空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・徐倫達が脱獄した後。最初はリキエル戦の前、途中からウンガロ戦の最後の辺り

・今回は特に時系列やウンガロ戦、原作キャラ達の心情についてご都合主義、捏造過多が激しいです

・また、原作キャラ×原作キャラ表現やキャラ崩壊あり。最初は徐倫視点、途中からウェザー視点




続々と増えていく参戦者

 

 

 

 

 脱獄後。ロメオの家に向かい、移動手段として使う車の……ではなく、ヘリコプターの鍵をもらった。

 また裏切るんじゃないかと思っていたロメオは、意外な事に警察に対して偽の情報を流し、あたしを庇ってくれた。

 

 少しだけ見直した。でも念のため、ロメオの舌に貼り付けたキッスのシールを剥がしておく。

 彼に恨みは無い……とは言ったけど、仕返しをしたいという気持ちはちょっとだけあったから。悪いわね、ロメオ。

 

 ……さて。目的地に向かうなら徒歩や車で行くよりもヘリの方が断然速い。さっそく乗り込む……その前に、

 

 

「仗助さん!そこにいるんでしょ?」

 

「えっ?」

 

「徐倫?」

 

「……やっぱり気づかれてたか……血が繋がってると隠れても意味ないよなァ」

 

 

 仗助さんがヘリの陰から出て来る。……実はロメオの家に来た時から、彼の存在を感じていたのだ。

 

 

「ジョースケ……あいつが、徐倫の親戚か」

 

「確かに……徐倫お姉ちゃんとちょっと似てる気がする」

 

 

 エルメェスとエンポリオが、仗助さんの事をまじまじと見ている。そうか、この2人は初対面だったわね。後で改めて紹介してあげよう。

 

 

「仗助さんは、どうしてここに?」

 

「……徐倫が脱獄したって聞いて、お前がまず向かう場所は何処だろうなと考えた時に、ここに来るんじゃねェかって推測した。

 

 お前の男友達のロメオなら、お前の事情をある程度分かってるし、財団の調査によると金持ちのようだし、車どころかヘリまで持ってるらしい……

 移動のために最低限必要な物を一気に手に入れるなら、ここだろうなと思ったんだよ」

 

「……さすが、現役の警察官。推理はお手の物って事?」

 

 

 この人、どうして交番のお巡りさんのままなのかしら?刑事としてもやっていけるんじゃないの?

 

 

「は?警察官ッ!?」

 

「僕達、逮捕されちゃうッ!?」

 

 

 あ、エルメェス達が驚いてる。そういえば、仗助さんが警察官だってまだ言ってなかったかも。

 

 

「あー大丈夫だって!俺、アメリカじゃなくて日本の警官だから。お巡りさんの仗助くんはお休み中だぜ。

 今は妹のように可愛がってる親戚の手助けをする、ただのお兄さんって事にしといてくれ。な?」

 

「…………おい。警察官が、それで良いのか……?」

 

 

 

 

 

 

「――まったくだな。この不真面目警官め」

 

「交番のお巡りは不真面目でもなれるんだなぁ」

 

「っ、誰だ!?」

 

 

 その時、別の誰かの声が聞こえた。……仗助さんが出て来たヘリの陰から、さらに2人の人間が現れる。あの人達は……!

 

 

「――億泰さん!形兆さんも……!」

 

「よぉ、徐倫。久しぶりだな!」

 

「……ここからは、俺達3人が同行する。その鍵をこっちに渡せ。ヘリの操縦は俺がやろう」

 

「え、形兆さんってヘリの免許持ってるの!?」

 

「おう!兄貴はヘリだけじゃなくて、乗り物の免許ならたくさん持ってるんだぜ。船とかクレーンとかショベルカーとかなぁ!」

 

「へえー!凄い!」

 

「お、お姉ちゃん……!その人達、誰?」

 

「そうだぜ、徐倫!今度は誰なんだよ?」

 

「あ、ごめんなさい。今紹介するわ」

 

 

 虹村億泰さんと、その兄である形兆さん。彼らも杜王町に住んでいる人達で……あ、形兆さんは日本の財団職員で、今は東京に住んでるんだっけ?

 彼ら兄弟と、ついでに仗助さんの事も改めて紹介して、彼らにはエルメェス達の事を紹介した。……って、あれ?

