空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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▼▼本文をご覧になる前に、「原作6部介入編について」を【必読】でお願いします!▼▼








・原作5部終了から数年後(「波乱の幕開け――転生者、不在」の話よりも前)の話。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり

・男主と承太郎の距離が近いですが、not腐向けです。念のために注意

・最初、男主視点。途中から承太郎視点で、最後に男主視点に戻ります




原作6部介入編――真相
事の発端


 

 

 

 

 さて。次は6部にどう介入しようかと、そう考えた時……ある事に気づいた俺は、愕然とした。

 

 

(――原作の承太郎の記憶ではなく、今の承太郎の記憶をプッチ神父が見たら……その後の行動も、かなり変わるのでは?)

 

 

 現在の承太郎は、原作とは違って戦闘力は全く衰えていないし、杜王町のスタンド使い達やエリンさんと徐倫との仲も良好。

 ポルナレフとも再会しており、ジョルノ達パッショーネの人間と面識がある。

 例のスタンド使いを生み出す矢の真の力も知っている……それらの記憶を、プッチ神父が目にしたら?

 

 承太郎だけでなく、彼と関わりがあるスタンド使い達の事も警戒するだろう。エリンさんの事も人質に取ろうとするかもしれない。

 明らかにDIOの血を引いているジョルノの存在や、矢の真の力を知った場合。奴がどんな反応を見せるかも分からないし、それ以外でも想定外の行動に出る可能性が高い。

 

 

(4部や5部の時は役に立った原作知識が、6部ではほとんど使えなくなる……?)

 

 

 血の気が引いた。冷や汗も流れた。実際にそれを自覚すると、焦燥感が募る。

 いつかはそうなるだろうと覚悟していた……否、覚悟していた"つもり"になっていただけだ。俺には、その覚悟が足りていなかったんだ。

 

 現在の承太郎の記憶を知ったプッチ神父による想定外の行動は、6部の原作崩壊と、原作キャラの救済失敗に繋がる。

 

 

(どうする?どうすればいい?承太郎や徐倫達の命を救うには、どうすればいいんだ!?)

 

 

 ……原作開始前に、何らかの理由を付けてプッチ神父を無力化する。あるいは、承太郎がDISCを取られる場面で割って入り、協力し合ってプッチ神父を倒す?

 いや、待てよ?それで6部の流れを早々に終わらせてしまったら、それこそ後々しわ寄せが来て想定外の事態が起こるかもしれない。

 

 4部の時は途中まで原作の流れを崩さずに、ラスボス戦だけを潰した。

 シアハ戦で吉良が死んだ後は、写真の親父やその刺客のスタンド使い達を原作通りに倒して、4部が終了した。

 

 おそらく。その時と同様に途中まで原作の流れに乗って、何らかの方法でラスボス戦が起こるのを阻止するぐらいなら、しわ寄せは来ないのだろう。

 現に4部が終わった後は平和そのもので、5部が始まった後もほとんど影響が出なかったし。

 

 それを踏まえて6部でも、出来る限り原作の流れに沿っていけば……って、いやいやいやいや!

 そもそも今の承太郎の記憶を見たプッチ神父がのっけから想定外の行動に出たら原作崩壊待った無しだしでもその神父を最初から無力化したら6部が始まらないしそのしわ寄せがいつか来るかもしれなくて――

 

 

(――あ、駄目だ)

 

 

 思考の無限ループ……見事にドツボに嵌まってしまった。6部攻略方法が見つからない。アウトだ。しかし、そう簡単に諦める訳には……

 

 

「志人」

 

「…………イージス」

 

 

 その時、イージスが勝手に外に出て来た。俺の名を呼んだ彼は、それ以上は何も言わずに俺を見つめて……しばらくして、口を開いた。

 

 

「志人。俺は、君自身だよ?だから君が意識して目を逸らしている事も分かるし、その理由も分かる。

 でも……君が、もはやそれしか方法が無いのだと、既に確信している事も分かっている」

 

「…………」

 

「嫌われたくないという気持ちと、例え嫌われたとしても生きていて欲しいという気持ち……君は、どちらを優先すべきだと思う?」

 

「…………」

 

「その優先順位も、君の中では既に決まっているよね?」

 

「…………」

 

「……まぁ、おそらく。志人が心配している事は最後には杞憂で終わるだろうけど――」

 

「え?」

 

