空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・帰国した翌日。スタクル生存組3名が再会する話

・後半の話(シリアス)の展開については、賛否両論あると思います。予め、ご了承ください

・ご都合主義、捏造過多。特にスタクル面子それぞれの心情について捏造が激しい。キャラ崩壊あり。ポルナレフ視点




心の叫び、そして深まる絆

 

 

 

 

 ……自分の頬に何かが触れているのを感じて、少しずつ意識が浮上していく。このぷにぷにとした不思議な感触は……肉球?

 

 

「……あー……?何だよ、イギー――」

 

「ニャーン?」

 

「――ッ!!」

 

 

 そこで、完全に目が覚めた。枕元にいたのは……犬ではなく、猫。シエルだ。

 

 

「…………そう、だよなあ。あいつがこんな優しいやり方で俺を起こすわけがねぇ……」

 

「ウニャ?」

 

「あ、ああ、すまない。起こしてくれてありがとう」

 

「ニャア!」

 

 

 俺が目覚めたのを確認すると、シエルはベッドから下りて立ち去った。……家主から俺を起こしてくれと頼まれたのだろうか?本当に賢い子だな。

 チャリオッツの手を借りながら服を着替え、車椅子に乗ってリビングに向かう。そこには、テーブルに朝食を並べている家主……園原がいた。

 

 

「おはようございます。よく眠れましたか?」

 

「ああ。……昨日も言ったが、部屋を貸してくれてありがとう。しばらく世話になるよ」

 

「はい。どうぞ、好きに使ってください。俺としては、このまま住んでもらっても構いませんから」

 

 

 彼は、にこやかにそう言ってくれた。イタリアで初めて彼の素顔を見た時は、目付きが悪過ぎる事に内心驚いていたが、こうして笑っているのを見るとそれは全く気にならない。

 しかし……困ったな。俺は自分が再び歩けるようになるまでは世話になろうと思っていたが、昨日から居心地が良過ぎて、早くも離れ難くなってきている……本当に困った。

 

 

 俺は今、アメリカにある園原の自宅の一室を借りて生活している。

 何故こうなったのかというと――財団の伝手を頼って義肢装具士を紹介してもらい、再び自分の足で歩けるようになるまで、アメリカで暮らす事になったからだ。

 

 そもそも俺は、アメリカでジョースターさんに一度顔を見せた後、故郷のフランスに帰ろうと思っていたのだが……承太郎に反対された。

 曰く、"足が不自由なお前を1人にしてはおけない"との事。……そう言われてしまうと、俺は黙るしかない。

 

 しかしだからと言って、アメリカでずっと承太郎達の世話になるというのは、俺のプライドが許さねぇ。

 だから一刻も早く義足で自由に歩けるようになり、承太郎達を安心させて、それから故郷に帰ろうと考えた。

 

 まだイタリアにいた時に、その考えを承太郎と園原、風花さんに話してみたところ。

 承太郎は複雑そうな顔をしながらも、俺の気持ちを分かってくれたのか賛成してくれたし、風花さんも財団に報告して腕の良い義肢装具士を紹介してもらえるよう、手配してくれた。

 

 

「――それならリハビリが終わるまでの間、俺の家で一緒に暮らしませんか?

 念のために客室として空けておいた部屋が1つあるので、そこを使ってもらえたらと考えています。なんなら、そのまま住み着いてくれても大丈夫ですよ」

 

 

 すると、園原がそんな事を言った。そして次の瞬間には、承太郎が諸手を挙げてそれに賛成。

 風花さんも、財団側としても俺に本部の近くで生活してもらえたらいろいろ助かるからと、承太郎と同じく賛成。……これが、園原との共同生活が決まったきっかけである。

 

 

 それはさておき……なんとも美味そうな朝食が並んでいるな。クロワッサン、シリアル、ヨーグルトに……これは、

 

 

「タルティーヌ?」

 

「おっ、良かった。こんな感じで合ってますか?」

 

「あ、ああ……」

 

 

 タルティーヌは、フランスの食卓でよく見られる。スライスしたバゲットの上にジャムやバター、または具材を乗せて食べるのだ。

 バゲットには野菜やフルーツが綺麗に盛り付けされていた。さらに、余ったバゲットが入った皿の隣にカフェオレボウルがある。

 

 カフェオレボウル……取っ手のついていない器にカフェオレを入れて、そこにパンを浸けて食べる。フランスの朝食ではこれが一般的だ。

 

 

「わざわざ私に合わせてくれたのか……」

 