 

 

「ちょっと待って。……今更なんだけど、形兆さんだけじゃなくて仗助さんと億泰さんも英語話せるようになったの?」

 

 

 刑務所で仗助さんと会った時はそれどころじゃなかったから、あまり気にしてなかったけど……よく考えてみたらおかしい。

 

 まだ日本語が分からなかった幼い頃、形兆さんが通訳してくれた時もあったから、彼が英語を話せる事は知っている。

 でも。仗助さんと億泰さんは、あたしの前で英語を使った事は無かったはずだ。

 

 

「ああー、その事か……実はなァ、俺は何年も前からずっと英語を勉強してて、最近ようやく完璧に話せるようになったんだが、億泰は違う。こいつは英語が話せない」

 

「えっ?でも……」

 

「そう。それでも完璧に話せている……露伴のスタンド能力のおかげでな」

 

「露伴先生のって……そうか、あの人もスタンド使いだっけ?」

 

「ああ。あいつの能力はかなり万能で、英語が話せない奴でも"英語を話せるようになる"って書き込めば、本当に話せるようになるんだ。

 億泰だけでなく、他の奴らも英語ペラペラにしてもらったんだぜ」

 

 

 へえ……あの人、そんな能力を持ってるんだ。便利ね。

 

 

「そういや、形兆。露伴はいつ合流するんだ?アメリカには来てるんだろ?」

 

「さて……数日前に電話で話した時は、いつになるかは分からんが近いうちに合流する、と言っていたが」

 

「はあ?……ったく、あの野郎。この大変な時にまだ合流できねェのかよ」

 

「でもよぉ、仗助。露伴はなるべく早くに合流できるように、今は急いでやるべき事を終わらせてるんだってさぁ。

 いつものあいつだったら、そこまでやらねーだろ?その気持ちは分かってやろうぜ」

 

「…………確かに、な。しょうがねェ、ちょっとは勘弁してやるか」

 

 

 露伴先生もアメリカに?それなら、他の人達も来てるのかしら?

 仗助さん達に聞いてみると、あたし達の後に脱獄したアナスイとウェザーの下に康一さんと由花子さんが、それと今はひいお爺ちゃんの家にいるお母さん達の下には重ちーさんと裕也さんが……って、

 

 

「そうだ、お母さん!!あの人は、」

 

「大丈夫だ、徐倫。エリンさんの側には、最初からポルナレフさんとシエルが護衛についてたからな。

 向こうも何度か襲撃を受けたようだが、ポルナレフさん達だけでも充分対処できたらしい。重ちーと裕也は、念のために応援に行っただけだ」

 

 

 あ……そうだわ。お父さんの記憶を見た時に、あの人はお母さん達の事を実はスタンド使いだったポルナレフさんに任せていた。

 それに、志人お兄ちゃんの飼い猫であるシエルもスタンド使いだったみたいだし……

 

 

「ちなみに。向こうの襲撃はポルナレフさんによると、プッチ神父とは関係無さそう、って話だ。

 

 承太郎さん……最強のスタンド使いに個人的に恨みがある奴らが、あの人に異変があった事を目敏く察知したらしくてな。

 あの人がいない今のうちに、その家族を狙おうって魂胆だったらしいが……そこはポルナレフさん達が防いでくれた」

 

「そう、だったんだ……じゃあ、そのお父さんは?それにF・Fも!」

 

「承太郎さんは、記憶を取り戻してからは急ピッチでリハビリを進めてる。もうすぐ復活出来そうだってさ。

 F・Fも、ようやく新しい肉体を手に入れる目処が立ってなァ。上手くいけば明日には合流出来るらしい。

 もしかしたら承太郎さんも、それに合わせて一緒に来るかもしれないぞ」

 

「本当に!?良かった……!」

 

 

 そこまで聞いて、ようやく安心出来た。もうすぐ、お父さんとF・Fに会える!

 

 

 ……その時。仗助さんがはっと顔を上げて、何故かキョロキョロと辺りを見回す。どうかした?

 

 

「ちっ……絶対にどっかにいるはずなのに、全然分からねェ――リゾット!何処だ?いるんだろ!?」

 

「!?」

 

 

 え、リゾットさん?

