元ゲヘナ風紀委員、オーネスト・ブルートゥ   作:悲しいなぁ@silvie

1 / 13
本編
元ゲヘナ風紀委員、オーネスト・ブルートゥ(美少女)概念


『聞け、シャーレの先生!

奴…ブルートゥは掛け値無しのクズだ!見つけ次第撃て、遠慮は一切必要ない!!

私の前に奴を連れて来れるのならば金に糸目はつけん…が、この依頼は万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)の威信に賭けて必ずや成功させてもらうぞ、良いな!!』

 

通信機越しにキンキンと響くその声にため息一つ、先生は現場へと共に来てくれた生徒達…アビドス廃校対策委員会のメンバーへ苦笑いと共に軽く声を掛ける。

 

「見つけ次第って…本当になにやったのよこのブルートゥってヤツ」

 

黒髪に猫耳が特徴的な少女、セリカは呆れたように呟きながら周囲を注意深く警戒している。

 

「ん…銀行強盗ぐらいじゃこうはならない」

 

セリカの呟きに銀髪の少女、シロコが答える。

その目には何故か対抗心のような炎が燻っていた。

 

「うふふ、覆面水着団の出番ですね〜」

 

ベージュの髪をはためかせ、ノノミが朗らかな笑みと共に嬉しそうにミニガンを持ち上げる。

 

『万魔殿の議長…実質的なゲヘナの生徒会長直々の依頼ですし、一筋縄ではいかなそうです

皆さん、くれぐれも気をつけて下さいね』

 

通信機越しに心配気に声を掛けるアヤネ。

オペレーターであり戦闘に参加しない自らをもどかしそうにぎゅっと手を握り締める。

 

「うへー、おじさんはどっちかって言うと()の方が気になるかなぁ

まさかうちの借金をまるっと返し切れちゃう額の賞金首が居るなんて思わなかったよ」

 

どこか間延びした口調でピンク髪の少女、ホシノがそう締める。

 

「いやあ、委員長ちゃんには足を向けて眠れないねぇ」

 

ホシノの呟きを聞きながら、先生は数日前の事を思い返す。

ゲヘナ風紀委員会との初邂逅、そして今回の依頼を請け負ったその一場面を。

 

 


 

 

「天雨アコ…!」

 

風紀委員からの砲撃に苦々しげ気にカヨコが呟く。

 

()()()()()でNo.2になれたのにこんなんじゃすぐに元通りだよ」

 

吐き捨てるようなその台詞の意味こそわからなかったものの、カヨコの表情と声色からそれが嫌味であることだけは汲み取れる。

 

『……人聞きが悪いですね、それに繰り上がりではなく順当な人事です』

 

「一回だって勝てなかったくせに?

……まぁ、あの『放火魔』に勝てるのなんてゲヘナじゃそれこそヒナぐらいだろうけどね」

「大方、あの放火魔の一件で仕事が増えた委員長の負担を少しでも減らそうとして───先生を狙った、ってとこでしょ」

 

放火魔、その言葉が誰を指しているのか理解できないままに事態は動き続け…ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナの登場で一旦の小休止を迎えた。

 

「……一年生の時とはすいぶん変わった、人違いじゃないかと思うくらいに」

 

「……ん? 私のこと知ってるの?」

 

ヒナは自治区内での戦闘に対して組織の長としては異様な程に丁寧に、真摯に謝罪した後にホシノへ一つの『提案』を切り出した。

 

「本当は先生に言うだけにしておこうと思っていたけど…

小鳥遊ホシノが居るなら、貴方達全員に話しておきたい事がある

………悪い言い方をするなら、()()()()()()()()

 

ヒナは少し迷うように、言葉を選びながら…本当に話すべきかを逡巡しながらも廃校対策委員会と先生を見る。

 

「もし、もしもアビドスが抱えている十億近い借金を返せる手段があるとしたら───どうする?」

 

 


 

「ゲヘナ風紀委員会の元副委員長…彼女を何としてでも捕縛して欲しい、それが今回の『仕事』」

 

ヒナの言葉に二もなく飛び付いたセリカを抑えながら、ホシノは眉をひそめる。

 

「『仕事』…?もしかして委員長ちゃんが借金分の仕事を斡旋してくれるって事?」

 

「ええ、今のアビドスには他の学校からの『支援』に対応する力は無いだろうし…仕事を請け負って発生する正当な報酬なら貸しも借りも互いに気にならないでしょう?」

 