「フランスの方は、朝は塩っ気の多い食べ物を好まず、甘い物を食べていると聞いた事があったので……昨夜のうちにパソコンで調べて、今日さっそく用意してみました」

 

「そう、か……ありがたい事だな。故郷の食卓を思い出す。だが、次からは好きなように作ってくれて構わないぞ。

 私は他国を旅していた経験があるし、その時にいろんな料理を食べてその味に慣れたから、特にこだわりは無い」

 

「本当ですか?それは助かります。次から何を作ろうか悩んでいたので」

 

「気を遣わせてしまったな。すまない」

 

「いえいえ。お気になさらず」

 

 

 園原はよく気が回る男のようだ。承太郎が彼を助手として重宝するのも、分かる気がする。

 朝食は、どれも美味かった。パンは出来立てで、朝早くにわざわざ近所のパン屋まで買いに行ってくれたというし、カフェオレの味もちょうど良い。

 

 朝食も食べ終わり、準備を済ませてから寛いでいた時。ソファーで園原に撫でられていたシエルが、急に体を起こして鳴き声を上げる。それから、軽やかな足取りで玄関に向かった。

 

 

「あ、承太郎さんが来たみたいですね」

 

「……さすが猫だな。呼び鈴が鳴る前に気づくとは」

 

 

 そういえばイタリアにいた時も、承太郎の存在に真っ先に気づいたのは彼だったな。

 間もなく呼び鈴が鳴り、園原がドアを開けると承太郎が中に入って来た。その足元にはシエルが擦り寄っている。

 

 園原曰く。シエルは基本的に誰に対しても人懐っこいが、飼い主である自分を除いた場合、特に懐いている相手が承太郎なのだという。意外だな。

 

 

「おはようございます、承太郎さん」

 

「おはよう。……準備は出来てるか?」

 

「はい。俺もポルナレフさんも、いつでも行けますよ」

 

「よし。なら、さっそく車に乗れ。――ジジイの家に向かう」

 

 

 そう……今日は、久々にジョースターさんに会いに行く。そこで俺が今までどうしていたのかを、彼と承太郎に明かすのだ。

 

 イタリアでは結局、俺がディアボロに敗北するまでの話と、その後の生活に関しては落ち着いて話せなかったからな。

 それに、承太郎達からもいろいろ話が聞きたい。特に園原の故郷、杜王町という町で起こったいくつかの事件について。

 

 園原によると、それらの事件は承太郎がある目的のために、杜王町にやって来た時から始まったらしいが……

 その目的について、園原はやけに言葉を濁していたし、後に承太郎に聞いてみたら、"お前がジジイと再会した時に話す"と、珍しく遠い目でそう言われたし……気になる事だらけだ。

 

 

 その後。承太郎が運転する車に乗って、ジョースターさんとその妻、スージーさんが暮らしている家……というか、邸宅にやって来た。

 

 元々は別の場所にあるタワーマンションの最上階に住んでいたそうだが……

 承太郎がアメリカに移住した後。彼が住んでいる地域にあったこの邸宅を購入し、それから引っ越したのだという。さすが不動産王、金持ちだ。

 

 

 そんな邸宅の前に、老夫婦が佇んでいる。――嗚呼。随分と年取っちまったんだなぁ。

 

 

「…………ポルナレフ……」

 

「ジョースターさん……あー、その、……お久しぶり、です」

 

「ふっ……なんじゃ、その畏まった態度は。いつものお調子者ぶりはどうした?」

 

「いや、えっと……連絡を断っていた事を怒られるんじゃねぇかと、思って……」

 

「ほう?さては、承太郎が怒ったか?」

 

「ああ、まぁ、な」

 

「そうか……それなら、わしから言う事はただ1つじゃ――よくぞ、生きて帰って来てくれたな」

 

「――――」

 

「こうしてまた会う事ができて、わしは、本当に嬉しい」

 

「っ、ジョースターさん……ッ!!」

 

 

 勝手に、涙が溢れた。視界が滲んでよく見えないけど、多分ジョースターさんも少し泣いている。

 俺は車椅子、彼は杖で体を支えているため抱き締め合う事はできないが、その代わりに固い握手を交わした。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 俺達の涙が収まった後、園原がジョースターさんに挨拶し、それからスージーさんに自己紹介していた。

 彼はジョースターさんとは杜王町にいた時以来の再会で、スージーさんとは初対面なのだという。

 

 