 

 

「…………ここだ」

 

「「ぎゃあッ!?」」

 

「なっ、貴様いつからそこにいた!?」

 

「……数分前には既に、ここにいたぞ」

 

 

 仗助さん達の背後で、リゾットさんが突然姿を現した。仗助さんと億泰さんが同時に悲鳴を上げて、形兆さんも驚いている。……あたしも、全然分からなかったわ。

 

 

「ひっ!?また知らない人が!?」

 

「リゾット……確か、仗助と一緒に刑務所に来てた奴だったか?」

 

「ええ、そうよ。彼が、財団職員のリゾット・ネエロさん」

 

「……お姉ちゃん。財団職員って、ああいう顔が怖い人達しかいないの?」

 

「大丈夫よ、エンポリオ。形兆さんやリゾットさんがちょっと特殊なだけだと思うわ」

 

「…………本当に、そうだと良いけどな……」

 

「エルメェス、それは言わないで」

 

 

 エンポリオ、エルメェスとこっそりそんな会話を交わす。……うん、大丈夫。財団職員には志人お兄ちゃんや、六車さんみたいな優しい職員さんもいるし。

 ……あ、でも。六車さんはともかく、志人さんの素顔は目付きが凄く悪い、わね……え?本当に顔とか目付きが怖くないと財団職員になれなかったりする?いや、そんな馬鹿な。

 

 

「……用は何だ?」

 

「テメー、俺らを驚かせといて謝罪も無しかよ!?」

 

「気づかない方が悪い。……で?」

 

「ちっ……!」

 

 

 と、相変わらずリゾットさんと仲が悪そうな仗助さんが、先程から持っていたケースの中からちょっと厚めの紙の束を取り出し、彼に手渡した。

 

 

「情報を入手するのにちょっと手こずって、財団職員以外のスタンド使いの手も借りたらしいが……お前の仲間達がしっかり調査してくれたみたいだぜ。

 

 ウェザー・リポート――いや、ウェス・ブルーマリンの調査報告書だ。あと、プッチ神父の調査報告書も入ってる」

 

「えっ……!?」

 

「ウェザーの!?」

 

「それに、あの神父の調査報告書も、だと!?」

 

 

 思わず、エルメェス達と顔を見合せた。ウェザーの正体が分かったの!?しかもプッチ神父の事まで……!

 

 

「それをウェザーに届けたら……お前にほとんどやらせる事になるのは癪だが、後の事は任せたぜ」

 

「……言われずとも、分かっている」

 

 

 そう言うと、リゾットさんは手渡された調査報告書と共に姿を消した。

 

 

「仗助さん!今の話は……」

 

「ウェザーの正体が分かったって、本当か?」

 

「それは、本当だ。……とりあえず、徐倫。その鍵を形兆に渡してくれ。

 形兆がヘリを飛ばす準備をしている間に、ウェザーには悪いが、俺の独断で……彼とプッチ神父について、事情を説明する」

 

「…………分かったわ」

 

 

 仗助さんに言われた通り、形兆さんにヘリの鍵を渡してから、エルメェス達と共にウェザーの話を聞く。……それは、あまりにも悲惨な過去だった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 敵は今、スタンドを使っている。しかし敵本体は俺達に近づいて攻撃するどころか、距離を取っているようだ。

 さらに、いつの間にかアナスイの姿を見失ってしまい……そんな不可解な状況が続く中、俺はゴッホの自画像だと名乗る相手に声を掛けられた。

 自分で"自画像だ"と名乗る自己紹介など聞いた事が無いが、すぐにそれどころではなくなった。

 

 肉体と精神の分離……アナスイも、この攻撃を受けたのか!?

 

 敵のスタンド能力は世界中を巻き込んでいる。しかもスタンド自体が無敵なら、本体を倒すしかない。

 敵が北に向かっているのを感じる……おそらく、時速数十キロ以上のスピードでここから離れているのだろう。

 

 

 ……ゴッホの自画像と同様に耳が切り落とされたようになり、さらに何故か絵筆から放たれた弾丸が俺の頭を貫く。

 ゴッホが自殺する際、1発では死ぬ事が出来ず2発目が必要だったという。つまり俺も、2発目が当たったら終わりだ!

 

 

「――っ、ウェザー・リポートッ!!」

 

 

 方角は北!30キロ先まで集中豪雨を降らせて、北へ向かうあらゆる車の走行を止める!!……それでも、敵の本体には届かなかった。

 北にいるはずの本体が、急に南へ移動した。敵は空……飛行機に乗って移動していたのだ!

 

 時速400キロ以上の飛行機を追跡出来る気象現象は無い!逃げ切られた!!

 

 

(あと1発銃弾を受けたらストーリーが完結する!まずい……!!)

