空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・アトム・ハート・ファーザー戦の戦闘描写は飛ばします。吉良家に行く前と、その後のオリジナル話が中心

・男主視点。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。特に、4部承太郎の心情を捏造しています




最強とは?無敵とは?

 

 

 

 

 ラスボスが結局ほぼ原作通りの結末を迎えるなんて想定外だった。おそらく、あの後に振り返ってはいけない小道で地獄行きになったんだろう。

 

 

 しかし、運が良かったな。あそこで奴が死んでいなければ、本当に取り逃がしていたかもしれない。

 今回は運に助けられて辛うじて上手くいっただけで、次回も似たような事があった時に運が助けてくれる……なんて事はあり得ないのだ。

 

 やはり、俺自身が強くならないと。努力を怠ってこの先の未来で承太郎を助けられなかったら、目も当てられない。

 

 

 …………それはそれとして。

 

 

(――クソ変態野郎はもう一遍死んでくれ)

 

 

 何なんだよあの野郎は!?俺のスタンドを、大事な半身をあんな気持ち悪い目で見やがって!!

 つーかスタンドの手まで守備範囲とか!何だそれ聞いてねぇぞ!?

 

 ああぁぁ!あんな野郎を相手に動揺しちまったなんて!精神的に負けたなんて!屈辱だ……!!

 …………本当に、マジで、へこむ……俺があの変態性に負けたせいで、危うく杜王町が大惨事になるところだったじゃねぇか……

 

 

(志人!)

 

(……イージス?)

 

(承太郎も言ってたじゃないか。志人は本当に良くやったんだよ!

 俺の事なら気にしなくていいから、あんな変態野郎の事はもう忘れた方がいい。記憶から綺麗さっぱり抹消してしまおう。そうしよう。ね?)

 

(…………うん。ごめん、ありがとう……)

 

 

 心の中で慰めてくれたイージスのおかげで、ちょっとだけ元気になれた。

 

 

 気を取り直したところで、振り返ってはいけない小道の前に到着した。そこには既に、杉本鈴美とアーノルドがいる。

 その後は原作通りの会話になる……と思いきや、全く違う展開になった。彼女から吉良の最期について教えてもらった上、新たに成仏できない理由まで出来たという。

 

 

「あの殺人鬼が、最期に気になる事を言ってた。――"私が死んでも、まだ父親がいる"って。……その事が何だか、どうしても気になってしまって……」

 

 

 あー……写真の親父の事かぁ。

 

 

「……吉良吉影の父親、か。確かに、それは気になるな。財団に調べてもらうとしよう。

 上手くいけば、吉良自身の情報と自宅の住所がすぐに判明するはずだ。それが分かったら念のため、この場にいる全員で、」

 

「僕は行きませんよ。これから用事があるので。それに、幽霊である彼女も無理でしょう」

 

「……訂正。そこの先生と、杉本鈴美を除いた全員で、吉良の自宅へ向かうとしよう――」

 

 

 そしてアトム・ハート・ファーザー戦に突入ですね、分かります。

 

 

「――ただし、俺の助手!てめーも駄目だ!」

 

「えっ!?」

 

 

 承太郎にびしぃっ!と指差され、面を食らった。何で俺だけ!?

 

 

「今日はもう帰れ」

 

「な、何故ですか!」

 

「この中で、お前が一番疲労している。帰って休め」

 

「でも、」

 

「吉良の自宅で何かが起こった時……今のお前では足手纏いになる」

 

 

 …………そう言われると、俺は黙るしかない。承太郎の言葉は正論だ。自然と、俯いてしまう。その頭を、大きな手で撫でられた。

 

 

「……お前は賢いな、良い子だ。……とにかく、今日は帰って早めに寝るといい」

 

「今日1人で眠ったら、高確率であの変態野郎の悪夢を見そうなんですが」

 

 

 ついつい、八つ当たり気味にそう言うと、彼は困った顔になってしまった。

 

 

「…………すまない」

 

「あ、いや、俺も、ごめんなさい。八つ当たりしちゃいました」

 

「志人さん?変態野郎の悪夢って、どういう事っスか?」

 

 

 仗助からそう聞かれたので、彼らがいない間に何があったのかを説明する。

 ……すると。仗助は怒り心頭、形兆は青筋を立て、億泰と康一と露伴は口元を引きつらせ、鈴美は額に手を当ててため息をついている。

 

 

