【本編完結】マチュを拾った転生者のお話   作:アスラ

8 / 33
読者の皆様、アンケートにご協力いただきありがとうございました。
アンケートの結果、これからもちょくちょく閑話を挟むことにしました。
いろいろアイディアはありますが、とりあえず完成させたものから投稿しようと思います。


閑話 ザクに乗り換えるお話

 一年戦争がジオンの実質的勝利という結果に終わった。

 サイド6は早々に中立宣言をした為、終戦まで戦渦に巻き込まれることはなかったが、戦争の余波というものは避けようがなかった。

 難民だ。

 合法・非合法問わず大量の難民が押し寄せた結果、治安の悪化や急激な社会の多様化など大小さまざまな問題が頻発するようになった。

 ジャンク屋界隈も例外ではなく、急激な流入や文化の違いによる摩擦などで悲鳴を上げていると先日元締めから愚痴られた。

 俺は半分引退してるようなものだし、ユズリハ工房の仕事だけでも食っていけるようになっていた。

 加えて、アマテの件もあった。故に一年戦争中も終結後もジャンクヤードに顔を出すことはなかったが、現場の雰囲気は相当悪いらしい。

 四六時中騒ぎが起こってる訳ではないが、相当ピリピリしているようだ。幸い大規模な騒動は巻き起こっていないようだが、一時も気を抜けないらしい。

 正直そんな火薬庫に行くのはごめんなのだが……久しぶりにジャンクヤードに顔を出すことになった。元締めに愚痴られたその日に、彼から『良い話』があるととある一件を切り出されたからだ。

 単なる儲け話の類いなら丁重にお断りしていた。金ならまだ十分あるし、今すぐ稼ぐ必要が出てくる出費の予定もない。

 しかし、俺はこの『良い話』に興味を持った。

 いや、持ったどころではない。

 アマゾンのピラニアのように、物凄い勢いで食いついたのだ。

 それも仕方がないことだろう、と自分を正当化する。

 前世の記憶はだいぶ曖昧になってしまったが、ガノタであることは覚えている。

 ()()()()()()を叶えるチャンスがあれば、誰であろうと飛びついてしまうのは無理ないのだ。

 

「よく来てくれた。例のブツはこっちだ」

 

 騒がしいロビーを素通りし指定されたドックに辿り着くと、秘書を侍らせた元締めがいた。どうやら、彼直々に案内してくれるようだ。

 これは異例なことだ。組織のトップという責任ある立場の人間の腰が軽いのは正直褒められたものではない。外面を気にするのであれば秘書の派遣までが限界だろう。

 しかし、彼はわざわざやってきた。俺と友人関係であるのも理由の一つだろうが、それ以上にこの『良い話』はジャンク屋業の未来に大きな変革を齎すものだからだろう。

 

「一年戦争も終結し、実質的な戦勝国とはいえジオンも戦後復興や()()()()に向けた準備に大忙し。各サイドに手を回している暇はないと来た。そこでーーー」

 

 ドックの最奥に辿り着き、お目当てのモノが眼前に迫る。

 それは全長17.5m、本体重量56.2tにも及ぶ巨大人型兵器。

 戦中戦後に数多くのバリエーション機体が開発され、ついにはアナザーガンダムシリーズにも出張するようになるガンダムの顔ともいえるジオン軍の主力MS。

 型式番号MS-06F『ザクⅡ』だ。

 

「こいつが民間に払い下げられることになったって訳だ。作業量はスペースポッドとはダンチだ」

 

 これがマニュアルだ、と紙製のマニュアルが手渡される。宇宙世紀に電子化されていない紙のマニュアル?と疑問を感じるが、ファーストガンダムのマニュアルも紙製だったし、世の中には紙の方が良いというメカニックも多数いる。

 おそらくこのザクを輸送する際にメカニックがオマケで備え付けたものなのだろう。その証拠に、紙折れや油汚れ、メカニックが書き加えたらしきメモ書きなど年季が入っている。

 

 全ガノタ垂涎の品を前に舌なめずりしたい欲を必死に抑えながらマニュアルを開こうとして……ふと表紙に気になる表記を発見する。

 んん?『MS-06Fザク』?ザクⅡではないのか?

 印刷ミスか……はたまた表記揺れ?

 クエスチョンマークが頭を埋め尽くすが、すぐに振り払った。同じ宇宙世紀でも設定の違いは作品ごとに無数にあるし、この世界ではただのザクなのだろうと自身を納得させたからだ。なんなら俺の記憶にあるザクとシルエットが違うような気もするし。

 というかぶっちゃけそんな()()な問題は後回しだ。今は操縦方法の項目を読み込むのが最優先。

 本当は今すぐにでも元締めの許可を取って乗り回したいが……さすがに自分の物でもない貴重品だし、仮に許可を取ってもうっかり変な取り回しをしてぶっ壊すことにでもなれば目も当てられない。

 あのアムロもマニュアルを読んでから操縦していたし、ここは先人に習うことにしよう。

 

 

 

 それから数十分後。マニュアルを一通り読んだ俺はさっそくザクに搭乗していた。

 実はこのザク、元締めが俺専用にと用意した物だったようだ。一番上手く操縦できそうな人物で真っ先に思いついたのが俺とのこと。

 だからジャンク屋における最初のザクパイロットとして俺を選んだらしい。

 もちろん、タダではない。このザクを受領する対価としていろいろ条件を付けられた。彼は友人だが、それ以前に商売人だ。致し方ないことである。

 

 スペースポッドとは違うザクのコックピットに新鮮さを感じながら、操縦桿を握る。

 ついに……ついにこの時が来た。

 宇宙世紀に転生してから約30数年。全ガノタが憧れた本物のMS(しかもザク!)を操縦するという夢を叶える瞬間が来た!

 スマンな前世のガノタたち。今この瞬間だけは優越感に浸らせてもらうぜ。

 

()()()()()()には退場してもらった。いつでも出ていいぞ』

 

 元締めから発進許可の通信が入る。

 余計なお客様とは、耳聡い同業者(ジャンク屋)のことだろう。未だ機密事項であるザクの払い下げを聞きつけたうえ試運転する宙域を探り当てるあたり相当の情報通なのだろうが、万が一民間にでも流されたらたまったものではない。

 それに、俺も慣れない操縦中に余計なちょっかいをかけられるのはご遠慮願いたいと思っていた。事前にその可能性を排除してくれた元締めに感謝だな。

 

 ---さて、発進準備も完了したことだし、ここはひとつぶちかましますか!

 スマンな前世のガノタたち!俺はさらにもうひとつ夢を叶えさせてもらう!!

 

「イザナ……行きます……ッ!」

 

 ガンダム定番のセリフを口上しながら、俺は勢いよく宇宙へとザクを発進させた。

 

 




ジークアクス世界のザクがどんな発展を遂げているか楽しみですよね。
ガンダムからのリバースエンジニアリングの結果、ファーストガンダムと比べてどんな魔改造を施されているか想像もつかなくてワクワクしています。


面白いと感じていただけたら、ぜひ感想と高評価をお願いします<(_ _)>
『面白かった』の一言だけでも作者は泣いて喜びます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。