が知らない主婦にのみ伝わる秘技でもあるのだろうか?
「もう一度聞くけど、アマテちゃんはピーマンの味が気に入らないのよね?」
ルナさんの質問に、コクリと頷く。
野菜炒めにピーマンを混ぜたところ、口に入れた瞬間分かりやすく顔を顰め吐き出したのだ。
大丈夫だろうと高をくくらずにもっと食べやすい味付けで出すべきだったと後悔している。
あれ以来細かく切ろうが味付けを変えようが、はっきりと拒絶するようになってしまった。
「じゃあピーマンに対する嫌悪感からなんとかしないとね。味はその次よ」
言われてみれば確かに、とポンと手を叩く。
どれだけ味を良くしようとも、悪い先入観が全てを台無しにするパターンはある。
俺自身もSF特有のペースト料理には苦手意識を持っていたが、今では平気で食べられるようになっている。むしろ好物の一つと言っても過言ではない。
「という訳で、これから作る料理はこれよ!」
ルナさんがスマホを操作し、写真を見せてくれた。
こ、これは……ッ!!
◆
γ月□日
凄い!ヤバイ!神!
ルナさんたちに教えてもらった料理ドンピシャだった!
まさかアマテの好物であるハンバーグにピーマンを混ぜ込むとは……。
好きなものに嫌いなものを混ぜ込む発想はなかった。
俺も食べてみたけどピーマンの苦味はほとんど感じなかった。
これを入口としてピーマン嫌いを治していこう。幸いルナさんたちも引き続き協力してくれるしな。
……でもハンバーグを見た瞬間、アマテ一瞬動きが止まったように見えたんだよな。
バレたか?と一瞬身構えたけど食べてくれたし、問題ないはずだ。
γ月×日
あれは杞憂だったらしい。
今日もルナさんたちに教わったハンバーグを出したら大喜びでパクパク食べてくれた。
□月α日
アマテの食わず嫌いを治す計画を次のフェーズに移そうと思う。
料理のお手伝いとしてハンバーグを捏ねてもらうのだ。
今まで食べていた大好物のハンバーグにピーマンが入ってることを認識してもらうのだ。
ある意味博打みたいなものだが、下準備はハンバーグ以外にもバッチリ積んでいる。
上手くいけばいいのだが……。
□月β日
意外と何とかなった。
ピーマンを見せた時には顔を顰めていたが、微塵切りにした際には興味深そうに見ていた。
合いびき肉と混ぜて捏ねる時には笑顔も見せてくれた。
やっぱりうちの子は最高!天才だな!!
□月〇日
あれからいろんなピーマン料理に挑戦してみた。
おやき、ポタージュ、ピーマンパイ。
ルナさんたちに教わった料理は大好評で、パクパク食べてくれている。
この分ならいずれピーマンの肉詰めにも挑戦してみてもいいかもしれない。
今まで作った料理とは違い、ピーマンの原型が残っているのが心配だが……。
抵抗感も薄まってきてるようだし、ワンチャンいけるかもしれない。
□月×日
イケた。
やっぱうちの子最高だわ。
△月□日
盲点だった。
まさかナスも嫌いだったとは……ッ!!
皮がいけないのか?それとも味?
ナスの揚げびたしとか俺好きなんだけどな……。
ルナさーん!ハスネさーん!ウェストさーん!
助けてくれ~~~!!
奥様軍団はモブです、いいね?
調べてみたら2024年度の子供の嫌いな野菜1位がナスだったんですよね。
ナスにそんなイメージなかったのでびっくりしました。
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映画本編の時系列まで子育て日記を続ける。
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