「あの野郎が死ぬ前に一発ぶん殴ってやりたかった!志人さん、大丈夫っスか!?なんなら今晩はうちに泊まっても良いっスよ!!」

 

「僕の家でも大丈夫ですよ!」

 

「あ、俺達の家に来ても良いぜ!なあ、兄貴!」

 

「…………まあ、今回だけは許そう」

 

「あなた、というかイージスくん?も、私と同じでとんだ変態に目を付けられちゃったのね……心から同情するわ」

 

「僕も、君には本当に同情するよ……」

 

 

 皆が優し過ぎて泣きそうになった。イージスも俺を通して彼らの言葉を聞いたのか、心の中でちょっと泣いている。

 俺はともかく、お前はもっと泣いて良いぞ、イージス……

 

 

 さて。……承太郎達は、俺を置いて立ち去って行った。露伴も、彼らとは別の方向に去って行く。残された俺はというと……

 

 

「……俺、一度も"分かりました"なんて言ってませんよ、承太郎さん」

 

「あら。じゃあ、悪い子になるのかしら?」

 

「!!……あ、あのー、鈴美さん?承太郎さん達には、」

 

「ふふ、分かってるわ。内緒にしてあげる」

 

 

 微笑ましいものを見る目で笑われた。恥ずかしい……

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――という訳で。やって参りました、吉良邸。ただ今、イージスの不可視のバリアの中で潜伏中です。

 

 ラスボスが死んだ後で吉良邸に突入、さらに形兆も一緒にいるなんて、本来ならあり得なかった展開だ。

 原作には無い妙な出来事が起こっても困るし、念のために様子を見ておかないとな。……万が一承太郎にバレた時は、後が怖いけど。

 

 今回は、余程の事が無い限りは介入しないと決めている。承太郎が言っていたように、体調が万全ではない俺が、彼らの足手纏いになってはいけない。

 

 写真の親父が弓と矢を持って逃げ出すが、これも放置する。敵スタンド使いが増えてしまうのは困るが、仗助達に多くの実戦を経験してもらうためには、奴を見逃すしかない。

 そして俺も、仗助達と共に実戦を経験する。そうやって強くなるのだ。

 

 問題は。最後に写真の親父を捕まえたい時に、どうすればいいのかだが……それは、これから考えていくとしよう。

 

 

 ……家の外から様子を窺っていたが、その後は大体原作通りに進んだらしい。

 途中で形兆が関わった事で少し流れが変わったようだが、それでも最終的に写真の親父はまんまと逃亡した。

 

 

 ただ……承太郎の事で、少し気になる点がある。

 

 例の仗助の名台詞……いや、迷台詞である"無敵のスタープラチナ"云々という、あの台詞の事だ。あれを言われた時から、承太郎の様子がちょっとおかしい。

 表面上は何も変化が無いが、あの目と雰囲気からして落ち込んでいるような……そんな気がするのだ。

 

 

「……すまないが、今から近くにタクシーを呼ぶから、お前達は先に帰ってくれ」

 

「承太郎さん?」

 

「それはいいっスけど……何で?」

 

「……1人で、少し考えたい事があるんでな」

 

 

 吉良邸の外に出ると、承太郎は携帯を取り出して仗助達にそう言った。……原作の裏側でも、こんな事があったのかな?

 

 

「…………よし。ちょうど近くを走っていたらしいな。あと数分程度で到着するらしい。

 金は……これだけあれば充分だろう。釣りはいらないから、余った分は4人で分けるように」

 

「おおッ!」

 

「ありがとうございまァーす!」

 

 

 それから、仗助達はタクシーに乗って帰って行く。唯一、形兆だけは訝しげな様子で承太郎を見ていたようだが、何も言わずにタクシーに乗っていた。

 

 

「…………さて」

 

 

 タクシーが見えなくなり、1人になった承太郎の背後にスタープラチナが現れ――一瞬で、俺の目の前に移動して来た!

 

 

「うおおうっ!?」

 

「わあぁっ!?」

 

 

 思わず、イージスと共に声を出して驚く。……せっかく不可視のバリアで隠れていたのに、バレバレだったらしい。っていうか、いつから気づかれてたんだ!?

