空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・前回の続き。最終決戦が始まる前~最終決戦終了後まで。男主視点

・ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり。いろいろおかしな点があるかと思いますが、見逃してもらえるとありがたいですm(_ _)m




"最強の盾"【前編】

 

 

 

 

 護衛対象である資産家の男性から聞いた、彼を狙う組織の名は……"フレダミンテ"。

 不思議な名前だったが、俺も財団も特に疑問に思う事はなかった。……とある出来事が起こるまでは。

 

 

 原作通りなら、おそらく数日後には徐倫達が刑務所から脱獄する……そんな、ある日の事。

 

 "フレダミンテ"の奴らが襲撃して来たのだが、その構成員達の中に1人、イタリア人がいる事に気づいた。

 そいつは組織の幹部のようで、構成員達の背後で何やら偉そうに指示を出していた。

 

 今まで襲撃して来た構成員達はそのほとんどがアメリカ人だったが、ここでイタリア人の幹部が出て来た……その事に対し、俺はふと思う。

 

 

("フレダミンテ"って、じつはイタリア語だったりする?)

 

 

 いったい何故そう思ったのかは、自分でもよく分からない。ただの勘だった。

 しかし。一度そう思うとFreddamente(フレッダメンテ)……日本語で"冷ややか"や"冷静"といった意味のイタリア語に聞こえてしまう不思議。

 

 そんな馬鹿な……とは思ったが、敵に関する情報は何でも良いから手に入れといた方が良い。念のために確かめてみよう。

 とはいえ。俺は護衛対象の側から離れられないため、別の人に調査を頼む事にした。

 

 

「――という事なんですが……風花さん。時間がある時や何かのついででも構わないので、少し調べてみてもらえませんか?」

 

「分かりました!今週中に別件でローマ支部に向かう予定でしたし、ちょうど良いので調べてみますね」

 

「ありがとうございます!よろしくお願いします。……余計な仕事を増やしてしまってすみません」

 

「そんな!!志人様、っ、ゴホン!」

 

「んん?」

 

「……そ、園原さんからの頼みでしたらいつでも承りますよ!何でも言ってくださいね!」

 

「そう、ですか?ありがとうございます」

 

 

 いやー、良い人だよなぁ。承太郎の助手ってだけで俺の事まで優遇してくれるなんて。

 従兄の六車さんにもいつも世話になってるし、風花さんとあの人には頭が上がらないな……

 

 

 ……それから、さらに数日後の現在。

 

 

(今頃は皆、例の病院で戦っているんだろうか……?)

 

 

 資産家の男性の家で彼の護衛を続けながら、俺はそんな事を考えていた。

 

 

 今日は資産家の男性が仕事の休日で、外出する予定も無いので一日のほとんどをこの別荘で過ごす事になった。

 

 彼の仕事が予定通りに進めば、この別荘から別の州にある自宅へと帰る事になっている。その時、俺の護衛任務も終わる予定だ。

 そこならこの別荘よりも警備が厳重だから、護衛の必要は無くなるとの事だが……本当に大丈夫だろうか?

 

 なんというか、不気味なんだよなぁ……彼を狙っている組織の動きが。

 よく分からない違和感がある。彼を狙っているようで、他に何か別の目的があるようにも見えるし……不気味だ。

 

 

 そんな時、資産家の男性から"庭でお茶を飲みながらのんびりしたいので、ちょっと付き合ってくれ"と言われた。

 

 彼はジョセフほどではないが高齢で、休日は家でお茶を飲みながらのんびりする事を好んでいるという。

 しかも、彼はコーヒー派でも紅茶派でもなく、なんと日本の緑茶派だった。

 

 年を取ってからたまたま飲む機会があって、それ以降緑茶に嵌まってしまったらしい。

 それもあって日本の文化に興味があるそうだ。日本人である俺に対しても興味津々で、護衛についた当初から日本についていろいろ聞かれている。

 