 

 

 今は、逃げるしか無い……そう考えて行動に移そうとした、その時。

 

 

「――あっ!ちょうどいい人、発見!由花子、あの人も捕まえてもらえる?」

 

「ええ、あなた。任せて!」

 

 

 そんな男女の声が聞こえた後。ゴッホの体が黒い何かによって縛られた。これは……女の髪の毛!?しかし、長過ぎる。スタンド能力か!

 それを目で辿った先には、ゴッホに向かって髪を伸ばす美女と、小柄な男がいた。顔立ちからして、多分日本人だろう。

 

 そして。女の髪の毛は別の方向にも伸びており、その先では……何故か、俺の体とアナスイの体が捕らえられていた。どういう事だ!?

 

 

「な、何だこれは!?離せ!!」

 

「ごめんなさい、ゴッホさん。僕達の国でも大変な事になってるみたいだし、このスタンド攻撃を早くどうにかしないと、もっと大変な事になってしまうので……

 何がなんでも、協力してもらいます。本当にごめんなさい!――エコーズ!ACT3ッ!!」

 

3FREEZE(スリーフリーズ)ッ!!」

 

「ぐあああァァッ!?お、重いィィッ!!」

 

 

 小柄な男の側に人型のスタンドが現れ、おそらくそいつの能力でゴッホが地に沈んだ。重い……という事は、まさか重力を操る能力か?

 

 

「今すぐに、あるキャラクターを描いてください。これは本来なら存在しない、新しい創作キャラクターです。

 これから僕の指示に従って、そのキャラクターを地面に描いてください。さもないと……もっと重くしますよ」

 

「ついでに、縛る力を強くしてあげるわ。あたしの旦那様の言う通りにしなさい!さあ、早く!!」

 

「ぎゃああァッ!?わ、分かった!描く!描くからそれ以上締めないでくれえ!!頼む……ッ!!」

 

 

 …………何故だろう。先ほど殺されかけたばかりなのに、ゴッホが哀れに思えて来た。重力に加えて縛られる力も強くなるなんて、酷い拷問だな……

 

 

「ぐおッ!?」

 

「メエエェェッ!!」

 

「っ、アナスイ……!?」

 

 

 その時、背後で何かが落ちる音と誰かの悲鳴、それからヤギの鳴き声が聞こえた。

 そちらへ振り向くと、ヤギに纏わりつかれているアナスイの姿が!どうやら、こいつも何かのストーリーに巻き込まれているらしい。

 

 

「あなたに書いてもらいたいのは、ヒーローです!――全てのファンタジー・ヒーローを、元に戻す能力を持つヒーローだ!!

 

 世界中を巻き込んだこの事件を解決するために、その力を手に入れて立ち上がった男……!男は自分を犠牲にしてでも、世界を救う事を決断した!

 全てのファンタジー・ヒーローを元に戻し、その被害者達の姿も元に戻して、このスタンド能力自体を封印した後は、彼も姿を消してしまう……最後にはそんなエンディングを迎える!!

 

 見た目は何でもいい!そういうキャラクターを書くんだ!今すぐにッ!!」

 

 

 と、小柄な男のそんな発言を聞き、目を見開く。なるほど、その手があったか……!

 敵のスタンド能力が、あらゆるキャラクターを実体化させる能力なら、それを逆手に取ってそいつらを元に戻す能力を持つキャラクターを、新たに生み出してしまえばいい!

 

 ゴッホは小柄な男の指示通りに、そのキャラクターを描いた。新たなキャラクターの能力が発動し、全てが元通りになる……ストーリー通りだ。

 

 

 ……そして気がついた時には、俺とアナスイは女の髪の毛に縛られていた。

 そういえば、俺達の体は捕らえられていたんだった!まずいぞ。もしも、こいつらが俺達の敵だったら……!!

 

 

「ふう……良かった。これで終わりだね。露伴先生に相談して正解だった!まさかこんな解決方法があるとは……」

 

「結果的には良かったけど、それぐらい自分でやりなさいよ!あたしの康一をこき使うなんて、相変わらず自分勝手な男ね!!」

 

「ま、まあまあ。落ち着いて……そんな事よりも、由花子。その人達を解放してあげようよ」

 

「ああ、そうだったわね……ほら、これで動けるわよ」

 

 

 すると、女の髪の毛が縮んでいき、俺達を解放してくれた。……敵ではない、のか?