「――いや、……今の君にこれを言ったところで、素直に信じてくれないだろうから、やめておくかな。……とにかく、あとは一歩踏み出すだけだよ?」

 

「…………そう、だな……」

 

 

 イージスの言う通り、あとは俺自身が一歩踏み出すだけ。……でも、その一歩が重いんだよなぁ。俺の中ではもう答えが決まっているというのに。

 

 

 それから。悩んで悩んで迷って頭を抱えてまた悩んで、そして数ヶ月後にようやく覚悟が決まった俺は……承太郎と露伴に連絡を取る事にした。

 

 

(――彼らに、俺の前世の記憶の全てを明かした上で協力を求める)

 

 

 6部で救済を成功させるには、それしか無い。他の方法は何も思い付かなかった。

 

 

 露伴のスタンド能力を利用し、承太郎の記憶がプッチ神父に見られても問題無い状態にしたい。

 

 例えば。ジョルノの存在やイタリアでの出来事、スタンド使いを生み出す矢の真の力についての記憶は、例えスタンド能力の効果であっても誰も見る事ができない。

 ……なんて事を承太郎の中に書き込んでもらえば、その記憶を目にした奴が想定外の行動に出る可能性を下げる事ができる、はず。

 

 本当ならエンリコ・プッチは空条承太郎の記憶を見る事ができない、とはっきり書いてもらいたいところだが……

 そうすると原作の流れから外れてしまうし、奴が目的を果たすために形振り構わない行動に出てしまう可能性もある。

 ここは大人しく、あえて原作通りに承太郎の記憶を見せる事で、プッチ神父の次の行動を先読みできるようにしておくべきだ。

 

 

 で、ここまでの話を実現させるには、承太郎と露伴の協力が必要不可欠。

 そしてあの2人は、ちゃんと事情を説明しないと俺の言う通りには動いてくれないと思う。だから、俺の前世の全てを明かすと決めた。

 

 ……俺のやり方は、承太郎にも露伴にも嫌われるだろうな。彼らには半強制的に協力してもらう予定だし。

 その上。これから先の未来で何が起こるのかを知っているのに、黒幕をあえて放置して、徐倫の牢獄行きや承太郎への襲撃も見逃すつもりだ、なんて。

 

 

(俺は……臆病者だ)

 

 

 今のこの世界が"漫画の中"ではなく"現実"だと分かっているくせに、原作の修正力やら原作崩壊の影響やら、そういった不確定要素に対して怯える、情けない臆病者だ。

 6部で救済を成功させるために、俺が思い付く方法はこれしかないのだと分かっているくせに、未だに承太郎達に嫌われる事を恐れている、どうしようもない臆病者だ。

 

 

 それでも俺は、嫌われる事への恐怖を無理やり抑え込んで、覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

(――――承太郎は、俺が護る)

 

 

 もちろん、承太郎だけでなく徐倫とその仲間達の事も護るが、俺が一番護りたい人は承太郎だ。あの人には何がなんでも幸せになってもらいたい。

 

 最初は前世で推していたキャラだから、という理由が強かったのに。

 いつの間にか、今世を生きている"園原志人"として、"空条承太郎"という1人の人間に幸せになって欲しいと、本気でそう思うようになっていた。

 

 あの人は俺にとって、前世の自分の推しで、助手としては頼りになる上司で……本当の、父親のような人で。

 憧れとか尊敬とか敬愛とか信頼とか親愛とか、その他諸々がない交ぜになって、なかなか重たい感情を向けている自覚はある。

 

 とにかく。承太郎の命を救うためなら、俺はあの人に嫌われても構わない。

 

 

(…………あの人に嫌われて、捨てられたらと思うと……軽く体が震える程に怖いけどな)

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 数週間前に突然、"この日からこの日は絶対に、何も予定を入れないで欲しい"と、志人にそう言われた時は面を食らったが……

 

 俺の仕事のスケジュール管理に関しては、優秀な助手であるあの子にほとんど任せてある。

 志人なら、後々俺に負担が掛からないように上手く調整してくれるはずだ。そんな信頼を寄せているからこそ、俺は二つ返事でそれを受け入れた。

 

 それに。滅多に我が儘を言わない志人が切羽詰まった表情でそう言うなんて、余程の事なのだろう。断る理由は無い。……しかし、その後の志人の話には驚いた。

 

