空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・ジョルノの入団試験終了後のオリジナル話。暗チと男主の初対面。会話文は日本語で書かれていますが、基本イタリア語を話している設定

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。ソルベとジェラートのキャラや、SPW財団についてなど、捏造が激しいです。男主視点




ハートキャッチされた暗殺チーム

 

 

 

 

 朝から夕方に掛けて情報収集を済ませた俺は、その日の夜、シエルと共に暗殺チームのアジトへ向かった。今日は、彼らと顔合わせをする日だ。

 

 彼らをイタリアから無事脱出させるために俺が考えた作戦を、本人達に説明して、納得させた上で実行しなくてはならない。初っ端から難しい仕事だな。

 俺なんかの説明で、彼らは納得してくれるだろうか?……いや、やるしかねぇだろ。それが仕事なんだから。

 

 

「…………はぁ……」

 

「……ニャア?」

 

「んん?……あぁ、大丈夫だよシエル。ありがとう」

 

「ンニャー……」

 

「志人……」

 

「大丈夫だって!イージスまでそんな顔するなよ」

 

 

 不可視と防音バリアの中で、俺に抱えられたシエルと、俺の背後にいるイージスが心配そうな顔をしている。

 2人を不安にさせたら駄目だ、俺がしっかりしないと……そう気を引き締めつつ、しばらく歩いたところで目的地に到着した。

 

 アジトの扉へ向かう前に、シエルに話し掛ける。

 

 

「周囲に人の気配はあるか?」

 

「ニャニャ」

 

「無いか。……よし、ありがとう」

 

 

 こういう時、人間よりも感覚が鋭い動物は頼りになるよな。

 特にシエルは、スタンド使いになって知能が高くなったおかげか、人間の言葉を理解してくれる。意思疎通ができるのは本当にありがたい。

 

 

「それじゃあ、イージスとシエルはこのままバリアの中に隠れて、様子見しててくれ。イージスは、万が一何かがあった時はバリアで俺を守って欲しい。

 シエルは……大人しくしてろよ?今回の相手はいずれ同僚になる人達なんだから、大怪我を負わせるのは禁止だぜ。いいな?」

 

「分かった、任せて」

 

「…………ンニャー」

 

 

 相手はあの(・・)暗殺チームだからな。話が拗れて、スタンド能力で攻撃されてしまう可能性も無いとは言えない。

 だから念のため、イージスとシエルには俺の近くで不可視&防音バリアの中に隠れてもらい、何かがあった時の対処をお願いしておく。

 

 ただし、シエルには大人しくしておくようにと、注意した。

 この子は本気を出せば原作の猫草のように、対象の血管内に空気弾を送って殺害する事もできてしまうから、扱いには気をつけないといけない。護衛としては頼もし過ぎて非常に助かるけど。

 

 

 一度、深呼吸。……その後、バリアの中から俺だけ外に出て、暗殺チームのアジトの扉をノックする。

 

 最初にノックを2回。次に少し間を置いて、1回だけノック。最後に、再び間を置いて3回ノック。

 ……扉の向こうから、ノックが2回返って来た。それに対してまた3回ノックを返すと、ようやく扉が開く。

 

 これは、前もって暗殺チームと財団職員の間で決めておいた、本人確認の合図だ。

 この合図を知っているのは暗チのメンバーと、俺が来る前に彼らと交渉等のやり取りをしていた、1人の財団職員のみ。

 

 俺はその職員から直接、この合図について教えてもらった。この事は、暗チのメンバーも承知している。

 

 

Buonasera(こんばんは)。SPW財団の者ですが……今、お邪魔しても構いませんか?」

 

「お、おう……入れ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 微笑を浮かべて挨拶すると、俺を出迎えてくれた男……イルーゾォは何故か動揺を見せた。思ってたよりも若い、とか。日本人かよ、とか。そんな驚きから来る動揺かな?

 

 

 彼の案内で中に進むと、ある部屋へ通される。そこには、暗殺チームが勢揃いしていた。

 

 テーブルの右側のソファーに、プロシュートとペッシ。左側のソファーに、メローネとギアッチョが座っている。

 壁側には、ホルマジオが壁に寄り掛かかりながら立っており、その隣に今、イルーゾォが並んだ。

 

 それから。少し離れた場所にあるソファーで、ソルベとジェラートがくっついて座っている。……本当に生きてるんだなぁ。良かった。

 そして最後に、暗殺チームのリーダー……リゾット・ネエロが、テーブルの奥の一人掛けのソファーに座って、こちらをじっと見つめている。

 

 

