空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・最初は前回、男主が暗チと別れた後の話。その後はブチャラティが幹部になった後の話。オリジナル話

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。途中までアバッキオ視点、最後に男主視点

・また。今回からそれ以降の話は、特に捏造が激しくなるので、注意




脅迫(?)された護衛チーム

 

 

 

 

「――Buonasera(こんばんは)

 

「っ!?」

 

「突然お邪魔してしまい、誠に申し訳ありません……レオーネ・アバッキオさん」

 

 

 ブチャラティ達と別れ、自宅に帰って来た俺は、背後から聞こえた声に驚き、振り向いて距離を取る。

 そこにいたのは、中折れ帽を被ったスーツの男。黒髪黒目に、あの顔立ちは……日本人か?眼鏡を掛けているその人物は、推定20前半か半ばくらいの、やけに顔の整った男だった。

 

 

「てめえ、どっから入って来やがった!?」

 

「あなたと同じく、玄関のドアから入らせていただきました」

 

「何だと?」

 

 

 そんな音は聞こえなかったし、気配も無かったはずだ。いったい、どうやって……!?

 

 

「初めに一言断りを入れさせていただきますが、私にはあなたと敵対する意思はありません。

 もしも私がそのつもりだったのであれば、あなたに声を掛ける事なく、不意打ちをしてしまった方が楽だ。そうでしょう?」

 

 

 …………確かに、そうだ。俺は自宅に侵入された事に全く気づいていなかった。俺を殺すなら、その段階で殺しておけばよかったはず。

 しかし。こいつは今、わざわざ俺に声を掛けている。……他に何か、目的があるのだろう。

 

 その目的は何だ?油断はできない。ムーディー・ブルースでどこまで対処できるかも分からんが、場合によっては隙を見て窓から逃げるしかない……

 

 

「おっと、忘れるところでした。あなたに逃げられると困るので――」

 

「――なっ!?」

 

「一時的にですが、その中に閉じ込めます。申し訳ありません」

 

 

 まるで俺の心を読んでいたかのように、男は俺の退路を塞いだ。俺の周りに現れた、緑色のドーム。スタンド能力か!?

 しかし、奴の近くにスタンドがいない。本体と同化している?それとも、何処かに隠れているのか?

 

 試しに自分の力で殴ったり蹴ったり、できれば出したく無かったスタンドでも同じようにしてみたが……破れない。完全に閉じ込められた!

 

 

「クソが……ッ!何なんだ、てめえは!!何が目的だ!?」

 

「あなたと、話がしたいのです」

 

「話?何かの取引か?こっちにはてめーの話を聞いてやる義理はねえぞ!!」

 

「えぇ、そうでしょうね。だからこそ、このような強硬手段を取らせていただきました。

 用が済めば、あなたをそこから解放いたしますので。大変申し訳ありませんが、そのままの状態で私の話をお聞きください」

 

 

 男はさっきから微笑を浮かべ、余裕綽々といった様子だ。気に入らねえ!……だが、この中から出る手段が無い今、こいつの話を聞くしかない。

 

 

 ……やがて。男が言う話を聞き終えた俺は、あまりの内容に額を押さえた。

 

 

「……つまり、何か?パッショーネの裏切り者共を逃がすのに、俺達の手を貸せって事か?」

 

「簡単に言ってしまえば、そういう事になりますね。しかし、あなた方にとっても悪い話ではないと思いますよ?

 この"芝居"が上手くいけば、余計な犠牲を出さずに、そちらの組織のボスの信頼を得る事ができるでしょう」

 

「ふざけるなッ!それは本当に上手くいけばの話だろうが!もしもその作戦がバレたら、俺達はてめーらと共に制裁を受ける事になる!」

 

 

 この話に乗ったら、俺もブチャラティ達も組織の裏切り者と見なされるだろう。こんな事で、あいつらの身を危険に晒す訳にはいかねえ!

 

 

「そもそも!てめーらがボスの娘を狙ったとして、その護衛任務を任せられるのがブチャラティだという前提で話しているようだが、実際にそうなるとは限らな、」

 

「明日。あなた方の上司であるポルポの、死亡が確認されます」

 

「…………は?」

 

「そうなる可能性が非常に高い、という情報を入手しました。情報源や、そう言い切る理由までは話せませんが……全ては、明日になれば分かる事です。

 そして、ポルポが死亡したと判明した時。ブチャラティさんは、即座に動き始めるでしょう。組織の幹部になるために」

 

 

 真顔になった男の表情は、決して嘘をついているようには見えない。……だが。それも一瞬の事で、すぐに余裕そうな微笑に戻った。

 

 

「そちらの組織は、幹部になったばかりのブチャラティさんを試すために、何らかの任務を与えるはず……それが、ボスの娘の護衛任務」

 

「……別の任務になるかもしれねーだろ」

 

「いいえ。あなた方が実行するのは、その護衛任務となりますよ。きっとね」

 

 

 いったい何の根拠があるというのか、男はそうなると確信しているようだ。……得体の知れねえ奴だな。信用できない。

 

 

「ところで、やはりどうしても協力してもらえませんか?

