空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・ブチャラティ救済編。いきなり始まります

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。ブチャラティ視点。最後だけ男主視点




このチームに、賭ける

 

 

 

 

「――トリッシュが目を覚ましたら、父親など最初からいなかったと伝えておこう」

 

「トリッシュだと?それが何だというのだ。娘の事はお前には何も関係ない」

 

「貴様に俺の心は永遠に分かるまいッ!!」

 

 

 そう。こんな奴では、俺の気持ちも……トリッシュの気持ちも。永遠に理解できないだろう。

 

 予めスタンド能力で自分の顔の中に隠しておいた携帯を取り出し、ジョルノと連絡を取り合った。……納骨堂の階段から2m程離れた柱の側に、奴がいるという。

 ジョルノが俺を止めようとしているようだが、それを聞かずに柱に向かって攻撃を仕掛けた。今やるしかないと……そう、思っていた。

 

 

 しかし、その考えは甘かったようだ。

 

 

(――柱の陰にいたのは、俺……!?)

 

 

 何が起こったのか、全く理解できない。そんな俺の背後から、奴の声が聞こえてくる。

 

 

「最期だから、教えてやろう。お前がたった今目撃し、そして触れたものは……未来のお前自身だ」

 

「――――」

 

「数秒過去のお前が、未来のお前自身を見たのだ。これが我がキング・クリムゾンの能力!時間を消し去り、飛び越えさせたッ!!」

 

 

 背後を取られた、やられる!だがそれだけでは済まさない!諦めるものか――

 

 

 

 

 

 ――覚悟を決めた、その時。俺の腹周りが、緑色のドームで覆われた。

 

 

「な、何ィッ!?何だ、これはッ!?攻撃が……通らないッ!?」

 

 

 背後から動揺する声が聞こえ、そして横合いから誰かが俺の手を掴み、引っ張る。

 抵抗する間も無く、そちらに引っ張られた俺が見たのは、中折れ帽を被った日本人と……その背後に浮かぶ天使、と、

 

 

「ニャ?」

 

 

 彼の足下にいる猫……猫?なぜ猫??

 

 

「シド!?お前、」

 

「話は後です!まずは逃げましょう!不可視と防音バリアのおかげで、奴は我々を見失っています!その隙に逃げなくては!!」

 

「だがトリッシュは、」

 

「彼女も連れて行くんでしょう!?ほら、早く抱えて!」

 

「わ、分かった!」

 

 

 シドは自分と俺だけでなく、トリッシュも含めて不可視と防音バリアで囲っていたようだ。それに気づいたボスが、彼女も消えた事でさらに動揺している。

 

 

「ブチャラティさんの能力なら、きっと階段を使わずに上の階に行く事もできますよね?それをやってください!」

 

「確かに出来るが、さすがにお前とトリッシュの2人を抱えて移動は出来ないぞ!?」

 

「大丈夫です!私はシエルを抱えて飛んでついて行きますから!」

 

「と、飛ぶ!?」

 

「――イージスホワイト!!」

 

 

 シエル、というのはおそらく猫の名前だろう。シドは猫を抱えて、それからまた別の名前を呼ぶ。

 ……それが彼のスタンドの名前だと気づいたのは、彼とスタンドが重なり、光に包まれ、彼の背中に天使の翼が生えたのを目撃した瞬間だった。

 

 俺が唖然としていると、頬に金色の刺青が浮かび上がったシドが、切羽詰まった表情で俺を睨む。

 

 

「何をぼさっとしてるんですかっ!?さっさと動いてください!!」

 

「っ、了解!」

 

 

 スティッキィ・フィンガーズの能力で、柱にジッパーを取り付け、それを使って天井まで昇る。

 そんな俺とほぼ同じスピードで、シドが空中を飛びながらついて来た。不可視と防音バリアは継続されている。これなら、ボスにバレる事は無いだろう。

 

 

(にしても……なんて奴だ)

 

 

 ボスではなく、シドの事である。スタンドと同化して自分が空を飛ぶなんて、そんな事ができるとは……これで光る輪が頭上にあったら、本物の天使に見えたかもしれない。

 あの時。シドが助けてくれなければ、俺はおそらく致命傷を負っていただろう。それに、彼が間に入ってくれたおかげで冷静になれた。

 

 トリッシュを助けようと焦り過ぎて、判断を誤ってしまった……あの場は、即座に逃げるべきだったのだ。

 

 

 天井に到達した後は、そこをジッパーで開いて上の階に上がり、シドも上がって来たのを確認してから即座に閉める。

 

 

「よし。これで、」

 

「っ、」

 

 

 その時。同化を解いたのか、本体であるシドからスタンドが離れた瞬間、彼の体がぐらついた。

 しかし、何やら不自然な体勢でぴたりと止まった後、スタンドに支えられながらすぐに立ち直る。

 

 今のは……シドの体が、見えない何かに受け止められたように見えたのだが……そこには何も無いようだし、気のせいか?