「……皆様、初めまして。SPW財団職員の、園原志人と申します。

 さて。それぞれご都合もあると思いますので、さっそく本題に入ろうかと、私はそう考えておりますが……よろしいでしょうか?」

 

 

 暗チの面々、一人ひとりと目を合わせてそう問い掛ける。……彼らは近くにいる仲間同士でアイコンタクトを取ると、一斉にリゾットに目を向けた。やはり、この中で決定権があるのはリーダーか。

 

 

「……分かった……それで構わない」

 

「ありがとうございます。では、皆様をイタリアから脱出させる作戦について、ご説明いたします」

 

 

 俺が彼らに実行してもらいたい事は――原作の状況の再現。パッショーネのボスの娘、トリッシュ・ウナをターゲットにして、護衛チームと争ってもらう。

 そのどさくさに紛れて、暗殺チームの全員が死んだと周囲に誤解させた後、こっそりとイタリアから脱出する……これが、この作戦の大まかな内容である。

 

 さらに。この作戦の協力者となってもらうために、俺が後に護衛チームの下へ交渉しに行く予定だ。

 ……まぁ、その前に。今日中にある人物の所へ、根回しに行くつもりでいるのだが……その話は、暗殺チームには黙っておこう。

 

 

 さて。俺は根回しの件を除き、大雑把な作戦内容を最初に明かしてから、後に詳しく説明するつもりでいた。

 その方が、理解しやすいだろうと思ったからだ。……しかし詳しく説明する前に、さっそくこの男が口を開いた。

 

 

「……俺達の死を偽装するって事はよォ、周りが死んだと誤解するぐらい危険な真似を俺達にやらせるって事だよなァ……

 それ以前にあの(・・)ボスの娘を狙うなら、ボスの正体にも近づく……組織のタブーを犯すって事だ。最悪の場合、イタリアから脱出する前に死ぬかもしれねェ……」

 

 

 某ヒーロー漫画で、爆破の個性を持つキャラと同じ声が聞こえる。……ギアッチョだ。そういや、そのキャラと同じくキレやすい奴だったよな。ちょっとまずいか?

 

 

「……そうですね。結果的に、そうなる可能性は高い……ですが、私の力であなた方を、」

 

「それで俺達には危険な事をやらせておいて自分は高みの見物ってかァ?――なめてんのかテメーーッ!!俺達の命を何だと思ってやがるッ!?」

 

 

 やっぱりキレた!!ギアッチョはソファーから立ち上がり、地団駄を踏む。

 

 

「つーか"高みの見物"って自分だけ安全な場所から傍観するって意味だよなァ!?じゃあなんで安全な場所が"高み"に限られてんだよォッ!?高い場所が危ねえ時だってあるだろうがよォーッ!!

 どういう事だッ!納得いかねえッ!!ムカつくんだよボケがァーーッ!!」

 

 

 でたよ、ギアッチョ独特のキレ芸!前世の漫画とかアニメで見るだけなら面白かったが、実際に現実でぶつけられると結構怖い。

 でも。その恐怖を決して表に出さないように、微笑……を保つのはちょっと無理だから、苦笑を浮かべる。

 

 俺は今回の作戦の指揮を執る立場だ。よって、この人達に嘗められてはいけない。

 

 

「ギアッチョさん」

 

「あ"あ"ッ!?」

 

「高みの見物の本来の意味は、"安全な場所から傍観する事"ではなく、"第三者の立場から事態の成り行きを観察する事"です。

 そのため、"高み"が安全か危険かどうかはあまり関係がなく、事態の成り行きを観察するのに適した場所が高い所だからこそ、"高み"という言葉が使われているのです。

 

 ……どうでしょう?あなたのその疑問に対する苛立ちは、この回答で解決できるのではないかと思いますが」

 

「…………そう、だな」

 

「冷静さを取り戻せたようで、何よりです。ではこれから、作戦内容についてもっと詳しくお話させていただきますが、よろしいでしょうか?」

 

「あ、ああ……」

 

「ありがとうございます。それでは、続けましょう」

 

 

 よし、何とか乗りきったぜ。……だからシエルくん、君は落ち着こう。な?

 

 今イージスと心の中で会話しているが、ギアッチョのキレ芸に驚いたシエルが彼に空気弾を放とうとした所を、イージスが頑張って止めてくれたらしい。

 ごめんな、イージス。シエルのストッパーは、そのままお前に任せる。

 

 

(人使いならぬスタンド使いが荒いよ!!)