 

 

「…………志人、イージス。姿を見せろ」

 

「はい……」

 

 

 観念した俺はバリアを解除して、イージスにも中に戻ってもらい、承太郎に向かって頭を下げた。

 

 

「すみませんでした!……どうしても皆が心配で、隠れて様子を見てました。ごめんなさい」

 

 

 何かを言われる前に、自分から謝る事にした。これ以上の言い訳はしない。承太郎の言う事を聞かなかった、俺が悪い。

 

 

「…………そこで何も言い訳をする事なく、潔く謝るのが、お前だよな……やはり、似ている」

 

「……承太郎さん?」

 

「だが……心配性な所、お人好しな所は……似てないな」

 

「?」

 

 

 恐る恐る頭を上げると、承太郎は……俺を見ているようで、見ていない。何かを懐かしむような目をしていた。

 それに、何だか悲しそうだ。……少し迷ったが、今なら周りに誰もいない。あえて踏み込む事にする。

 

 

「あの、承太郎さん」

 

「ん?」

 

「さっきから、落ち込んでますよね?具体的に言うと、仗助が"無敵のスタープラチナ"とか言った辺りから」

 

 

 踏み込んだ結果、変化は劇的だった。承太郎はカッと目を見開き、俺を凝視している。明らかに動揺していた。

 

 

「ついさっきも、俺を見ながら何かを懐かしむような……悲しそうな目をしていました」

 

「…………」

 

「聞いても、良いですか?あなたが、何を考えていたのか」

 

「…………」

 

「……あ、もちろん無理に聞くつもりは無いので、」

 

「昔の、」

 

「!」

 

「……昔の事を、思い出していた……10年前の事を」

 

 

 10年前。……3部の話、だよな?

 

 

「ところで、志人」

 

「はい、何ですか?」

 

「……言う事を聞かなかった子には、お仕置きが必要だよなあ?」

 

「っ!!」

 

 

 その言葉を聞いて真っ先に頭に浮かんだのは、ネズミ狩りの際にウメボシされた時の痛い記憶だ。

 

 

「ごっ、ごめんなさい!あのウメボシだけは!あれだけは止めてください!それ以外だったら何でも(・・・)やるので、」

 

何でも(・・・)?よし、言ったな」

 

「えっ」

 

「――今からドライブに付き合え。それが罰だ」

 

「…………は、……はい??」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 どうしてこうなった?……そう考えるのは、もう何度目だろうか?

 

 

 あれから。俺は承太郎が運転する車の助手席に乗せられて、彼に言われた通りドライブに付き合っている。

 車はひたすら海側を走っていた。車に乗った時には既にかなり日が傾いていたが、今ではもうすぐ日が沈みそう……あ、沈んだな。さっきよりも暗くなった。

 

 その間、承太郎は一言も喋らない。車に乗ってからずっと、何か考え事をしているように見える。

 ……もしかして、この沈黙に耐える事が罰だったのか?だとしたら、承太郎は当てが外れたな。

 

 俺にとって、この人の沈黙は全く苦にならない。

 

 "承太郎さんは沈黙が怖い"と、原作の康一がそう言っていたが、俺にとってはそこまで怖いものではない。

 むしろ、落ち着くのだ。この人の隣にいると安心する。元々静かな時間は好きだし、俺自身がお喋り好きって訳でもないし。

 

 承太郎が相手だと、無理に話す必要が無い。沈黙が苦になるどころか、気楽だ。

 

 

 ……とはいえ。これが何のためのドライブなのかが分からなくて、ちょっと困惑している。

 

 

(どうしてこうなった……?)

 

 

 内心でn回目の呟きをした時、とある高台に車が停められた。承太郎が車から降りたので、俺もそれに続く。

 潮風、それに波の音も心地が良い。周囲に人の姿は無く、静かだ。……高台から海を見下ろしている彼の隣に並んだ。

 

 

「…………志人は本当に、何も聞かないんだな」

 

 

 ようやく口を開いた承太郎が、苦笑いを浮かべながらそんな事を言った。

 

 

「……これが仗助達なら、遠慮なく踏み込んで来るだろう。だが、お前は違う」

 

「……承太郎さんの長い沈黙は、何かを深く考えたいがための沈黙でしょう?

 その思考の邪魔をしたら、悪いので。……まぁ、それに何故俺を同行させたのかは、まだ分かってないんですけどね」

 

 

 そう。運転中、この人がずっと考え事をしていた事は分かっている。そういう時は多分、何か重要な事を話したい時なんだろうな、とも思っていた。

 

 しかし、その重要な事とは何か?そして何故、それを話す相手が俺なのか?……疑問は、それぐらいだろうか?