 

 

「おい、どうした!?大丈夫か!?」

 

「……えぇ。問題ありません。……スタンドと同化して空を飛ぶと、普段よりも体力と精神力を使うので、こうなる事が多いのです。

 しかし、今はもう大丈夫ですので、ご心配には及びません」

 

「本当なんだろうな?」

 

「はい。……それよりも、今はジョルノさん達と早く合流した方がいいのでは?奴が追い付いて来る前に」

 

「…………そう、だな」

 

「途中まで、このバリアを継続させながら同行します。行きましょう」

 

 

 いろいろと聞きたい事はあるが、確かに今はジョルノ達と合流する方が先だ。……しかし、やはりどうしても気になる事があったため、猫を抱えて並走する彼に問い掛ける。

 

 

「お前の任務は、もう終わったんじゃないのか?何故まだここにいる?リゾット達はどうした?」

 

「…………暗殺者チームの方々は、イタリアから無事に脱出しているはずです。しかし、私にはまた別の指令が下ったため、ここに残りました」

 

「別の指令?」

 

「その内容までは話せませんが……今までと同様に、こちらの組織も私自身も、ブチャラティさん達と敵対する意思はありません。

 そして今回の任務は、あなた方を無理に巻き込む必要がない任務です……と、そう言ったところで、信じられないとは思いますが、」

 

「それは疑っていない。もしも敵対するつもりなら、俺やトリッシュを助ける事なく放置していたはずだし……

 その任務に俺達を巻き込むつもりなら、お前ならちゃんと事情を説明しようとするはずだ。そうだろう?」

 

「そうして油断させるために、あえて助けた。そして任務内容を説明しないのは、そうした方が思惑通りに進むと考えたから……とは思わなかったのですか?」

 

「いや、全く考えなかったな。――お前、本来はそういう汚い手段を好まないタイプだろ?」

 

「…………」

 

「俺が思うに、アバッキオを脅した事も苦渋の決断だったんじゃないか?」

 

 

 シドの微笑が崩れ、真顔になった。だが、目は泳いでいる。……やっぱりな。

 

 

「……何故、そう思ったんです?」

 

「これまでにお前を観察してきた結果、かな。確信を持ったのはついさっき、お前のスタンドを見た時だったが」

 

「私のスタンドが、何か?」

 

「スタンドには、本体の心が反映される……シドが本当に脅迫とか騙し合いを平気でやれるタイプだったら、お前のスタンドは、そんなに綺麗な見た目にはならなかったはずだ」

 

 

 シドのスタンドは、髪と目の色が黒である事、頬に金色の刺青がある事を除き、その全てが純白だった。

 身に付けている鎧も、背中にある翼も、手にしている長い杖も、その肌の色も、真っ白に輝いている……

 

 

「――これ程に美しいスタンドを……美しい人の心を見たのは、初めてだぜ」

 

「――――」

 

「親の育て方が良かったのか、それとも良い人間関係に恵まれたのか……そのどちらか、あるいはその両方か?

 とにかく。今までのシドの態度やスタンドの姿を見れば、本来のお前は誠実な人間である事がよく分かる」

 

 

 ある意味、他の誰よりも信用できる人間だろうな。シドのスタンドを一目見た時から、彼を疑う気は失せていた。

 

 

「…………つかぬことを伺いますが、ブチャラティさん」

 

「ん?」

 

「人たらし、とよく言われるのでは?」

 

「その言葉そっくりそのままお前に返す」

 

「はい?」

 

 

 確かに、俺はアバッキオ達からそう言われる事もあるが、あの(・・)暗殺者チームの全員を手懐けたお前にだけは言われたくない!

