空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・ラスボス戦後のオリジナル話。今回もご都合主義、捏造過多が激しいです。キャラ崩壊あり

・途中まで、男主視点。最後はジョルノ視点




5部終了後
早過ぎる再会


 

 

 

 

「なるほど……それで、暗殺者チームをイタリアから脱出させる計画は成功した訳か」

 

「はい」

 

「……とんでもない事を考えたな。だが、それを実行して成功させているとなると、君は将来大物になるかもしれん」

 

「いやいや、まさか。買い被り過ぎですよ」

 

 

 ジョルノ達と別れ、財団が用意してくれた拠点に向かう途中。俺はポルナレフに、暗殺チームの死を偽装した例の作戦について説明した。

 さっきは何の説明も無しにリゾットの姿を見せてしまったし、そこはちゃんと説明しておかないと。

 

 あの野郎……ディアボロがトリッシュを人質に取った時は、思わずぶちギレてしまった。だって今世の父親を思い出してしまったものだから、つい……

 

 全部終わった後は、協力してくれたポルナレフとリゾット、シエルに謝罪した。感情的になって彼らに偉そうに指示を出してしまったからな。

 すると、彼らはあっさり許してくれた。自分達も奴の事は許せなかったし、気持ちは同じだ、との事。

 

 器が大き過ぎる。本当にご迷惑をお掛けしました……

 

 

 閑話休題。……俺が例の計画について話した後は、ポルナレフが今までどうしていたのかを聞かせてくれた。

 

 

「……あなたが生きていてくれて、本当に良かったです。お疲れ様でした」

 

「ありがとう……私も、財団職員である君と合流する事が出来て良かった」

 

 

 改めて聞くと、彼がディアボロとパッショーネに追い詰められていく様子は鬼気迫るもので、聞いているだけでちょっと泣きそうになった。本当によく生きてたな、この人……!

 

 

「……あのボスと直接戦い……部位欠損しながら、それでも生き残ったとは……化け物か?」

 

「ちょっと、リゾットさん!?」

 

「はははッ!構わないさ。褒め言葉として受け取っておこう」

 

 

 リゾットの失礼な発言を咎めようとしたら、ポルナレフはそれを笑って許してくれた。……原作3部と比べると、かなり心が広くなったなぁ……

 

 

「……ウニャ?」

 

 

 と、その時。シエルが周辺の匂いを嗅ぎ、不思議そうな様子で首を傾げた。もうそろそろ、ローマ市内にある拠点に到着するが……いったい何を嗅ぎつけたのだろうか?

 そこから少し歩き、拠点となっている小さな一軒家が見えた瞬間、

 

 

「っ、ニャアッ!!」

 

「シエル?」

 

「ニャア!ニャー!ウニャーッ!!」

 

 

 急に、激しく鳴き始めた。さらにバリアをカリカリと引っ掻いたり、俺の足元に来て裾を咥えて引っ張ったり……

 

 

「おい、シエルはどうしたんだ?」

 

「分かりません。シエルのこんな行動を見たのは初めてで……賢い子なので、この行動にも何か意味があるはずなのですが……」

 

「……ねぇ。もしかして、"早く拠点に行こう"って言いたいんじゃないかな?」

 

「えっ?」

 

「ニャア!」

 

 

 ……どうやら、イージスの予想が当たっていたらしい。シエルは謎の行動を止めて、俺の足元で頷いた。

 

 

「……拠点に何かあるんだな?」

 

「ニャア!」

 

「分かった。ちょっと急ごう。……ポルナレフさん、リゾットさん。申し訳ありません。少し急いでも良いですか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「……構わない」

 

「ありがとうございます。行きましょう」

 

 

 とりあえず、拠点に何かあるのだと判断して、先を急ぐ。……やがて、一軒家の扉の前に到着した。

 鍵の隠し場所は既に風花さんから聞いていたので、そこから鍵を取り、玄関の鍵を開けて中に入った。

 

 

「――あ、園原さん!ご無事で何よりです!」

 

「風花さん!?」

 

 

 そこには、何故か風花さんがいた。……既にここに来ているなんて連絡は入って無かったんだが?