ヒナの話を聞きながらも、シロコは憮然とした態度で首を振った。

 

「ん、それじゃ間に合わない…」

 

「そうだね…私達も毎月の借金返済の為に賞金首を捕まえたりはしてるんだよ

でも…委員長ちゃんには悪いけど、それだけじゃとてもじゃないけど借金を返し切れる額にはならないんだよ」

 

うへー、と茶化すように締めくくるホシノにヒナは更に首を振った。

 

「なにか勘違いをしているみたいだけど…頼む仕事はこれ一つよ

ゲヘナ風紀委員会元副委員長ブルートゥ、万魔殿(パンデモニウム・ソサエティー)はその身柄を引き渡せるなら報酬に糸目はつけないと触れ回っている…それこそ十億近い金額だろうと」

 

ヒナはもう一度廃校対策委員会の面々と先生を見ながらそう告げた。

 

「これは本当ならゲヘナの中だけで解決すべき問題なのだけど…万魔殿の狸達は風紀委員長()元副委員長(ブルートゥ)の結託を疑って風紀委員会を動かせない

そして、ブルートゥは万魔殿が動かせる程度の戦力なら返り討ちにしてしまう…政治と戦力とを分けていた弊害ね

ウチはこのままじゃ遠からず詰みの段階に入るわ…だからこそこの依頼はどんな高額だろうと万魔殿の狸達が首を横に振る事はない」

 

話が進むにつれ、視線と身に纏う雰囲気が鋭敏化していたホシノに向き直るとヒナは安心して…と前置いて続ける。

 

「十億という報酬だろうと貴方達が()()を感じる必要はないわ──いえ、むしろ感じて欲しくないからこその金額だと思って

貸し借りの話をするなら、学園内の不始末を外部に頼む時点で私達が()()()側だもの」

 

万魔殿の狸達は口が裂けても認めないでしょうけど、と締めくくるとヒナは全員を見て念を押すように問い掛ける。

 

「ブルートゥの強さはよくわかっているつもりよ、貴方達なら不可能とは言わないけれど…まず間違いなく苦戦すると思う

それでも…この依頼、受けてくれるかしら?」

 

 

 


 

 

その後、二もなく頷いたアビドスの面々にヒナは少し安心したように万魔殿と取り次いでくれた。

どうやらヒナが口利きをしてくれたようで報酬額はアビドスの借金と全く同じ金額を用意する事で合意した。

 

「ヒナと万魔殿からの情報によると、ブルートゥは万魔殿の資金とゲヘナ風紀委員会の装備…それに万魔殿議長がミレニアムに発注していた最新型のレールキャノンを持ち去ったみたいだね」

 

先生がヒナから渡された今回の仕事に関する書類を読み上げていると、セリカが眉をひそめる。

 

「レールキャノン?万魔殿はなんでそんなのを造ってた訳?」

 

「なんでも、万魔殿の議長にブルートゥが『ゲヘナの統括たるマコトの威容と威厳を知らしめる為の象徴が必要』だって造らせたみたいだね」

 

「なにそれ……それで盗まれてちゃ世話ないじゃない」

 

『つまり、自分が奪い盗る前提で造らせた…という事でしょうね』

 

話し合う皆の目に、ようやく目当ての【施設】が映る。

アビドスに広がる広大な砂漠の一角、その一角にまるで別の場所から切り取られてきたかのように鎮座する近代的な施設…【ジャンカー・コヨーテス】元ゲヘナ副風紀委員長、ブルートゥが頭目を務める傭兵集団…その本拠地である。

 

 

「おい、客が来てるぜ」

 

施設内部から傭兵の一人が双眼鏡を片手に呟く。

その声に反応した紅い長髪の女が双眼鏡を奪い盗り『客』を見遣る。

 

「ありゃあ間抜けのマコトじゃねぇな…万魔殿の新入りか?」

 

装備は悪くない…しかし、所々に()()がきている。

それに、あの校章は────

 

「はっ!万魔殿の奴等…他所者(ビジター)に金を積みやがった!!」

 

間違いない、あの校章はアビドスだ…落ち目も落ち目、もうじきに()()()()()のカワイソウな連中だ。

女の声に周囲の傭兵達が声を上げて嘲笑う。

 

「おいハコ!!ボスはなんて言ってる?」

 

「聞くまでもねぇだろ…歓迎してやれ──俺達(コヨーテス)の流儀でな!」

 