 

(ごめんって)

 

 

 俺も余裕が無いから、今はお前に任せるしか無いんだ。本当にごめん。

 

 ……しかし、ギアッチョの反応が妙だな。俺から真面目な回答が返って来た事で、毒気が抜かれたのかもしれないが、それにしたって冷静になるのがやけに早い。

 それに暗チの他のメンバーも、俺の回答に驚きつつ、どこか冷静で……いや、待てよ?彼らが俺に向けている視線の意味は、もしかして――

 

 ――うん。なんとなくだが、彼らの狙いが分かったかもしれない。だが今は、その真偽を確かめるのではなく、作戦内容を説明する事を優先しよう。

 

 

 暗殺チームと交渉を進めていく傍ら、パッショーネについて情報収集していた他の財団職員達の報告によると。

 驚く事に、彼らは既にトリッシュの存在にまで辿り着いていたのだ。

 

 これには本当に驚いたな。財団職員達の情報収集能力は、俺の想像以上に優れているらしい。そのおかげで、俺が考えた作戦も早めに実行できるようになったし、ありがたい事だ。

 

 この作戦については、事前に財団上層部から実行する許可をもらっている。

 一部の人間……俺にこの任務を押し付けた奴は、マフィアのボスの娘とはいえ一般人を巻き込むのは如何なものかと、最初はやんわりと反対したらしい。

 

 だが最後には、この作戦を実行させる事に賛成したという――万が一失敗した場合は、この作戦の責任者……つまり、俺に全ての責任を取ってもらおう、と言った上で。

 

 多分そいつの狙いは、俺が一般人を巻き込んだ事や、この任務に失敗した事を非難して、承太郎の助手という立場から引きずり下ろす事なんだろうなぁと、察した。

 どんだけ俺の事が嫌いなんだよ、そいつは。……上等だ。こうなったら絶対に作戦を成功させてやる。

 

 …………正直に言うと。こうしている今も、トリッシュや護衛チームを巻き込む事への罪悪感で心が滅茶苦茶痛んでるんだけどな。

 

 

 閑話休題。……そんな、他の財団職員達が入手してくれた情報と、さらに俺がイタリアに来てから入手した情報を明かしつつ、今回の作戦について詳しく説明していく。

 

 

「――拳銃が、バナナになった……!?兄貴、こいつの能力って何だろう……?」

 

「……さあな。この映像を見ただけでは分からん」

 

「おいおい!この動画、本物かァ!?」

 

「……ビデオカメラで撮影された、そのままの映像。本物だと思う」

 

「ああ、そうだなジェラート。……ホルマジオ、これは今現在の技術では捏造の仕様が無いと思うぜ」

 

「……オレ達の中で特に機械に強いソルベとジェラートがそう言うなら、マジなんだろうな」

 

「これは……確かに君の言う通り、明日辺りに騒ぎになりそうだねえ」

 

 

 その際、今日ジョルノを尾行した先で撮影した映像……彼がポルポの目を盗み、拳銃をバナナに変えてしまった映像も見せる。

 この証拠があったおかげで、暗チの面々は"明日ポルポが死亡する"という俺の発言を信用してくれた。

 

 

「私は、明日に死亡すると思われるポルポの後釜はおそらく、ブローノ・ブチャラティという男になるのではないかと、予想しております」

 

「ブローノ・ブチャラティ?」

 

「ポルポが信頼している部下です。一般市民からの人望も厚く、義理人情を重んじるタイプ……

 ……ですが、必要とあらば冷酷になる事も出来る。そんな人間のようですね。また、組織の中で上を目指そうとする上昇志向もある。

 

 だからこそ、今回の作戦の協力者に相応しい。私は彼と彼のチームの人間達に、皆様の死を偽装する作戦に協力してもらえないかと、交渉しに行くつもりでいます」

 

 

 交渉内容は、まぁ所謂"お芝居"をしようって話だな。トリッシュを狙う振りをする暗殺チームから、彼女を守り切ってボスから信頼を勝ち取ろう、という芝居。

 

 こちらはトリッシュを殺すつもりも、ブチャラティ達を殺すつもりも無いから、比較的安全に組織内で上を目指せるかもしれない……

 そんなメリットがある事を話して、なんとか協力してもらおうと考えている。

 

 もちろん、何だかんだパッショーネに対して恩を感じているブチャラティの事だから、組織の裏切り者となる人達への協力を求めても、難色を示す可能性はあるだろう。

 だが、俺にとってはこれが初仕事であり、堂々と承太郎の隣に立てるようになるための第一歩だ。何としても、この任務を成功させたい。

 

 だから。悪いな、ブチャラティ。いずれ同僚になる暗殺チームはともかく、ただの協力者候補に過ぎないあんたには、汚い手段も使わせてもらうぜ。

 ……まぁ、実際に汚い手段を使わせてもらう相手はブチャラティではなく、別の人間なんだけどな。

 