 

 

「申し訳ありません!実は想定外の出来事があって、私も混乱していて……園原さんにここに到着したと連絡する事を、すっかり忘れていたんです!本当にごめんなさい……!」

 

「想定外の出来事?」

 

「はい……って、え、あの、その車椅子の方は、まさか……!?」

 

「あ」

 

 

 しまった……俺も人の事を言えねぇわ。ディアボロを倒した後に、ポルナレフを保護した事をこの人に連絡するのを忘れていた。

 ディアボロを倒す前はポルナレフから口止めされていたから仕方ないが、倒した後はすぐ連絡を入れるべきだったのに!

 

 

「……すみません。俺も連絡し忘れていました……この通り、J・P・ポルナレフさんを発見し、保護したのでこちらにお連れし――」

 

「――――ポルナレフ……?」

 

「え、」

 

「ニャアーッ!!」

 

 

 ……聞き覚えがあり過ぎる低い声が聞こえた途端、シエルが部屋の奥に向かって駆け出した。そして、その先にいた人物の足元にすり寄っている。

 それに対し、その人物――空条承太郎は何も反応を見せず、ただただ、ポルナレフだけを呆然と見つめていた。

 

 

 まさか。シエルがあんな行動を取った理由は、承太郎の匂いを嗅ぎ付けたから……!?

 

 

「……じょっ、承太郎、」

 

「ポルナレフ、てめえ……ッ!!今まで何処にいやがった!?」

 

「承太郎さん待っ、ストップストップ!!」

 

 

 我に返った直後、ポルナレフに掴み掛かろうとした承太郎の前に立ち塞がり、必死に止めた。相手は車椅子に乗ってるんだから乱暴な事をするな!

 

 

「志人、そこを退け」

 

「退きません」

 

「志人!」

 

「退きません!!連絡を断っていたポルナレフさんに対するあなたの怒りは理解できますが、よく見てください!

 彼は今、車椅子に乗っています!両足は義足です!それに右目も……!パッショーネのボスによって奪われたんだ!!」

 

「な、」

 

「ポルナレフさんにも、やむを得ない事情があったんだよ!だから、彼の苦労も理解してくれ!!……そして、ポルナレフさん」

 

「!」

 

「あんたも、承太郎さんの怒りを理解してくれ。……この人は本当に、あんたの事を心から心配していたんだ」

 

「…………ああ。分かった」

 

 

 手短に、承太郎とポルナレフの心情を代弁すると、承太郎はようやく落ち着いてくれたようだ。

 ポルナレフの体の事を知って動揺しているが、先程よりはましだろう。そう判断して、俺は2人の間から退いた。

 

 

 承太郎が、ポルナレフの前で膝を突く。……ゆっくりと、彼の義足に触れた。

 

 

「…………足、本当に、無いんだな……」

 

「……ああ……情けねぇ事に、今ソノハラが言った組織のボスにやられちまった」

 

「…………右目も……」

 

「ああ……」

 

「…………」

 

「…………な、なあ」

 

「あ?」

 

「た、確か、日本語だとこんな時、こう言うんだろ?」

 

「何だよ」

 

「えーと、あー、なんだっけ?……あ、そうそう!」

 

 

 

 

 

 

「――"おかえり"?って」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………ポ、ポルナレフさん??それ、多分"ただいま"の方ですよ?あなたが言いたかったのは」

 

「えッ!?」

 

 

 俺が思わずそうツッコミを入れると、ポルナレフは本気で驚いているようだった。マジか。この人、素で間違えてるぞ!?

