空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

32 / 63


・承太郎とジョルノの初対面。オリジナル話

・ご都合主義、捏造過多。特に、ジョジョシリーズ特有の血の繋がりや、ジョルノの心情について捏造が激しい。キャラ崩壊あり。ジョルノ視点




悪の帝王の息子と、最強のスタンド使い

 

 

 

 

「――っ!?」

 

 

 突如として感じた、"繋がり"。……思わず、足を止めた。

 首の左後ろ。昔から何故かそこにある、星型の痣が熱を持ったような気がして、咄嗟に片手で押さえる。

 

 

「ジョルノ……?」

 

「ど、どうした?何で急に止まったんだよ?」

 

「…………トリッシュ」

 

「え、何?」

 

「君が、ディアボロの存在を感じていた時……それがどんな感覚だったか、言葉で説明できますか?」

 

「どんな、って……上手く表現できないわよ。ただ、何故か確信していた。自分の血縁者が近くにいる、と……その相手と私が、見えない何かで繋がっている、と」

 

「なるほど……」

 

「おい、何の話だ?」

 

 

 トリッシュが感じた感覚と、僕が今感じている感覚は……おそらく、同じものだ。

 

 

「トリッシュと同じく、僕も感じています。僕の血縁者が、この先にいるようです」

 

「ええッ!?」

 

「何だと!?」

 

「血縁者って……ジョルノの親か兄弟がいるって事ですか!?この先に?」

 

「分かりません……父親は亡くなっているし、母親からはこんな感覚を感じた事は一度も無い。

 そして、僕に兄弟はいない……はずです。それなのに何故か、僕とその相手が繋がっているのだと確信している……!」

 

 

 何なんだ、この感覚は。トリッシュが上手く表現できないと言った理由が、よく分かる。確かにこれでは説明しにくい。

 

 

「シドのネクタイピンを変化させて生み出した鳩は、この先へ向かおうとしている……その先に、ジョルノの血縁者もいる……どういう事だ?」

 

「……とにかく、進むしかないんじゃねェか?俺達には目的があるからな」

 

「…………そうですね、ミスタ。進みましょう。僕の血縁者について考えるのは、後回しにします」

 

 

 スタンド能力で生み出した真っ白な鳩を追って、僕達は先へと進む。……やがて見えて来た一軒家の前に、見知った人間と見知らぬ人間がいた。

 見知った人間は、ポルナレフさんだ。あの特徴的な髪型と車椅子に乗っている事から、距離が離れていても彼である事が分かる。

 

 そして、もう1人。見知らぬ人間は……遠くから見てもかなり背が高く、ガタイのいい男だという事が分かった。

 さらに近付くと、その姿がはっきりと見えた。白いコートと帽子を身に付けていて、腕を組んで堂々と立つ黒髪緑目の男。顔立ちは非常に整っており、まるで美しい彫刻のようだ。

 

 その彼こそが、僕の血縁者であると……この奇妙な感覚が教えてくれた。

 

 

「……あの白いコートの男が、僕の血縁者です」

 

「!……そうか。確かに何故だか分からんが、見た目も雰囲気も全く違うはずなのに、彼はジョルノと似ていると感じる……」

 

 

 近くにいたブチャラティにそう囁くと、そんな返事が返って来た。……血縁者ではない人間からしても、何故か似ていると感じるのか。不思議だな。

 

 

「おはようございます、ポルナレフさん。わざわざ出迎えてくれたんですか?」

 

「…………こいつが、血縁者の……君の気配を感じたというのでな」

 

 

 ……妙だな。ポルナレフさんはやけに、こちらを警戒しているように見える。昨晩出会った時は、そんな素振りは見せなかったのに。

 

 

「最初に聞いておきたい。何故、ここが分かったんだ?」

 

「今、上を飛んでいる……あの鳩が、ここまで導いてくれたんです」

 

「鳩?」

 

 

 白い鳩を呼び寄せて、目の前でネクタイピンに戻す。……ポルナレフさんは目を見開き、僕の血縁者は眉をひそめた。

 

 