 そういう事なら、緑茶の美味しい淹れ方でも教えてあげようかな、と。そう思って実践したら大喜びされて……

 今では、彼に緑茶を淹れるのは俺の仕事になっていた。どうもそれがきっかけで気に入ってもらえたらしく、彼との関係は良好である。

 

 

 おっと、閑話休題。……そんな訳で、今日のティータイムの緑茶も俺が淹れた。今は庭の真ん中にテーブルと椅子を置いて、そこでのんびりお茶を味わっている。

 この広い庭の真ん中なら、何処から敵が現れてもすぐに察知する事が出来るからな。あえてそうしてもらった。

 

 

(…………平和だ)

 

 

 俺がこんな事をしている間にも、承太郎達がそれぞれ戦っているのだと思うと、やはりやるせない気持ちにさせられるが……大丈夫だ。

 もう迷わないと、承太郎達の事を信じようと、決めている。俺は彼らから届くであろう吉報を待つだけで良い。

 

 

 そう。俺はそんな、穏やかな気持ちで満たされていたのだが――

 

 

「――はい、台無し……」

 

 

 不穏な気配の接近を察知した。緑茶を淹れたティーカップを静かに置き、立ち上がる。頭を護衛任務モードへ切り替えた。

 

 

「ユキト君?」

 

「大変申し訳ありません……今日のティータイムは、これで強制終了となるようです」

 

「……まさか、奴らが?」

 

「はい。……席から立って、私の後ろに来てください。そろそろ奴らが来ます」

 

「わ、分かった」

 

 

 彼が側に来るのを待ち、それからイージスのバリアを張る。……やがて、先程から微かに聞こえていた大勢の足音が近付いてきた。

 

 

(…………随分と、数が多いな……)

 

 

 どう見ても数十人はいるぞ?いよいよ奴らも痺れを切らして、大勢で攻めて来たのか?……と、その大勢の中から1人の男が前に出た。おそらく、奴が組織のボスだな。

 

 

「よお。こんな所で呑気にティータイムってか?最強の盾さんよ……」

 

「……敵がいつ来ても対処出来るように、待ち構えていただけだ」

 

「ふん……澄ました顔しやがって。内心、この数にびびってんじゃねぇのか?」

 

「さて?どうだろうな」

 

「…………ちっ」

 

 

 男が片手を上げると、残りの奴らがバリアの周りを取り囲んだ。……ふむ、逃げ道は空だけだな。

 奴らにはまだ、イージスとの同化という切り札を見せた事は無い。万が一の時は、同化して護衛対象を抱えて飛んで逃げるとするか。

 

 

「ゆ、ユキト君……!」

 

「大丈夫です。ご心配なく」

 

「…………君は相変わらず、頼もしいな……」

 

「お褒めに預かり、恐縮です」

 

 

 個人的に、護衛任務で最も必要なものは平常心だと思っている。自分が冷静になるためにも、護衛対象を安心させるためにも、これは必要不可欠だ。

 さらに、俺の場合はイージスのバリアを長時間維持するためにも必要だからな。平常心を保つ努力は怠らない。

 

 

 その後。奴らの攻撃を防いでいる最中に、いくつか分かった事がある。

 

 それらの情報は、組織のボスと幹部の数人がイタリア語で会話していた内容を盗み聞きして手に入れた情報だ。

 奴らどころか、念のために護衛対象にも俺がイタリア語を理解している事は隠していたため、その会話は盗み聞きし放題だった。

 

 まず。組織の幹部の中に、かなり厄介なスタンド能力を持つ者がいる事。

 それは、スタンド使いではない人間でもスタンド攻撃が出来るようになり、スタンド像も見えるようになる武器を、何個も作り出せる能力である事。

 

 その上組織の構成員の半分以上が、その武器を持っている……つまり、元はスタンド使いではないという事。

 その武器を持たせて訓練さえ済ませれば、擬似的なスタンド使いを何人も量産できる事……本当に厄介だな。

 

 次に、今この場にいるのは非戦闘員を除いた組織の全戦力である事。幹部の数は10人弱で、その全てがスタンド使いである事。

 ……俺1人に対して、敵スタンド使いが10人弱。それに加えて擬似的なスタンド使いも大勢いる……これはちょっと危ないかな?