傭兵達が統率のとれた動きで素早く装備を整えていく…その動きは不良や与太者とは比べるべくもない、暴力を生業(なりわい)とする者の動きであった。

 

 

遠目に施設が見えるようになった頃、先生の持っている通信端末に連絡が入る。

表示される名前は──空崎ヒナ。

 

『無事に辿り着けたみたいね

ブルートゥはその施設に居る…裏もとれているから間違いないわ』

 

元情報部の名に相応しく、ヒナは今回の依頼について襲撃する施設の場所と標的の居る時間を特定し大まかな作戦立案まで買って出てくれていた。

そんなヒナからの通信にいよいよかと皆が装備の最終点検をしていると…端末からテレビの砂嵐のような雑音が響く。

 

『ようこそ訪問者(ビジター)

このような僻地まで来てくださるとは…感激だ』

 

鈴を転がすような、澄んだ声が響き渡る。

 

『ブルートゥ…』

 

声の主に思い当たらずアビドスの面々が硬直する中、ヒナはため息混じりに呟いた。

 

『おや…?ヒナのご友人でしたか

素敵だ…ならば私にとっても友人同然です!新しいご友人…楽しい時を過ごしましょう』

 

使っているのはシッテムの箱ではなく、連邦生徒会から支給された職務用の端末…ではあるが、少なくとも個人が傍受どころかジャックまで可能な代物を渡すとは思えない。

 

『……ブルートゥは施設の最奥に居るようね

先生、気を引き締めて…ブルートゥは風紀委員時代に貴方達が戦った便利屋を何度も単独で捕縛してきた相手よ』

 

ヒナの言葉に全員の雰囲気が引き締まる。

ただ漠然と強いというだけだった相手…それがついこの間一騒動と共にその実力を思い知ったアル達便利屋を単独で鎮圧可能な相手という具体的な強さを提示された事で一気に現実味を帯びた。

 

『ジャンカー・コヨーテスにはキヴォトス内の生徒達を実力順に並べる特殊なシステムが存在するようです』

 

静まり返った場に、アヤネの声が響く。

 

『そしてこのシステムには当然ジャンカー・コヨーテスの傭兵達も登録されていて、傭兵達の強さを直感的に理解できるようになっている事が傭兵ビジネスの成功を支えたとか…』

 

「そんなのどうだっていいわよ…っ!

コイツらは私達の学校の校区内にこんなのを勝手に造ったって訳でしょ!?それだけわかれば十分よ!!」

 

声を荒げるセリカにシロコも頷く。

 

「ん、売れそうな物は全部売り払って…残りはジャンク屋に卸す」

 

「お仕置きが必要ですね〜!」

 

「みんなやる気満々だねぇ…おじさん眩しくなっちゃうよ」

 

緊張に身体を強張らせるでもなく、かと言って気を緩めるでもない…そんな少女達の様子に先生は自身の心配が杞憂だったかと胸を撫で下ろし、歩を進める。

 

『そのシステムにはF〜Sに分類される三十人のランカーと呼ばれる生徒がいるそうです…

ジャンカー・コヨーテスにはブルートゥを含め二人のランカーが居ます、皆さん…気を付けて下さい!』

 

通信機の前で、アヤネは祈るように両の手を握り合わせた。

 

 

 

 


 

 

箱舟(はこふね)ユウ

所属:ゲヘナ学園3年

ランク:08/B

傭兵集団ジャンカー・コヨーテスの頭目補佐。

暴力と自由を何よりも愛する()()()なゲヘナ生であった彼女は早々に傭兵稼業へ身を(やつ)し気ままな生活を送っていた。

ある時、古巣であるゲヘナ学園の元風紀委員副委員長が大々的な傭兵派遣企業を立ち上げると聞き美味い汁を啜ろうと因縁を付け顔面が変形するほどの返り討ちに遭う。

箱舟はその後、彼女の圧倒的な強さに心酔し自らジャンカー・コヨーテスの運営や折衝を一手に引き受け今日までの繁栄を実現させた。

 

 

 

 

 

 




今日の☆ワンポイント☆Blute
AC(アーマードコア)シリーズにて使用される通貨単位(コーム)は1Cが日本円にして1万円程だと考察されています。
そしてオーネスト・ブルートゥ排除では基本報酬として5万C、更に道中の敵にも加算報酬が設定されているので一度のミッションで10万C…つまり十億を稼ぐことはそう難しいことではありません。
素敵だ…♡
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。