「志人君の事を聞いた時から、ずっと会ってみたかったのよ!それにしてもなんて可愛い子なのかしら、将来が楽しみだわ!」

 

「か、可愛い……?」

 

 

 スージーさんは喜んでいるが、園原は困惑している。そりゃあ、若い男が可愛いとか言われたら戸惑うよな。

 まぁでも、彼女が言いたい事はよく分かる。園原の素顔はあれだが、前髪と眼鏡で目付きの悪さを隠した今の見た目なら、年上の女にモテるだろう。

 

 

「……ところで、静ちゃんはどうしてますか?」

 

「おお、そうじゃったな。あの子は今寝ておるから、後で会わせてあげよう」

 

「シズ……?」

 

「……杜王町で、ジジイが拾った子供の事だ」

 

「は?子供を拾った!?」

 

「両親を探したんだが、見つからなくてな……結局、ジョースター家の養子として引き取る事になった」

 

「親が見つからない!?しかも養子!?」

 

 

 俺がいない間に、承太郎達の周りでいろいろハプニングが起こり過ぎじゃねぇか?……杜王町の事件の話を聞くのがなんだか怖くなってきたぞ。

 

 

「さて……ポルナレフからはいろいろと話を聞きたいし、そろそろ中に入るとしようかの。……スージー、悪いがお前は……」

 

「はいはい、分かってるわ。私は静と一緒にいるから、後はご自由に」

 

「うむ、すまぬ」

 

 

 そうだな、スージーさんはその場にいない方が良いだろう。かなり重い話になるからな。

 

 

「あ、それなら俺も、」

 

「いや、志人は待て。……お前は念のため、俺のストッパーとしてその場にいて欲しい。

 ポルナレフから話を聞いた俺が、その時どんな行動を取るか分からないからな。場合によっては、こいつを殴ろうとするかもしれない。そうなったら止めてくれ」

 

「えっ」

 

「園原、頼む!私のためにも同席してくれ!」

 

「わ、分かりました……」

 

 

 承太郎の拳は受けたくない!俺も慌てて園原を引き留めた。イタリアでの様子を見るに、承太郎は園原が止めれば言う事を聞いてくれるはずだ。

 

 

 その後。ジョースターさんの案内で広い部屋に通され、そこで園原がイージスを呼び出し、防音バリアを張ってくれた。さっそく、俺から話を始める。

 

 例の矢の行方を追っているうちに、パッショーネの存在に辿り着いて調査を進めていたが、組織によって社会的に孤立させられ、外部と連絡を取れなくなった事。

 組織のボス、ディアボロの正体を突き止めて対峙したが敗北し、死にかけた事。それ以来、組織にバレないよう数年間農村に隠れて暮らしていた事……

 

 ……とりあえず、俺の話はここまでで充分だろう。これ以降はジョルノ達や園原と出会ってからの話だし、そっちはまた少し長くなるから後回しだ。

 それから恐る恐る、承太郎の様子を窺うと……わなわなと震えていた。アッ、これはまずい!

 

 

「この馬鹿野郎ッ!!パッショーネの存在に気づいた時点で俺に連絡していれば!そんな事にはならなかったはずだ!!」

 

「承太郎、」

 

「俺はそんなに頼りないか!?」

 

「違う!そうじゃねぇッ!!俺はただ、」

 

「何が違うんだ!?肝心な時に限ってガキ扱いしやがって――」

 

「――承太郎さんっ!!」

 

「っ、」

 

 

 怒りのままにソファーから立ち上がった承太郎の腕を園原が掴み、彼の名を呼ぶ。

 たったそれだけで、承太郎は我に返ったようだ。急に大人しくなって再びソファーに座った。……凄いな、園原。まさしくストッパーじゃないか。

 

 

「……ポルナレフさん」

 

「お、おう?」

 

「さっき、何か言いかけてましたよね?」

 

「……ああ。……承太郎、聞いてくれ。俺にとって、お前は本当に頼りになる奴だし、ガキ扱いしたつもりも無い。

 ……まぁガキ扱いについては、本来ならあのエジプトを目指す旅の中でそうしてやるべきだったと、大人としては反省しているんだが……

 

 あー、ともかく!俺がお前に連絡しなかった理由は……俺の、プライドの問題だ」

 

「……プライド?」

 

「そうだ。――"最強のスタンド使い"と呼ばれるお前に相応しい戦友になりたかった」

 

「!」

 

 

 承太郎が周囲からそう呼ばれるようになった事を知った時は、戦友として誇らしかった。……しかし段々と、それがプレッシャーになって来たのだ。

 

 DIOと戦った時。俺は早々に倒されて、後は承太郎に託すしかなかった……そんな俺は、承太郎の戦友に相応しいだろうか?