 

 

「……ふ、」

 

「……承太郎?」

 

「ふふ、くふっ、ふふははは……ッ!!」

 

「承太郎ッ!?」

 

 

 と、承太郎が大笑いした。それを見たポルナレフがぎょっとしている。……やっぱり、この人の大笑いは本来なら珍しいのか。

 それから笑いを収めた彼は、徐に手を伸ばし、座ったままのポルナレフを抱き締めた。おや。

 

 

「この馬鹿が。――"おかえり"」

 

「馬鹿って言うな。――"ただいま"」

 

 

 承太郎が正しい発音で、ポルナレフは拙い発音で互いにそう言った。……なお、そんな場面を見ていた俺と風花さんの財団職員2名は、涙目で彼らを見守っていた。

 

 

 

 

 ……あ、リゾットさん。あなただけ置いてけぼりで本当にすみません。ここまでの会話は英語でしたし、内容分かりませんよね。

 えっ?……英語は暗殺者チームの皆で勉強した?ペッシだけはまだ怪しいけど、それ以外は聞き取りも会話も問題ない!?なんて頼もしい……!!

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「……あのー、それで?」

 

「ん?」

 

「何故承太郎さんがイタリアにいるんですか?今日の朝……いや、もう昨日の朝ですが……その際俺が連絡を取った時は、何も言ってませんでしたよね?」

 

 

 承太郎達が落ち着いたところを見計らって、そう問い掛けると……承太郎が目を逸らした。んん?

 

 

「……そうですか。やはり、園原さんにも何も言ってなかったんですね……」

 

「風花さん?……どういう事ですか?」

 

「実は――」

 

 

 風花さんによると――承太郎は、財団職員の誰にも何も知らせずに、エリンさんと徐倫にだけは俺を迎えに行くためにイタリアに飛ぶと話して、ここにやって来たそうだ。何やってんだよ、あんた。

 

 

 事の発端は、突然承太郎と連絡が取れなくなった六車さんが、それを心配して失礼を承知で彼の自宅に向かった時の事。

 そこでエリンさんから、承太郎がイタリアに向かったと聞き、六車さんは愕然とした。

 

 その数日前。承太郎は、俺が上から命令されたジョルノの監視任務の期間が、具体的に決められていない事を知った。

 六車さんがその話をした時、承太郎がやけに静かだった事が気になっていたらしい。

 

 きっとその時に、俺を迎えに行くためにイタリアに飛ぶ事を決めたのだろうと、彼はそう確信した。

 

 慌てて財団本部にそれを知らせて、さらに現地にいる風花さんにも連絡を取った。……彼女も相当驚いたそうだ。

 で、いろいろと手を回して承太郎がイタリアに到着する時間と、イタリアの何処に向かったのかを調べて、彼が1人で動き始める前になんとか風花さんが確保してくれた、と。

 

 

「そしてその後。空条博士に同行を願い、園原さんから頼まれた例の物を回収してから、このローマの拠点にやって来ました。

 そんな経緯から私もバタバタしていて、園原さんに連絡する事をすっかり忘れていたんです。ごめんなさい!」

 

「いやいや、それはお互い様ですよ。俺もポルナレフさんを保護した事の連絡を忘れていたので……こちらこそ、驚かせてしまってすみませんでした」

 

 

 風花さんと互いに謝罪して……それから、承太郎をジト目で見る。

 

 

空条博士(・・・・)?」

 

「っ、」

 

「風花さん達に多大な迷惑をお掛けしたようですが……言うべき事は言いましたか?」

 

「…………」

 

「は・か・せ」

 

 

 わざと普段はあまり呼ばない博士呼びで促すと、承太郎は風花さんの方へ向き直った。

 

 

「六車……だと、従兄の方と被るか…………それなら、風花」

 

「ひゃっ!!はいっ!!」

 

「……迷惑を、掛けた……すまなかった」

 

「な、あ、いっ、いえいえそんな!!もったいないお言葉ですぅ!!」

 

 

 和風美人が顔を真っ赤にさせて慌てている。……おや?この反応は、もしや……あぁ、いや。今は深く突っ込まないでおこう。

 

 

「風花さんだけでなく、後ほど六車さんにも謝罪するように。……よろしいですね?博士」

 