 ブチャラティさんのお仲間の中で、特に警戒心の強いあなたが頷いてくれれば、他の方々も自ずと協力してくれそうなのですが……」

 

「……何でブチャラティではなく、わざわざ俺の所に来たのかが疑問だったが、そういう事か。だったら尚更頷く訳にはいかねーな」

 

 

 そう言って男を睨むと、奴は俺の目の前まで近づいて来た。この緑のドームがある限り、こいつの顔面をぶん殴る事ができない……!

 相手をさらに強く睨み、そのもどかしさを紛らす。しかし奴は全く怯まず、俺から目を逸らさない。…………度胸は、それなりにあるようだな。

 

 

「何を言われても我々には協力しない、と?」

 

「当たり前だろうが!てめえのような、得体の知れない男は信用できねえ!組織の裏切り者共に協力する気も無いッ!」

 

「…………そう、ですか」

 

 

 ――男の顔がほんの一瞬、苦しげな表情へと変わった。まるで、必死に痛みを耐えようとするガキのように。

 俺がその表情に驚いたのも束の間、次の瞬間には男が中折れ帽を深く被って俯いてしまい、表情が分からなくなった。……何だったんだ、今の。

 

 

「では、仕方ありませんね。……この方法は、使いたく無かったのですが」

 

 

 そう言って、男が取り出したのは……ビデオカメラだ。何やら操作をした後、その画面を俺の方に向ける。

 

 

「こちらは私が昨日撮影した映像です。まずは、ご覧ください。音声も流します」

 

 

 再生された映像に映っていたのは……ブチャラティと、金髪のガキ。このガキが誰なのかが気になったが、動画の内容を聞いてすぐにそれどころでは無くなった。

 

 

(――パッショーネのボスを倒して、町を乗っ取る!?このガキ、本気なのか!?)

 

 

 動画の中では、俺と同じく本気なのかと問い掛けたブチャラティに対し、金髪のガキは確かに肯定した。

 ギャング・スターになる、だと?馬鹿か!?俺達がやってる事は遊びじゃねえんだぞ!?

 

 しかし。そのガキの瞳は、画面越しでもはっきりと分かる程に、輝いていた。……覚悟が決まってる奴の目だ。

 

 子供に麻薬を流すようなギャングを消し去るために、自らギャングになる……

 その言葉は、理由までは知らないが麻薬を心底嫌っているブチャラティの心に、響いたんだろう。否……響いてしまった。

 

 どうやらこのガキが涙目のルカに重傷を負わせた犯人のようだが、ブチャラティはそれを見逃し、さらにはこいつを組織に入団させるという。

 今日ブチャラティが言っていた新しい仲間ってのは、このガキの事だろうな……

 

 

(金髪のガキもそうだが、ブチャラティも油断し過ぎだ!)

 

 

 そんなんだから、今俺の目の前にいる男のように、巧みに隙を突いてくる野郎に目をつけられるんだよ!

 

 ブチャラティは金髪のガキに対し、ボスを倒そうとしている事がバレても助けない、自分の失敗は自分で償えと言っていたが……

 この動画という証拠があるなら、見方を変えれば組織のボスを倒そうとしているガキを、ブチャラティがわざと見逃した事になる。

 

 

 こんな映像が、俺達以外の組織の誰かの手に渡ったら?――ブチャラティが、いや下手したら俺達も、裏切り者と見なされる……!!

 

 

「……その表情からして、ご理解いただけたようですね。私が、何を企んでいるのか」

 

「…………この動画を他に流されたくなければ、てめえらの計画に協力しろ……って事だろ?

 俺達が協力しなければ、この動画のせいでブチャラティが裏切り者扱い。てめえらに協力しても、万が一組織にバレたら裏切り者共の共犯者として制裁を受ける。

 

 俺達が助かるためには、てめえらに協力して上手くやって、ボスの信頼を勝ち取るしかない……」

 

「……えぇ。その通りです」

 

 

 ……こういう時。脅迫してる側は、得意気になるとか脅迫される側を嘲笑うとか、とにかくそういった行動を取って調子に乗るのがほとんどだ。

 だが、この男は違った。ただただ、静かに俺を見つめている。妙な反応だが、すぐに調子に乗るような馬鹿ではない事は分かった。

 

 冷静過ぎて、厄介だ。……しかし、皮肉だぜ。その厄介さが、逆に俺の事まで冷静にしてくれるとはな。

 厄介な相手だからこそ、いつまでも動揺している訳にはいかない。

 

 

「どうやら、落ち着いたようですね」

 

「!?」

 

「では。そろそろ本題に入らせてもらいますが……よろしいでしょうか?」

 

「あ、ああ……」

 

「ありがとうございます」

 

 

 どういう事だ?……まさか、さっきまで静かだったのは、俺が冷静になるのをわざわざ待っていたというのか?

 そこは普通、こっちが冷静になる前に畳み掛けて、自分に有利な状況へ持っていくところじゃねーのか!?