 

「……話は、分かった。……協力者との交渉は、お前に任せていいんだな?」

 

「っ、はい。お任せください。彼らの協力が得られたら、リゾットさん達を彼らの下へ連れて行き、そこで今回の作戦の打ち合わせをするつもりでいます。

 協力が得られるまでは、皆様には待機していただく事になるでしょう」

 

 

 リゾットが口を開いた事で、我に返った。……ブチャラティの事は一旦置いといて、今はこちらに集中しなければ。

 

 

「了解した。……ところで。お前からはまだ、肝心な話を聞いていないな……俺達の、身の安全について」

 

「!」

 

「先程は、ギアッチョが話を遮っていたが……何か、言いかけていた話があるんだろう?」

 

「……はい。あります」

 

 

 リゾットから話を振ってくれたのは、ありがたい。……ここからが重要だ。俺が彼らに信用されるか否かは、ここで決まる。

 今まで浮かべていた微笑をあえて取っ払い、真顔になった。これで、俺が本気だという事が多少伝わってくれたら御の字だ。

 

 

「皆様の身の安全は、他ならぬこの私が、保障します。――私のスタンド能力で、全員を護り通してみせます」

 

「…………ほう」

 

 

 リゾットの鋭い視線が、俺を射抜く。残りのメンバーの強い視線も、俺に刺さっていた。

 そんな中、俺はリゾットの目を見つめる。……怖いけど。凄く怖いけど!でも、ここで目を逸らしたら負けてしまう気がする。意地でも目は離さないようにした。

 

 

「私のスタンドは、防御する事が得意でして。何かを護る事に関しては誰にも負けない自信があります」

 

「……そうか……ならば、その力をさっそく見せてもらおう――」

 

「っ、イージスホワイト!!」

 

 

 とてつもなく嫌な予感を感じた俺は、咄嗟にイージスの名前を呼び、自分の周りにバリアを張った。

 

 次の瞬間、あらゆる方向からいくつもの刃物が飛んで来て、バリアに直撃する。

 危ない!!ちょっとでもバリアを張るタイミングが遅れてたらズタズタにされてたんじゃないか、これ!?

 

 

「……当たる直前に全て止めるつもりでいたが……それよりも前に完璧に防いでみせた、か……なるほど」

 

 

 あ、刃物を寸止めするつもりはあったんですね??こっちはマジで殺されるかと思ったんだが。

 

 

 しかし。俺を殺すつもりが無いなら、やはり彼らの狙いは俺の予想通りだったのだろう……って、あ、やば、

 

 

「シエル、よせっ!!」

 

「フシャアァァッ!!」

 

「何ッ!?」

 

「猫!?いったい何処から!?」

 

「リゾット!危ねェッ!!」

 

「イージスッ!!」

 

「了解!」

 

 

 俺が動揺した隙にバリアをすり抜けたシエルが、リゾットに向かって空気弾を放った!俺は慌てて再びイージスを呼び、リゾットを護るバリアを張る。

 ……間一髪、空気弾をバリアで防ぐ事が出来た。なお、不可視のバリアは既に解除している。もうイージスの姿を隠すどころじゃなくなっちまったし。

 

 

「シエル、戻って来い」

 

「ヴヴゥゥ……ッ!!」

 

「シエル!!」

 

「…………ニャア」

 

 

 こちらが強く呼ぶと、シエルは威嚇を止めて俺の足元に戻って来た。

 俺のために怒ってくれたのは嬉しかったけど、タイミングが悪かったな……それに、やり方も。まぁ、俺の護衛としては正しい行動なんだが。

 

 

「リゾット!」

 

「大丈夫か!?」

 

「……ああ……問題ない」

 

「つーか、何だ今の攻撃……!あの猫、スタンド使いかァ!?」

 

 

 ああぁぁまずいまずい警戒されてる!相手は全員スタンドを出して臨戦態勢だ。ここは、先手必勝!

