あの後。いろいろあったが、最終的にトリッシュの手引きでフロリダに行く事になったのは……僕とミスタ、ナランチャとフーゴだった。
最初に、スタンド能力が戦闘向きではないアバッキオが除外された。……本人はかなり不満そうだったが、こればかりは仕方ない。
それからアバッキオ1人だけというのはいろいろ問題があるため、それ以外にもう1人が残る事になり……
ちょっとした小競り合いはあったものの、最後にブチャラティが自ら残ると言って、僕達に譲ってくれた。
そして、フロリダにやって来た僕達は今。風花さんから聞いた、シドの護衛対象である資産家の男の別荘へ向かっている。
資産家の男は本来、フロリダとは別の州に住んでいるのだが、仕事のためにフロリダにある別荘での長期滞在を始めた所で、フレッダメンテの構成員から狙われるようになったそうだ。
シドの護衛期間は、その仕事を終わらせてフロリダから離れるまで、との事だったらしい。
…………それはさておき――
「――――本当に気味が悪い……」
「ジョルノ?……今、何か言ったか?」
「あ、……ああ、いえ。どうやらこのフロリダには、僕の血縁者がたくさんいるようで……落ち着かないな、と」
「…………そういえば、風花さんが言ってましたね。ここ周辺は今、承太郎さん達だけでなくジョルノの腹違いの兄弟達が集結しており……
さらにはそれに加え、プッチ神父とその兄弟も……実際には血が繋がっていないのに、DIOの影響でその存在を感じられるようになっている、と」
「ジョルノの兄弟、か……やっぱりジョルノに似てるのかなあ?」
「…………」
ミスタ達には、血縁者がたくさんいるせいで落ち着かないと言って誤魔化したが……
やはり、例の
それについて考えながら歩いていた、その時。僕の携帯に電話が掛かって来た。相手は……
「……トリッシュ?何かありましたか、」
「すぐにシドの下へ向かって!早くッ!!」
電話に出ると開口一番、随分と焦った様子でそう言われた。……緊急事態のようだ。ミスタ達にも聞こえるよう、スピーカー機能を使った。
「詳しい事はまだ分かってないけど、多分ジョルノの推測が当たった!
承太郎さん達と一緒にいる財団職員から連絡があったらしいわ!やっぱりシドの護衛任務はプッチ神父の罠だった!!
神父は今逃走中で、おそらく何らかの形で彼を利用しようとしている!今の奴の標的はシドよ!!」
「ええッ!?」
「なんだとォッ!?」
「もしかしたら、既にフレッダメンテの奴らに襲われてるのかもしれない!早く彼と合流して!!急いでッ!!」
「…………了解。すぐに向かう」
電話を切った瞬間、走り出した。ミスタ達も僕と同時に走り出している。……ああ、そうだ!
「フーゴ、先導してください!僕は……今からちょっと電話を掛ける」
「はい!って、電話!?」
「なんで!?」
「こんな時に誰に掛けるんだよォ!?」
「――承太郎さんに!」
走りながら携帯を操作して、承太郎さんに電話を掛けた。……やがて彼は電話に出てくれたが、様子がおかしい。
「……何の用だ?悪いが俺は今、非常に気が立っていてな……下らない用事なら即座に切るぞ」
……おそらく、シドがプッチ神父に狙われている事を知って激怒しているのだろう。その冷た過ぎる声に冷や汗が流れたが、言うべき事は言っておかなければ。
「では、出来る限り手短にお伝えします。僕は今、ミスタ、ナランチャ、フーゴと共に、シドの下へ急いで向かっている所です」
「は……?何だと!?」
「トリッシュを通して、状況は大体理解しています。……おそらくプッチ神父の物と思われる気配も近づいて来ているのを感じますが、これなら僕達の方が早く到着する」
「…………」
「もしかすると既に、プッチ神父と手を組んでいる組織……フレッダメンテからの襲撃を受けている可能性もありますが、僕達が助けに行きますのでご安心ください。
それから……おそらく財団本部はまだ、僕達がフロリダにいるとは知らないはず。
僕達に手を貸してくれたトリッシュや、その責任を取ろうとしている風花さんが後々お咎めを受けないように、あなたから上手く言ってくれると助かるのですが」
「…………お前が何故そこにいるのか、何が目的なのか……いろいろと聞きたい事はあるが、今は何も聞かずにいてやる。
財団にも後で俺から言っておこう、だから――志人を、頼む……!!」
「はい!任せてください」
承太郎さんとの電話を終えて、走る速度上げる。
……それからしばらく走り続けて、ようやく資産家の別荘の近くに到着した。息を整えつつ、ナランチャのエアロスミスを別荘の上空へ飛ばしてもらう。
「ナランチャ、どうですか?」
「…………ええっと……?」
「ん?どうしたァ?」
「多分これがシドの反応で、その近くにあるのが資産家の人で?