 

 

「ところで、その猫は何だ?どっかで拾って来たとかじゃないよな?」

 

「あ、あぁ……この子は私の飼い猫で、名前はシエル。私の護衛です。今までは私のスタンドと共にバリアの中に隠れていただけで、ずっと一緒にいましたよ」

 

「…………猫が、護衛??」

 

「猫は猫でも、立派なスタンド使いですから」

 

「何ッ!?」

 

 

 この猫が、スタンド使い!?あの亀と同じく、動物がスタンドを使うのか!……と、その猫が突然鳴き始めた。シドに何か訴えているようだ。

 

 

「んん?どうした、シエル。……もしかして、知ってる匂いが近づいて来たか?」

 

「ニャア!」

 

「そうか……敵か?さっき納骨堂にいた奴?」

 

「ニャニャ」

 

「違う?じゃあ、味方か?」

 

「ニャア!」

 

「味方か。……という事は、ジョルノ?」

 

「ニャア!」

 

「分かった、ありがとう」

 

 

 ……俺には分からない言語、おそらく日本語でシエルに何か話し掛けていたシドが、俺に声を掛けた。今度はイタリア語だ。

 

 

「シエルが、こちらに近づいて来る人の匂いを嗅ぎ付けたようです」

 

「今の会話でジョルノの名前だけは聞き取れたんだが、まさか?」

 

「はい。ジョルノさんだと思います。シエルには、ブチャラティさん達一人ひとりの匂いを覚えてもらいましたし、日本語だけですが人の言葉も理解しているため、確かな情報ですよ」

 

 

 その後。彼の言う通り、本当に向こうからジョルノがやって来た。

 するとシドがいきなり、俺達を囲んでいたバリアの範囲を広げてジョルノもその中に入れた。走っていたジョルノは突然俺達の姿が現れた事で、酷く驚いている。

 

 

「ブチャラティ、トリッシュ!?それに、シド!?何故あなたが…って、天使?猫??」

 

「説明は後だ、ジョルノ!今すぐ教会の外に出ろ!アバッキオ達と合流する。ここは危険だ」

 

「っ、はい!」

 

 

 ジョルノはすぐに動揺を抑え、道を引き返した。さすがの状況判断力だな。こちらは非常に助かる。……そして教会の入り口付近まで戻って来た時、

 

 

「ここからは、お2人で進んでください」

 

「え?」

 

「では、失礼します」

 

「あ、おい!?」

 

 

 シドが俺達だけをバリアの外に出して、そのまま消える。逃げられた……!助けてくれた礼もまだ言ってないのに!

 

 

「ジョルノめ、勝手に上陸しやがって!何処に行った!?」

 

「……あ、いたぞ!ジョルノッ!!」

 

「あれ、ブチャラティもいる!?」

 

「トリッシュも一緒ですよ!何故連れ帰って来たんだ!?」

 

 

 そこへ、アバッキオ達がやって来た。この人数なら、ボスも襲っては来ないはず。あとは教会の外に出れば、中にいるよりは安全だろう。

 彼らと合流し、全員で外に出る。それから、俺が自分の意思でボスを裏切った事を簡潔に説明した。

 

 

「さて……結果的に俺の勝手な行動のせいで、時が早まってしまったな……お前らには、本当に申し訳なく思っている」

 

「ブチャラティ……?」

 

「――選択の時(・・・・)だ」

 

 

 そう言うと、全員の顔色が変わった。

 

 

「俺の場合は最初から決めていたから、まだいいが……お前らにとっては、悩む時間が少な過ぎただろう。それは分かっている。

 しかしそれでも、悪いがこの場で今決めて欲しい。ジョルノに賭けるか、否かを。

 

 共に来るならば、この階段を下りて、ボートに乗ってくれ」

 

 

 ついて来いとは命令しない、一緒に来てくれと願う事もしない。俺が身勝手に選択の時を早めただけだから、俺に義理を感じる必要もない。

 俺は正しいと思う事をやった、後悔は無い。……俺は、自分の信じられる道を歩いていたい。

 今は逃げるだけだが、ボスの弱点を見つけて必ず倒してみせる……そう伝えた後は、彼ら自身の選択に任せる事にした。

 

 

 一瞬の静寂の後、最初に口を開いたのは……アバッキオだ。

 

 

「俺が忠誠を誓ったのは、組織にだ。あんたに忠誠を誓った訳じゃねえ――

 

 

 ――しかし、だ。俺は元々、行く所や居場所が無かった男だ……そんな俺が落ち着ける所は、ブチャラティ。あんたと一緒の時だけだ」

 

「っ、アバッキオ……!」

 

「ふん…………それに、」

 

「?」

 