 

 

「あなたにお願いしたい事は、ただ1つ。……今日私に言われた内容を、明日ブチャラティさん達にお話する事です。

 あ、もちろん。あなた方のチームに仲間入りする、新人さんも同席させてください」

 

「……その新人、てめえとグルなのか?」

 

「いいえ、まさか。そこだけは、明確に否定させていただきます。彼は全く関係ありません。

 むしろ彼は、被害者かもしれませんね。実は、私はパッショーネに関する情報収集の一環で、彼に少々興味を持ちまして。

 

 そして彼を尾行した先で、ブチャラティさんの存在を知りました。その時に、ブチャラティさんこそが、我々の計画の協力者に相応しいと判断したので……」

 

 

 ……そういう事か。それで目を付けた人間がちょうど隙を見せたから、後で脅迫に使うために動画を撮っておいた、と。

 

 

「まぁ、私に目を付けられたのが運の尽きという事ですね。……あの新入りさんは、見たところまだ10代の少年。

 おそらく彼よりも場数を踏んでいるはずのあなたが、自宅に侵入された事に気づかなかった程の相手、つまり私から尾行されたとして……その少年が、気づけると思いますか?」

 

「喧嘩売ってんのか……!!」

 

「いいえ、そんなつもりは全くありませんでした。……確かに今のは、軽率な発言でしたね。申し訳ありません」

 

「…………ちっ!」

 

 

 本当に訳の分からねえ野郎だな!!喧嘩売られたと思いきや謝罪だと?ふざけてんのか!

 だが。奴の言い分に納得してしまったのは、事実だ。……ひとまず、その新人がこいつとグルではないという話だけは、信用してやろう。

 

 

「ともかく。明日のうちに我々の計画について、ブチャラティさん達にお話していただきたいのです。そしてあなた方の同意を得られたら、暗殺者チームの皆様と、そちらに伺いますので」

 

「…………分かった」

 

「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」

 

 

 仕方なく了承すると、男は俺から離れて行く。

 

 

「では。私がこの家から出た時にそこから解放いたしますので、それまで少々お待ちください。……明日、またお会いしましょう」

 

「とっとと消え失せろ」

 

「……分かってはいましたが、手厳しいですね。それでは、Buonanotte(おやすみなさい)

 

 

 最後に苦笑いでそう言うと、得体の知れない男は玄関を通って去って行った。男の言う通り、それからすぐに緑のドームが消える。

 

 

(何が"おやすみなさい"だ、くそったれッ!逃がさねえぞ!!)

 

 

 即座に玄関の扉を開き、外に出た。既に男の姿は無いが、俺にはこれがある!

 

 

(――ムーディー・ブルース!)

 

 

 スタンドを出し、あの男の行動を再生した……が、

 

 

「馬鹿な……!何も再生できないだとッ!?」

 

 

 あの男の行動も、あの男のスタンドも!再生できない!何故だッ!?

 念のため、適当な一般人の行動を再生してみたが、そちらは問題なく再生する事が出来た。

 

 その後。もう一度、あの男の行動の再生を試みたが……何度やっても失敗してしまう。こんな事、初めてだぞ。どういう事だ!?

 それに……何だ?この妙な感覚は。まるで、ムーディー・ブルースの能力が何かに弾かれているような――

 

 

「…………あの男、いったい何者だ……?」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 翌日。ブチャラティが、あの金髪のガキ……ジョルノ・ジョバァーナを連れて、俺達の下にやって来た。

 

 それから行き先を告げずに俺達を船に乗せて海上に出ると……あのポルポが自殺したという、驚きの情報を明かした。

 俺達はこれからカプリ島に向かい、ポルポの隠し財産である100億リラを回収。そしてそれを組織に差し出したブチャラティが、幹部の座を手に入れる……

 

 あの得体の知れない男が言った通り、ブチャラティはポルポが死んでからすぐに動き出した。……あの男の思惑通りに事が進んでいる。気に入らねえな。

 

 

 その後。ポルポの隠し財産を狙うズッケェロとかいう奴とその仲間を倒し、財産の隠し場所……便器の中に隠されていたそれを回収した。

 ブチャラティの能力だからこそ隠せる場所だったが、さすがに想定外だぜ。そんな所に隠すなんてよ……

 

 で。手に入れた財産は、ペリーコロさんという幹部に渡した。

 カプリ島に上陸した時に、ブチャラティがこの人を呼んでいたらしい。……そんなペリーコロさんが、帰り際にこんな事を言っていた。

 

 

「ブチャラティ。もしかすると近いうちに、君に重要な仕事を任せる事になるかもしれん……」

 

「重要な仕事?」

 

「うむ。本来なら、ポルポに任せるはずだった仕事じゃ。おそらく、その仕事は君が受け継ぐ事になる……

 新しく幹部になった君の実力を確かめる、良い機会じゃからの」

 

「その仕事の内容は?」

 

「それは、まだ話せない。だが、いつでも動けるようにしておいた方が良いじゃろう」

 

「……了解しました」

 

 

 重要な仕事……それは、まさか……あの男が言っていた、ボスの娘の護衛……なのか?

 もしも、本当にそうだとすれば……いよいよ、あの男の話を明かす必要が出て来たな。全てはあの男の手の平の上ってか?クソがッ!!