 

 そう考えた俺は、その情報を入手した時点で財団にこっそり救援要請を送った。

 ここからだとかなり距離があるし、財団職員達が駆け付けるには相当な時間が掛かると思うが……何もしないよりはマシだろう。

 

 

 あとは、助けが来るまで待つしかない……そう思っていたんだが、その直後に聞き捨てならない会話を聞いた。

 

 

「なぁ、ボス。あの日本人、本当に捕まえられるのか?このままだと、依頼人の指示通り生きたまま捕らえるどころか、殺す事すら出来そうにないぞ……?」

 

「弱音を吐くな!無理でもやるんだよ!!――あの神父から大金を貰うため、そして俺達の名を上げるためだ!やるしかねぇ!!」

 

 

 神父、だと?

 

 

「…………すみません、ちょっとお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「ん?何かな?」

 

「あなたの知り合いに、神父がいたりしませんか?もしくは、神父に何か恨まれている可能性などは?」

 

「……その質問がどういう意味なのかは分からんが、正直に答えるとワシに神父の知り合いはおらん。それに、神父に恨まれるような事をした覚えもない」

 

「そう、ですか……」

 

「それで、その質問はどういう意味なのじゃ?」

 

 

 彼は、神父に関して何も心当たりがない。嘘をついているようにも見えない……無関係だ。

 という事は、奴らが言っている神父とは間違いなく、俺が今思い浮かべている男の事だろう。

 

 馬鹿な……何故今まで少しもおかしいと思わなかったんだ!?

 この依頼が奴の――プッチ神父の罠だと思えば、徐倫が例の事件に巻き込まれる日の前日に、タイミング悪くこの依頼が来た事にも説明がついたはずなのに!!

 

 

「ユキト君?」

 

「…………本当に、申し訳ありません……奴らの狙いはあなたではなく、私だった」

 

「……なんだって?」

 

「つい先程、奴らの会話を盗み聞きして分かった事なのですが、奴らはとある神父から依頼されて動いているようです。

 そしてその神父は……詳細を明かす事は出来ませんが、私の大切な上司とその娘さんと因縁がある男でして……私が狙われているのは、おそらくそのせいです」

 

「…………そう、だったのか……」

 

「大変申し訳ありません……あなたは、我々の事情に巻き込まれてしまった被害者だ」

 

「いや、構わんよ。……むしろ、ワシの方が奴らにまんまと利用されて君を呼び寄せてしまったのだから、君に謝罪しなければならん立場だ」

 

「そんな事はありません!あなたは何も悪くない」

 

 

 そう、彼は何も悪くない。悪いのは俺の方だ。そのつもりが無かったとはいえ、無関係の人間を巻き込んでしまった。

 その上。俺が奴らに捕まったら、プッチ神父はこれ幸いと承太郎達に対する人質として使うだろう。

 

 

 ――絶対に負けられない理由が出来た。

 

 

(イージス……こういう事は出来るか?)

 

(……あぁ、なるほど!うん、出来るよ。あとは志人の想像力次第だけど)

 

(大丈夫だ。あれなら想像しやすい)

 

 

 心の中でイージスとそう会話して、さっそく実行に移した。

 バリアにある物の性質を付与し、今もなお一気に撃ち込まれている銃弾を、全て受け止める。

 

 

「……な、何だあれは?」

 

「弾が当たる度に、あいつのバリアの形状が変わってるぞ……?」

 

 

 周囲がざわざわしているのが聞こえる。……一応、教えておくか。

 

 

「――ちなみに!このバリアには今、ゴム(・・)の性質が付与されている!」

 

「……は?ゴム?」

 

「っ、まさか!お前ら、伏せ――」

 

 

 ――受け止めていた全ての弾丸を、跳ね返した。弾丸はあらゆる方向に飛び、組織の構成員達に被弾する。

 参考にしたのは、某海賊漫画の麦わら帽子が似合う主人公の能力である。あのシーンは割と記憶に残っていたため、イメージしやすかった。

 

 

 あちこちから悲鳴が上がり、バタバタと人が倒れていく。……もしかしたら、当たり所が悪くて死んだ奴もいるかもしれない。それも……覚悟の上だ。

 

 

(俺は、負けられねぇんだよ……!!)