「シドが身に付けていたネクタイピンを、少々拝借しまして。それをスタンド能力で鳩に変えて、持ち主の下へ帰ろうとする性質を利用し、ここまで――」

 

 

 

 

 

 

「――なるほど」

 

「…………は?」

 

「……間違いなく、志人のネクタイピンだ……確かに、返してもらったぞ」

 

 

 いつの間にか、手元から無くなっていたネクタイピン。……そして今、それは血縁者の男の手の中にある。

 

 

「…………お、おい、ジョルノ。お前ちゃんとネクタイピン持ってた、よな?」

 

「……ええ、持ってました」

 

「っ、じゃあ何でそれを今あいつが持ってんだよォ!?」

 

「なっ、なんで!?手品!?」

 

「この馬鹿ナランチャ!手品な訳が無いだろう!?これは――」

 

「――スタンド能力だッ!!」

 

「承太郎ッ!何やってんだ、お前は!?無駄に警戒させてどうする!?」

 

 

 僕達全員が一斉に身構えると、ポルナレフさんが慌てた様子で男を叱っていた。……ジョウタロウ?そうか、彼が……!

 

 

「ジョウタロウさん、でしたね……あなたは、広瀬康一君という日本人の少年と知り合いではありませんか?」

 

「……ほう?」

 

「何らかの理由で、彼に僕と接触するよう依頼したのが、あなたなのでは?」

 

「……ジョルノ。そのヒロセ・コーイチという人物は、いったい誰なんだ?」

 

「詳しく説明すると少し長くなるので、僕が推測した結論だけを簡潔に話します。

 

 康一君は、おそらくSPW財団の関係者。そして僕は何らかの理由で、パッショーネに入団する前から財団に目を付けられていた。

 さらに言えば、シドが暗殺者チームの面々をイタリアから脱出させた後。新たに財団から命じられた任務も、僕に関係する事だった。

 

 彼が僕達を助けた事も、それが理由だった……違いますか?」

 

「……やれやれ、だ。その頭の回転の早さは父親譲りか?それとも、こちらの血筋のせいか……いや。その両方だな」

 

「えっ……?」

 

 

 "頭の回転の早さは父親譲り"……そう言ったという事は、つまり彼は僕の父を知っている?何故?

 

 

「君の推測は、概ね正解だ……しかし、1つだけ訂正しよう。志人が君達を助けたのは、彼自身の意思だ。

 彼が財団から命じられた任務は、ジョルノ・ジョバァーナを監視する事。本来なら、君達を助ける必要は無かった……」

 

「そうですか……」

 

 

 それを聞いて、少しほっとしてしまった。シドは任務のために僕達を欺いていた訳ではなく、本当に自分の意思で僕達を助けてくれたのか……その恩は、いずれ何らかの形で返さなければ。

 

 

「……それで?」

 

「!」

 

「君達は、何故ここに来たのだ?……前もって言っておくが、私は志人のようなお人好しでは無い。

 君達の目的が、我々にとって宜しくない事(・・・・・・)であった場合は――無理やりにでも、お引き取り願う事になるだろう」

 

 

 ひゅっ、と。息を呑んだ。殺気を発している訳ではないのに……何だ?この威圧感は!?

 僕も、ブチャラティ達も。血縁者の男から感じる凄みに気圧されて、動けない。……この男は、強い。間違いなく、強い!

 

 僕達が束になって掛かれば、きっと良い勝負にはなるだろう……しかし何故か、勝てる気がしないのだ。

 この男は、ディアボロと同程度……否、それ以上に強いスタンド使いかもしれない。

 

 

 誰1人動けず口も開かないため、この場は静寂に包まれ、緊張感が漂っている。

 

 

「――はい!そこまで!」

 

「っ!?」

 

 

 その時。何もなかったはずの場所から、突然現れたのは……イージスホワイト。シドのスタンドだった。

 

 

「イージス!?いつからそこに!?」

 

「お前がいるという事は、志人が目を覚ましたのか!」

 

「うん。少し前から起きてたよ。それ以降は自分が動けない代わりに俺を行かせて、俺を通して外の様子を見ていた。今までは不可視のバリアで身を隠していたんだよ」

 

「志人の様子は?スタンドを出していても平気なのか?」

 

「大丈夫。今は俺の事を全く制御してないから、その分余裕があるし……まぁ、高熱でダウンしている事に変わりは無い、」

 

 

 は?高熱!?