 スタンド使いとしての経歴は俺の方が長いのに、スタンド使いになったばかりの承太郎にいろいろと負けている事が、情けない。悔しい。

 

 ……そんな事を考えて、意地になっていた。承太郎に頼る事なく調査を進めて、パッショーネから例の矢を回収する事が出来れば……

 承太郎も、周りの奴らも。俺の事を"最強のスタンド使いの戦友"として認めてくれるだろうと、そう思っていたんだ。

 

 

「……こうして園原やジョルノ達のおかげで命拾いした今では、当時の俺はなんて馬鹿な事を考えていたのだと、反省している。

 意地を張らずに、すぐにお前を頼るべきだった……ディアボロとパッショーネは、俺なんかが1人で立ち向かえるような相手じゃなかったんだ」

 

「…………ポルナレフ……?」

 

「承太郎……お前、本当にすげぇよなぁ。イタリアで再会した時、お前が前よりも強くなってる事を肌で感じ取った。

 俺がしくじって数年も燻ってる間に、結婚して子供までいるのにお前はさらに強くなっていた……敵わねぇよ」

 

「――――」

 

「俺なんかじゃ、お前と肩を並べるような人間になれない……っ、」

 

 

 そこまで口にして、はっと我に返る。しまった。こんなに自分の心の内を明かすつもりは無かったのに!

 これでは承太郎に失望されてしまうと、慌てて弁解しようと顔を上げて……自分の目を疑った。

 

 

 承太郎は、酷く傷付いた顔をしていたのだ。こいつのこんな顔は、今まで一度も見た事が無い。

 さらにその目が徐々に虚ろになっていくのを見て、俺は何か取り返しのつかない事をしてしまったのだと、自覚した。

 

 

「じょッ、承太郎、」

 

「――ポルナレフさん」

 

「っ、」

 

「1回黙って、俺の話を聞いてください」

 

 

 一瞬、誰の声かと思った。……園原が、ドスの利いた声でそう言ったのだ。

 そちらを見ると、彼は恐ろしい程に表情の無い顔で、俺を見据えている。彼の手は、承太郎の手を強く握っていた。

 

 

「あなたの気持ちは、理解できます。俺も承太郎さんの隣に堂々と立てるような助手になりたいと思って、そのためにイタリアでの任務を引き受けたので」

 

「…………」

 

「諦めるな、とか。そんな無責任な言葉を言うつもりはありません。

 ポルナレフさんがイタリアで過ごした数年間は、あなたがそう思い詰めてしまう程の辛い生活だったのでしょう……えぇ、理解はできます――

 

 

 ――っ、でもなぁ!!この話は!そこが問題じゃねぇんだよぉっ!!」

 

「っ!?」

 

 

 落ち着いた様子から急に豹変し、園原は叫んだ。……そこが問題じゃない?どういう事だ?

 

 

「この話の問題は、ただ1つ!あんたが承太郎さんの事を色眼鏡で見ている事だ!!

 空条承太郎という1人の人間ではなく!"最強のスタンド使い"という下らねえ称号しか見てない事だっ!!」

 

「く、下らない、称号……?」

 

「志人君、それは違うじゃろう。最強というのは承太郎に相応しい称号で、」

 

「ジョセフ、っ、さん!!あんたまでそんな事を言うのか!?」

 

「っ、志人。バリアが揺らいでるよ」

 

 

 今まで黙っていたジョースターさんも、園原を宥めようとしたのか話に入って来たが、そんな彼を見て園原が愕然としている。

 それからイージスの言う通り、防音バリアが不安定になっていた。しかし、彼の忠告も園原の耳には届かなかったらしく、そのままバリアが消えていく。

 

 

「…………あんた達、この人の家族だろ?戦友だろ?仲間だろ……?」

 

「……志人君?」

 

「園原?」

 

「――他でもないあんた達が……承太郎さんを孤独にしてどうすんだよ……っ!!」

 

 

 園原は声を絞り出すようにそう言って、涙を流す。そのまま両手で顔を覆い、俯いた。……横から伸びて来た腕が、彼の肩を抱いて引き寄せる。

 ……承太郎は園原の体を引き寄せると、彼の背中を優しく撫でた。いつの間にか、虚ろだった緑の瞳に光が戻っている。

 