 

 

 承太郎達の足枷になりたくない……そんな個人的な理由から、俺はついに自分の力で人を殺してしまったのかもしれない。それでも、負ける訳にはいかないんだ!

 

 

「嘘だろ……!?そんなのありかよ!?」

 

「今ので半数近くやられちまったぞ……!!」

 

「クソが!何なんだテメーは!?攻撃は一切出来ないんじゃなかったのか!?」

 

「……誰がいつそんな事を言った?私のスタンド能力は、使い方次第で攻撃する事も可能だ。……しかし、そうだな。

 本当はこの名は嫌いなのだが、あえてこう言ってやるとするか――」

 

 

 3部承太郎を意識して身に付けていた帽子のつばを掴み、被り直す。……自分を奮い起たせるためにも、相手を威圧するためにも。堂々と言ってやろう。

 

 

 

 

 

 

「――"最強の盾"を、なめんじゃねぇぞ……たかが防御しかできねぇ人間が、最強なんて呼ばれる訳がねぇだろうが」

 

「ひっ……!?」

 

「ば、馬鹿野郎!怯むな!!攻めろ!!」

 

 

 ……攻撃が再開されたが、先程よりも人数が減ってるし、あまり勢いが無い。これなら、しばらくは耐えられそうだ。

 

 とはいえ、俺にもいずれは限界が来るだろう。こうしている間にも、体力と精神力がじわじわと減っているのだから。

 それに、護衛対象は高齢だ。限界が来るのは俺よりも早いだろう。その時までに財団職員達が駆け付けてくれるといいのだが……

 

 

 しかし、その時。思わぬ援軍がやって来た。

 

 

「――ゴールド・エクスペリエンスッ!!」

 

「セックス・ピストルズッ!!」

 

「エアロスミスッ!!」

 

「パープル・ヘイズッ!!」

 

 

 聞き覚えのあり過ぎる声とスタンド名と共に、4人の男達が奴らに攻撃を仕掛ける。そして、奴らと俺の間に割って入って来たのだ。

 

 

「…………ええぇぇぇー……?」

 

 

 仕事中だからと、心の中以外では今まで一度も喋らなかったイージスが、思わず声を出してしまう程に、衝撃的な登場だった。もちろん、俺も驚いている。

 

 

(――アイエエエ!?ドン・パッショーネ!?ドン・パッショーネナンデ!?)

 

 

 いやマジでなんでいるんだお前っ!?しかもミスタ達まで引き連れて!!

 

 

「なっ、えっ?じょ、……ジョルノ?」

 

「ええ、僕ですよFratello(兄さん)……お久しぶりです」

 

 

 俺を見て嬉しそうな笑顔を向けたジョルノは、次の瞬間には奴らをギロッと睨んでいた。怖い怖い。

 

 

 ……その後。ジョルノはミスタ達に奴ら……フレッダメンテへの対処を任せて、俺と情報を共有してくれた。

 

 プッチ神父がここに向かって来る事、承太郎達がそれを追いかけて来る事もそうだが……

 まさか、風花さんへの依頼がきっかけでこんな展開になるとは思わなかった……というか、なんでそこまで思い至らなかったんだ!?

 

 イタリア語の組織名で、しかも"情熱"の反対っぽい"冷ややか"や"冷静"といった意味を持つ名前の組織が、パッショーネと無関係な訳ないだろ!?