 

 

「ウェザーさんと、アナスイさん……ですよね?すみません。

 先程、2人を見つけたと思ったらそれぞれ逃げられてしまったので、仕方なく捕まえさせてもらいました。……もう逃げませんか?」

 

「…………お前達が敵ではないと分かれば、逃げない」

 

「あ、そうですよね。まずは自己紹介しないと……僕は、広瀬康一です。そして彼女は、僕の妻の由花子。

 仮死状態になる前の承太郎さんから頼まれて、徐倫ちゃんとその仲間であるあなた達を助けるために、日本の杜王町からやって来ました」

 

「!」

 

 

 承太郎さん……徐倫の父親だな。そして、杜王町……アナスイを見ると、彼は頷いた。

 

 

「徐倫と仗助の会話の内容は、大体覚えてるぜ。確かにその中で杜王町という地名と、そいつらの名前が出ていた」

 

「つまり……味方か」

 

「そう考えて良いだろう」

 

 

 アナスイと共に、2人揃って緊張を解いた。……彼らが敵だったらと思うと恐ろしいが、味方ならば心強い。

 

 

「ひとまず、移動しましょう。あなた達は脱獄犯ですし、人気の無い場所を探して――」

 

「――では、俺がそこまで案内しよう……」

 

「っ!?」

 

「うおッ!?」

 

「えっ!?」

 

「誰!?」

 

 

 突然聞こえた5人目の声に全員が驚き、周りを見る。……すると、俺とアナスイの背後に黒ずくめの男が現れた。全く気配が感じられなかったぞ!?何者だ!?

 

 

「あっ!お前は、確か……リゾット・ネエロ!」

 

「リゾット?……刑務所で徐倫の親戚と共に現れたという、SPW財団の職員か!」

 

「ああ、そいつだ。しかし、何故ここに?」

 

「……ウェザー・リポート……お前に、用がある」

 

 

 俺に?……いったい何の用だ?

 

 

「財団が調査した結果、お前が記憶を失う前の素性が、判明した……」

 

「!!」

 

「……それについて、話がしたい……場所を移すぞ。全員、ついて来い」

 

 

 そう言って、リゾットが歩き出す。康一達夫婦がそれについて行った。……彼らの背中を、呆然と見つめる。

 俺の素性が判明した?どうやって調べ上げたんだ?そして俺の素性は、こうして場所を移してから話さなければならない程の話なのか?記憶を失う前の俺の身に、何が起こったんだ……?

 

 

「……ウェザー」

 

「っ、」

 

「知りたいんだろ?自分が何者なのかを」

 

「…………アナスイ……」

 

「行くぞ」

 

 

 俺に声を掛けたアナスイは、俺の背中を軽く叩いて先に歩き出す。

 ……今だけは、徐倫よりも俺の過去の方を優先してくれるらしい。それに対して内心で礼を言い、彼に続いた。

 

 

 案内された場所は、とある空き家だった。人通りの多い通りから離れた場所にあり、閑散としている。

 そこで、リゾットから財団の調査報告書を手渡され……それを最後まで読んだ俺の手はいつの間にか震えており、思わず報告書を落としてしまった。

 

 ふらりと後退りして背後の壁に寄り掛かり、両手で顔を覆う。…………嗚呼……なんてことだ……!!

 

 

(記憶が無い今の俺にとって、これは"見知らぬ誰か"に関する記録であるはず……

 

 

 だが何故か、これは確かに俺に関する記録なのだと――"ウェザー・リポート"がッ!そう叫んでいるッ!!)

 

 

 涙が溢れた。途轍もない悲しみと、苦しみ……そして、怒り。そんな感情の奔流に襲われているが、この感情を抱いているのは今の俺ではない。

 

 "ウェザー・リポート"、俺のスタンド、俺の魂が、ペルラという女性を失って泣いている……!

 彼女の兄であり、決して認めたくないが俺の兄でもあるプッチ神父に怒りを抱いている!!そして、嗚呼――全てが!憎いッ!!

 

 

 ……そんな激しい感情の奔流は、徐々に落ち着いてきた。これはおそらく、俺自身がまだ記憶を取り戻していないせいだろう。だから冷静になれたんだ。

 しかし、その悲しみや怒りを忘れた訳ではない。それらは未だに、俺の中で渦巻いていた。

 

 この状態で記憶を取り戻せば、俺は間違いなく暴走する。

 調査報告書に書かれていた通り、町全体を巻き込む程の凶悪なスタンド能力を発動させてしまうだろう……

 

 

「おい、リゾット!これは本当に確かな情報なのか!?何かの間違いじゃねえのか!?」

 

「……断言しよう。その報告書に、間違いは無い……それは、俺が信頼する仲間達が詳しく調査した結果、事実だと判明した事だ……」

 