「あんた以上に無謀な行動に出る、この馬鹿なガキが一緒じゃあ、この先どうなるか分かったもんじゃねえ……しょうがねえから、一緒に行ってやるよ」

 

 

 アバッキオはそう言ってジョルノの頭を小突くと、そのままボートに乗る。

 何だかんだ言って、彼もジョルノの事を多少は認めているようだ。その言葉とは裏腹に、声は優しかった。

 

 

「……ボスを倒したらよォ、実力から言って次の幹部は俺かな!」

 

 

 そう言って、アバッキオの次に階段を下りたのは、ミスタだった。

 

 

「ブチャラティは頭が良い。勝つ見込みの無い戦いはしない男だ!絶対に莫大な金が手に入る!……それに、ラッキーボーイのジョルノも一緒だしな。賭ける価値はあるだろ」

 

「ミスタ……君まで……」

 

「フーゴ。お前はどうするんだ?」

 

「…………完全に孤立するんだぞ?何処へ逃げる気なんだ?……いや。このヴェネチアから、生きて出られる訳がない……」

 

 

 フーゴの言葉はもっともだが……少し意外だったな。フーゴなら、もっと取り乱すのではないかと思っていた。しかし、今の彼は不思議な事に落ち着いている。

 

 

「……ナランチャ。君はどうするんです?」

 

「お……オレ……ど、どうしよう。ねえ、ブチャラティ……オレ、どうすればいい?行った方がいいと思う?」

 

「怖いか?」

 

「ああ、凄く怖いよ……で、でも命令してくれよ!一緒に来いって命令してくれたら、勇気が湧いて来る!あんたの命令なら何も怖くないんだ!」

 

「駄目だ。こればかりは命令できない。お前が決めるんだ!自分の歩く道は、自分で決めるんだ!

 だが、忠告はしておこう。来るな、ナランチャ!お前には向いていない」

 

 

 選択に迷い、自分では決められない様子のナランチャの事は、あえて突き放す。向いていないと言ったのは、彼には悪いが本心だ。

 俺の命令でついて来たとしても、自分で決めた訳ではないなら、後で辛くなるのはナランチャ自身……彼にそんな思いはさせたくない。

 

 

「……本気なのか?確実に殺されるぞ。正しいからって、やれる事とやれない事がこの世にはある。

 僕らの仕事は所詮、汚れた仕事だ。こんなのは五十歩百歩の問題じゃないのか?」

 

「それでもだ。俺は、自分に嘘はつけない」

 

「…………そう、か」

 

 

 フーゴはその言葉を最後に、俯いて黙り込んでしまった。……フーゴらしくない様子が気になるが、ボートに乗る気配が無いし、置いていくしかない。

 

 

「――行くぞ!ボートが離れた時、お前達は裏切り者となる!」

 

 

 ナランチャとフーゴを残し、岸からボートが離れていく。……出発だ。

 

 

「……ジョルノ、亀をくれ。トリッシュを中に入れよう」

 

「はい。……っ!ブチャラティ、振り返ってください」

 

 

 ジョルノにそう言われて振り向くと……ナランチャがボートに向かって泳いで来る!

 

 

「行くよ!オレも行くッ!行くんだよおォッ!!オレに来るなと命令しないでくれ!トリッシュはオレなんだ!オレだ!トリッシュの腕の傷はオレの傷だあァァッ!!」

 

 

 全く、あいつは……!来るなと言ったのは俺だが、彼がそれでも来てくれた事を心から喜んでいる自分がいる……すまない、ナランチャ。

 

 

「てめえ、決断が遅いんだよッ!」

 

「どうなっても誰かを恨んだりするんじゃねーぞ」

 

「……ナランチャ。君のその勇気に、敬意を表します」

 

 

 ミスタ達によってボートに引き上げられたナランチャに向かって、彼らが声を掛けている。…………だが、フーゴは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――っ、何!?」

 

「フーゴの野郎!あいつも飛び込んだぞ!?」

 

「ええーッ!?」

 

「おいおい……!もしかして、ナランチャに触発されたんじゃねえかァ!?」

 

「フーゴ……!!」

 

 

 派手な水音が聞こえてそちらに振り向くと、フーゴがナランチャと同じく泳いでいた!