 

 

「……ブチャラティ」

 

「ん?」

 

「……俺から、ここにいる全員に向けて、ちょっと聞いて欲しい話がある。あいつらに呼び掛けて、真面目に聞けと言い聞かせてくれねえか?」

 

 

 帰りの船の中。カプリ島から充分離れた海上で、ブチャラティにそう声を掛けた。

 

 

「……珍しいな。お前がそんな事を言うとは」

 

「それだけ、マジな話だと思ってくれ」

 

 

 そこまで言うと、ブチャラティの表情が険しくなる。深刻な話だと理解したのだろう。俺の言う通り、あいつらに呼び掛けてくれた。

 

 

「こいつらには、お前が話し終わるまで口を開くなと言っておいた。……さっそくだが、聞かせてくれ。アバッキオ」

 

「ああ……」

 

 

 昨日の夜中の出来事と、あの男について話す。……ブチャラティとジョルノの顔色が一気に悪くなった。

 その反応からしてあの動画は本物で、あの時聞いた会話も事実か……あまり、信じたくなかったんだが。

 

 

「おいおいおい……何者なんだよ、その日本人は!アバッキオのスタンドで再生できないって、どうなってんだ!?」

 

「ま、まさか……幽霊……?」

 

「ナランチャ、そんな訳が無いだろう!というか今はその男の事よりも、ジョルノとブチャラティの話の方が重要でしょう!?

 

 ジョルノ!君は自分がやろうとしている事がどれほど無謀な事なのか、ちゃんと理解しているのか!?

 組織のボスを、た、倒すなんて!返り討ちにされるに決まってるッ!死ぬぞッ!?それにブチャラティまで……!何を考えてるんだ、あんたは!?」

 

 

 ミスタ、ナランチャ、フーゴの3人も、それぞれ反応を見せる。……フーゴの言葉はごもっとも、だな。

 

 

「ブチャラティ……それにアバッキオも、すみませんでした。僕が尾行されてしまったせいで、こんな事に……」

 

「お前だけのせいだとは言えない。警戒心の強いアバッキオが、自宅への侵入に気づけなかった程の相手だからな。

 元はカタギだったジョルノが、そいつの尾行に気づけなくても仕方ない。……お前よりも、俺の方が気づくべきだった」

 

「……町中で、とんだ馬鹿な話をしたジョルノも悪いが、それを許したブチャラティも迂闊だったな。そのせいで俺が迷惑を被ってる」

 

「…………すみませんでした」

 

「すまない……」

 

「本当に反省してるなら、ボスを倒すなんて馬鹿な真似はやめる事だな」

 

「それはできません」

 

「あ?」

 

「確かに、ブチャラティやアバッキオを巻き込んでしまった事は謝罪します。ですがそれでも、僕は自分の夢を諦める事はできません」

 

 

 ジョルノが、顔を上げる。……動画で見た時よりも輝くその瞳に、目を奪われた。

 

 

「――このジョルノ・ジョバァーナには、夢がある。僕自身が正しいと信じる、夢がある!

 

 麻薬が子供の手に渡り、政治家や警察官の汚職が蔓延るようなこの街を浄化するには!ボスを倒し、この組織を乗っ取るしかないッ!!……僕は、それが正しいと信じている」

 

 

 何が夢だ。夢は夢のままで終わらせた方がいい。この街を浄化する、だと?てめーのようなクソガキに、そんな事ができるはずが無い!!

 ……そう言ってやりたかった、はずだ。それなのに、言葉が出なかった。

 

 俺も、ミスタも、ナランチャも……さっきまで無謀だと言って猛反対していたフーゴでさえも、口を開けなかった。

 

 

(――こいつなら、本当に出来るんじゃないか?……自分の夢を、見事に叶えてみせるのでは?)

 

 

 ほんの一瞬でも、そう思ってしまったからだ。おそらくミスタ達も、俺と似たような事を思ったんだろう。

 不覚にもそう思わせる程に、ジョルノの言葉は響いた。……ブチャラティがこいつに賭けようと思った理由が、分かってしまった。

 

 

「全員、ちょっと聞いてくれ。アバッキオの話を聞いて、今後の方針を考えていたんだが……それが、今決まった」

 

 

 と。ブチャラティがそう言って、俺達の沈黙を破る。

 

 

「まずは、謝罪する。今回の一件は、ジョルノの目的を分かっていながら、彼をこのチームに入れた俺に責任がある。……すまなかった」

 

「ブチャラティ、それは、」

 

「話はまだ続く。黙ってろ、ジョルノ」

 

「…………はい」

 

 

 口を挟んだジョルノを黙らせてから、ブチャラティはさらに話を続けた。

 

 

「こうなってしまった以上、アバッキオの自宅に現れた男の言う通りにするしかない。

 俺達が生き残るためには、そいつの作戦を成功させて、暗殺者チームの奴らにはイタリアから出て行ってもらい、俺達はボスからの信頼を勝ち取るしかないんだ。

 

 作戦に協力しなければ、男が持っている動画が組織の誰かの手に渡り、俺やジョルノ……それから下手したらお前らも、裏切り者扱いされる。

 そして、作戦が失敗すれば……組織の裏切り者共の共犯者扱いだ。

 

 だからこそ、俺達は作戦に協力した上でそれを成功させなくてはならない。……ここまでは、いいか?」

 

 

 俺達は揃って頷いた。……いや、ナランチャだけは、本当に理解しているのか怪しいな。後で改めて説明するしかないか。

 

 

「先程アバッキオが話の中で推測していたが、ペリーコロさんが言っていた重要な仕事というのが、ボスの娘の護衛なのだと、俺もそう考えている。

 その男と暗殺者チームがどこまで信用できるか分からないが、向こうは俺達の事もボスの娘の事も、殺すつもりがないという。

 

 その話が本当なら……俺達がボスに信頼され、組織の中で一気に上を目指す、良い機会だ……やるぞ!作戦を成功させて、上を目指すッ!!」

 

「おおーッ!!」

 

「よっしゃ、やってやろうじゃねえか!!」

 

「――ちょっと待ってくださいッ!!」

 

 

 ブチャラティの言葉に、ナランチャとミスタはすぐに応じたが、フーゴが待ったを掛けた。……だろうな。こいつは、そういう奴だ。

 

 

「その作戦に協力しなければならない理由は理解しているし、僕もそれには協力しますが……ジョルノの事はどうする?