 

 そんな会話が聞こえて顔を上げると、アナスイがリゾットを問い詰めていた。どうやら、俺が動揺している間にあいつも報告書を読んだらしい。

 

 

「あの……ウェザーさん……」

 

「これ、あたし達も読んで良いかしら……?」

 

「…………ああ。構わない……」

 

 

 と、康一達が遠慮がちにそう聞いてきたので、それを許可した。……わざわざ許可を求めるとは、親切な夫婦だな。

 

 彼らが調査報告書を読んでいる間に、俺はリゾットに声を掛けた。

 

 

「俺は……この記憶を取り戻さない方が良い、と。そういう事なのか?」

 

「……財団側としては、確かに、その方が良いだろう…………それに、……我が主も、」

 

「我が主……?」

 

「いや、すまない。気にするな。……とにかく、財団の判断だけを言うならば、お前が記憶を失ったままでいてくれた方が、助かる……

 

 しかし……俺個人の考えは、少し違う。……俺は、――俺はかつて、復讐者だった」

 

「!」

 

「……詳細は省くが、俺は10代の頃に相手を殺して復讐を完遂し……裏社会に足を踏み入れた。……今はいろいろあって、財団職員になっているがな……」

 

 

 目の前にいる男は、復讐者だった。しかもそれを完遂させている……

 そう聞いても、あまり驚かなかった。確かに、この男からはただ者ではない気配を感じていたから。

 

 

「復讐を終えて間もない頃は……生きているようで、死んでいた、ような……そんな心境だった。燃え尽きた、と言ってもいいかもしれない……」

 

「…………燃え尽きた、か……」

 

「……ウェザーが記憶を取り戻し、あの神父に復讐したいと言うなら……復讐をした後の事も、覚悟しているのであれば……俺個人としては、それを止めたくない」

 

「…………」

 

「……だが……今のお前と、復讐を成し遂げた時の俺とでは、状況がかなり異なる」

 

 

 状況が、異なる?いったい何が違うというんだ?

 

 

「俺の時は……俺が復讐しようとしている事を、当時親しかった者達には、知らせなかった……故に、俺を止めようとする者は、誰もいなかった。

 しかし。今のお前には……お前を止めようとするであろう、親しい者達がいる……徐倫達だ」

 

「何?」

 

「彼女達は、おそらく。既に東方から事情を聞いて、お前の過去とプッチとの関係を知っている、はずだ……

 お前が記憶を取り戻した場合、間違いなくスタンド能力が暴走し、お前はそれでも復讐を果たそうと、動き出すだろう……

 

 その時……あの空条の娘が、その娘に認められた仲間達が、黙って見ている訳が無い……お前の暴走を止めるために、相当な無茶をするだろうな」

 

「っ、」

 

「……お前は、それに耐えられるか?……復讐を果たし、いざ振り返ってみれば――そこにあったのは、親しい者達の変わり果てた姿だった……なんて事に、なり兼ねないぞ?」

 

「――――」

 

「それでも尚、復讐がしたいというなら……俺は、止めない……」

 

 

 こいつ……なかなか、えげつない事を言ってくれる。そんな事を言われたら、復讐する気が失せるのも当然じゃないか。

 だが、それなら俺の気持ちはどうなる?記憶は無くても、恋人を失った悲しみ、俺達の人生を狂わせた男への怒り、全てに対する憎しみは、未だに心の奥底で渦巻いている。

 

 

 それを解き放ち、復讐相手にぶつけるその時を、今か今かと待ち望んでいるのだ。俺の、スタンドが。

 

 

「…………アナスイ。お前も、俺が暴走し始めたら止めるか?」

 

「ああ、止める。……リゾットが言うように、徐倫ならお前を止めようとするだろう。

 俺の愛する者が、お前を止めるために無謀な行動に出る……そんな事を、この俺が許すと思うか?