 ボートまでやって来たフーゴを、今度は俺が引き上げる。……先程から普段と様子が違うと思っていたが、まさかこいつまでついて来るとは!嬉しい誤算だな。

 

 

「フーゴォッ!てめえも決断が遅過ぎるぞ!?だが、よく来たァ!!」

 

「やったあ!これで全員だ!!フーゴが来てくれて良かった!!」

 

「てめえは来ないだろうと思ってたんだがな……驚いたぜ」

 

「フーゴ。君が来てくれた事は心から嬉しく思いますが……一体、どんな心境の変化があったんですか?」

 

「そうだな……良かったら、俺達に聞かせてくれ。お前は何を考えてついて来たんだ?」

 

 

 俺達が口々にそう言うと、フーゴは濡れた髪を掻き上げて一息つき、それから話し始めた。

 

 

「実は、ブチャラティから選択の時について聞いた後から数日間、ジョルノや……ブチャラティ達全員を観察していた僕は、つい最近。ある事を決めたんです」

 

「ある事?」

 

「ええ……もしもこの先、僕以外のチームの人間全員が、ジョルノとブチャラティから離れずについて行くという選択を取ったら……その時は、僕も絶対について行こう、と。

 

 

 ジョルノ!ブチャラティ!僕はあなた達2人のどちらかに賭けた訳ではない――僕が身を置いている、この1つのチームに賭けたんだッ!!」

 

「――――」

 

「僕を含めたこの6人が、誰1人欠ける事なくボスに挑むというなら!勝利を掴む可能性があると思った!!……だからこそ、今。僕はこのボートの上にいる」

 

 

 そう言って胸を張るフーゴに対し、俺達は驚いていた。皆、考えている事は同じだろう。"まさか、あのフーゴがそこまで言うとは"、と。

 おそらく。俺達の中で最も現実的な人間は、他でもないフーゴだ。そんな彼が俺達全員を観察した上で、そこまで言うという事は……

 

 それだけ、可能性があるという事だろう。ボスに勝てる可能性が!

 

 

「……このチームに賭ける、か。なるほど。その気持ちなら……まあ、分からなくはねえな」

 

「はははッ!たまには良い事言うじゃねェか、おい!!」

 

「そっか……うん、そうだよフーゴ!このチームなら、皆がいれば勝てるッ!!」

 

 

 ミスタ達がフーゴの言葉で盛り上がる中、俺はジョルノと目を合わせ、笑い合う。そうだな。このチームなら、何処までも行けるさ!

 

 

「……あ、ところで。ブチャラティ」

 

「ん?」

 

「先程、何故あなたがシドと共にいたのか。理由を聞かせてくれませんか?」

 

「っ、はあ!?」

 

「シドだと!?あの野郎、あいつらと一緒にイタリアから出たんじゃなかったのか!?」

 

 

 そうだった。まずは、その話をしないとな。……俺がシドに助けられた事と、彼がまた別の任務のためにイタリアに残った事を説明する。

 

 

「別の任務?……あいつ、また俺達を巻き込んで何かやらかす気じゃねェだろうな?」

 

「いや。おそらく、彼にはもうその気は無いだろう。本人も、次の任務は俺達を無理に巻き込む必要が無いと言ってたしな」

 

「それが本当かどうかは分からないじゃないですか!嘘をついているかもしれませんよ?」

 

「俺は、彼の事なら信用しても大丈夫だと思っている」

 

「何を根拠にそんな事を……」

 

「ふっ……お前らも、彼のスタンドの姿を見れば納得するはずだ」

 

 

 シドのスタンド……イージスホワイト、だったか?その姿を思い出し、笑みが溢れる。あれ程に本人の資質が分かりやすいスタンドなんて、滅多に無いだろうな。

 

 

「奴のスタンドを見たのか!?」

 

「ど、どんなスタンドだった!?」

 

「……ああ、なるほど。確かにあの姿のスタンドなら、ブチャラティが彼を信用する気持ちも分からなくはないですね」

 

「えっ!?ジョルノも見たのか!?」

 

「はい。あと、何故か猫も一緒にいました。あれは……ブリティッシュ・ショートヘア、という種類の猫だったはず」

 

「は?猫??」

 

「何故、猫??」

 

「シドの飼い猫で、スタンド使いの猫だそうだ」

 

「スタンド使いィッ!?」

 

「動物のスタンド使い……って、今はそれよりもシドのスタンドの話です!どんな姿でしたか!?」

 

「…………さて、どうだったかな」

 

「ブチャラティ!?」

 

 

 その後もシドのスタンドが気になるのか、フーゴ達は俺とジョルノから話を聞き出そうとしていたが、俺は言うつもりは無かったし、ジョルノもそんな俺に合わせて黙っていた。

 あれは先入観無しで、自分の目で見て判断した方がいい。そうした方が、こいつらにも俺の気持ちが分かるだろう。

 