 曰く。当日の朝に到着するために前日の夜から飛行機に乗り、日本で一泊してからアメリカに帰る予定なので、そのつもりで準備を進めておくように。

 飛行機の席や宿泊場所は既に手配済み。行き先は杜王町だが、その事は誰にも話さず内密に。

 財団側やエリンと徐倫、リハビリ中で今も志人と同居しているポルナレフには自分が言い訳を用意しておくため、万が一の時は話を合わせて欲しい……との事。

 

 つまり、俺には最初から拒否権が無かったという事だ。さらには周囲の人間に何も言わず、秘密裏に行動しようとしている。

 違和感だらけだ。俺に拒否権を与えなかった事も、秘密裏に行動を起こそうとしている事も、俺が何度問い詰めても目的を明かそうとしない事も……

 

 

(……志人らしくない。この子は今、何を考えて、何をしようとしているんだ?)

 

 

 その上、前日の夜に車で迎えに来た志人の態度も、異常だった。

 

 

「承太郎さん、こんばんは。……夜分遅くに大変申し訳ございません」

 

「…………いや、それは構わないが……」

 

「寛大なお言葉をありがとうございます。それではさっそくで申し訳ありませんが、空港へ向かいましょう。どうぞ、中へ」

 

「…………」

 

 

 やり過ぎな程に、礼儀正しい。貼り付けたような笑みを浮かべており、明らかに余所余所しい態度だ。

 いつもならもっと親しみやすい雰囲気で、人懐っこい笑顔を見せてくれるはずなのに……

 

 

 ……翌日の早朝に、日本に到着した。飛行機から降りてそこから公共交通機関を利用し、杜王町へ。

 杜王町に到着すると、志人は即座にイージスを呼び出して、俺達の周りに不可視と防音のバリアを張った。……それ程に、俺達がここにいる事を誰にも知られたくないのか?

 

 そのまま志人について行き……しばらく歩いた所で足が止まった。ここは、

 

 

「露伴の家?……彼に何か用があるのか?」

 

「……俺と露伴先生の勝負の決着が着いた後に、詳細をお話しします」

 

「勝負?」

 

 

 いったい何の勝負をするつもりなんだ?俺がそんな疑問を口にする前に、志人がドアホンを鳴らす。……すぐに扉が開き、露伴が顔を出した。

 

 

「おはようございます、露伴先生。お忙しい中、こんな朝早くに訪ねてしまい本当に申し訳ありません」

 

「えっ?……あ、ああ、いや。アポ無しという訳ではないし、今日は前もって仕事を片付けてあるから、別に問題無いが……」

 

「ご容赦いただき、感謝いたします」

 

「…………」

 

 

 露伴が志人を見て眉を顰め、それから志人の背後にいる俺に向かって視線で問い掛けて来た。"彼の様子がおかしいが、どういう事だ?"と。

 それに対し、俺は頭を振るしか無かった。すまない、露伴。俺にも分からないんだ。

 

 その後。露伴は志人の様子に困惑しながらも、俺達を中へ招き入れた。

 

 

「さて……志人君。さっそくだが、確認させてもらおう。先日の君の話は、本当なんだろうな?今さら撤回するのは無しだぞ」

 

「ええ、もちろんです。……今からやる勝負の内容は、初めに制限時間を設定しますが、それ以外は例の定期訓練の中であなたと俺がやっていた勝負と同様のものです。

 そして――もしもその勝負に俺が負けたら、今日は1日中あなたの言いなりになる」

 

 

 それぞれが椅子やソファーに座って落ち着いた頃、そんな会話を聞いた俺はぎょっとした。

 

 

「ただし。俺が勝ったら、あなたには俺の言いなりになってもらいます」

 

「……僕が勝った場合、君を本にしてその記憶を読むのも拒絶しないという事だな?さらには今日1日奴隷のように扱っても構わない、と?」

 

「その通りです。……俺が勝った場合、あなたには俺の言う事を何でも聞いてもらいますから、そのつもりで」

 

「…………いいだろう。受けて立つ!」

 

「おい、志人……」

 

「すみません、承太郎さん。あなたはそこで、この勝負を見守っていてください……お願いします」

 

「…………分かった」

 

 

 志人は相変わらず中身が花京院によく似ていて、ここぞという時に頑固になる。こうなったら梃子でも動かない。仕方なく、説得を諦めた。

 

 

「僕は、この勝負では未だに君に勝った事が無い……だからこれなら勝てると、君はそう思ってるんだろうなあ、志人君」

 

「…………」

 

「だが!数年前までの僕と、今の僕は全く違うッ!当時から今まで、僕がスタンドの特訓を欠かした事は無い!