 

 

「――Mi dispiace moltissimo(本当に、申し訳ありません)……私の護衛の者が、大変失礼いたしました」

 

 

 一旦スタンドを引っ込めて、被っていた中折れ帽を胸に当て、リゾットの目を見ながら柔らかいトーンで謝罪する。

 

 日本なら、こういう場面では深く頭を下げる事が正しい。だがイタリアでは、目を合わせて手を胸に当てながら謝罪するのが正しいのだ。

 というか、誠心誠意謝罪したい時に頭を下げる文化があるのって、日本ぐらいだよな?アメリカでも謝罪する時は目を合わせるし。

 

 

「…………護衛?」

 

「はい。彼は私の飼い猫で、名前はシエル。お察しの通り、スタンド使いの猫です」

 

「……猫が、護衛??」

 

「あー、諸事情がありまして。私には人間の護衛はつけられておりません。その代わりに連れて来たのが、彼なのです」

 

 

 人手不足だし、俺にはイージスの能力があるのだから護衛は必要無いだろう。それに、護衛をつけたら俺の実力を正確に測れない……

 六車さん曰く。この任務を俺に押し付けた奴が、そう言って護衛を手配してくれなかったそうだ。本当に露骨だなぁ、この任務を失敗させたいっていう魂胆が。

 

 

「彼の飼い主は、この私です。つまり、全ての責任は私にあります」

 

「ニャッ!?ニャー!ウニャア!!」

 

「こら、シエル。ちょっと黙ってなさ、」

 

「ウニャ!ニャウゥ!ウニャー!!」

 

「……あぁー、もう。イージス!そいつを一旦閉じ込めといてくれ。防音バリアで」

 

「はいはい。ちょっと大人しくしましょうねー」

 

 

 再びイージスを呼び出し、シエルの周りに防音バリアを張ってもらった。お前はしばらくそこで待ってなさい!

 

 

「……うちの者が大変失礼いたしました。ですがどうか、罰を受けるのは私だけに、」

 

「自我が、あるのか……」

 

「はい?」

 

「お前のスタンドには、自我があるのか」

 

 

 脈絡も無くそう聞いてきたのは、リゾットだった。……何を考えているのか分からないが、とりあえず質問には正直に答えておこう。

 

 

「えぇ、その通りですが……?」

 

「……イージスホワイト、と呼んでいたな……能力は?」

 

「先程お見せしたバリアを張る事で、あらゆる攻撃を防ぐ……それが、私のスタンドの能力です」

 

「それだけでは、無いだろう?」

 

「…………」

 

「……俺がお前を攻撃した時……スタンド像が出ていないのに、能力を発揮していた事。その猫が、突然現れたように見えた事。

 さらに今、その猫の鳴き声が聞こえなくなった事……そのバリアには、ただ攻撃を防ぐだけではなく……何か、別の力があるはずだ」

 

 

 あぁ、うん。そりゃあ、これだけバリアでいろいろやって見せたら気づくよな。

 

 

「……私のスタンドは、あらゆる攻撃を防ぐ……と、周囲には普段からそう説明していますが、厳密に言うと彼の能力は少々違います。

 ――イージスホワイトの真骨頂は、本体である私の想像力次第で、彼が張るバリアにどんな効果でも付与する事ができる、というものです」

 

「…………ほう?」

 

 

 そこから、不可視のバリアの事や防音バリア等について説明する。……暗チの面々は一様に驚いていた。

 

 

「ディ・モールト……出鱈目だね、その能力」

 

「……下手したら、俺達よりも暗殺に向いてる能力じゃねェか?」

 

「あ、いえ。イージスの能力は基本的に防御やサポートに特化しているため、攻撃能力はほとんどありません。

 よって隠密行動は可能ですが、それ以上の行動に出る事は難しいのです」

 

「じゃあ、ただのサポートタイプ?」

 

「たかがサポートタイプかと、甘く見るんじゃねえぞペッシ……こいつの能力は、使い方次第では相当厄介な相手になる」

 

「兄貴?そう、なのか?」

 

「そうなんだよ。……おそらく、こいつが本格的に守りに入ったら、全力で潰しに掛からねえと崩せないだろう。

 いや、それどころか。全力で掛かったとしても、本当に崩せるかどうかも分からん。それ程に、手強い」

 

「ええッ!?」

 

 

 俺達に向けられていた敵意が、徐々に消えていく。こちらが素直にスタンド能力を明かした事で、敵対する意思は無いと分かってくれたようだ。

 

 

「……その猫が、俺を攻撃した件についてだが」

 

「!」

 

「お前達が、その罪を償う必要は、無い……むしろ、先に謝罪するべきだったのは俺の方、だな……すまなかった」

 

「え?」

 

「おい、リゾット!?」

 

 

 リゾットが、俺の目を見ながら胸に手を当てて、謝罪の言葉を口にする。まさか、彼まで丁寧に謝罪してくるとは思わなかった。

 他の奴らは彼がそんな姿を見せた事に、俺以上に驚いて、動揺している。

 

 

「……イルーゾォ」

 

「おう?な、何だ?」

 

「園原の、玄関先での様子は……どうだった?」

 

「……この中で一番背が高い俺が出迎えても、全く動揺してなかったぜ。それどころか笑顔でBuonasera(こんばんは)、だ。

 最初から、俺達を侮るような態度を見せる事は、無かった」

 