 ブチャラティ。この新入りの無謀な行動を、あんたは止める気がないんですか!?」

 

「……その事なんだが、お前らにはこの作戦が終わるまでに、決めて欲しい事がある」

 

「決めて欲しい事……?」

 

「――ジョルノの夢に懸けるか、否か。……それを決めて欲しい。

 こいつに懸けるなら今まで通りで構わないが、懸けられないなら……作戦が終わった後は、俺達から離れた方がいい」

 

「なっ!?」

 

 

 何だと!?……ブチャラティの奴、とんでもねえ事を言い出しやがった。

 

 

「俺だって、ジョルノの夢を知らない時点のお前らには、こんな事を言うつもりは無かった。

 だが先程、本人から直接話を聞いたお前らは……ほんの一瞬でも、考えちまっただろう?こいつなら、本当に夢を叶えられるんじゃないかって」

 

 

 図星だった。思わず目を逸らすと、その先ではミスタ達も似たような反応を見せている。

 

 

「だからこそ、作戦が終わるまでに決めろと言ってるんだ。

 そのうち訪れる選択の時(・・・・)に備えて……いざという時に自分が迷わないためにも、今のうちに決めておけ」

 

「……ブチャラティは、もう決めてるの?」

 

「ああ。俺は、ジョルノの夢に懸けると決めた」

 

 

 不安そうなナランチャの問いに対し、ブチャラティは堂々とそう答えた。……迷いが無い。本気なんだな、あんたは。

 

 

「これから先のジョルノの行動を、よく見ておくといい。それが、お前らにとっては良い判断材料になるだろう。

 そして、ジョルノ……もしも仲間を増やしたいと考えているなら、今後の行動には気をつけた方がいい。こいつらも、俺も。いつでもお前の行動を見ているからな……」

 

「……はい。気をつけます」

 

「よし。分かったのなら、それでいい」

 

「……本当に、あんたは……ジョルノに、懸けるんですね。考えを改める気は、無いんですね……?」

 

「ああ。……お前も、よく考えておけよ。フーゴ」

 

「…………分かりました」

 

 

 ジョルノの行動をよく見る……確かにそれは、良い判断材料になる。ブチャラティの言う選択の時とやらはまだ先だろうが、それまでにこのガキを見極めないとな。

 フーゴも一応納得したのか、渋々といった様子で引き下がった。俺も、考えておこう。この作戦が終わった後の事を……

 

 

「さて……アバッキオ。その日本人の男は帰り際に、"明日また会おう"と言ったんだな?」

 

「ああ、そう言ってた。おそらく、また今夜にでも俺の家に現れるんじゃないかと思うが――」

 

 

 

 

 

 

「――いいえ……既に、会いに来てますよ」

 

 

 聞き覚えのある声が届き、息を呑んだ。ばっと振り向くと、船の手すりに腰掛けて微笑を浮かべる、あの男がいた!

 

 

「だ、誰だッ!?」

 

「うわああァァッ!?出たあァァッ!?」

 

「てめえッ!いったい何処から!?」

 

「馬鹿な!!俺達以外の人間の気配は、全く無かったはず……!?」

 

「アバッキオ!あの男がそうですか!?」

 

「……ああ、こいつだ。昨日俺の家に来た得体の知れねえ男は、こいつだッ!」

 

 

 俺だけでなく、ブチャラティ達も気配に気づかなかったようだ。全員が慌ててスタンドを出している。……それに対し、男は両手を上げた。

 

 

「皆様を驚かせてしまい、大変申し訳ありませんでした。こちらに敵意はありませんが……安心できないのであれば、スタンドは出したままで結構です。

 あなた方のお話は、不躾ながらこの場で聞かせていただきました。我々の作戦に協力してくださるそうですね。本当に、ありがとうございます」

 

「……いったい、いつから聞いてた?いや、そもそもどこに隠れてたんだよ!?」

 

「さて、いつからでしょうね。……それよりも、今後の予定に関してお話したいのですが」

 

「聞けよッ!?こっちの話を!!」

 

「やめておけ、ミスタ。……どうせ何を聞いたって、こいつには煙に巻かれるだけだ。フーゴも、こいつ相手にキレても無駄に体力を消耗させられるだけだぜ。抑えろ」

 

「くっ……!!」

 

 

 俺がミスタとフーゴを止めた後は話が進み、今日の夕方にこの男が暗殺者チームを連れて、俺達がよく利用しているリストランテへ向かい、そこで今回の作戦の打ち合わせをする事になった。

 

 

「あの店で大丈夫かよ?一般客も来るんだぜ?誰かに話を聞かれたら……」

 

「一応、俺が人払いするつもりでいるが……」

 