 

 

「シドが高熱を!?」

 

「え、ちょっと、大丈夫なのそれ!?」

 

「いくらスタンドを制御してないからって、いつまでもスタンドを出したままでは体に障るんじゃないか……?」

 

「ちっ……もっと安静にしてろよ、あの馬鹿!」

 

 

 シドが高熱でダウンしている、と聞いた僕達は思わずそれぞれ反応した。

 例え違う組織の人間だったとしても、少し前に脅されていたのだとしても、シドの人柄の良さを知った今では素直に心配してしまう。

 

 すると。血縁者の男が、僕達をじっと見つめる。……何だ?

 

 

「…………まさか……」

 

「そのまさか、だと思うよ。ちなみに、彼らの前にも元暗殺者達が漏れ無くコロッと……」

 

「それはリゾットを見ていればよく分かる…………はあ……まったく、あの子は……」

 

 

 そう言って、額を押さえて項垂れる男からは既に、あの威圧感が消え去っている。

 

 

「だが、そういう事なら話は早い。……志人。彼らを中に入れてもいいと思うか?」

 

「……うん。志人曰く、無闇に暴れるようなタイプじゃないし、話の分かる人達だから大丈夫……だって」

 

「そうか。……君達の用件は、中に入ってから聞く。ついて来い」

 

「承太郎!いくらなんでも、園原が弱っている時に中に入れるのはまずいだろ!?」

 

「心配するな、ポルナレフ……彼らは、少なくとも志人には手を出さない。……そうだな?」

 

「は、はい。……彼には何度も助けられましたから、恩を仇で返すような真似はしません」

 

 

 ブチャラティ達に目をやると、彼らも僕の言葉に深く頷いた。

 そう、僕達はシドに恩を感じている。弱っているからチャンスだ、などと考えて攻撃を仕掛けるつもりは、全く無いのだ。

 

 

「まあ、そうだろうな……私は、志人の人を見る目を信用している。彼が君達の事を、話の分かる人間だと判断した……ならば、問題ないだろう」

 

「……本当に、中に入れるのか?」

 

「ああ。彼らの話を聞く」

 

「…………はあー……分かったよ……」

 

 

 深く溜め息をついたポルナレフさんは、血縁者の男と共に家の中に入って行く。……僕達は顔を見合せて頷き合い、それに続こうとした。

 

 

「おっと!中に入る前に、志人からジョルノに伝言だよ」

 

 

 しかし、イージスに止められて首を傾げる。シドから僕に伝言?何だろう?

 

 

「――お前はここから先、おそらく思いもよらぬ事実を知る事になるだろう。……それを知っても、心配するな。お前の側には、信頼できる仲間達がいるのだから」

 

「!?……それは、どういう……?」

 

 

 わざわざ日本語で伝えられたその言葉に、困惑した。どういう事だ?この先で、何が待っているというんだ?

 

 

「あと、もう1つ」

 

「?」

 

「この手癖が悪いクソガキめ。……だってさ」

 

 

 今度はイタリア語で言われたその文句を聞き、僕の周囲で噴き出す者が多数。

 

 鳩がネクタイピンに戻った時に気づいたのか、それともそれより前から気づいていたのか。

 どちらかは知らないが、今後財団と友好的な関係を築くためには、

 

 

「……大変申し訳ありませんでした」

 

「おや」

 

 

 素直に、頭を下げて謝罪しておこう。……本当なら、こんな街で油断したそっちが悪い、と言いたいところだけど。

 

 

「……うん。わざわざ日本人のやり方で謝罪してくれたのは好評価だよ!志人も"許す"って言ってる」

 

「ありがとうございます」

 

「"内心どう思っているかは、あえて聞かないでおく"……とも言ってるけどね」

 