2つの反応の周りを囲んでるのが、きっとフレッダメンテの奴ら、だよな……?変なの」
「……何が変なんだ?」
「いや、だって――この反応を見る限りシドは全然元気なのに、周りの奴らの半分近くが弱ってるからさ……
今襲撃されてる最中なら、普通はそれが逆になるんじゃねーのかな?って」
「……へえ?」
それは……もしかすると、僕達の心配は杞憂だったのかもしれないな。
「別荘の敷地内へ入ってみましょう。おそらく、面白い状況になっているはずです」
エアロスミスのレーダーを頼りに人が集まっている場所……敷地内にある広い庭へと向かい、身を隠しながら様子を窺うと……
そこには、自分と老人の周りにバリアを張り、イージスホワイトと共に堂々と敵を見据える、シドの姿があった。
彼の様子を見る限り、疲労しているようには見えない。
それに対し、シド達の周りを囲んでいる奴らは、その半数近くが倒れて呻き声を上げている。
「おー、おー……ジョルノが言った通りだぜ!面白い状況じゃねェか!」
「これは……いったい何があったんでしょうか?というか、シドはどうやって……!?」
「あれ、全部あいつがやったのか?すげーな!」
どうやら、しばらく会っていないうちに彼も腕を上げたようだな。僕達も以前よりはスタンド能力が強化されているが、それはシドも同じだったらしい。
「……さて。そろそろ、僕達もシドに加勢しましょうか」
「加勢は、本当に必要ですかね?」
「確かに……」
「いらないんじゃね?」
「そうでもないですよ。シドの体力や精神力は、無限ではありませんから」
「あ、なるほど!」
「それに、」
「ん?」
「――裏切り者を、さっさと片付けなくては……」
「……じょ、ジョルノ?顔、怖いぞ??」
「クク……ッ!!そりゃあ裏切り者が俺達の恩人、それもこいつの兄貴分に手を出してるんだぜ?怖くもなるだろォ?」
「ジョルノにとって、彼は大事な
そう。奴らはよりによって、この僕が……パッショーネのボスが、
ここに来るまではずっと、例の
こうして実際に奴らがシドに襲撃を仕掛けている場面を目撃すると、その感覚よりもじわじわと怒りが強くなって来た。
(一人残らず仕留めてやる……ッ!!)
シドと奴らの側にさらに近づいて身を潜めつつ、ミスタ達にハンドサインで指示を出し――僕の合図で、一斉に飛び込んだ。
「――ゴールド・エクスペリエンスッ!!」
「セックス・ピストルズッ!!」
「エアロスミスッ!!」
「パープル・ヘイズッ!!」
僕のスタンドが生み出した木の根が奴らに襲い掛かり、その隙をついてミスタ達が攻撃を仕掛ける。
そうして出来上がった道を全員で駆け抜けて、シドと奴らの間に割って入った。
「…………ええぇぇぇー……?」
「なっ、えっ?じょ、……ジョルノ?」
「ええ、僕ですよ
イージスと共に、珍しくかなり動揺した様子のシドに笑顔を向けて、それからすぐにフレッダメンテの構成員達を睨む。
「テメーら……何者か知らねぇが、邪魔だ!そこを退けぇっ!!」
「……貴様らに、名乗る名など無いな」
「はぁ!?」
「だが、これだけは言っておこう――我々は、逃げ出した裏切り者共を追ってここまで来た……自分達の古巣はさすがに覚えているだろう?」
「な、……ま、まさか!パッショーネ!?」
「馬鹿な!?あれから10年も経ってるのに、なんで今になって……!?」
「それに答える義理も無い。……ミスタ、フーゴ、ナランチャ。この場はしばらく、あなた達に任せます。頼みましたよ」
「よっしゃあ!!」
「了解、ボス!」
「おう!任せろッ!!」
ミスタ達が敵陣へ突っ込んで1人、また1人と倒していく。……本当なら、僕が一人残らず仕留めてやりたいところなんだが。
それよりも、シドと情報を共有する方が優先だ。……しばらくは、彼らに任せるとしよう。