 ならば。後は承太郎の話を聞けば、疑問は解決する。その時が来るのを、静かに待っていればいい……車内にいた時、俺はそう考えていたのだ。

 

 

 そんな考えを簡単に伝えると、承太郎はますます苦笑いを深くする。

 

 

「……お前は物分かりが良い……いや、良過ぎるのか?何にせよ聡明だな。本当に10代か?」

 

「、やだなぁ。正真正銘、高校2年生ですよ?留年もしてないですし」

 

 

 ほんの一瞬。言葉に詰まったが、何とか当たり障りの無い返答を口にした。

 実は転生済みの精神年齢40代なんですよ、俺。最近は肉体年齢に思い切り引きずられてるけど……なんて、言える訳がない。

 

 

「高2……」

 

「?」

 

「そういえば。当時の俺と、今のお前は、同い年だったな……」

 

 

 当時とは、間違いなく3部の時の事だろう。……そうか。今世の俺は、あの時の承太郎と同い年か。その後、しばらく沈黙が続いた。

 

 

 

 

 

 

「――――10年前。俺がスタンド使いになった時から、全てが始まった」

 

 

 やがて、承太郎は淡々と話し始める。3部の、あの過酷な旅の詳細を。

 まさか、俺なんかにその話をしてくれるとは思わなかった。原作では、この人があの旅の事を詳しく話す描写は無かったはず……

 

 DIOの存在が原因で、彼の母親が倒れてしまった事。母親を救うために、DIOを倒す旅に出た事。

 その旅に同行してくれた、祖父も含めた頼もしい戦友達との思い出。互いに協力し合って手強い敵を何人も討ち破り、結束を強めた事。

 

 彼には4人と1匹の戦友達がいたが、旅の最後にその内の2人と1匹が亡くなった。

 ……それから、生き残った2人の内の1人と急に連絡が取れなくなり、当時の戦友達の中で今自分の側にいるのは、祖父だけだという事。

 

 

 承太郎は、旅の最後に亡くなった2人と1匹……花京院、アヴドゥル、イギーがどのようにして亡くなったのかも語っていた。

 きっと、ジョセフとポルナレフから聞いたのだろう。……その死に様さえも、淡々と語る様子を見ていた俺は――気がついた時には、涙を流していた。

 

 

「…………すまない。その辺は、あまり詳しく話すべきじゃなかったな。ガキにはきつい話、」

 

「違い、ます」

 

「……違う?」

 

「あんたが、泣かないから……代わりに……泣いてるんだよ」

 

「――――」

 

 

 表情はほとんど動いてないのに、目を見て雰囲気を感じれば泣きそうになってるのはバレバレだ。

 

 ……多分だけど、この人。今ではもう、泣きたくても泣けなくなっちまったんじゃないかな?実は当時泣き過ぎて涙が枯れてしまった、とか。

 あるいは。周囲の期待に応えるために、大切な人達を守るために……弱味を見せる事ができなくなって、いつの間にか涙が出なくなっていた、とか。

 

 もちろん。これらは全て、俺の勝手な推測だが。

 

 

「…………志人。お前はな……亡くなった俺の戦友の1人に、似ているんだ。外見ではなく、中身が」

 

「……その人は、どんな人だったんですか?」

 

「そいつは俺と同じ日本人で、俺よりも1つ年下の男だった」

 

 

 花京院じゃねぇか。……俺と花京院が、似ている?どこが?

 

 

「頭が良いし、洞察力も高くて、気遣いも上手い。俺達の仲を取り持つのは、いつもあいつだった。

 ……ただ、時々酷く頑固になる奴だった。今日、俺の言う事を聞かなかったお前のように。……そういう所が似ているんだ」

 

 

 …………実際に花京院と接していた承太郎がそう言うなら、似ているんだろうな。俺は、花京院に似ている……そう、か。

 

 

「お前があいつに似ている事に気づいたら、自然と昔の事を思い出していた。

 その上、仗助が"無敵のスタープラチナ"とか言うから……今日はなんとなく、昔の事を誰かに聞いてもらいたい気分になっちまった。

 

 そしてお前なら、話が終わるまで何も聞かずに、黙って聞いてくれるだろうと思った」

 

「だから俺に、ドライブに付き合え、と?」

 

「そうだ。…………なあ、志人。聞いてくれ、俺は、いや、俺とスタープラチナは――

 