 

 彼女に無理をさせるぐらいなら、そうなる前に俺がお前を止めてみせる。……例え、お前を殺す事になってもな」

 

「……ふっ……それも、良いかもな。お前ならきっと、やると決めたら躊躇いなく殺してくれるはずだ」

 

「そうだな、否定はしない。……だが、それでほんの少しも心が痛まないと言ったら、嘘になるぜ」

 

 

 そんな、アナスイらしくない言葉を聞いて、思わず彼を凝視する。……彼は、真顔だった。冗談ではないようだ。

 

 

「その悲しみは、徐倫ほどでは無いだろうが……その代わりに俺は――自分の手でお前を殺した事を、一生忘れないだろう」

 

「…………アナスイ、お前、」

 

「そんな事より!お前、結局どうするんだ?記憶を取り戻したいのか、取り戻したくないのか。復讐したいのか、復讐したくないのか!」

 

「それは……」

 

 

 …………分からない。俺がどうしたいのかが、分からない。記憶の事も、復讐の事も。まだ何も決められそうになかった。

 

 

「まだ決められないなら、とりあえず保留って事にしとけよ。

 リゾット!プッチ神父からウェザーの記憶DISCを取り返したら、それはすぐにそっちに没収されるのか?」

 

「……いや。それに関しては、今はまだ、上から命令が来ていない……ひとまず、ウェザー以外の誰かが、一時的に預かる事になるだろう……」

 

「それなら、まずは神父からお前の記憶DISCを取り返して、その後でどうするか決めればいい。そうしろ、ウェザー」

 

「あ、……ああ……そう、だな」

 

 

 保留、か。……そうだな。そうしよう。そもそも、まだプッチ神父に追い付いてもいない。

 奴に追い付くまでに大体でいいから考えをまとめて、実際に俺の記憶DISCを取り返した後に決断すればいい。

 

 もっとも、状況次第では記憶DISCを取り返すどころではなくなるかもしれないが……その時は、その時だ。

 

 

「で、徐倫は何処だ?…………あと、ついでにプッチ神父も」

 

 

 おや?……アナスイの事だから、結局気にするのは徐倫の事だけだろうと思っていたが、ほんの少しだけ俺にも配慮してくれるようになったらしい。

 

 

「……徐倫も神父も、どちらも相変わらず北の方にいるようだ」

 

「北だな?よし、進むぞ。……ところで、お前ら3人もついて来るのか?」

 

「……ジョースター家の人間と、その仲間達をサポートする事は、財団職員の役目の1つだからな……よって、俺も同行する」

 

「財団職員ではないけど、僕達も同じです。徐倫ちゃんとその仲間の皆さんの手助けをする事が、僕達がアメリカに来た理由ですから」

 

「あなた達について行けば、いずれは徐倫達に同行しているあたし達の仲間とも合流出来るしね」

 

 

 リゾットと、既に報告書を読み終えていた康一達がアナスイの問いにそう答えた。……ん?

 

 

「徐倫達のところにも、誰か同行者がいるのか?」

 

「あ、はい。仗助君と億泰君と形兆さん……僕達と同じく、杜王町出身のスタンド使い達が彼女達の側にいるはずです」

 

「……その通りだ。……俺は徐倫達と、東方達が合流したのを確認し、東方から受け取ったその報告書を持って、ここに来た……」

 

 

 今度は俺が気になった事を聞いてみると、康一とリゾットが答えてくれた。

 

 アナスイから聞いた、東方仗助という徐倫の親戚なら名前だけは知っているが、また新たに知らない名前が2人分出て来たな……

 ……康一達といい、そいつらといい。杜王町とやらに住んでいるスタンド使いは、いったい何人いるんだ?

 

 

「ちょっと待て。……ただの親戚だという仗助はともかく、他の奴らは男か?」

 

「そ、そうですけど、」

 

「俺の徐倫の側にまた別の男がッ!!こういう時に限ってF・Fは近くにいないし……!くそっ!」

 

「"俺の徐倫"、って……あ、あの、アナスイさんは、徐倫ちゃんとはどういう関係で……?」

 

「俺は彼女に一目惚れした。いずれ結婚する。祝福しろ」

 

「はあ!?……ちょッ、ええー……何言ってるの?この人……」

 

 

 アナスイのそんな言動に対し、康一が驚きながらも引いている。……すまない、康一。徐倫と出会ってからはそれが通常運転なんだ。

 

 

 すると、その時。由花子が何気ない様子でこう言った。

 

 

「あら、徐倫に惚れちゃったの?それは前途多難ね――あの子、幼い頃から今に至るまでずっと、同じ人に恋してるみたいだから。しかも初恋」

 

「な、……なにイィッ!?」

 

 

 これは……面倒事になりそうな予感がするぞ。

 

 

「どういう事だそれはッ!!誰だ!?徐倫の初恋を奪った男は!?俺の恋敵は誰なんだッ!?」

 

「それは、」

 

「ああっと!!そッ、それはですね!実は僕達も知らないんですよ!徐倫ちゃんが恥ずかしがって教えてくれなくて……!そ、そうだよね!?由花子!!」

 