 

「……今までの志人の言葉は、俺の心の叫びだ」

 

「は、」

 

「志人の涙は、俺の涙だ……何年も前から涙が出なくなっちまった俺の代わりに、この子が泣いてくれている……」

 

 

 そんなセリフを聞いて俺達が言葉を失っていると、承太郎は苦笑いを浮かべ、さらにこう続けた。

 

 

「最強だとか、無敵だとか……そんな事は周りが勝手に言い始めたんだ。俺が望んでそう呼ばれている訳じゃねえ……俺は、そう呼ばれる事を全く望んでいない」

 

「承、太郎、」

 

「俺と、スタープラチナは……最強でも、無敵でも無い……本当に最強で無敵だったら、俺は……

 アヴドゥルもイギーも……花京院の事も、守れたはずだ。あいつらは死なずに済んだはずだ……」

 

「なッ!?」

 

「ま、待て承太郎!何故そうなるんじゃ!?花京院達の事はお前のせいではない!!」

 

「お前らがそう思っても、俺はそうは思わねえ!俺が考える最強や無敵ってのは、そういう事なんだよッ!!」

 

「……承太郎……お前……」

 

 

 なんてこった。俺は、いや、俺達は!知らない間に承太郎をここまで追い込んでしまっていたのか……!!

 

 

「……それにな、ポルナレフ……てめえは俺が前よりも強くなっていると、そう言ったな?」

 

「あ、ああ」

 

「それは勘違いだ……俺は前よりも強くなったのではなく、ようやく戦闘の勘を取り戻しただけに過ぎねえ」

 

「何……?」

 

「俺は数年前まで、10年以上、時止めを使っていなかった」

 

「っ!!」

 

「それを使う程に強いスタンド使いと遭遇しなかったから、使っていなかった。

 そのせいで、久々に使った時は2秒しか止められなくてな。当時は自分で自分に失望したぜ、まったく……」

 

 

 まさか……お前ほどの男が、そんな腑抜けた状態になってたのか?嘘だろ?……そう言いたいところだったが、承太郎は嘘をついているようには見えない。

 

 

「だが、ある時。俺は目が覚めた――"継続は、力。逆に言えば、継続できない力に意味など無い"……そんな言葉を聞いたおかげでな」

 

 

 すると次の瞬間、今まで承太郎の腕の中で俯いていた園原が、ばっと顔を上げて承太郎を見上げる。承太郎は、その視線を受け止めて微笑んだ。

 

 

「そう……俺が杜王町で志人と出会った時、志人が仗助に言った言葉だ。あれ以来、俺は志人が言った通りに行動するようになった。

 "毎日必ず、一度だけでも、短い時間だけでも構わないから、この力を使う練習をする"……あれから今日に至るまで、俺がその日課を怠った事は一度もねえよ。

 

 おかげ様で、戦闘の勘を完全に取り戻す事ができた……志人には、心から感謝している」

 

 

 それから承太郎は、園原に向けていた優しい目から一転して俺を睨み、口を開く。

 

 

「ポルナレフ……てめえも、俺と同じ事をやってみろ」

 

「え?」

 

「毎日必ず、何らかの形でスタンド能力を使え。そうすればきっと、俺のようにいずれは効果が出るはずだ。

 

 そうやって、自信を取り戻せ。……確か、俺と肩を並べるような人間になれない、だったな。

 ふざけんな!んな事言ってる暇があったら自分自身もスタンドもしっかり鍛えろよ!」

 

「っ、……そう、だな……すまない……」

 

「……さっさとまた、俺と肩を並べられるような存在になってくれ……勝手に俺の事を、手の届かない存在にしないでくれ……!」

 

「……承太郎?」

 

「俺を――っ、1人に、するな……ッ!!」

 

 

 承太郎のその言葉を聞いた途端。ジョースターさんがソファーから立ち上がり、必死に承太郎の下へ向かい……

 膝が悪くなっているだろうに、それに構わず承太郎の足元に膝を突いて、彼の手を握って、泣き出した。

 

 

「すまぬ……本当に、すまん!承太郎、わしは祖父失格じゃあッ!!大事な孫に、そんな事を言わせて……!!」

 

 

 そんな姿を見て、俺も居ても立ってもいられなくなった。車椅子を動かして承太郎の側に近づいて、その肩を掴んだ。

 

 

「俺も謝る……ごめんな、承太郎……!!もうあんな馬鹿な事は言わねぇ!俺は強くなる!お前を1人にしないために、絶対に強くなってやるッ!!」

 