 今の僕は!以前と比べて確実に成長しているのだよ、志人君!!僕は今日こそ君を打ち負かすッ!!」

 

 

 露伴は志人に向かって指を差し、そう宣言した。彼の言葉に嘘は無さそうだ。以前よりも成長している事は確かだろう。

 

 

 そんな彼に対し、志人は……貼り付けたような微笑を取っ払い、急に真顔になった。

 

 

「……御託はいいからとっとと掛かって来いよ、岸辺露伴」

 

「は、」

 

「――勝つのは、この俺だ」

 

「――――」

 

 

 ……一瞬、誰かと思った。というか今も少し疑っている。俺の隣にいるのは、本当に"園原志人"なのか?

 

 俺が知っている志人なら、基本的に年上に対して敬意を払う。

 こんな風に、相手に対し傲慢に振る舞う事は無いし、自信たっぷりに"勝つのは俺だ"なんて言わねえはずだ。

 

 しかし――あの瞳の輝きは、間違いなく志人のものだ。

 

 名は体を表す……その諺の通り、"志す"という力が強いこの子は、何か心に決めた事がある時はいつもこのように瞳を輝かせる。

 その輝きを何度も目にしている俺は、隣にいるのは本物の"園原志人"なのだと確信した。

 

 そして……志人がこの勝負の勝者になる事も、確信した。

 

 

(露伴は志人の気迫と、この瞳の輝きを見て気圧されちまったようだからな……)

 

 

 その後は俺の予想通り、制限時間が来るまで志人の優勢が崩れる事はなく、あっさりと決着がついた。

 

 勝負の途中に不意を突いて、志人ではなく俺を狙ったのは良い判断だったと思う。志人の話では、俺を狙う事は禁じていなかったしな。

 だが、志人はその不意討ちでさえも顔色を変える事なく対処してみせた。きっとこれも想定内だったのだろう。

 

 

「……では、露伴先生。約束通り、こちらの指示に従ってもらいます」

 

「…………僕に何をさせるつもりだ?」

 

 

 

 

 

 

「簡単な事です。――あなたのスタンド能力で俺を本にして、俺の記憶を読んでください」

 

「な、……はあッ!?」

 

 

 露伴がすっとんきょうな声を上げて驚いた。俺も、声には出さなかったがかなり驚いている。

 せっかく先程の勝負で自分の記憶を守り切ったというのに、何故わざわざそんな事を!?

 

 

「ちょ、ちょっと待て志人君!それが君の目的か?だったらさっきの勝負の意味は!?」

 

「意味はありましたよ。……俺がいきなり自分を本にして記憶を見てくれと言ったところで、露伴先生は頷いてくれなかったでしょう?

 あなたは数年前から、自力で俺に勝つ事にこだわっていましたし……それに――」

 

 

 と、そこで言葉を切った志人は……意味深な笑みを浮かべ、こう続けた。

 

 

「――"この岸辺露伴が最も好きな事の一つは、自分で強いと思ってる奴にNOと断ってやる事だ"」

 

「っ!?」

 

「自分の命が掛かっていて、しかも自分の嫌いな奴を引き渡せば自分だけが助かる……

 そんな状況で、堂々とこんなセリフを言い放つ天の邪鬼な人間が、素直に従ってくれるとは思えませんでしたから」

 

「…………馬鹿な……!何故君がそれを知っている!?僕のその言葉を聞いたのは、あの場では噴上のスタンドだけだったはずだ!

 仗助も少し近くにいたようだが、さすがにその言葉は聞こえていなかっただろう。

 噴上のスタンドもあの時はまだ無意識に発動していたから、本体である奴がその言葉を知っているはずが無い!