 それに……今になって思い出したぞ?原作の作者がいつだったか、神父の引力に引かれて"ジョルノもフロリダに来ていたかもしれない"と示唆していた事を……!

 

 

 思い出すのが遅過ぎるんだよ、俺の馬鹿!!

 

 

(どうする?神父もいずれここにやって来るぞ!?奴が明らかにDIOの血を引いているジョルノを放っておく訳がないし……!)

 

 

 と、そんな事を考えていたらさっそくジョルノが神父の接近を察知してしまった。

 案の定。やって来たプッチ神父はジョルノに強い興味を示し、俺を捕らえて自分に差し出せと命令している。

 

 ジョルノを見ると……様子がおかしい。それに、例の星の痣を押さえている。

 ……彼の中で今何が起こっているのか、なんとなくだが理解した。ジョルノなら大丈夫だと思うが……俺に何か、出来ることはないだろうか?

 

 

(…………そうだ!原作1部のあの冒頭部分!)

 

 

 うん、あれにしよう。きっと今のジョルノなら伝わるだろうと、そう信じて。……神父にも聞かせるために、英語で話す事にした。

 

 

「"二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ"」

 

「え、」

 

「"一人は泥を見た。一人は星を見た"……お前は、どっちだ?"泥"を見るか、"星"を見るか」

 

「――――」

 

 

 

 

 

 

「――"星"だッ!"星"を見る!!僕は孤独と共に見る"泥"ではなく!仲間達と共に見る"星"を選ぶッ!!」

 

 

 嗚呼……それでこそ、ジョースター家!それでこそ、原作5部主人公!!

 これで、ジョルノの事はもう心配いらないだろう。あとは承太郎達が到着するまで、なんとか持ち堪えて――

 

 

 ――なんて思っていたら、承太郎がまさかの登場。いくらなんでも早過ぎじゃねぇか!?しかも到着早々ラスボス殴り飛ばすとか何やってんだ!?

 

 

「志人、大丈夫か?怪我は?何もされてないか?無事か?」

 

「ちょっ、待っ、大丈夫だ、っ、です!!そんな全身確かめようとしなくても俺は無事ですから!!」

 

 

 ……どうやら、随分と心配させてしまったらしい。本当はこの人の復活を喜びたかったのに、それどころではなくなってしまった。

 

 さらに後から徐倫と仗助、リゾットがすっ飛んで来たし、杜王町組と6部の脱獄組もやって来た。

 その中にはイルーゾォとホルマジオもいて……あ、なるほど!到着が早かったのは彼らのスタンド能力のおかげか!

 

 

 それから。承太郎の指示で、戦闘には参加できない人達をイルーゾォの能力で一時的に避難させる事になった。

 避難するのは俺の護衛対象だった彼と、エンポリオ。ここに来るまでにスタンド能力を使い過ぎたホルマジオに……露伴も。

 

 露伴は先程から、何か言いたげな顔で俺の様子を窺っていた。……理由は分かっている。

 大方、自分が神父を本にした時に隅々まで読んでおけば、こんな事にはならなかったのでは?とでも考えているんだろう。

 

 ならば、俺の方から言ってやる。……他の人達の目がこちらに向いていないのを確認してから、承太郎と話している露伴の下へ向かった。誰が聞いてるか分からないし、一応敬語で話そう。

 

 

「露伴先生、」

 

「何も言うな、志人君」

 

「…………」

 

「大丈夫だ……分かっている」

 

「それでも、念のために言わせてもらいます。――俺は、"あんたのせいだ"とは言わないからな?」

 

「っ、……分かってると言ったじゃないか!」

 

「念のため、ですよ」

 

 

 そう、念のためだ。……謝る事が苦手なこの人が、後々罪悪感に苛まれないように、予め俺から念押ししておく。

 

 

「…………志人?露伴?……何の話だ?」

 

「あ、すみません、承太郎さん。こっちの話です」

 

 