「そうか。……ギアッチョ」

 

「あ?」

 

「お前がキレた時の、園原の様子は?」

 

「……冷静そのもの、だったなァ。動揺するどころか真面目に対応されて、こっちは毒気を抜かれちまった」

 

「そうだったな。……さらに、この俺の攻撃を事前に察知し、完璧に防いでみせた……その上、突然その猫に攻撃された俺を、即座に護った。

 園原の様子からして、その猫の行動は全くの予想外だったのだろう……それでも、俺を護った。先に自分の方が俺に攻撃されていたにも関わらず……」

 

「それは当然の事でしょう。皆様を護り通し、イタリアから脱出させる事が、今の私の使命なのですから」

 

 

 リゾットの発言に反応して、思わずそんな言葉が出た。そう、俺は当たり前の事をしただけ。

 だからわざわざ指摘される程の行動では無いと思うんだが……って、全員の視線が俺に集まっている?え、俺なんか変な事言った??

 

 

 

 

「――お人好しな上にクソ真面目かよッ!」

 

「今時、こういう人間が本当にいるなんて……」

 

「そりゃあオレ達のような、裏で生きる奴らにとっては珍しいだろ、こういうタイプは。……日本人だからこそ、か?」

 

「でも、日本人にありがちな、平和ボケしてそうな感じは、無い」

 

「確かに……さっきの、リゾットの攻撃への対処も早かった。警戒心は強いようだ」

 

「スタンド能力自体も、ディ・モールト!ベネッ!有用だね」

 

「その能力使ってる本人も、肝が据わってるしな」

 

「……ま、しょうがねえなァ。ここまでされたら認めるしかねェだろ」

 

「ああ。――決まりだ」

 

 

 

 

 ……何やらひそひそと話し始めたと思ったら、最後に全員で頷き合い、それからリゾットが俺を見て口を開く。

 

 

「……改めて、今までの非礼を詫びる。すまなかった」

 

「こちらこそ、改めて。私の飼い猫が失礼いたしました。その謝罪も、受け取ります」

 

「こちらも、その謝罪は受け取る。……そして、俺達は今後、園原の指示に従うと決めた」

 

「……ありがとうございます。皆様のお眼鏡に叶ったようで、何よりです」

 

「……そうか……俺達がお前を試した事に、気づいていたんだな?」

 

「はい」

 

 

 俺を出迎えたのが、背の高さで相手に威圧感を与えるイルーゾォだった事も。

 ギアッチョがキレたと見せ掛けて実は冷静だった事も、リゾットから攻撃された事も……全ては、俺の度胸や力量を試すためだった訳だな。

 

 

「…………怒らない、のか?」

 

「はい?」

 

「俺達の勝手な都合で、お前の事を試した……それに対して、怒りは無い、と?」

 

「えぇ、特にありませんね。……これは私の推測ですが。皆様は私がここに来る前から、今回の作戦中に、場合によっては命の危険もあるだろうと、察していたのでは?」

 

「……ああ。その通りだ」

 

「それなら、今回の任務の指揮を取る人間が、いったいどんな人物なのか……信用できるのかどうか、不安になったはず」

 

「!」

 

「ならば、私の事を試したくなる気持ちは、理解できます。……ですので、皆様に怒りを抱く事はありません。

 最終的に私自身を認めてくださったのであれば、それで良いのです」

 

 

 そうそう。むしろ、比較的穏やかに話が進んで良かったわ。リゾット達が俺を見極めようと、冷静でいてくれたおかげだな。本当に良かった。

 

 

「ですが、お気をつけください。今回の作戦では、皆様の行動によって財団内部での心象が大きく変わるはずですから」

 

「……というと?」

 

「皆様は今まで、暗殺という少々血生臭い仕事をしていた身ですので、その時点でいろいろと疑われております。

 よって。今回の作戦中、協力者達やターゲットの女性、それに一般人を誤って殺害してしまった場合……本格的に危険人物と見なされ、余計に警戒されてしまうでしょう」

 

「……なるほど。そういう事か」

 

「えぇ。……今回の作戦は、皆様のイメージを回復するための第一歩となります。それに私にも、この任務を絶対に成功させたい理由があるので……共に、頑張りましょう」

 

 

 そう言って、笑って握手を求める。今回は作り笑いではなく、心から笑顔を向けた。……すると、リゾットが俺の手を見て固まってしまった。

 あ、あれ?友好の握手って、イタリアでは普通の文化だよな?俺、間違ってないよな?