 

 つまり、誰かからその言葉を聞いた訳でも無い!もちろん僕だって志人君には何も話していないッ!!それなのに、何故……!?」

 

 

 ……動揺している露伴の言葉から察するに、彼が話しているのは数年前、トンネルの中でハイウェイ・スターに襲われた時の事だろう。

 俺も、志人も。その件については、全てが終わった後に仗助から教えてもらっただけで、詳しい事はあまり知らない……はずだったのだが。

 

 どういう訳か。志人はその場にはいなかったはずなのに、当時の状況を知っていたらしい。

 

 

「……その謎の答えも、俺の記憶の中にあります。それを見れば、大体の事が理解できるはずです。

 あなたの疑問の答えも……俺がこれから何をしようとしているのかも、ね。

 

 俺の目的を果たすために、まずは露伴先生と承太郎さんに、俺の記憶を見てもらう必要があります。

 敗者には勝者の言う事を聞いてもらいますよ、露伴先生。……そのスタンド能力を、俺に使ってください。

 

 

 そして。あなた達のその目で、しっかりと見てください。――"園原志人"の、全てを」

 

「――――」

 

「……さぁ、どうぞ」

 

 

 そう言うと、志人は目を閉じて静かになった。……露伴が俺の様子を窺っている。俺は彼の目を見て頷く事で、スタンドの使用を許可をした。

 

 

「…………ヘブンズ・ドアー」

 

 

 能力が発動し、志人の顔面が本になった。それと同時に気絶した彼は、穏やかな表情で目を閉じている。

 露伴はいそいそと志人の記憶を読み始めた。何だかんだ言いながらも、この男は志人の記憶に興味津々だったのだろう。明らかに嬉しそうだ。

 

 

 しかし、その直後。露伴の様子に変化が現れた。訝しげに首を傾げたかと思えば、次の瞬間には困惑と驚愕の表情になり……

 ついには唖然と、口をパカリと開けて動かなくなった。

 

 

「露伴?……おい、先生!どうした?」

 

「…………思えば見た目からして既におかしかった……この本は分厚過ぎる……本来ならたかが二十数年程度の人生ではこんな厚さの本にはならない……その上彼の記憶の内容は……っこれは事実なのか?別世界から転生?この世界が二次元?そして――"ジョジョの奇妙な冒険"……!?いったい何なんだこれはッ!!」

 

「…………やれやれだぜ」

 

 

 この様子では、露伴は使い物にならないな。

 

 志人には悲惨な家庭事情もあるし、本人の許可があるとはいえ、その記憶を読む事には抵抗があるのだが……仕方ない。自分の目で確かめるとしよう。

 そう決めた俺は、自分の世界に入り込んだ露伴を放置して、志人の記憶を読み進める。……そして、露伴と同じく唖然とした。

 

 

(…………この子は一度死に、そして"園原志人"として再び生まれた?)

 

 

 輪廻転生。別世界から漫画の中の世界に転生した、だと?……確かにこれでは、露伴がああなったのも当然、か。

 

 俺達が今生きている世界が、"ジョジョの奇妙な冒険"という漫画の世界である事。

 志人は元々、この世界とは別の世界で別人として40過ぎまで生きていて、その別世界では"ジョジョの奇妙な冒険"の読者であった事。それから……

 

 ……今世の志人の幼少期から中学生までの内容は、省略しよう。

 詳しく思い出すと心が痛くなる。何年も前に枯れてしまったはずの涙が出そうになって内心かなり慌てた。

 

 

 気を取り直して、この世界で仗助と出会った以降の話から。

 

 仗助と出会って前世の記憶を取り戻し、その後スタンド使いになった志人は、積極的に行動し始めた。

 志人の言う、ジョジョの奇妙な冒険シリーズの原作4部……杜王町で起こる幾つもの出来事に介入し、未来を変えていく。

 

 

(俺と出会った時のあの言葉は、仗助ではなく俺に対しての言葉だったのか……)

 

 

 あの言葉が無かったら、俺は漫画の世界の自分のように、その後も腑抜けたままで無様な姿を晒す事になっていたかもしれない。この子には感謝だな。

 

 それに、もう1つ……家庭について口出ししてくれた事にも、感謝しなくては。

 どうやら志人の記憶によると、俺があのままエリン達を放置し続けた場合、もう少し先の未来で離婚する事になっていたらしい。

 

 志人に出会う前の俺なら、それほど抵抗する事なく離婚を済ませただろうな。……だが、今の俺には離婚する気は無い。

 エリン達を守るためには、肉体的に守るだけでなく、精神的にも守らなければ意味が無いのだと、他ならぬ志人に教えてもらったから。

 

 

(……杜王町での騒動中に、本当ならもっと死人が出るはずだった……仗助の祖父に、形兆君。それから重清君と辻彩。

 あとは、シエルもそうか?漫画の中では一度死んで、別の生物として生き返っていたようだが)

 

 