「…………本当に、油断ならない人ですね。あなたは」

 

 

 このやり取りに、周囲では噴き出すどころか爆笑する者が出る始末。……まあ、お人好しだが決して馬鹿ではない、というのがシドの良い所だと思う。

 

 

 気を取り直して、ポルナレフさん達に続いて中に入ると……リゾットに体を支えられて辛そうにしている、目付きが非常に悪い少年がいた。

 

 だが、少年の顔立ちはよく見るとシドに似ている。スーツではなく、ラフな格好をしているから一瞬誰だか分からなかったが、この少年はシドで間違いないだろう。

 大体20代前半~半ばぐらいの年齢だと、勝手にそう考えていたが……今の姿を見る限り、そうは見えない。

 

 

「…………前髪と眼鏡の下は、そんな顔だったんですね……」

 

「目付き悪っ!怖っ!!」

 

「こら、ナランチャ。失礼だぞ」

 

「つーか、今はどう見ても10代にしか見えねえんだが……お前、まさか?」

 

「……えぇ、まぁ……今までは、ギャングに嘗められないように、あえて年齢は口にしませんでしたが……

 私は今年の3月に、高校を卒業してから、財団職員になったばかりの、若輩者……実年齢は、19歳です」

 

「「「19!?」」」

 

「しかも高校を卒業したばかりって、本当に!?」

 

「俺とも1つしか変わらないじゃねェか!?」

 

 

 19歳……それも高校を卒業してすぐに、財団職員になったのか。

 

 そんな新人にあんな任務を任せた上に、治安の悪い地域へ飛ばすとは、財団はいろいろおかしいのではないか?いや、それとも人員不足だったりするのか?

 あと。財団に就職したばかりの新人なのに、あの暗殺者チームを手懐けて例の作戦も成功させてしまうシドも、ちょっとおかしい。

 

 ……でも、シドが僕と同じく1つの組織の新人であるという点には、親近感が湧いた。

 

 

「……志人、ほら。今度は盗まれないように、ちゃんと持ってろ。……仗助達から卒業祝いに貰った、大事な物なんだろう?」

 

「あ、……ありがとう、ございます」

 

 

 血縁者の男が、シドにネクタイピンを手渡した。それを手渡された彼は、弱々しく微笑む。……どうやら、高熱で相当参っているようだ。

 

 

「それを持って、ベッドに戻れ。さっさと寝ろ」

 

「いえ……先に、やるべき事を済ませます……イージス」

 

「はいはい。まずは、これだね」

 

 

 すると。イージスがビデオカメラを持って、こちらに飛んで来た。これは、もしや?

 そう思っていたら、案の定。その画面に映し出されたのは、僕が組織に入る前にブチャラティと会話した場面だった。

 

 あれから一週間余りしか経過していないのに、もう懐かしく感じている……

 ブチャラティと出会った時は、まさかこんなにも早くにボスを倒す事になるとは、想像もしていなかったな。

 

 

「これを、こうして……はい、消去完了!ちゃんと見てた?」

 

「ええ。確認しました」

 

「じゃあ、次。ノートパソコンにあるバックアップも消去するよ」

 

 

 それから、ビデオカメラと同じようにノートパソコンを持って来て、僕達の目の前で動画を消去してくれた。

 

 

「……これで、あなた方との約束は守った、と……そういう事で、よろしいでしょうか?」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「…………あの、園原さん?」

 

 

 と、彼に声を掛ける日本人女性が1人。……誰だ?