「そこは大丈夫です。……先に、私のスタンド能力について明かしましょう。

 私のスタンドは、昨日アバッキオさんにもお見せした、防御力の高いバリアを張る力を持っています。また、そのバリアには私の想像力次第で、どんな効果でも付与する事ができます。

 

 例えば、防音効果や……不可視の効果など。様々な効果を付与する事が可能です」

 

「防音?不可視?……っ、まさか!てめえが昨日も今日も突然姿を現したように見えたのは、その防音と不可視の効果のバリアを自分の周りに張って、身を隠していたからか!?」

 

「はい、ご名答です。アバッキオさん。……防音バリアで、我々の会話は外には漏れないようにしますし。

 万が一、話し合いの最中に誰かが来てしまった時は、私と暗殺者チームの皆様の姿を、不可視のバリアで隠す事ができます」

 

 

 自分のスタンド能力をあっさりとバラした事には驚いたが、それ以上にその能力の詳細にはもっと驚いた。

 

 防音と不可視の効果を付与したバリア……しかもそれだけでなく、本体の想像力次第でどんな効果も付与する事ができる?

 反則だろ……!?どんだけ応用が利くんだ、その能力は!!

 

 

「おいおい、本当にそんな出鱈目な能力があるのかァ?見え張って嘘ついてるんじゃねえだろうな?」

 

「……では、ミスタさん。自分の目で確かめてみますか?」

 

「あ?」

 

「あなた方の中で、私のスタンド能力の実演に協力してくださる方は、いらっしゃいますか?主に、不可視のバリアと防音バリアの実演をしたいのですが」

 

 

 男からのそんな提案に対し、俺達は顔を見合わせる。……その中で、真っ先に前に出た奴がいた。

 

 

「僕が、やります」

 

「ジョルノ!?」

 

「こういう時は、新入りの仕事でしょう。相手が実演にかこつけて、何か危害を加えようとしているのかもしれませんし……もしも何かされても、僕1人の犠牲で済みます」

 

「……なるほど。さっそく、俺達から信頼を得るために動き出したって事か、クソガキ。だが、たったそれだけの行動で信頼を得られると思ったら、大間違いだからな」

 

「ええ、分かっています。あなた達に僕の仲間になってもらうためには、地道にやっていくしかない……今回の行動は、その第一歩です」

 

 

 臆面もなくそう言い、下心がある事を隠そうともしない。……不本意だが"爽やかな奴"だと思っちまったぜ、クソ。

 

 

「……ジョルノ。本当にいいんだな?危険かもしれないぞ」

 

「構いません」

 

「……分かった、行け」

 

「はい」

 

 

 ブチャラティからの最後の確認にも、ジョルノは構わないと頷いた。……それを見ていたあの男が、苦笑いを浮かべる。

 

 

「……私には、あなた方と敵対するつもりは全く無いのですが……まぁ、それは置いといて。さっそくですが、ジョルノさん。今からあなたの周りに、バリアを張ります」

 

「どうぞ」

 

 

 ジョルノの同意を得た男が、彼に向かって手をかざす。……ジョルノの周りに、緑のドームが現れた。

 

 

「これが、アバッキオの言っていたドーム……いや、バリアですか」

 

「えぇ。……それでは、不可視の効果を付与します」

 

 

 次の瞬間。ジョルノがバリアと共に姿を消した!

 

 

「ジョルノが消えたあァッ!?」

 

「マジかよッ!?」

 

「これが、不可視の効果か……全く見えないな」

 

「ジョッ、ジョルノーッ!!何処だーッ!!返事しろよォーッ!!」

 

「……あの、ナランチャ?そんなに慌てなくても、僕はここにいますよ?」

 

「ジョルノの声だ!何処だッ!?」

 

「目の前にいます。一歩も動いていません」

 

「……声は、先程と変わらない場所から聞こえて来る……ジョルノ。君は本当にそこから動いてないんですね?」

 

「ええ、フーゴ。その通りです」

 

「そろそろ、解除しますよ」

 

 

 ナランチャは馬鹿丸出しで騒いでいたが、フーゴを始めとした他の奴らは冷静だった。目の前からジョルノの声が聞こえていたし、そこにいる事はちゃんと分かっていた。

 そして、バリアが解除された。そこには変わらずジョルノがいる。

 

 

「続いて、防音効果を付与したバリアを張ります。……ジョルノさん。バリアを張ったら、その中から皆様に何か指示を出してもらえませんか?」

 

「分かりました」

 

「ありがとうございます。では、いきますよ」

 

 

 ジョルノの周りに、再びバリアが張られた。見た目はさっきのバリアと全く変わらないが……ジョルノの口は動いており、確かに何かを言っているはずなのに、こっちには何も聞こえない。

 

 

「おい、ジョルノ!何も聞こえねーって!」

 

「本当に何か喋っているんですか?口パクとかではなく?」

 

「……今のフーゴの問い掛けに、真っ先に首を横に振ったという事は、こっちの声は向こうに聞こえているんだな?」

 

「それなのに、ジョルノの声は聞こえて来ねえ……」

 

「防音効果、解除します」

 

「――から!全員で跳んでくださいと言って、」

 

「あ、聞こえた!今聞こえたぞジョルノ!」

 

 

 ……そして、実演が終わった。確かに不可視の効果も、防音の効果も間違いなく機能しているようだ。

 

 