 なるほど。重清君だけでなく、辻彩の保護を提案された時。やけに具体的な危険性を語っていたが……

 本来ならそれが現実になって吉良が俺達から逃げ切り、あの靴屋での戦闘よりも大事になるところだったんだな。

 

 志人は、そんな最悪の事態を阻止してみせた。……たった1人で運命に立ち向かい、見事に打ち勝ったのだ。

 

 そしてイタリアの騒動では、杜王町の時よりも多くの命を救った。

 元暗殺チームの全員と、アバッキオ、ブチャラティ、ナランチャ。それから……ポルナレフの事も。

 

 多くの人間達を死の運命から護るために相当な無茶をしていた事には、正直に言えば説教したい。

 だが、どれもこれも既に終わった出来事だし、これほど多くの者の命を救った事に関しては称賛に値するだろう。

 

 ……まあ、ちょっと小言を言う程度で許してやるとするか。この子はよく頑張っているからな。

 

 

 その後も、志人の記憶を読み進めていくと……今年に入った辺りの記憶から、その内容に異変が現れる。

 

 

(……これよりも前の文章は、ほとんどが綺麗な文字で書かれていたのに……ここからは急に読みにくい文章になっている。

 これは、まるで――手を震わせながらも無理やり書いたような文章だな)

 

 

 いったいどういう事だ?……自分の世界に入り込んでいた露伴をなんとか正気に戻し、早急に俺が読み終わった内容までを読ませて、この異変について聞いてみた。

 

 

「これは本人の精神状態が、文章にそのまま現れているんですよ。……どうやら、志人君は何かに対して恐怖を抱いているようだ」

 

「恐怖?……何に対して怯えているんだ?これでは文字が読みにくくて分からん」

 

「僕は読めます。特別に読み上げてあげましょうか?」

 

「…………頼む」

 

 

 上から目線なのがちょいと癪に障るが、それよりも志人の事が気になるから見逃してやる。

 

 

 そして、露伴が読み上げた内容は……とんでもない物だった。思わず一歩下がり、本にされた志人から視線を外して額を押さえる。

 

 志人曰く、原作6部……徐倫が主人公となる物語、いや、これから先の未来で起こる事件の最中、俺と徐倫とその仲間達が、黒幕の手で殺害される。

 黒幕であるエンリコ・プッチは、あのDIOの友人。そいつの目的は――"天国"。

 

 

(俺の記憶の中にある、"天国へ行く方法"を欲している?……そうか、DIOの日記だッ!!)

 

 

 まさか。俺があの日記を読んだ事が、ここで障害になるとは……これじゃあ、あの時燃やした意味が無いな。

 人の記憶やスタンドをDISCにして抜き取る……そんな真似が出来るスタンド使いが現れるなんて想定外――いや、待て。今はそんな事よりも志人の方が大事だ。

 

 

「…………なるほど。志人君は、承太郎さん達が死ぬ未来を変えたいと考えている……しかし、そのためには僕と承太郎さんの協力が不可欠。

 だが、自分が考えているやり方や、僕達に半強制的に協力してもらう事に対して反発され、嫌われるだろうと思っている。

 

 否、そう思い込んでいる(・・・・・・・)。だからこんなに怯えているんだな……様子がおかしかった原因は、これか……」

 

 

 そう、それだ。プッチとかいう狂人の事はさておき、志人の思い込みをどうにかしなければ。

 

 

「……やれやれ、だな……この子は本当に自己評価が低過ぎる……」

 

「同感です。あれほど周囲から慕われているというのに、本人にその自覚が全く無い。その上……これは、また……」

 

「……どうした?」

 

「承太郎さん……あなたは、志人君に相当愛されていますね」

 

「は?」

 

「ほら、見てください」

 

 

 俺が思わず一歩下がった後も1人で読み進めていた露伴が、あるページを指し示す。そこには……

 

 

 

 

 

 

 ――――承太郎は、俺が護る。

 

 

 ……見開きいっぱいに、かなり大きく力強い文字で、そう書かれていた。

 

 

「余程強く決意していないと、こうはならないだろう……このページの前後の文章は恐怖で震えた文字になっているくせに、ここだけはしっかりと書かれているな。

 嫌われる事に対して怯えながらもこれだけは絶対に譲らないという、とてつもなく強い意志を感じる……」

 

「――――」

 

「まったく、これだから園原志人という奴はッ!こうして際限なく多くの人間をたらし込んで好感度を稼いでいるくせにその自覚が皆無だなんて信じられないッ!!承太郎さん、あなたもそう思いませんか!?」