 

 

「今あなたがイージスに消去させた動画は、もしかして……彼らに対して財団が優位に立てる、重要なカードだったのでは……?」

 

「…………申し訳ありません、風花さん……見なかった事にしてください……」

 

「園原さん!?」

 

「……シド。彼女は?」

 

「六車、風花さん……私の上司であり、現在、イタリアにいる財団職員達をまとめている……現場責任者です」

 

 

 へえ?彼女が、シドの上司か。それも現場責任者……好都合だな。いくらか、無駄な手間が省けるだろう。

 

 

「さすがに、今のは見過ごせませんよ?」

 

「本当に、申し訳ありません……ですが、ジョルノさん達に対しては……出来る限り、誠実な対応を……心掛けた方がいいと、思います」

 

「誠実な対応……」

 

「はい……彼ら、特にブチャラティさんは、義理人情を大切にする人ですから……裏切れば、最後――最悪の場合、1つの組織が、滅びる事になる……」

 

「…………それ、は……」

 

「……確かに、シドの言う通り……奴がブチャラティの気持ちを裏切ったのがきっかけとなり、結果的にこいつらは、1つの組織のボスを倒している……

 大袈裟に言えば。パッショーネという組織を、一度滅ぼしている訳か……」

 

 

 さすがに裏切られたからといって、かの有名なSPW財団を滅ぼそうとする程、僕達は無謀ではないと思うが……

 リゾットが言っている事は事実だし、ここは黙っておこう。

 

 

「……分かりました。見なかった事にします」

 

「ありがとう、ございます」

 

「……やるべき事は終わったか?なら、早くベッドに行って休め」

 

 

 シドに向かって、血縁者の男がそう促している。……そういえば、シドとこの男はどんな関係なのだろうか?

 そしてそもそも、この男はいったい何者だ?ポルナレフさんの仲間?で、康一君の知り合いならば、財団関係者である事は確実だと思うが……

 

 

「…………あの、承太郎さ、」

 

「駄目だ」

 

「まだ何も言ってないのに……」

 

「この場に同席したいと、そう言うつもりだっただろう?」

 

「…………」

 

「……いい子だから、寝てなさい。また倒れたらどうする?」

 

「子供扱い……」

 

「お前が駄々をこねるからだ」

 

 

 ……2人は日本語で会話しているが、まるで眠りたくなくて我が儘を言う子供と、子供を寝かしつけようとしている親のようなやり取りである。

 改めて思うが、彼らはいったいどういう関係なんだ??

 

 

「……仕方ない。リゾット、その子をベッドまで連れていけ」

 

「了解」

 

「うわ、ちょっ、下ろしてください……!」

 

「我が主の命でも、それには従えないな……」

 

「リゾットさん……!」

 

「志人、もう諦めて。多分また熱が上がって来てるよ?」

 

「ンニャー……」

 

 

 結局。血縁者の男のイタリア語による指示を聞き、リゾットがシドを抱えて部屋の奥へと消えて行った。

 イージスと、いつの間にか足元にいたシエルも、呆れ顔でそれについて行く。

 

 ……リゾットがシドの事を"我が主"と呼んだ件も気になるが……今はそれを気にしている場合ではない。

 

 

「……これでようやく、話が出来るな。リゾットが戻って来たら、君達の用件を聞かせてもらおうか。

 とりあえず、先に名乗っておこう。私の名は、空条承太郎。そこにいるポルナレフの戦友であり……彼と同じく、SPW財団の関係者だ」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――財団を、後ろ楯にする……?」

 

「……君達。なかなか、度胸があるな……あの財団が反社会的組織の後ろ楯になるなんて、例え財団側にそれなりにメリットがあるとしても、そう簡単には同意しないと思うぞ?」

 

「…………突拍子も無い事を、考えたものだ……」

 

 

 僕達の要求について詳しく話すと、六車さん達は唖然としていた。あのリゾットさえも、分かりやすく驚いている。

 しかし、血縁者の男……空条さんだけは、平然としているように見える。何があっても、基本的に動揺を表に出さない……そんな、手強い人なのだろう。

 

 

 財団に後ろ楯になってもらう件に関しては、相手に何を話すべきか、ここに来る前にブチャラティやフーゴと話を詰めていたので、スムーズに話せたと思う。

 

 僕達と財団、両者にとってのメリットだけでなく、リスクについても話した。

 まあ、全てを馬鹿正直に明かした訳ではないが、これだけ話せば僕達が如何に本気であるかどうかを理解してもらえただろう。

 

 現に、財団職員の六車さんは動揺しながらも、真剣な様子で熟孝しているように見える。

 

 