 承太郎は裏工作については知っているが、露伴が裏工作を済ませた後の俺達の会話は知らない。

 "気になるから教えろ"と目で訴えられているが、内緒だ。これは俺と、露伴だけの秘密。

 

 

 その後。露伴は置き土産にと、ミスタとナランチャが英語を話せるようにしてやり、イルーゾォが用意した鏡の中へ入って行った。

 さて、これで避難は完了。あとは俺達が、プッチ神父をどうにかするだけ……なのに、

 

 

「…………嫌な予感がする……何かを、見落としているような――」

 

 

 ――そして、世界が傾いた。……いや、俺達が水平に落ちて行く!!

 

 

「嗚呼……俺は、なんて事を――っ、ごめん、先生……これは俺のミスだ……!」

 

 

 既にいない露伴に対して謝罪しても仕方ないが、そう言うしかなかった。とんでもないミスだ!

 

 

 プッチ神父を本にして、メイド・イン・ヘブンを封印してもらった時。

 "ホワイトスネイクはいずれC-MOONに進化するが、C-MOONがメイド・イン・ヘブンに進化する事は永遠にない"……と書き込んでもらった訳だが。

 

 

("ホワイトスネイクはいずれC-MOONに進化する"――その場所を指定していなかった!!)

 

 

 そこで"ケープ・カナベラルにて進化する"とでも書いてもらっていたら、ここで進化する事は無かったはず!

 おそらく、"いずれC-MOONに進化する"という文面も駄目だったんだ!"いずれ"という事は、進化する時期も指定していないという事……!!

 進化する場所も、時期も指定していない……それならいつ、何処で進化するというのか?

 

 

 そんなの"プッチ神父が追い詰められたその時、その場所で"に決まってるじゃねぇか!!

 

 

「イージス!頼むっ!!」

 

「任せて!」

 

 

 イージスのバリアにクッションの効果を付与して、水平に落ちて行く全員を囲んで受け止めた。

 今はこれでなんとかなるが、ずっとこのままという訳にもいかない。

 

 会話の途中、形兆には現実逃避でふざけているという体で誤魔化したが……内心では、今までに無い程に焦っていた。

 

 

(俺のせいだ……!!)

 

 

 今こんな事になっているのは、俺のせいだ!俺がなんとかしなければならない!!

 ついにはプッチ神父がこの場から離れようとしている!何か、何か方法は無いのか!?奴をこの場に留めつつ、この重力をなんとかする方法は――

 

 

(――――あった)

 

 

 これだ。これしか無い!こうすれば、俺はそれ以外の行動は取れなくなるが、この状況を打開する事ができる!!……その時、心の中でイージスが話し掛けて来た。

 

 

(……本当に、それで良いのかい?志人)

 

(あぁ、これでいい!これしか方法は無い!!)

 

(…………今の志人に何を言っても、無駄だね。仕方ないな。やろう)

 

 

 さっそく皆に話して……一度バリアを解除する事になってしまうのは本当に申し訳なく思ったが、その方法を実行した。

 

 

 全員が再び水平に落ちて行く中、プッチ神父をバリアの中に閉じ込めると同時に、奴を中心に重力が逆転する力を抑え込む。……しかし、

 

 

「駄目だ、志人!これ以上は全てを防ぎ切れないっ!!――裏返るぞ(・・・・)!!」

 

 

 その力は、俺の予想以上に、強過ぎた。

 

 

「ぐっ!あああぁぁっ!?」

 

「志人ォッ!!」

 

「お兄ちゃんッ!?」

 

 

 痛い痛い痛い……っ!!原作の徐倫は、こんな痛い思いをしてたのか……!!なんて可哀想に!!