 

 ――最強でも、無敵でも無いんだ……!!」

 

 

 そんな絞り出したような声を聞き、俺ははっと振り向いて、彼の顔を見た。歯を食い縛り、苦し気な表情をしている。

 

 

「死んでいったあいつらを、この手で守る事が出来なかった。連絡が取れなくなったあいつは、本気で俺を頼ってくれない。肝心な時に限ってガキ扱いする。

 あの旅から帰って来て今日に至るまで、あいつら以外にも俺が守れなかった奴らは沢山いる。失敗だって何度も繰り返した。

 

 そんな俺と、俺のスタンドが、最強?無敵?……ふざけんな。っ、ふざけんなよッ!!俺達の何処が最強だ?何処が無敵だ!?

 

 ――本当に最強で、無敵だったら!俺はこの手であいつらを守れたはずなんだッ!!」

 

「――――」

 

「…………本当に最強になれるなら……無敵になれるなら、俺は、そうなりたかった。あいつらを、俺の手で守りたかった……死なせたく、なかった」

 

 

 ……感情を爆発させて怒鳴ったかと思いきや、今度は弱々しくそう言った。どう見ても精神的に不安定な状態である。

 しかし。ある意味人間らしさが出ていて、好ましいと思ってしまう。

 

 今、俺の目の前にいるのは。ジョジョシリーズの登場人物である"空条承太郎"ではなく、現実世界で生きている"空条承太郎"だ。

 アニメや漫画によく登場する、カッコいいヒーローなんかじゃない。

 

 

「…………確かに、承太郎さんは最強でも無敵でも何でもねぇよ」

 

「…………」

 

「当然だろ?――だってあんたは、普通の人間なんだから」

 

「!」

 

「人間1人に出来る事なんて、そこまで多くない。あんたも、俺も。化け物じゃない。ましてや神でもない……人間なんだ。それを、受け入れるしかねぇだろ」

 

 

 俺だって、出来る事なら今世の母を護りたかった。……死なせたく、なかった。

 

 

「死んだ人間は、何をどうしたって、俺達の下には帰って来ない。あんたの戦友達も……俺の母さんと、婆ちゃんも」

 

「…………」

 

「でもさぁ……俺達は、孤独じゃねぇんだよ」

 

「……孤独じゃ、ない」

 

「そうさ。俺の側にはあんたもジョセフさんも仗助達もいるし、あんたの側にはジョセフさんも俺も仗助達もいる。

 例えあんたがアメリカに帰っても、俺達との繋がりはそう簡単に切れるようなものじゃねぇ。それなのに――」

 

 

 嗚呼、そうだ。俺も承太郎も1人じゃないんだ。それなのに、あんたは――

 

 

「――何であんたは!全部1人で抱え込もうとしてんだよ!?」

 

「――――」

 

「さっきも言ったように、あんたは最強でも無敵でも何でもねぇ!だったら!自分以外の誰かを頼ればいいだろ!?

 もしかしたら、今までは頼れる誰かがいなかったのかもしれない。でもこれからは、俺達がいる!

 

 今はまだ、あんたが頼れる程に強い訳じゃない……だが!今に見てろ!俺達はこれから強くなってあんたの隣に追い付いてやる!!」

 

 

 俺が定期訓練を提案したのは、そのためだ。仗助達の成長を促して、強くなってもらうために……そしてあわよくば、これから先の未来で、承太郎に頼ってもらうために。

 

 

「……承太郎さんが頼ろうと思える程に、俺達が強くなれば、あんたが1人で何もかも抱え込む必要はなくなるだろ?」

 

「志人、お前、」

 

「つーか俺は前にも言ったよな!?ほら、俺とあんたが喧嘩して仲直りした時、"勝手に1人で抱え込むな"って!」

 

 

 そうだよ、俺はあの時も同じ事を言ったじゃないか。いつか承太郎が潰れてしまったらと思うと心配だとも言った!

 人の事を心配するのは当たり前だとも言った!俺の話をちゃんと聞いてなかったのか、この人は!!

 

 

「……そう、だな。確かに、言ってたな……俺の事をごく普通の人間として扱い、心配するのは……お前にとって、当たり前の事なのだと」

 

「覚えてるじゃねぇか!だったら最初から1人で抱え込むな!頭良いくせに馬鹿かよ!?」

 

「…………ふ、……くく、」

 

「……承太郎さん?」

 

「――ははははははッ!!」

 

「えっ、ちょっ、」

 

 

 笑っ……て、る!?4部承太郎が大笑いしてる!?何で!?