「……確かに。あなた方のお話は現実的で、私個人としては財団が後ろ楯になる価値はあると、そう思います…………ですが……」

 

 

 六車さんは、そこで言葉を切り……何故か、深刻そうな表情で僕を見つめた。

 

 

「ジョルノ・ジョバァーナさん……あなたの存在こそが、財団にとってはかなりのネックになるのです」

 

「……どういう事ですか?」

 

「そこからは……私が説明しよう」

 

 

 と、今まで黙って聞いていた空条さんが、話に入って来る。

 

 

「リゾット。つい先程、お前が聞きそびれた話をする……よく聞いておけ」

 

「分かった」

 

「……さて。かなり長い話になるが、本気で財団に後ろ楯になってもらいたいなら、君達はしっかり話を聞いた方がいい……

 

 これから話すのは、SPW財団が長年支えて来た一族、ジョースター家と――ジョルノ・ジョバァーナの父親であるディオ・ブランドーの、長きに渡る因縁の話だ」

 

「――――」

 

 

 ……空条さんから聞いた話は、まるでおとぎ話のようだった。否、おとぎ話にしてはかなり殺伐としていたが。

 

 荒唐無稽な話だったが、僕はそれを事実だと信じる事が出来た。それはきっと、ブチャラティ達もそうなのだろう。

 石仮面とか吸血鬼とか、いつもならその辺りでツッコミを入れそうなミスタやフーゴは黙っていたし、普段は難しい話を聞き流してしまうナランチャでさえも、必死に話を理解しようと頑張っていたから。

 

 淡々と語りながらも、所々で僕の父に対する途方もない怒りが滲み出ていた、空条さん……そんな彼の様子を見れば、今までの話が嘘ではないと、誰もが信じると思う。

 

 そして、僕は理解した。

 

 DIOと……僕の父と敵対していたジョースター家と、そのジョースター家を支えて来た財団が、父の息子である僕の存在を受け入れるはずが無いのだ、と。

 その上。僕の目の前にいる空条さんとポルナレフさんは、僕の父とその配下の手で、大切な仲間を奪われている……ますます、受け入れてもらえないだろう。

 

 僕は、自分が善人では無い事はとっくに分かっている。今の僕は、やると決めたら殺人だって躊躇いなくやれる人間だ。

 しかし……しかし、だ。僕にはまだ、覚悟が足りていなかったのかもしれない。

 

 ――僕に、復讐する権利を持つ者達と、対峙する事への、覚悟が。

 

 いずれは彼らのように、僕の父に恨みを持つ者が僕の存在に辿り着いて、復讐しに来るかもしれない。その時、僕は平静でいられるだろうか?

 相手を殺さなければ、自分が殺される。だから、やるのだと。そんな覚悟を決める事ができるのか?

 僕に復讐する権利を持つ人達を……僕の父に大切な存在を奪われた人達を、この手で、殺す事ができるだろうか――

 

 

 

 

 

 

「「――――ジョルノ!」」

 

「っ!!」

 

 

 ……微かに震えていた自分の両手が、両側から同時に掴まれた。

 

 はっと右を見れば、ミスタが。左を見ればブチャラティが、僕の手をそれぞれ掴んでいる。

 さらに背後から、頭に優しく手を置かれた。両肩と背中にも、誰かの手が添えられている。……頭にはアバッキオ、両肩にはナランチャとトリッシュ、背中にはフーゴの手があった。

 

 そこでようやく、自分の呼吸が浅くなっていた事に気づく。……深呼吸して、息を整えた。

 

 

「……皆、ありがとう……もう、大丈夫です」

 

「えー?本当かよ?」

 

「本当に、大丈夫なの?顔色悪いわよ?」

 

「急に真っ青になって、手まで震えて……驚いたぜ、こっちは。なァ?」

 

「ええ、全くですね。無理しないでください、ジョルノ」

 

「ったく……ガキが虚勢張るんじゃねーよ」

 

「こいつらの言う通りだ。……ジョルノ。本当に、無理はしないでくれ――お前は、1人じゃないんだぞ?俺達を頼れよ」

 

 

 ――嗚呼、

 

 

(そうか。僕は、もう……1人じゃ、ない。彼らが側にいる)

 

 

 僕には、僕の事を支えてくれる仲間達がいるのだ。こうして、僕が立ち止まってしまった時に、背中を押してくれる仲間達がいるのだ!