 

 やがて。俺の顔と手を交互に見た彼は、恐る恐るといった様子で握手に応じた。何?その反応。

 

 

「…………お前は、」

 

「……はい?」

 

「――相手が暗殺者だと分かっているのに、その手に触れる事を躊躇わないんだな」

 

 

 あぁ、なるほど。その反応はそういう意味だったのか。納得した。

 

 

「今までは暗殺者でしたが、これからは違うでしょう?皆様はこれから、私の同僚となる方々です。

 そんなあなた方に対して、触れる事を躊躇う必要なんてありますか?」

 

「――――」

 

「……リゾットさん?」

 

 

 彼は限界まで目を見開いて俺を凝視した。いや、リゾットだけではない。他の8人も全員が彼とほとんど同じ顔で俺を見て、固まっていた。えっ、何だよその顔。

 

 

「――くくっ……ふふふ……!!」

 

「え」

 

「リ、リゾット……!?」

 

「珍しく声に出して笑ってるぜ、こいつ……」

 

 

 しかしそれも、リゾットが笑い始めるとすぐに変わった。今は俺よりも彼の方が注目されている。やっぱり珍しいんだな、彼の笑顔は。

 

 

「本当に、全く……とんだ、お人好しだな」

 

「あぁ。それはよく言われます」

 

「……危なっかしい奴だが……悪くない。お前なら、俺達を使い捨てにする事は、無さそうだ」

 

「……何を馬鹿な事を。人は、道具ではない。皆様を使い捨てにするなんて、あり得ません」

 

「…………危なっかしい上に、眩しい奴だ。……しかし、そういう奴だからこそ。俺達の命を、預けられる……」

 

「預かりませんよ?」

 

「何?」

 

「皆様の命は、皆様だけの物です。私はあなた方の自由を、命を縛るつもりはありません。確かに、私は全員を護り通す覚悟を持って、この任務に挑みますが――

 

 ――生殺与奪の権まで握るとは一言も言っておりませんので、どうぞ。皆様の尊い命はそれぞれ、ご自分で大切になさってください」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 ――その後、何故かリゾット以外の暗殺チームの全員が大笑い。

 

 その上、俺の肩や背中を叩いたり頭をぐしゃぐしゃ撫でたり、突然スキンシップが激しくなった。

 何故笑われたのかさっぱり分からないし、それ以降、暗チの面々が一気に友好的になった理由も全く分からない。謎だ。

 

 

「もう駄目だね、この無自覚人たらし本体は。処置無しだよ……」

 

「ンニャー……」

 

 

 イージスと、いつの間にかバリアの外に出されていたシエルが、ジト目で俺を見つめる理由も分からない。謎だ……

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「……さて。憂鬱だが、行くか……イージス。何かあった時は頼むぜ。シエルは今度こそ、ちゃんと大人しくしてろよ?」

 

「ニャー!」

 

「うん。でも、気をつけてね。暗殺チームが相手だった時は、君がたらし込んだから上手くいったけど、次の相手はそうもいかないだろうし」

 

「たらし込む、って……」

 

「事実だろう?彼らを丸ごと味方に付けた。この人たらしめ」

 

「何の話だ?」

 

「…………やれやれ、だね」

 

「ンニャー……」

 

「お前ら何だよ、その目は。やめろよ」

 

 

 暗殺チームのメンバーと別れた後に向かったのは、とある人物の下だった。今日のうちに、根回しを済ませておかなくては。

 今俺達が尾行しているとある人物には、予め例の作戦について明かしておく。そうすれば、後々の交渉で護衛チームの協力を得られる可能性が高くなる……はずだ。

 

 本当はやりたくないんだけど、最悪の場合は汚い手段も使わないとな。今回の任務を絶対に成功させるためだ。

 仕方ない……そう、仕方ない事なんだ。俺自身の罪悪感なんて、二の次だ。やるしかない。

 

 

「やっぱり、無理してるよね。志人」

 

「え?……何の事だ?」

 

「…………自覚していない、というよりも――無意識に目を逸らしている、の方が正しいのかな?あるいは、今は気づきたくないって事かな?」

 

「んん?」

 

「……分かった。俺の本体がそう望むなら、もう何も言わないよ」

 

「……よく分からんが、もうそろそろ接触するぞ」

 

「うん、了解」

 

 

 そして俺達は――かつては警察官だった男の後に続いて、彼の自宅内へ侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――はぁぁ……」

 

「……お疲れ様。とりあえず、何とかなったね」

 

「あぁ……」

 

「ニャウー……?」

 

「んん。ありがとう、シエル。俺は大丈夫だ……しばらく、動けそうにないけど」

 

 

 とある人物への根回しを終えて、俺達は拠点に帰って来た。

 