 きっと彼は、近いうちにまた俺達の前に現れる。……こればかりは本当に根拠が無いはずなのに、俺は何故かそう確信していた。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

(――なるほど、そう来たかぁ……)

 

 

 不可視と防音バリアを張りながら、水面を走って(・・・・・・)護衛チームを追跡している俺は、フーゴの言葉を聞いて深く納得した。

 

 ジョルノ1人に賭けるのではなく、自分も含めた全員がいる1つのチームに賭ける……確かに、そう考えたら勝算はあるかもしれない。

 俺、スタクル推しのはずなのに、ほんの一瞬フーゴ推しになりそうだったわ。それぐらい感動した!

 

 

 そして現在の護チは、俺のスタンドの姿を見たというブチャラティとジョルノを問い詰めているようだ。

 そんなにイージスの事が気になるのか?それなら、次会った時は他の奴らにも見せてあげようかな。

 

 ……あ、いや。ブチャラティに読まれたように、俺の心がバレバレになるかもしれないから、やっぱり止めておこう。

 まさか、ちょっとスタンドを見せただけであそこまで見抜かれてしまうとは……イケメンおかっぱ、恐るべし。

 

 

「……シド」

 

「はい?」

 

「本当に……大丈夫なのか?」

 

「……リゾットさん、意外と心配性なんですね。この通り、私の体は大丈夫ですよ」

 

「…………なら、いいが……」

 

 

 俺と同じく水面を走っているリゾットは無表情だが、彼の目を見れば相当心配されている事が分かる。……承太郎と同じだ。彼の感情は、目と雰囲気で判断すればいい。

 

 

 水面……というか、水面の上に張られたバリアの上を走って移動するこの方法は、彼から提案されたものだ。

 

 そもそものきっかけは、先程イージスと同化して飛び、ブチャラティのスタンド能力で上の階まで上がった時に、同化を解いた俺の体がぐらついた事。

 あの時、倒れそうな俺の体を受け止めてくれたのは、リゾットだった。

 

 彼には出来る限り、自身のスタンド能力で姿を隠しながらついて来て欲しいとお願いしている。

 既に死人扱いだから、ブチャラティ達以外の誰かに姿を見られる訳にはいかないし……それに、彼がギリギリまで姿を隠していれば、万が一の時の切り札として活躍してもらえるはずだ。

 

 死んだはずのリゾットが姿を現したり、スタンド能力で不意打ちしたりすれば、それだけで敵の動揺を誘えるだろう。

 

 

 さて、そんな彼なのだが。倒れそうになった俺の事を、かなり心配しているらしい。そのせいで緊急時以外はイージスとの同化を禁止されてしまった。

 でも同化して飛ばないと、ボートを使って水面を移動する護衛チームの追跡ができない……そう訴えると、リゾットはこう言った。

 

 

「……ならば……水面の上に、バリアを張る事は、できないのか?」

 

「えっ?」

 

「水面に、バリアで床を作り……その上を、走って移動する……というのは、どうだ?」

 

「――――」

 

「…………シド?」

 

「リゾットさん」

 

「ん?」

 

「それ、採用」

 

 

 という訳で、不可視と防音バリアのドームだけでなく、床を作る想像して実行したら……本当に出来ました。リーダーさまさまです。

 同化して空を飛ぶよりも、こっちの方が体力と精神力を温存しながら追跡できる。全く、リゾットには感謝しかない。

 

 

「やっと気づいたんだね。遅いよ、志人」

 

「……イージス。やっぱりお前、こういう事も出来るって分かってたんだな」

 

「分かってても、志人が気づくまでは言わないつもりでいたけどね。君の想像力と発想力を鍛えるために」

 

「あぁ……お前、本当にたまにそういう所あるよな、うん、知ってた」

 

「…………いつもの本調子の志人なら、もっと早くに気づいていたはずなのに……」

 

「イージス?」

 

「いや、何でもないよ。……おそらく、後でいろんな皺寄せが来た時にようやく自覚するんだろうね、君は」

 

「?」

 

「あ、波でバリアが歪みそうだよ。気を付けて」

 

「うお、本当だ!危なっ!?」

 

 

 俺1人だけならいいが、今はシエルとリゾットが一緒にいるからな。彼らを水中に落とさないように気をつけなければ。

 ……と、イージスとそんな会話をしたのは、少し前の事だ。今では水面にバリアを張るのも馴れて来て、問題なく走れるようになった。

 