 

 

 両手の指が裏返った。仗助が治療してくれたが、今度は両手と両腕から血が噴き出している。

 あぁ、申し訳ない……結局仗助の手を煩わせているし、皆に心配させてしまった。

 

 

「治しても治しても、治らない……それは当然だ。元よりこの力は、本来なら人間の腕2本程度で抑えられる物ではないのだから……」

 

 

 神父の声が聞こえた。……そうか、そうだよな。冷静に考えれば分かったはずなのに。イージスもきっと、本当はそう言いたかったのだろう。ごめんな。

 

 

(それでも俺は――諦めないっ!!)

 

 

 ……その後。俺はただひたすら、神父の力を抑え込む事に集中していた。集中し過ぎて、記憶が曖昧だ。

 途中で体が引き裂かれるかと思う程の痛みを感じた事、皆が俺の名前を必死に呼んで何かを叫んでいた事……

 

 それと、自分で何かを口走っていた事は、なんとなく覚えている。実際に何を言ったのかは全く思い出せないんだが……

 

 

「アナスイッ!?」

 

「ぐ、おおおォォッ!?こっ、これ程のダメージを、今まで、1人で……ッ!?なんて奴だ!!」

 

「…………あ、れ……?」

 

「志人さん!!」

 

「傷が……!傷がちゃんと治ってるわ!!」

 

「さっきまであんなにボロボロだったのに、なんでだ!?」

 

「これは……まさか!そいつがスタンド能力で、園原のダメージを肩代わりしているのか!?」

 

「……グレートだぜ、アナスイッ!マジで肉壁になるとはなァッ!!おい、お前ら!志人さんの事は頼んだぜ!俺はあいつを治しに行く!!」

 

「わ、分かった!こっちは任せて仗助君!」

 

 

 そう。この辺りからは記憶がはっきりしている。アナスイが、俺のダメージを肩代わりしてくれたのだ。

 そのおかげで落ち着いた俺は、神父の力をどうにかするのに、もっと良い方法を思い付く事が出来た。

 

 

「イージス!これならどうだ!!」

 

「――これ、は……っ、あはははは!!いいね、志人!素晴らしいイメージだ!!」

 

 

 イージスが笑いながら、杖を振る。――バリアは俺のイメージ通りに、クラインの壺の形になった。

 

 プッチ神父がいる場所の天井に穴が開いており、その部分から取っ手が伸びて中を貫通し、地面に到達している。

 神父の力のエネルギーの流れを天井に向けて、それが取っ手の部分を通って地面に向かって逃げていく……そういう流れを想像して作り上げたものだ。

 地球が物体を引く力が、重力。つまり神父が発する重力を大地へ逃がしても、おそらくは特に問題無いだろう。

 

 これだけなら、本来はわざわざクラインの壺の形にする必要は無い。

 だが、俺にとってこの形が想像しやすかった事と、徐倫に向けたヒント――メビウスの輪に繋がる事。

 それを考えれば、クラインの壺は最適だった。……承太郎ならきっと、俺の意図を察して徐倫にメビウスの輪の話をしてくれるはずだ。

 

 ついでに。この壺も裏表の概念が無いから、今度は奴に殴られてもそのダメージが本体に反映される事は無い。

 

 

Fratello(兄さん)!!」

 

「シド!!」

 

「おーい!!」

 

「無事ですか!?」

 

 

 そこへ、ジョルノ達パッショーネの面子が駆け寄って来た。……あれ?こいつら、今まで何処に行ってたんだ?……まずいな、やっぱり記憶が曖昧だ。

 

 

「怪我は!?もう大丈夫なんですか!?」

 

「あ、あぁ。この通り、大丈夫だ」

 

「そうですか……良かった」

 

 

 ジョルノはそう言って、安心したように微笑み……続いて、プッチ神父がいる方向を睨んだ。だから怖いって、ドン・パッショーネ。

 

 

「では、次はあちらですね……加勢します」

 

 

 ミスタ達を引き連れて、ジョルノは承太郎達の中に加わった。か、過剰戦力……

 

 

 

 

 

 

 






※申し訳ありませんが、今回も切りの良いところで分けました

 明日、後編を投稿します。もうしばらくお待ちくださいm(_ _)m
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