「これで、打ち合わせ内容が外に漏れる事は無いと、理解していただけたかと思います。……それでは、私はそろそろお暇させていただきますね」

 

「ちょっと待て。……お前の名前は?それに、お前が所属している組織の名は?」

 

「……シド、と呼んでください。所属している組織に関しては秘密ですが、組織としてもあなた方と敵対するつもりは無く、警察関係者ではない、と。それだけは断言しておきます」

 

 

 ブチャラティから名前を聞かれた男は、シドと名乗った。……偽名だろうな。しかも、自分が所属している組織の名を言わない……胡散臭い野郎だ。

 

 

「……駄目元で聞くが、スタンド像を見せてくれたりしないか?」

 

「…………あなたは仮にも私から脅迫されて、仕方なく協力している側でしょうに……遠慮が無いですね」

 

「っ、ブチャラティ!」

 

 

 今のブチャラティの言葉で、機嫌を損ねたのかもしれない。何をされるか分からないと、咄嗟に彼を庇って前に出る。

 しかし……男は苦笑いを浮かべるだけで、それ以上は何も言わなかった。

 

 

「スタンド像も、申し訳ないですが見せるつもりはありません。……もういいですよね?それでは、夕方にまたお会いしましょう。失礼」

 

 

 すると。男は手すりから立ち上がって海に向かって飛び込み、空中で消えた!

 

 

「き、消えたッ!?今、海に入る前に消えたよなァ!?」

 

「確かに消えた!あの男は、いったい何処へ!?」

 

「……もしかして、あの不可視のバリア?で消えて空を飛んで行ったとか!?」

 

「空を飛ぶ!?ナランチャ、君なあ、いちいち馬鹿な事を言わないでくださいよ!」

 

 

 何だ今のは?また不可視のバリアで姿を隠したんだろうが、それにしたって空中で消えるのはおかしい!!

 まさかナランチャが言うように、空を飛んでいった訳でもねえだろ?あの野郎、まだ何か隠してやがるな!?

 

 いや、待て。今はそれよりも……

 

 

「ブチャラティ!さっきのは、いくらなんでも踏み込み過ぎだぜ。あの野郎も言ってたが、こっちは脅迫されてんだぞ!?」

 

「分かっている。だが、少し確かめたかったんだ。あの男……シドの許容範囲を」

 

「許容範囲?」

 

「何処までなら許すのか、何処から許さないのか……彼が現れた時から、俺なりにそれを分析していたんだが」

 

「……で、それは分かったのか?」

 

「…………分からん」

 

「はあ?」

 

「――許容範囲が、広過ぎる。……シドはおそらく、俺達が余程の事をしない限りは、そのほとんどを許すと思う」

 

「…………」

 

「だから、分からん。……俺達を脅迫しているくせに、俺達の行動を縛るつもりが無いらしい……どういう事だ?」

 

 

 ブチャラティが、本気で困った顔をしている。彼のこんな顔を見たのは、これが初めてだ。

 

 

 一度冷静になって、あの男の行動を思い返してみると……確かに、ブチャラティが言ってる事も分かる気がする。

 

 奴の言動はつねに丁寧で、脅迫している側なのに偉そうにする事がなく、むしろやけに腰が低かった。

 昨日は特に俺の態度が悪かったはずなのに、最後に苦笑いするぐらいで怒りもしなかった。……脅迫者らしくない態度だ。

 

 その時ふと思い出したのは、昨夜俺が目にしたもの……必死に痛みを耐えようとするガキのような、苦しげな表情。奴が一瞬見せた、あの顔だった。

 

 

(……もしも。あの表情が、奴の本音の現れだったとしたら?)

 

 

 いや、まさかな。……そんなはずは無いと、頭を振ってその考えを忘れる事にした。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 護チと暗チ……と、ついでに俺による作戦の打ち合わせが、つい先ほど終わった。既に真夜中だ。

 今は暗殺チームの面々をアジトまで送り届けている最中で、もちろん防音と不可視のバリアで姿を隠しながら移動している。

 

 打ち合わせ中の俺は、護チと暗チの仲裁で忙しかった。やっぱり反りが合わないようで、あちこちで喧嘩が起こって一時はどうなるかと思ったが……

 最終的に、両方のチームのリーダーにも協力してもらって、どうにか互いに折り合いをつけさせて打ち合わせを終えた。

 

 これで明日から開始する作戦は、なんとかなるはずだ。あとは俺が、死人が出ないように頑張って皆を護らなくては。

 

 

 それにしても、驚いたな。ブチャラティが幹部になった後、アバッキオが切り出した話が進んだ先で、彼があんな言葉を口にするとは。

 ――ジョルノの夢に懸けるか、否か。作戦が終わるまでに決めろ、と。

 

 原作では、最初からジョルノとブチャラティが手を組んでいた事を知る者はいなかった。

 しかし今世では、俺がアバッキオを……脅迫した事で流れが変わり、護衛チームの全員が、彼ら2人が結託していた事を序盤から知る事になった。

 

 ブチャラティが思わぬ事を言い出したのは、それが原因なんだろうが……ここから先はどうなるかな?特にフーゴ。

 原作よりも多少は考える時間が増えたし、原作とは違い、ブチャラティ達について行くという選択を取るかもしれない。

 それでも、原作と変わらず途中で離脱するなら……その時は仕方ないな。無理に合流させるつもりは無いし、フーゴの意思を尊重するとしよう。

 

 

 ……さて。そろそろ、今日帰った後にやるべき事を確認しておくか。

 

 

(えっと、今日は帰ったらシエルにご飯あげて、俺も飯食って、その後は明日以降の行動を確認して、原作キャラの救済方法をもう一度頭に叩き込んで……

 あ、そうだ。承太郎にも電話しなきゃ。で、それが済んだら明日に備えて早めに寝、って駄目だ駄目だ報告書!