「…………っ、分かった。分かったからその呼び方はやめてくれ!志人にそう呼ばれるのは苦手だ……」

 

「えぇ、分かってます。それが分かってるから、わざとそう呼んでいたんです。ちゃんと反省してくれるなら、呼び方を元に戻しますよ」

 

「…………次からはちゃんと、財団職員にも連絡を入れる……」

 

「はい、結構です。その発言を忘れないでくださいね、承太郎さん?」

 

「…………」

 

「返事」

 

「はい」

 

 

 よーし。言ったな?もしも次に同じ事をやったら、マジで怒るぞ。

 

 

 

 

「――あ、あの承太郎が、明らかに年下に見える相手の言いなりになっている……ッ!?いや、もしかしてああ見えてソノハラは承太郎と年が近いとか?いやいやいや、そんな馬鹿な……」

 

「……そんなに、驚くような事か?」

 

「あ、ああ、そうだぞリゾット。承太郎は今でこそあのように落ち着いているが、昔はとんだ不良でな……」

 

「ほう……?」

 

 

 

 

 ……ん?ポルナレフとリゾットが、何やらこそこそと話しているようだが……それはさておき。

 

 

「ところで、承太郎さん。エリンさんと徐倫ちゃんには、俺を迎えに行くって言ったそうですけど……実際、どうするつもりだったんですか?

 財団の新人職員である俺は、上からの指示には逆らえませんし、例の監視任務を投げ出す事はできませんよ?」

 

「っ!?……おい、シド」

 

「はい?何ですか、リゾットさん?」

 

「新人職員、とは……?」

 

「んん?」

 

 

 と、リゾットが何故か妙な部分に反応したので、承太郎への追及は後回しとする。

 

 

「そのままの意味ですよ?あ、でもそういえばリゾットさん達には俺の事はほとんど話してなかったか……?」

 

 

 そうだった、そうだった。暗チの面々に嘗められないように、俺の経歴については意図的に隠してたんだった。

 ……まぁ、例の作戦が既に終わってる今なら、話してもいいかな。

 

 

「俺、実年齢19歳なんですよ」

 

「はっ?」

 

「えっ」

 

 

 あれ?……ポルナレフも反応してる?

 

 

「今年の2月に誕生日が来て……えっと、高校も今年の3月に卒業したばかりですね。

 その直後に日本からアメリカに渡って、そのままSPW財団に就職したので、財団職員になってからまだギリギリ1ヶ月経ってない、のか?」

 

 

 あー、そう考えると今世の俺、社会人としてもまだ半人前か。

 もっと頑張らないと、周りは承太郎の助手として認めてくれないかもな……よし、監視任務も真面目に頑張ろう。

 

 

「――財団は、スタンド使いとはいえ、高校を卒業したばかりの子供を……っ、護衛も付けずに、こんな治安の悪い場所に向かわせたのか……!!」

 

「信じられん!財団の上層部は何を考えているッ!?」

 

 

 すると、突然。リゾットとポルナレフが怒りを露にした。

 

 

「それに関しましては、弁解の余地もございません……大人としては本当に、園原さんには大変申し訳ない事を……!」

 

「……元はといえば、俺が原因だ。志人が財団職員になるのを止めるどころか、後押ししてしまったからな……

 俺が事前に財団の上層部の事をちゃんと調べていなかったから、結果的に志人が目の敵にされて……」

 

「そんな!博士のせいではありません!全ては上層部のあの分からず屋のクソ爺のせいですよ!!」

 

「…………ほう?そのクソ爺とやら、俺が始末してやろうか……?」

 

「いや、待て待て!気持ちはよく分かるが、さすがに暗殺は、」

 

「場合によっては、俺がお前にそれを依頼するかもな……」

 

「承太郎ッ!?」

 

「その際の証拠隠滅はお任せください!!」

 

「ちょッ!?こらこら、そこのお嬢さんも何言ってんだ!?」

 

 