 それに、もしも僕が……相手を殺す事を、躊躇ったら?相手がその隙を突いて、大切な彼らに危害を加えたら?そんな事になったら目も当てられないじゃないか!

 

 

 たった今、覚悟を決めた。――僕は自分自身と、仲間達のために、生きる。

 そのためには、例え相手が僕に復讐する権利を持つ者達であっても……万が一の時は、この手で、殺す。そう決めた。

 

 

「……そうですね、ブチャラティ。僕は、1人じゃない……今後は、皆を頼ります」

 

 

 そう言いながら思い出すのは、この家に入る前に聞いた、シドからの伝言。

 

 "――お前はここから先、おそらく思いもよらぬ事実を知る事になるだろう。……それを知っても、心配するな。お前の側には、信頼できる仲間達がいるのだから"。

 

 ……確かに。あなたの言う通りでしたね、シド。僕の側には、信頼できる仲間達がいる。だから、何も心配はいらない。

 

 

 目の前にいる、僕に復讐する権利を持つ者達と、向き合う。

 

 

「取り乱してしまって、すみません。話を続けましょう」

 

「…………」

 

「……空条さん?」

 

 

 彼はじっと、僕を見つめる。それからブチャラティ達に目をやり、そして……ほんの一瞬、目を細める。分かりにくいが、もしかして笑ったのか?

 

 

「……ポルナレフ。お前は、ジョルノとその仲間達を見て、どう思った?」

 

「…………俺は、酷い誤解をしていたのだな、と」

 

「……そうだな……俺も同じだ」

 

 

 と、ポルナレフさんと短い会話を交わした空条さんは、次に六車さんを呼ぶ。

 

 

「風花」

 

「は、はい。何ですか?」

 

「今から私が言う言葉を、そちらの上層部に伝えて欲しい。

 

 ――ジョースター家の人間として、ジョルノ・ジョバァーナを認める。

 例えDIOの息子だとしても、彼は間違いなく、ジョースターの意志を受け継いでいるのだ、と」

 

「えっ……?」

 

 

 思わぬ発言を聞いて、呆然とする。……今、僕を認めると言ったのか?この人は。

 

 

「なっ、は、博士!?それはまさか、あの方の例の遺言に従い、彼をジョースター家の人間だと思ってサポートしろ、と。そういう事なのですか!?」

 

「……そこまでは言っていない。それをどうするかは、財団の上層部の判断に任せる。ただ、少なくとも私個人としては、ジョルノの事を認めるつもりだ」

 

「…………何故、ですか?」

 

「ん?」

 

「僕は……僕は、あなた達の仲間を殺した男の息子ですよ?復讐しないんですか?」

 

「っ、ジョルノ!!」

 

「この馬鹿ッ!何言ってんだ!?」

 

 

 僕の腕を両側から掴む、ブチャラティとミスタ。それを気にせず、空条さんの回答を待つ。

 

 

「……では、逆に聞くが。君は私に復讐しないのか?私は、君の父親を殺した男だぞ」

 

「おい、承太郎、」

 

 

 何かを言いかけたポルナレフさんに手を向けて制止し、空条さんはこちらを見据える。僕は彼から目を逸らさずに、口を開いた。

 

 

「僕には元々、あなたに復讐するつもりはありません。……無駄な事は嫌いなんです。

 今の僕があなたに挑んだところで、おそらく勝ち目は無いですし、結果的に仲間達の命を危険にさらすだけだと思います。

 

 それに……僕にとっての父とは、あのろくでもない母親よりかは多少ましな存在、というだけです。

 物心ついた時には既に亡くなっていましたから、別に何か思い出がある訳でもない……つまり、僕にはあなたに復讐する程の動機が無いんですよ」

 

「…………」

 