 後々財団に提出する報告書も、その日の自分の行動をしっかり覚えているうちに書いておかないと、後が大変だ。

 

 ………帰宅してからいろいろやったら確実に睡眠時間が削れるぞ。まぁ、3、4時間寝られたら儲けものか。

 昨日は寝つきが悪かった事もあって2時間ぐらいしか寝てないしな)

 

 

 周りに気づかれないように、小さくため息を付く。……大丈夫。まだだ。俺はまだ動ける。

 

 

「――シド」

 

「!」

 

 

 俺を"シド"と呼んだのは、リゾットだった。

 

 

 今回の任務中。暗殺チームには前もって本名を教えたが、彼ら以外には本名を隠し、かつて仗助に名乗った"シド"という名前を使う事にした。

 ギャング相手に本名なんて名乗ったら、そこからいろいろ調べられてしまう可能性がある。同じ理由で、SPW財団所属である事も隠しておく。

 

 で、暗チの面々にも"任務中はシドと名乗る"と伝えたのだが……何故か、その呼び方が気に入ってしまったらしい。

 以来、俺は彼らにもシドと呼ばれている。……外国人にとっては、日本名の園原よりもシドの方が呼びやすかったのだろうか?

 

 閑話休題。

 

 

「どうした?」

 

「え、何がです?」

 

「……ため息が、聞こえた」

 

「……ブチャラティさん達との打ち合わせが無事に終わって安心したので、つい安堵のため息が出てしまったんです」

 

 

 暗殺チームは全員、俺の前を歩いていたはずなのだが……いつの間にか、リゾットだけが俺の隣に並んでいたようだ。

 ちなみに、シエルはホルマジオの下にいる。あの子は人懐っこいから、原作で猫に嫌われていた彼が相手でも懐いたらしい。

 

 

「……何か、考え事をしていたようだが?」

 

「あ、あぁ。それは、今日帰宅した後の予定について考えていて……

 本部に提出する報告書の作成や、明日以降の予定の確認など。いろいろと、やる事がたくさんありますから」

 

「…………そうか」

 

 

 リゾットの手が伸びて来て、帽子の上から俺の頭を軽くポンポンと叩く。……これは多分、彼なりに俺を労っているのだと思う。

 この人は他の奴らよりもちょっと口数が少ないが、その代わりに何かと俺の頭を撫でたがる。というか、暗チの面々はペッシ以外、ほとんどがそうだ。

 

 

 何故か。彼らと出会って以来、俺の頭はよく撫でられている。

 

 

(――まさか。ペッシ以外の奴らは俺の実年齢が20以下だと、勘付いている……?)

 

 

 いやいやいやまさかな??……うん、大丈夫、だと思う。きっとバレてない。大丈夫大丈夫……だと、いいなぁ。

 

 

 

 

 

 

 






・自宅に不法侵入された元警官

 得体の知れない男に逃げ道を塞がれ、脅迫されて大ピンチ……と思いきや、何だこいつ訳分かんねえ野郎だな!?

 園原と出会った当初は警戒心Maxで威嚇していたが、脅迫者らしくない態度を見て、徐々に困惑する気持ちの方が強くなった。
 さらに、自分のスタンドで園原の行動を再生する事が出来ず、ますます混乱。あの男、いったい何者だ……?

 原作とは違い、早々にジョルノの夢を知った。彼なら本当に夢を叶えるのではないかと、一瞬でもそう思ってしまったせいなのか、実は原作よりもほんの少しだけジョルノに友好的。

 一瞬見えた、園原の苦し気な表情が忘れられない。……もしも。あの表情が、奴の本音の現れだったとしたら?いや、まさかな。


・元警官の自宅に不法侵入した助手君

 アバッキオを脅迫した日、罪悪感に苛まれて寝つきが悪くなった新人エージェント(睡眠時間は2時間)

 脅迫なんてやりたくないけど、今世の父親のような悪どい真似なんてしたくなかったけど。作戦のために必要だからと、めちゃくちゃ我慢して実行。
 でも、一瞬顔に出てしまった。それに気づいて帽子で隠したが、アバッキオはがっつり目撃している。

 翌日、今度は護チ全員と対面。実は、原作通りに進んでいるかどうかを確かめるために、カプリ島に行く前からこっそり護チを尾行していた。
 護チの前から姿を消した後は、不可視&防音バリアを張った後にイージスと同化し、一足先に陸に帰還(なお、同化の影響で疲労困憊)

 それから暗チに護チの協力を得たと報告したり、夕方に暗チを連れて行って護チと打ち合わせしたり、2つのチームの仲を取り持ったりと、大忙し。
 拠点に帰っても明日の予定の確認とか、救済方法頭に叩き込んだりとか、報告書とか、やる事が多過ぎる……いや、大丈夫。まだだ。俺はまだ動ける。





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