 

 さて、閑話休題。

 

 

「……お前はこれから、どうするつもりなんだ?」

 

「どう、とは?」

 

「任務内容は、ジョルノの監視だ……ブチャラティを助ける事は、任務を遂行する上で、必要な事だったのか……?俺は、そうは思わない」

 

「…………」

 

「……任務以外の余計な行動を取った結果、お前が死んでしまっては……元も子もない。今後は、控えるべきだ」

 

「……お気遣いいただき、ありがとうございます」

 

 

 やっぱり優しいなぁ、この人。多分原作でも、情が深いからこそ復讐に走ったんだろうし……きっと、一度懐に入れた相手には甘くなるタイプなのだろう。

 

 

「とりあえず、ここからしばらくは監視に徹するつもりでいます。

 先程は……私の勘が、ここで助けなければブチャラティさんの命が危ないと、そう言っていたもので。つい、手を貸してしまったのです」

 

 

 実際は勘ではなく、原作知識なんだけど。

 

 

 しばらく監視に徹する、というのは本当だ。次に俺が手を出すのは、アバッキオ救済の時だと決めている。

 下手に手を出して原作の流れを大きく変え過ぎて、最終的に原作知識が全く使えなくなりました、なんて事は避けたい。

 

 とはいえ。既にリゾットが死亡フラグを折って俺の護衛をやってたり、フーゴがブチャラティ達についていったりと、流れがかなり変わっている。

 それに加え、俺はポルナレフ救済のために、シルバー・チャリオッツ・レクイエムを阻止しようとしているし……

 

 出来る範囲で、なるべく原作が大きく崩壊しないように行動したいところだが……まぁとにかく、やってみるしかないよな。

 

 

「…………お人好し、だな……呆れる程に」

 

「すみません。こればかりは性分のようですから、どうしようもありません。それに、私は――残された者の悲しみを、痛い程に知っています……」

 

「!」

 

 

 そう……今世で大切な母と祖母を亡くした俺は、知っている。1人残された者の悲しみも……絶望も。

 

 

「私の目の前で死にそうになっている人は、出来る限り助けてあげたい。そうすれば、残された者の悲しみを知る人が、少しでも減ってくれるはず。

 例え相手が数日前に知り合ったばかりの人達であっても、過去の私のような悲しみを、味わって欲しくない……

 

 ……ブチャラティさん達やトリッシュさんには、死んで欲しくない。彼らの事は私が無理やり巻き込んでしまったのだから、尚更……」

 

「っ、シド、」

 

「おっと!少し喋り過ぎましたね。お喋りはこれぐらいにして、任務に集中する事にしましょう」

 

 

 マジで余計な事を喋り過ぎたわ。何言ってんだ、俺は。いつの間にか走るスピードが落ちて、護衛チームが乗っているボートから少し離れてしまったようだ。急がないと。

 つーかリゾットだって確か従兄弟の子供が亡くなった事でその悲しみを知ってるはずだし、そんな人を相手に本当に何言ってんだ俺!!

 

 

「…………志人……」

 

「ニャー……」

 

「ちょっ、待て!お前らまでそんな顔すんなよ!大丈夫だから!!」

 

 

 ついにはイージスとシエルにもまた心配掛けちまったみたいだし、あーもう俺の馬鹿!!

 

 

(…………何故だろう。無性に承太郎に電話を掛けたくなってしまった……)

 

 

 今は無理だけど、後で必ず電話しよう。そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 






・救済された護チのリーダー

 園原が介入した事で、ゾンビ化を免れた。後に、彼がちゃんとご飯を食べている様子を見た園原は、めちゃくちゃ安心する。

 以前から園原の事を、"実はかなり誠実な人間ではないか?"と疑っていたが、今回初めてイージスの姿を見てそれを確信。
 こいつも人たらし。ただし、本人にその自覚は無く、暗チを手懐けた園原にだけは言われたくないと思っている。実際はどっちもどっち。

 護チ面子に"選択の時"を突き付け、共に来るか来ないかを決めさせた。結果的に全員ついて来てくれた事が凄く嬉しい。


・まさかの行動に出たフーゴ君

 早いうちにジョルノとブチャラティの目的を知り、たったの数日でも考える時間が与えられた事。
 それを前提にジョルノ達を観察する機会が与えられた事で、彼らについて行くという選択肢が生まれた。

 彼が賭けたのは、ジョルノでもブチャラティでもなく。彼らや自分自身も含めた、6人が所属する1つのチーム。
 彼自身がついて来た事と、彼のその言葉によって、これ以降は護衛チームの結束が徐々に強くなる予定。


・いろいろ読まれてしまった助手君

 皆のトラウマ、腹パンは阻止したぞ!!