「ですが、あなたはどうですか?……大切な仲間を、僕の父とその配下に殺された。あなたにとってのそれは、僕に復讐する動機になるのでは?」

 

 

 刹那。彼の瞳に、ギラギラとした光……激情が宿るのが見えた。

 しかしそれはすぐに消えて、何事も無かったように静かな目になる。……凄いな、この人は。怒りの感情をここまで制御できるなんて。

 

 

「……確かに……私には、その動機がある。DIOへの怒りは、奴をこの手で倒してから10年以上経った今でも、消えない……私は一生、この怒りを忘れないだろう」

 

「…………」

 

「だがな、ジョルノ……この怒りはDIOに向けているもので、その息子である君にまで同じものを向けるつもりはない。私が恨んでいるのは、DIOだけだ。

 ――そして君は、DIO本人ではない。汐華初流乃、いや、ジョルノ・ジョバァーナという、ジョースターの意志を継いでいる1人の人間だ」

 

「……そう、ですか」

 

「ああ、そうだ。……だから私も、君に復讐するつもりは、無い」

 

 

 強い……この人は、本当に強い。スタンド使いとしての実力以前に、心が、精神が、強い。

 恨みを持つ相手への激しい怒りと復讐心を、捨てる事なく抱え込んで、制御して、今後も堂々と生きていく……それが出来る程に、強い精神力の持ち主なのだ。

 

 

「…………僕も、」

 

「?」

 

「僕も、空条さんのようになれるでしょうか?あなたのような、強い精神力を持った人間に……」

 

「……私は別に、そんなに強い心を持っている訳ではない……だが、君の目から私がそんな人間に見えたというのなら、その理由はおそらく――」

 

 

 と、空条さんがある方向に視線を移す。……その先にあったのは、先程シドが連れて行かれた部屋。

 

 

「――こんな私の事を、精神的に支えてくれている理解者が存在するから、だろうな……」

 

 

 ……それが誰なのか、なんて。聞くまでもないか。

 

 

 

 

 

 

 






・仲間達に支えられている新ボス

 いつも園原に驚かされてばかりだったので、今度は自分達が驚かすつもりだったのに、その目論見を最強のスタンド使いによって台無しにされた。解せぬ。

 血縁者の存在を察知し、困惑。そして対峙した承太郎との実力差に気づき、冷や汗を流したところでイージスが割り込んだので、命拾い。
 護チ+トリッシュと共に、高熱を出したという園原の事を素直に心配している。暗チに続いて、無自覚人たらしの被害者となった。

 承太郎からジョースター家と父の因縁の話を聞いた事で、いずれ復讐者と対峙する可能性がある事に気づき、いろいろ考え過ぎて動揺。
 しかし。彼を支えてくれる仲間達の存在を思い出し、立ち直る。それを見ていた承太郎から、ジョースターの意志を受け継いでいると判断された。

 DIOへの怒りと復讐心を捨てる事なく抱え込み、それを制御して堂々と生きている承太郎に対し、尊敬の念を抱く。……彼のような、強い心を持つ大人になりたい。


・宿敵の息子と対面した海洋学者

 本当は初対面時に過剰に警戒させるつもりは無かったのだが、園原の大事なネクタイピンを盗られていた事にカチンと来て時止めを使ってしまった、大人気ない博士。

 護チ+トリッシュが園原にたらし込まれていた事に気づき、項垂れる。まったく、あの子は……
 だが。それで逆にこいつらは大丈夫だな、と判断して中に招き入れた。先程まで警戒していたのに急に警戒を解く……それに振り回されたポルナレフは不憫。

 例の因縁の話を聞いて動揺するジョルノを支える、彼の仲間達。そこにDIOとの大きな違いを感じて、ジョースター家の人間として彼の事を認めた。
 DIOへの復讐心は疼いているが、本人ではなく息子にそれをぶつけるつもりは更々ない。そこは、ポルナレフも同様。

 ジョルノに強い精神力を持った人と称されたが、内心苦笑いしている。俺の心は強くない。そう見えるのは俺の理解者が……志人が、俺を支えてくれているからだ。






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。