「――で、プッチ神父がここに来るんだな?承太郎さん達も、それを追ってここに向かっている、と」
「はい」
「……しかし。まさかフレッダメンテのボスと幹部が、元々パッショーネにいたとは…………いろいろ……本当に、いろいろ、想定外過ぎるんだが……」
「それは僕も同じですよ……まさか、そもそものきっかけがあなただったとは」
……シドと情報を共有した事で、僕達の下にフレッダメンテの話が届いたきっかけは、彼にあった事が判明した。
護衛任務を受けた当初から途中までは、財団もシドも護衛対象の資産家男性……今、シドの側にいる老人も。
フレッダメンテという組織の事を――"フレダミンテ"という名前の組織だと勘違いしていたそうだ。
これまでに襲撃を仕掛けて来たフレッダメンテの構成員達は、そのほとんどがアメリカ人だったらしい。
そして、そいつらが自分達の組織の事を"フレダミンテ"と呼んでいた。それを聞いた資産家男性から財団とシドへ話が伝わったため、その名前が定着してしまった。
まさか。組織の構成員が自分達の組織の名前の発音を間違っているなんて、普通は思わないからな……
組織名はイタリア語だし、アメリカ人の構成員が発音を間違ってしまっても仕方ないかもしれないが。
だが、ある日の事。襲撃して来たフレッダメンテの構成員の中に、1人だけイタリア人がいたという。しかも、そいつは組織の幹部だった。
その時。シドはふと、"フレダミンテ"はもしかしてイタリア語の
かなり馬鹿馬鹿しい考えだが、念のために確かめておいた方がいいだろう、と。
そう考えて、財団職員の中でもヨーロッパでの案件に関わる事が多い風花さんに、調査を依頼したそうだ。
その結果。フレッダメンテの話が僕達に回って来て……いろいろと発覚して、今に至る訳だな。
「ところで……奴らの半分以上は、元はスタンド使いでは無いというのは本当なんですか?」
「あぁ。幹部の中の、とあるスタンド使いの能力なんだが……
それを手にすればスタンド使いじゃなくてもスタンド攻撃が出来るようになり、スタンド像も見えるようになる武器を、何個も作り出す事が出来るらしい。
拳銃やらライフルやらを持ってるアメリカ人がたくさんいるだろ?そいつらの武器は全部、そのスタンド能力で生み出された物だ」
「それはまた、面倒ですね。その本体は最優先で潰さなくては――っ!?」
「……ジョルノ?」
シドとの会話の途中で……首の左後ろにある痣が疼いた。…………近い。
「そろそろ、お出ましのようですね――黒幕が」
「!」
「プッチ神父……僕達のすぐ近くまで来ているようです。……ミスタ!フーゴ!ナランチャ!一旦戻って来い!!」
念のため、ミスタ達を呼び寄せた。……彼らが大暴れしてくれたおかげで、敵の数はかなり減っている。
他に残っているのはおそらく組織のボスと幹部達、それから数名の下っ端ぐらいだろう。
「ジョルノ、どうしたんですか?」
「もうちょっと暴れたかったんだけどなァ」
「俺もー!」
「……もうすぐ、プッチ神父がここに来ます」
僕がそう言うと、3人の表情が真剣なものへと変わった。状況がしっかり理解出来たようで何より。
そして……プッチ神父の存在が、例の
「――たった数人を相手に、これ程の人数で挑んだ挙げ句、この様か……どうやら私は、手を組む相手を間違えたらしい」
「ああ"!?何だと、テメー!!」
現れたのは、白髪に褐色肌の男……あれが、エンリコ・プッチ。DIOの友人、か。
奴はぎゃあぎゃあと文句を言う、フレッダメンテのボスを無視して……僕を、見た。
その瞬間。気味の悪い感覚がさらに強くなり、思わず顔を歪める。疼きが強過ぎて、もはや痛みまで感じる星の痣を片手で押さえた。
「嗚呼……あの3人とは比べ物にならない程、DIOの血をより深く受け継いでいるのを感じる……!