 ドアを開けて室内に入り、玄関先でドアに寄り掛かりながら座り込む。拠点に帰って来た事で、ようやく安心できた気がする。

 行きも帰りも不可視と防音だけでなく、相手からの追跡対策で、あらゆるスタンド能力を防ぐ効果も付与したバリアを張っていたから、疲労が半端無い……

 

 

「ニャッ!ウニャッ!」

 

「……シエル?」

 

「ニャア!」

 

「ちょっ、こらこら。穴開いちゃうからやめなさい」

 

 

 その時、シエルが妙な行動に出た。俺のスーツの内側を引っ掻いている。穴が開く事を心配してやめさせたが、何がしたかったんだ?

 

 

「……もしかして、携帯電話?」

 

「何?」

 

「シエルが引っ掻いてた所は、内ポケットだよ。そこに携帯が入ってるだろう?……そういえば、今日はまだ承太郎に連絡してないよね。それが言いたかったんじゃないかな?」

 

「ニャン!」

 

「え、マジで?」

 

 

 イージスの推測に、シエルが頷いた。……そっか、確かにそうだったな。承太郎に連絡しないと。

 それを教えてくれたシエルと、その意図を察したイージスにお礼を言って、さっそく電話を掛けた。

 

 

「……志人か?」

 

「はい。こんばんは、承太郎さん。今大丈夫ですか?」

 

「問題ない。ちょうど、車を発進させる前だった」

 

「あ、もしかして家に帰るところでしたか?すみません。それなら早めに終わらせて、」

 

「変に気を使うな、構わない。……それよりも、どうした?」

 

「え?」

 

「昨日よりも、元気が無さそうだ」

 

「……えぇ、まぁ、……だ、大丈夫ですよ!ちょっとだけしんどい事があっただけなので」

 

「そうか――よく、頑張ったな」

 

「っ、……はい。ありがとう、ございます」

 

 

 承太郎は俺の異変に気づいても、深掘りする事なく労うだけで終わらせてくれた。その気持ちが、凄く嬉しかった。

 ……やがて話を終えて、電話を切る。不思議な事に、承太郎と話しただけで心がかなり軽くなった気がする。

 

 

 おかげ様で、また明日からも頑張れそうだ。……早く、あの人の隣に堂々と立てるようになりたい。

 

 

 

 

 

 

 






・初仕事で大奮闘中の助手君

 ――ギャング怖い((( ;゚Д゚)))ガクブル

 上記の本音を必死に隠しつつ、暗殺チームと初対面。最後まで丁寧な物腰を崩さず、作戦内容の説明という仕事をやり遂げた。

 ギアッチョの癖のあるキレ芸に対し、大真面目に対応する事で切り抜けた猛者。これにはさすがの暗チもびっくり。
 その後もリゾットの攻撃を防いだり、シエル(猫草)の攻撃からリゾットを護ったり。その能力の有用性を見せつけた。

 誠実な対応を心掛けたおかげで、無事に暗チのメンバーに受け入れられた。それどころか、相当気に入られている。
 たらし込んだ本人は、彼らが突然友好的になった理由が分からない。もう駄目だね、この無自覚人たらし本体は。処置無しだよ……byイージス


・助手君にハートキャッチされた暗チ

 自分達がイタリアを脱出する作戦を指揮する者が来ると聞き、相手を試す事にした……が、まさか最終的にハートキャッチされる事になるとは想像もしていなかった。

 相手が思っていたよりも若い男で、しかも日本人である事に最初は不安を抱いていたが、見た目に反して度胸も実力もあった事で安心した。でも猫が護衛。……猫が、護衛??
 その後。次第に園原の器のデカさに気づき、お人好しで真面目な性格……裏社会では滅多に見ない人間性に好感を抱く。

 そして"皆様の命は、皆様だけの物(以下略)"、"生殺与奪の権(以下略)"のセリフで完全にハートキャッチされた。

 今まで組織のボスから、道具のように扱われていた彼らにとって。
 普通の人間として扱ってくれる上に、自分達の命を"尊い"と言ってくれた園原の存在は――暗い心に差し込む、温かな"光"そのものだった。


・助手君を護衛する猫草

 ご主人はボクが守る!(=`ω´=) シャー!

 大事なご主人に理不尽な怒りを向けるギアッチョにイライラしたり、攻撃して来たリゾットには怒りを爆発させて空気弾を発射したり。
 ちょっと狂暴だが、忠犬ならぬ忠猫。園原に護衛役を任されて張り切っている。

 拠点に帰って来た後、園原にモフモフされた。癒し要員。ご主人、お疲れ様ニャー。






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