 

「――――」

 

「?……承太郎さ、」

 

「露伴」

 

「あ、はい」

 

「もう読み終わったか?」

 

「……え、ええ、まあ……志人君の記憶なら、全て読み終わりました、けど、」

 

「今すぐにスタンド能力を解除しろ」

 

「えっ?」

 

「早く」

 

「わ、分かりました」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――ふと、目を覚ます。意識が戻ってすぐに周囲の状況を確認しようとした、次の瞬間。

 

 

 突然腕を引っ張られて前のめりになり、何かに受け止められて、背中に何かが触れて――ぎゅっ、と抱き締められた。

 

 

「…………は……?」

 

 

 何か……いや、誰かの肩越しに、呆気に取られた様子の露伴の姿が見える。……つまり、俺を抱き締めているのは承太郎だ。え、なんで??

 

 

「ろっ、露伴、先生!これは何がどうしてこうなったんですか!?」

 

「…………」

 

「先生……?」

 

「…………あー……まあ、その、うん、ええっと――僕達、特に承太郎さんが志人君を嫌う事は一生無い、と。それだけは断言しておこう」

 

「はい??」

 

 

 それ、全然質問の答えになってないんだが?しかも俺の記憶を見たはずなのにそれでも俺を嫌う事は一生無いって、どういう事なの??

 

 

 

 

 

 

 






・頭上に"?"マークだらけの助手君

 あ、ありのまま、今起こった事を話すぜ!「目を覚ました瞬間前世の最推しに抱き締められていた」な、何を言ってるか分からねぇと思うが以下略。

 そろそろ6部介入について考えよう……と思っていたら、のっけから原作崩壊に陥る可能性に気づき、愕然。
 対策を必死に考えた結果。承太郎と露伴に全てを明かして協力してもらうしかないと判断し、嫌われる(思い込み)事を覚悟して計画を実行した。

 承太郎と露伴への対応が余所余所しくなったのは、嫌われる事への恐怖や大事な計画を実行している事による緊張のせい。
 勝負前に露伴に対して強気だったのは、いろいろ切羽詰まっていて自棄になっていたから。

 露伴のスタンド能力が解除され、意識を取り戻した途端、前世の最推しに抱き締められて驚愕。
 焦って露伴に状況説明を求めると、答えになってない言葉が返って来て頭上が"?"マークだらけになった。

 ……え?この人達、俺の記憶を見たんだよな?じゃあ俺が考えた6部介入方法も見たよな?
 それなのに俺を嫌う事は一生無い、ってどういう事なの??※いろいろ自覚が足りていない。


・衝動に身を任せた海洋学者

 大事な大事な助手が自分の知らない所で原作という名の運命と戦っていた事を知り、情緒不安定にさせられた挙げ句。
 最後の最後で特大の人たらし爆弾を落とされた事が止めになり、衝動的に抱き締めちゃった人。

 様子がおかしい園原の事を心配しながらも大人しくついて行き、流されるままに園原の記憶を見て……唖然。
 この世界とは異なる別世界?"ジョジョの奇妙な冒険"?転生?はあ??

 ……いろいろ言いたい事はあるが、この子は1人でよく頑張っていたようだし、小言だけで許してやるか。※最近、助手に対してかなり甘々になりつつある。

 園原の"嫌われる"という思い込みに対して呆れていた所、特大の人たらし爆弾を落とされて衝動的に抱き締めにいった。
 とりあえず、あらゆる意味でどうしようもないこの子をよしよししてやろう。話はそれからだ。


・呆気に取られた漫画家

 承太郎らしくない予想外の行動を目撃し、唖然。……スケッチしたいがぶん殴られそうだからやめておこう。

 園原の気迫に押されてしまい、勝負で負けた。後に園原の記憶を見て、ある意味捨て身で勝負を仕掛けてきたからこそあれ程強かったのか、と。決して口にはしないが素直に敗けを認めている。

 "ジョジョの奇妙な冒険"や転生者の存在を知った事で創作意欲を刺激され、しばらく自分の世界に入り込んでいたが、承太郎によって正気に戻された。
 以降は真面目に読み進めて、園原の計画には驚き、思い込みには呆れ……その上、承太郎に対する園原のクソデカ感情を知ってさらに驚く。

 これまた決して口にはしないが、ここまで必死に1人の人間を護ろうとしている園原には、密かに敬意を表したいと思っている。






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