 

 ……俺も、ジョースターさんも。思い切り泣いた。でも承太郎は泣きそうな顔をするだけで、涙を流さなかった。

 いや、泣きたくても泣けないのだ。……それを間近で確認して、ますます悲しくなった。

 

 こいつをここまで追い込んでしまったのは、俺達だ。"最強のスタンド使い"という肩書きだけを見て、承太郎自身がどう思っているかなんて考えようともしなかった。

 

 

 そんな承太郎の気持ちを汲んだのは、戦友の俺達ではなく……まだ承太郎と出会って間もない少年だった。

 

 少年……園原は、何故承太郎の気持ちが分かったのだろうか?本人から教えられたのか?

 だとすれば彼は、承太郎からこんな気持ちを打ち明けられる程に強く信頼されている事になる。

 

 いったい何をすれば、短期間でそこまで信頼されるようになるのだろうか?

 そう疑問に思い、ふと園原の方に目をやると――彼は、心底嬉しそうな顔しながら、泣いていた。

 

 …………承太郎は、彼の涙は自分の涙だと、そう言ってたな……という事は?

 

 

(もしも、承太郎が泣けるようになっていたら……彼のような嬉し泣きになっていたのか?それは見たかったなぁ)

 

 

 そこだけがちょっと残念だが、それ以外は概ね結果オーライだったと思う。

 久々に3人揃ったし、承太郎の本心を知る事ができたし、なんだか俺達3人の絆が深まった気がするし――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――と。"良い話だなぁ"で、終われば良かったんだが、

 

 

「はああァッ!?ジョースターさんの隠し子だとォッ!?」

 

 

 後に杜王町での事件の話を聞いた俺は、思わずそう叫んだ。ジョースターさんあんたこの野郎ッ!?さっきの俺の感動を返せッ!!

 

 

 

 

 

 

 






・戦友の本心を知った5部ナレフ

 承太郎から心情を暴露された事でSAN値をゴリゴリ削られたが、彼のためにまた強くなろうと決意した事で回復。

 この度、園原の自宅に居候する事になった。今後は腕の良い義肢装具士を紹介してもらい、それから義足の歩行訓練に入る予定。

 ジョセフと再会を泣いて喜び合ったのも束の間、ここ数年の自分の行動について詳しく話し、危うく承太郎から殴られそうになった。
 園原がそれを止めたおかげで命拾いしたが、その後に自分の考えや心情を正直に話した事で、承太郎の地雷を踏んでしまう。

 そのせいで今度は園原に怒鳴られてしまい、さらには承太郎の暴露も聞いてSAN値ピンチ。
 しかし承太郎から激励され、彼のために強くなろうと決意。ジョセフも含めて、3人の絆が深まった――

 ――と思っていたら、ジョセフに隠し子がいるという衝撃の事実を知り、せっかくの"良い話だなぁ"が台無しになった。俺の感動を返せッ!!


・あらゆる意味でストッパーな助手君

 一時はどうなるかと思ったけど丸く収まって良かった!やっぱりスタクル最高!!

 ポルナレフを自宅に招く事を提案し、採用された。そのまま住んでくれたら近くに住んでる承太郎が喜ぶだろうし、俺も嬉しいんだけどなぁ。

 承太郎からストッパー役になるよう求められ、見事に役目を果たした。
 その上、承太郎をSAN値直葬寸前から正気に戻すというファインプレー。しかしその代わりに、自分のSAN値が犠牲になって涙が出た。

 スタクルが和解する様子を見守り、承太郎が泣きそうになりながらも嬉しそうにしているのを見て嬉し泣きした。やっぱりスタクル最高!!
(;∀; )


・思い切り地雷を踏まれた海洋学者

 園原がいなかったらSAN値直葬してたかもしれない人。まさか戦友にピンポイントで地雷を踏まれる事になるとは……

 ポルナレフが自分を頼ってくれなかった、子供扱いしたと怒っていたが、ストッパー園原のおかげで冷静になった。
 しかしポルナレフに地雷を踏まれ、彼が自分から離れてしまうと思い込み、SAN値ピンチ。目から光が消えていく……
 ……寸前、園原が承太郎の気持ちを代弁して代わりに泣いてくれた事で、ギリギリで正気に戻った。

 ジョセフとポルナレフが自分に寄り添ってくれた事が嬉しい。もしも彼の涙が枯れていなかったら、園原のように嬉し泣きをしていたはず。






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