 ついには風花さんと承太郎も加わり、暗殺だとか証拠隠滅だとか、不穏な言葉が出て来た。

 そして意外な事に、ポルナレフが常識人だ。原作3部の時は暴走する側だったくせに……

 

 

 さて。どうやらこうなった原因は、俺が学校を卒業したばかりの子供なのに、財団職員として危険な地域に飛ばされた事にあるようだが……それについては、ちょっと言いたい事がある。

 

 

「承太郎さん」

 

「ん?」

 

「ちょっと話が変わってしまうんですが――承太郎さんやポルナレフさん達が、例のエジプトを目指す旅に出た時。あなたや……花京院さんは、何歳でした?」

 

「…………俺は17、花京院は16だったが……それがどうした?」

 

「エジプトを目指す、旅……?」

 

「…………あっ……」

 

「ああ……」

 

 

 俺がそう問い掛けると、承太郎は不思議そうにしながらも素直に答えた。

 例の旅の事を知らないリゾットはともかく、風花さんとポルナレフは、俺が言いたい事にいち早く気づいたようだな。頭を抱えている。

 

 

「そう。あなたと花京院さんは、自分から行くと決めたとはいえ、まだ高校生だったにも関わらず、スタンド使いの刺客が何人も襲い掛かって来る、危険極まりない旅に出る事になった」

 

「…………」

 

「特にあなたは、最終的に黒幕であるDIOと一騎討ちする事になってしまった……当時まだ17歳の子供が、ですよ?」

 

 

 前世の漫画を読んだだけならあまり疑問視されない点だが、今世ではそれが現実となっている。

 そうせざるを得ない状況だったが、普通に考えておかしいだろ。17歳の子供が、一族の因縁に巻き込まれて吸血鬼なんて化け物と対峙するなんて。

 

 

「そんな前例があるのに、既に高校を卒業している19歳の俺の時だけ、こんなに周りの人が心配してくれるって……そんなの……

 ……当時のあなたの周りに、あなたを子供として扱って心配してくれるような……俺にとっての今の承太郎さん達のような、優しい大人はいましたか?」

 

「――――いなかった、ような……?」

 

 

 あ……ポルナレフと風花さんの顔から、血の気が引いている。……なんか、ごめんなさい。でも言いたい事は最後まで言わせてもらいます。

 

 

「そんな承太郎さんの目の前で、当時のあなたよりも年上の俺がこんなに心配されるのは――当時の承太郎さんに対して、かなり不公平だと思います」

 

 

 …………ポルナレフと風花さんは、顔覆って沈んでしまった。そんな2人を見て、承太郎は困惑。

 さらに、彼ら3人をリゾットが気の毒そうな目で見つめている。

 

 

「はい!って事でこの話はおしまい!!」

 

 

 言いたい事は言ったので、気を取り直して本題に入ろう。先ほど、承太郎から聞こうとしていた話の事だ。

 

 

「それで?承太郎さんは俺をどうするつもりで、ここに来たんですか?」

 

「あ、ああ……無理やり、アメリカに連れ帰ろうとしていた」

 

「えっ」

 

 

 おいおい。なんて事をやらかそうとしてたんだ、この人はまったく……

 

 

「志人が、上からの命令には逆らえないからと、そう言ってイタリアに留まろうとするのは目に見えていた。

 それなら、俺がお前を無理やり連れ帰った事にすれば、財団の上層部はそれを表立って咎める事はできないはず……そう考えたんだ」

 

「……それを実行すれば、俺は後々イタリアに強制送還される事になるのでは?」

 

「その時は、一旦ジジイの所でお前を匿ってもらって、その間に上層部を説得する」

 

「…………何故そこまで……そんなに心配しなくても、大丈夫ですよ。俺はまだまだ動けますから、」

 

「無理だろ」

 

 

 そう断言され、思わず反論しようとしたが……承太郎が思っていた以上に険しい表情をしていたので、口を閉じる。

 

 

「志人。……お前は、限界が近いはずだ」

 

「……何、言ってるんですか?俺はまだ、」

 

「俺には分かる……俺だから、分かるんだ――お前がイタリアに飛んでからずっと無理をしていた事は……もう、分かっている」

 

 

 ……駄目だ。頼む、それ以上言わないでくれ!