私を"天国"へと押し上げる存在は、お前なのだろうか?……まあ、それはおそらくいずれ分かる事だろう。
さあ、DIOの息子よ!今すぐに!園原志人を捕らえて私に差し出せ!!」
「……うーん……英語は分かんねーけど、シドの本名だけは聞き取れたぞ!やっぱりあいつの狙いはシドなんだな!?」
「シドを渡せ、って言ってる事だけは分かったぜ!」
「お前達はそろそろちゃんと英語を勉強するべきだな。……さて、まずはどうしますか?ジョルノ……ジョルノ?」
…………気味が悪い。痣が痛い。僕の中の
頭がぐらぐらする。気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪いきもちわるい――
「――ジョルノ・ジョバァーナ」
「っ!!」
そう呼ばれて、我に返った。……顔を上げると、シドが僕をじっと見つめてる。
そして、おそらく神父にも分かるようにと考えたのだろう。わざわざ英語で、こう問い掛けて来た。
「"二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ"」
「え、」
「"一人は泥を見た。一人は星を見た"……お前は、どっちだ?"泥"を見るか、"星"を見るか」
「――――」
……普通なら、訳の分からない問い掛けだろう。だが、僕にはそれが何を問い掛けられているのか、分かった気がする。
そして、つい先程。僕の中で何が起こっていたのかも、分かった気がした。
(――僕の中にあるDIOの血と、それに反発するジョースターの血……)
例えるなら、DIOの血は神父に協力しろと命令していて、ジョースターの血はシドを助けろと言っており……
この2つが反発し合って、僕自身に異変が起こっていたのではないか?
そして。僕をここまで……プッチ神父の下まで引き寄せようとしていた
…………さて。僕が見るのは"泥"か、"星"か、だったな?僕もシドに倣い、奴にも分かるように英語で答えるとしよう。
「――"星"だッ!"星"を見る!!僕は孤独と共に見る"泥"ではなく!仲間達と共に見る"星"を選ぶッ!!」
そう言い放った瞬間、今までずっと感じていた気味の悪い
・"星"を見る、ドン・パッショーネ
DIOの血とジョースターの血の板挟みにあっていたが、最後にはジョースターの血を選び、DIOの血を振り払った。
パッショーネの裏切り者が、自分達の恩人であり、自分の兄貴分である園原に手を出していた事に頭を抱える。
裏切り者を早々に捕まえられなかった事を後悔。その責任を取るためにも、園原を助けるためにも、フロリダへ向かった。
先月……プッチ神父が緑の赤ん坊と融合した日辺りからずっと、
元々不気味に思っていた上に、プッチ神父と対面してからその感覚が強くなり、彼の身に異変が起こるが――
――"二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ"。
"一人は泥を見た。一人は星を見た"。
……彼が選んだのは、"星"だった。
・ボスを支える5部勢
ドン・パッショーネを支える幹部達と、上司と共に彼らを陰からサポートする財団職員。
10年の月日が、彼らの絆をより深く、より強固なものへと進化させた。彼らは既に、ジョルノの事をパッショーネのボスとして心から認めている。
それぞれが日々経験を重ねており、特にトリッシュは財団職員になってからはさらに頼もしい女性へと急成長を遂げている。
実は。何処か様子がおかしいジョルノの事を、全員揃って密かに心配していたのだが……
プッチ神父を見据えて堂々とした姿を見せる彼に対し、ミスタ達は一安心。ブチャラティ達に良い報告が出来るぞ!
・久々に出番がやって来た助手君
アイエエエ!?ドン・パッショーネ!?ドン・パッショーネナンデ!?
――と、内心で絶叫していた転生者。いやマジでなんでいるんだお前っ!?しかもミスタ達まで引き連れて!!さらには神父まで……!
未来は突然変化するものだと、分かってはいたが…………いろいろ……本当に!いろいろ!想定外過ぎるっ!!
しばらく内心で大パニックに陥っていたが、プッチ神父が現れてからジョルノの様子がおかしい事、星の痣を押さえている事に気づき、彼の中で何が起こっているのかをなんとなく察する。
そこで、あえて原作1部の冒頭部分をそのまま問い掛けて、ジョルノの意志を固めさせた。今の彼ならきっと伝わるだろうと信じていた。
・徐々に追い詰められていく神父
園原を嵌めるために手を組んだ組織が役に立たず、明らかにDIOの血をより深く受け継いでいるはずの男も何故か従ってくれない……
承太郎達もいずれ追い付くだろう……まずい。このままでは園原を捕らえる事ができない!それどころか、厄介なスタンド使い達に包囲されてしまう!!
……と、徐々に追い詰められているが、果たしてこのまま無事に"第6部、完!"で終わるだろうか――?