 ブチャラティ救済(ついでに腹パン阻止)は成功したが、相手に心の内を読まれてしまい、何だか負けた気分。
 しかも発言までイケメンかよ、この人たらしめ。……え?そっくりそのまま返す?何故だ、解せぬ。

 フーゴのまさかの行動と言葉にはびっくり。うっかりスタクル推しからフーゴ推しになりそうだったぞ、どうしてくれる。

 そして、じわじわと精神的にも肉体的にも追い込まれて来ている。全部終わったらぶっ倒れるフラグが立った……かもしれない。


・心配している暗チのリーダー

 園原とブチャラティのやり取りを聞いて、"何だこいつらそっくりだな"と思ってた人。

 順調に過保護になりつつある、元暗殺者。いろいろ危なっかしい園原から、目が離せない。
 イージスとの同化を使わせないために、バリアで水面を走れるようにする方法を提案。採用された。

 園原の地雷を踏んでしまった事を察して、内心焦っていた。さらに、上手く慰める言葉を考える前に話が終わってしまったため、実は落ち込んでいる。

※この下に、最後のシリアスが吹っ飛ぶ内容のおまけあり。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
※ブチャラティ救済編のおまけ(男主視点。リゾットのキャラ崩壊あり)
 
 
 
 
「――本当に、良いチームだなぁ……」
 
 
 ボートの上で会話が盛り上がっているブチャラティ達を見て、思わずそう呟いた。
 なんとなく、原作よりも仲が良さそうに見えるのは気のせいだろうか?もしや、原作とは違ってフーゴも追い掛けて来た事で結束が強まった、とか?
 
 
 
 
「……イージス」
 
「んん?どうかした?リゾット」
 
「シドは今、何と呟いたんだ?……日本語は、分からん」
 
「あぁ……ブチャラティ達を見て、"本当に良いチームだな"、って言ったんだよ」
 
「…………そうか」
 
 
 
 
「……シド」
 
「何ですか?リゾットさん」
 
「……俺達のチームの事は、どう思う?」
 
「はい?」
 
 
 リゾットが突然、脈絡もなくそんな事を聞いてきた。俺達のチームって……暗殺チームの事だよな?それをどう思うか、だと?
 
 
「……リゾットさん達のチームは、とても良いチームだと思いますよ。それが何か?」
 
「…………ブチャラティ達のチームよりも、か?」
 
「えっ」
 
「俺達と、奴らのチーム……どちらがより良いチームだと思う?」
 
「それは……難しい選択ですね。というか、選べません」
 
 
 ……うん。改めて考えてみたが、やはり選べない。護チにも暗チにも、それぞれの良さがあるからな。
 
 
 ブチャラティのチームは、一人ひとりがいろんな意味で自由過ぎて、一見チームとして成り立たないのでは……
 ……と思わせておいて、実はいざという時の連携力がずば抜けているという、意外性のある良いチームだ。一言で表すなら、"動"。
 
 それに対し、リゾット達はチームというよりも、個人で動く機会の方が多かったのではないかと、勝手にそんなイメージを持っていたが……
 実際は、チームとしての動きも優れていた。まるで狼の群れのように隙が一切見られない、良いチームだ。一言で表すなら、"静"。
 
 
「……このように。それぞれの良さがありますので、私にはどちらか一方を選ぶなんて、出来ませんよ」
 
 
 リゾットに俺なりの考えを伝えてそう言うと、彼は……なんというか、面白く無さそうな雰囲気?物言いたげな目?――あ、拗ねてる?そう、拗ねてるんだこの人!
 
 
「何故そんなに拗ねているんですか?」
 
「っ、…………別に、拗ねてない」
 
「いや、今明らかに動揺してましたよね?」
 
「拗ねてない」
 
「でも、」
 
「うるさい黙れメタリカされたいのか」
 
「アッ、ごめんなさいそれは遠慮します!!」
 
 
 照れ隠し(メタリカ)ですか、なるほど分かりません。
 
 
 
 
※他ならぬ園原には、"暗殺チームが一番だ"と言って欲しかったリゾット。
 
 





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