 

 

「お前は最初の任務の時点で、充分過ぎるぐらいに働いていた。それに加えて無期限の監視任務だと?いくらなんでも無理があるだろ!

 

 突然の環境の変化。任務の過酷さ。あらゆる意味で緊張状態が続いている。スタンド能力の使い過ぎ等々……

 精神的にも肉体的にも疲労が溜まる条件がこんなに揃っているのに、10代の、しかもそんな細い体で、まだ動いていられるのは奇跡だと、俺は思う」

 

「――――」

 

「もういい……もういいんだ、志人。休め。――本当に、よく頑張ったな」

 

 

 そう言われた瞬間、体から力が抜けた。さらに目眩に襲われて、床に倒れ込む……その前に、承太郎が受け止めてくれたようだ。

 

 

「志人ッ!?」

 

「フニャァーッ!?」

 

「シド……!!」

 

「園原さん!?え、そんな、急にどうして……!?」

 

「きっと彼は、いや彼の体は!限界が近いどころではなく既に限界を迎えていたんだッ!承太郎が本人にそれを自覚させたから倒れたのだッ!!」

 

「っ、熱い……!!酷い熱だ!風花、この家の寝室は何処にあるッ!?」

 

「あ、えと、こっ、こちらです!」

 

 

 ……頭上の騒ぎが、少しずつ、遠退いていくのを感じる。このままだと、意識を失うのも時間の問題だな……

 

 

 その時。なんとなく胸の下辺りに触れた事で……そこにあるはずの物が、無くなっている事に気づいた。

 そこで思い出したのは、ジョルノ達と別れる直前の出来事で――

 

 

(――あの手癖が悪いクソガキめ……!!)

 

 

 絶対にあの時だ。やられた。せっかくのプレゼントが、って、まずい、どうしよう。

 このままじゃ、あいつらがここに来る!そしてあいつら、特にジョルノが承太郎と接触したら……っ!?

 

 

(あ、だめだ、)

 

 

 体が熱い。目眩がする。頭が痛い。……眠い。あいつらが来る事を、承太郎達に知らせないといけないのに……

 

 

(あーあ、お馬鹿さん。……そうしないといけない状況が続いたから仕方ないとはいえ、無理し過ぎだよ)

 

(…………いー、じす……)

 

(――おやすみ、志人)

 

 

 イージスの優しい声が聞こえたのを最後に、目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――――さて、と」

 

 

 そう呟き、先ほど手に入れたばかりのそれを見て、ほくそ笑む。

 

 

「お?ジョルノ、何だそれ?」

 

「――ネクタイピン、ですか?」

 

 

 僕の両側から、ミスタとフーゴが覗き込んで来た。2人揃って首を傾げている。……それを聞いて気になったのか、ブチャラティ達も僕の手元を覗いた。

 

 

「……シンプルだが、なかなかセンスが良いじゃねえか」

 

「確かに……で?ジョルノ。それはどうしたんだ?」

 

「ついさっき、シドと握手した時に彼から拝借した物です」

 

「っ、何ッ!?」

 

「うーわ!ジョルノ、悪い奴だ!」

 

「ちょっと、ジョルノ!何やってるのよ、早く返しに行きなさい!」

 

「ええ、返しますよ……後ほど、有効活用してから、ね」

 

 

 ネクタイピンの色はシルバーで、小さく翼の模様が刻まれていた。

 彼によく似合っている。これは彼の下にあるのが相応しいだろう。だから、ちゃんと返すつもりだ。有効活用した後に。

 

 

「これに生命力を注ぎ込めば……持ち主であるシドの下へ、財団職員の拠点へ案内してくれます」

 

「!」

 

「まずは、僕達が休む事を優先させますが……その後は待ち合わせ時間よりも前に、財団職員の拠点に行ってみませんか?」

 

「……何故だ?」

 

「――SPW財団とパッショーネの間に、繋がりを作りたい」

 

 

 ボスを倒した今、僕達がパッショーネのトップとなった訳だが。ここからが大変だ。

 

 街を浄化するには、麻薬によって最大の利益を得ているという現状を、どうにかしなければならない。

 しかし、今のままでは無理だ。いきなり麻薬を禁止したら、組織そのものが崩壊してしまうだろう……

 

 

 ならば。後ろ楯を得るというのは、どうだろうか?