「……え、ええ。そう、ね。あたし達は知らないわ」

 

 

 康一と由花子は知らないというが、その様子はどう見ても"知っているが誤魔化している"ようにしか見えない。

 しかし、賢明な判断だ。アナスイの様子から察するに、その恋敵を相手に何かやらかす可能性は高いからな。

 

 ……ただ、恋敵の出現に焦っているアナスイは、そのせいか康一達の嘘に気づかなかったようだ。

 

 

「ちっ!役立たず共め!!だったら何でもいいからそいつについて分かっている事を教えろッ!!」

 

「あー、えっと、それは、」

 

「おい……そんな下らない話をしている場合か?さっさと先へ進むぞ。徐倫達と合流するんだろう?

 ……それに、プッチを追い掛けなければ……奴の目的を、阻止しなければならない」

 

 

 と、リゾットが割って入った。正論だ。今はこんな事を話している場合ではない。……だが、頭に血が上ってしまっているアナスイは、それに食って掛かった。

 

 

「下らないだと!?そんな訳あるか!俺と徐倫の幸せな未来を阻む障害が現れたんだぞ!?」

 

「その恋敵よりも、あの神父の方がより大きな障害ではないか?……奴を放って置けば、お前の言う"幸せな未来"どころではなくなるぞ……」

 

「…………」

 

 

 アナスイが黙り込む。……さすがのこいつも、そこまで言われたら何も言えなくなったようだ。ようやく静かになった。

 

 

 その後。俺達はひとまず、徐倫達と合流するために動き始めた。

 ……それにしても、徐倫の想い人とはいったいどんな男なのだろうか?アナスイ程ではないが、気になるな。

 

 

 

 

 

 

「…………ナルシソ・アナスイ――我が主を狙う危険人物……要警戒対象、だな……」

 

 

 

 

 

 

 






・杜王町組と仲が良い6部主人公

 幼い頃、園原達に杜王町へ連れて行ってもらった事があり、それ以来仗助達と仲良くなった。徐倫にとっては、本当の兄や姉のような存在。
 ウェザーの正体とその過去を知って驚き、そして悲しんでいる。これを知ったら、ウェザーはどうするのかしら……?心配だわ。

 (相手が誰かはあえて明言しないが)幼い頃から今に至るまでずっと片思いをしており、杜王町組もそれを応援している。
 自分がもう少し大人になったら想いを伝えると決めているようだが――?


・自身の正体を知った記憶喪失者

 自分とプッチ神父に関する調査報告書を読んだ結果、表情や態度にはあまり出さないがかなり動揺している。

 記憶は失っているが彼の魂("ウェザー・リポート")は自身の身に何があったのかを覚えており、報告書に書かれているのは自分の事だと実感した。
 実際に記憶を取り戻していないため、どうにか冷静さを保っているが……この状態で記憶を取り戻せば、原作と同じく暴走するだろう。

 元復讐者であるリゾットに脅さ、もとい諭されたせいか、復讐をしない方向に気持ちが傾いた。
 また、アナスイから"自分の手でお前を殺した事を一生忘れない"と言われた事で、さらに気持ちが傾いている。…………とりあえず、決断は保留。


・6部面子と合流した杜王町組

 仗助と虹村兄弟は徐倫達と、結婚して夫婦になった康一と由花子はウェザー達とそれぞれ合流。

 広瀬夫妻は、さっそくウンガロ戦で活躍。どうやら某漫画家に対処法を相談したらしい。
 仗助と虹村兄弟は(その描写は割愛するが)後にリキエル戦で活躍した。

 徐倫に一目惚れしたというアナスイの言動にドン引き。徐倫の恋の相手が誰かを咄嗟に誤魔化した康一はファインプレー。


・元復讐者のワイマラナーさん

 特定の人物を除き、彼が人前で透明化を解除する時は基本的に気配を消したまま相手の背後に立つ。もはや存在がホラー。

 元復讐者としての経験を話し、個人的にはウェザーの復讐を止めたくないと言いながらも、結局は彼の"主"の意向に従って復讐は止めるよう脅し、もとい諭している。
 ウェザー本人にその素性を調査した結果を明かし、記憶を取り戻す危険性を訴える……これが、ウェザー救済のための布石となる。

 なお。刑務所での徐倫と仗助の言動を見ていた事で、徐倫の想い人が誰なのかは既に察している。
 …………ナルシソ・アナスイ――我が主を狙う危険人物……要警戒対象、だな……





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