 

 驚き過ぎて、一周回って冷静になった。そして自分の発言を振り返ると、承太郎を相手に長々と偉そうに、とんでもない言葉を口にしていた事に気づく。

 やべぇ。いつの間にか敬語取っ払ってたし、"今に見てろ"とか"頭良いくせに馬鹿かよ"とか言っちゃったし、

 

 

 あれ?俺、死んだ??

 

 

「ああああのっ、承太郎さん、生意気言ってすみませ、ぐえっ!?」

 

 

 慌てて謝ろうとしたら、言葉の途中で頭を押さえつけられた。ぐしゃぐしゃと頭を撫でられている。首が痛い。

 

 

「志人」

 

「な、何でしょう?」

 

「俺は、頼っても、良いのか?」

 

「……良いに決まってるでしょう。普通の人間なんですから、自分以外の誰かを頼るのは当然の事です。

 今まで1人で何もかも抱え込んでいたあなたなら、尚更……頼っていいんですよ」

 

「…………そうか……そうすれば、良かったんだな」

 

「はい。……まぁ、あなたからすれば俺や仗助達はまだ頼りないでしょうけど」

 

「いや、そんな事は無い。少なくとも、志人。お前はもう、充分頼り甲斐のある男だ。だから……先に謝っておく。悪いな」

 

「えっ?」

 

「大人は、ずるいんだ。……やれやれだぜ。結局、手放せなくなっちまったじゃねえか」

 

 

 頭から手が退いたので、顔を上げる。……そこには、10代の頃のように不敵に笑って俺を見下ろす、承太郎がいた。

 

 

「手放せないなら――何としても手に入れて、側に置くしかない」

 

「承太郎さん……?」

 

「さて、長々と付き合わせて悪かったな。話を聞いてくれて助かった。ありがとう」

 

「へ?あ、はい、どういたしまして?」

 

「その礼代わりと言ったらあれだが、夕飯は奢ってやるよ」

 

「ご馳走になります!」

 

 

 承太郎の妙な呟きが少し気になったが、貧乏学生としては、奢ってもらえるというならついて行くしかない。

 

 とはいえ。最近は承太郎の助手というバイトのおかげで、金は結構貯まってきているのだが……

 その金の大半は、万が一の時のために貯金している。よって、貧乏学生である事に変わりは無いのだ。

 

 そんな訳で当時の俺は、その妙な呟きの意味を深く考える事はしなかった――

 

 

 

 

 

 

 ――数年後。彼の策略に嵌まっていた事に気づく、その日までは。

 

 

 

 

 

 

 






・ドライブに付き合わされた助手君

 帰って休めと言われたのに、勝手について行った"悪い子"。だって心配だったんだもん。
 大体原作通りの展開になった事に安心したのも束の間、実は承太郎には尾行がバレバレだった。せっかくバリアで隠れてたのに、何で……!?

 罰として付き合わされたドライブにて、3部の旅の話を聞かされ、思わず涙。泣きそうなのに泣こうとしない承太郎の代わりに泣いた。
 その後。本音をぶちまける彼に対して、何故1人で抱え込もうとするのかと一喝。勢いに任せて、年上を相手に超失礼な事を言っている。

 最終的に大笑いされ、何だか妙な呟きを聞き、そして流されてしまったので、何が何やら全く分かっていない。
 こいつが承太郎の妙な呟きの意味を理解するのは数年後だが、その時には全てが手遅れ。


・助手君をドライブに付き合わせた海洋学者

 園原の尾行に気づいたきっかけは、観察するような視線や、微かに聞こえる仗助達以外の足音。それから気配。
 それで当たりを付けて時止めを使い、園原の目の前まで移動。驚かせた事もお仕置きの一環。

 園原と花京院の姿が重なった事、仗助から"無敵の"云々と言われた事がきっかけで、失った戦友達の事を思い出し、落ち込んでいた。
 しかし。園原に本音をぶちまけ、さらに一喝されたおかげでいろいろと吹っ切れた。

 もしかすると、これから先の未来で4部面子を頼る日が来る……かもしれない。

 それはそれとして、結局手放せなくなっちまったな――とりあえず、財団に根回しする事から始めるか。






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