 

 

「……その後ろ楯として、財団に協力を求める、と?……馬鹿げてるぜ。夢物語だ」

 

「僕はギャング・スターになるという夢物語のために、つい先程パッショーネのボスを倒したばかりですよ。アバッキオ」

 

「…………」

 

 

 さすがのアバッキオも、この言葉には黙り込んだ。

 そう。僕は既に、夢物語を現実にするための大きな一歩を踏んでいる。……ここからは、更なる一歩が必要だ。

 

 

「……ジョルノの話は、確かに現実的ではないが……それでも行動を起こさなければ、この組織に先は無い」

 

「ブチャラティ……」

 

「――俺は、ジョルノの提案を支持する。……お前らは、どうだ?」

 

 

 最初に賛成してくれた彼の言葉に、ミスタ達は顔を見合わせた。

 

 

「……んー、俺も賛成!ボスを倒したのはジョルノ、つまり次のボスもジョルノだ。俺はお前に従うぜ」

 

「難しい話はよく分かんねーけど……でも、オレはジョルノを信じる!」

 

 

 ミスタとナランチャが、そう言って笑ってくれた。

 

 

「正直に言って。財団の支援を受けられる可能性は、かなり低いと思いますが……あのディアボロを倒せる可能性も低かったはずなのに、ジョルノはそれを倒した……

 そんな君には、不利な状況をひっくり返す力があるんだろう……やってみる価値は、ある。……僕も、ジョルノに従おう」

 

「……まったく、どいつもこいつもこの新入りに無駄に期待しやがって…………だが、まあ。それは俺も、か……しょうがねえから、俺も賛成してやるよ」

 

 

 フーゴは、まっすぐに僕を見て頷いてくれた。アバッキオは逆に目を逸らしているが……一瞬笑って、それから賛成してくれた。

 

 

「……トリッシュ。君は、どう思いますか?」

 

「え、あたし!?」

 

「一緒に戦った仲間として、君の意見も聞きたい」

 

 

 そう言うと、彼女は戸惑いながらも口を開く。

 

 

「あたしは――ジョルノ達が作る、新しいパッショーネを見てみたい!」

 

「!」

 

「そのために、財団からの支援が必要なら……その支援が得られるように、今の時点で出来る事をやるしかないと思うわ」

 

 

 嗚呼。……そうだな。その通りだよ、トリッシュ。

 

 

 パッショーネは、新しく生まれ変わる。ある意味、ゼロからのスタートだ。

 どんな事でも最初は上手くいかない。それは当然の事……だから、今の時点で出来る事をやるしか無いのだ。……それに、

 

 

「なるほど…………そうだな」

 

「ジョルノ?」

 

「僕1人で、新しいパッショーネを作るんじゃない……僕達で(・・・)、新しいパッショーネを作るんだ。

 

 フーゴ!以前、君はこう言いましたよね?この6人が、誰1人欠ける事なくボスに挑むというなら……勝利を掴む可能性があると思った、と」

 

「!」

 

「その時と、同じです。僕達が誰1人欠ける事なく挑むというなら、勝利を掴む可能性がある――僕達全員が揃っていれば、パッショーネを新しく再生させる事できるッ!」

 

「……っ、はははは!そうだな、ジョルノ!俺達なら、それが出来るさ!」

 

「おうッ!俺達が揃っていれば、まァどうにかなるだろ!なあ?」

 

「おおーッ!!」

 

「ふん……」

 

「まったく、しょうがない人達だな……」

 

「ふふっ」

 

 

 明確に肯定してくれたのはブチャラティとミスタ、ナランチャだけだったが……それ以外の3人も、否定はせずに穏やかに笑っていた。全員、気持ちは同じだと思う。

 

 

「……でもさー、ジョルノ」

 

「何ですか、ナランチャ」

 

「それってわざわざ財団の拠点に行く必要、あるか?先に待ち合わせ場所でシドに話して、あいつに協力してもらえばいいんじゃねえの?」

 

 

 その言葉に、はっとした顔を見せるブチャラティ達だが、僕の考えは違う。

 

 

「いえ……シドの話からして、財団の拠点には彼の上司も訪れるはず……運良くその上司と接触する事が出来れば、その方が確実だと思うんです」

 

「あー、なる、ほど?」

 

「それにね、ナランチャ」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「――いつもシドに、あらゆる意味で驚かされてばかりだった僕達ですが、今度はその僕達が財団の拠点に突撃して、彼を驚かせる……それって、面白そうだと思いませんか?」

 

 

 実を言うと、こっちの方が本音だ。

 

 

 

 

 

 

 






・実は既に限界だった助手君

 まさかの承り登場で、唖然。あんた何でイタリアにいるんだよ!?

 承太郎とポルナレフの再会を、涙目で見守った。救済できて本当に良かった……!
 その後。ボケナレフにツッコミを入れたり、博士をジト目で叱ったり、3部承太郎の周囲について現実的な観点から物申したりしていた、が――

 肉体的にも精神的にも既に限界が来ていた自覚がなく、今回承太郎にそれを突き付けられた事でようやく自覚した途端、ぶっ倒れた。
 自分が無理をしているという事実から、無意識に目を逸らしていたため、限界が来ていた事にギリギリまで気づけなかった。

 意識を失う直前、後輩達からプレゼントされたネクタイピンを盗まれた事に気づく。――あの手癖が悪いクソガキめ……!!


・まさかの登場、海洋学者

 助手が心配過ぎてイタリアに飛んで行ってしまった。財団本部は大パニック。

 そして、こっちはこっちで。向かった先で助手だけでなく行方不明だった戦友までいて、大パニック。思わず怒りをぶつけてしまった。
 いろいろと聞きたい事はあるが、ひとまずそれを呑み込んで再会を喜び合った。……後で根掘り葉掘り事情を聞き出すつもりだけどな。

 園原には頭が上がらず、彼に対してだけは博士と呼ばれる事が苦手。ちゃんと名前で呼ばれたい。

 電話やメールのやり取りで、園原が無理をしている事を察して、彼の限界が来る前に連れ帰ろうと考えていたが……
 時既に遅し。園原はとっくに限界が来ていた。志人が回復するまでは帰れないな……エリンと徐倫には、また手紙を書くしかない、か。


・再会を果たした5部ナレフ

 早過ぎる再会に驚愕。園原がいなかったら、危うく殴られるところだった。
 戦友と再会したせいか、少しだけ昔の自分に戻っていた。それもあって、素で"おかえり"の使い方を間違えるというボケをかます。承太郎は大笑い。

 再会した承太郎が、園原に対して頭が上がらないという状況に驚く。いや、それどころか園原に対する態度と他に対する態度がかなり違うんだが!?
 それから、今更ながら17歳の少年をあのDIOと一騎討ちさせてしまったのかと、大人として罪悪感に襲われた。すまねえ承太郎本当にすまねえ……!!


・手癖が悪いクソガキもとい新ボス

 実は園原との握手の際、ネクタイピンを盗んでいた。園原曰く、手癖が悪いクソガキ。

 新生パッショーネの後ろ楯となってもらうために、SPW財団に目をつけた。園原のネクタイピンに生命を与え、彼の居場所まで案内してもらうつもり。
 しかし、彼とその仲間達は知らない。園原の側には、最強のスタンド使いがいる事を……


 悪の帝王の息子と、最強のスタンド使いの邂逅まで、あと――?





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