空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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※前回から賛否両論になりそうな話が続いています。また、ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊も激しいので注意

※いろいろおかしな点があると思いますが、見逃していただけるとありがたいですm(_ _)m




・前回の続き。主犯と共犯者組の会話と、その後にある場所へ向かいます

・ご都合主義、捏造過多(特に原作キャラの心情について)、キャラ崩壊あり。男主視点




原作介入、最後の仕事

 

 

 

 

「…………露伴先生」

 

「ん?」

 

「漫画家としてのあんたに、ちょっと相談したい事があるんだ。……迎えを待ってる間の暇潰し感覚で構わないからさ、ちょっと付き合ってくれないか?」

 

「ふむ……まあ、良いだろう。聞いてやる」

 

「ありがとう」

 

 

 ジョースター家の人間と俺が見た、"奇妙な"夢。

 

 その騒動は既に収束し、夕方になった現在……俺と承太郎と露伴は、ある場所へ行くための迎えを待っている所だ。

 今はホテルの外でイージスの防音バリアを張り、その中で話している。

 

 

「――本来。漫画の世界に存在しないはずの男が、その世界で生きる女性と添い遂げる事になった場合……」

 

 

 俺がそう話し始めたと同時に、露伴だけでなく承太郎もばっと顔を上げて、2人揃って俺を凝視した。

 

 

「果たして、どれ程の悪影響が出るんだろうな?……本来結ばれるはずだった男女の仲を引き裂いて、女性の隣にその男が収まる事になった場合は」

 

「…………本来結ばれるはずだった男女ってのは……アナスイと徐倫の事を言ってるのか?」

 

 

 承太郎の問い掛けに対し、頷いた。そう、俺はその事を言っている。

 

 

「原作では……承太郎さんは許してないだろうが、アナスイくんが結婚の申し込みをする事を、徐倫ちゃんは許していた。

 ……一巡後の世界でも、生まれ変わった2人は交際しているようだった」

 

「……それはあくまでも、前世の漫画の中の話だろ?ここは現実の世界だと、お前も分かっているはずだ」

 

「もちろん、分かっている……だが、俺がこの世界の"異物"である事に変わりは無い」

 

 

 元は別世界……三次元の世界にいた人間が、二次元の世界に転生するなんて本当ならあり得ない事だ。……あってはならない事だ。

 それがどういう訳かこの世界では実現され、俺という"異物"が生まれてしまった。

 

 

「結婚とは、特別な繋がりだ。一度結び付けば最後、相手が俺との繋がりを切りたくなっても、簡単には切れなくなってしまう。

 

 そんな特別な繋がりにこの世界の"異物"が関わっても良いのか?

 本来結ばれるはずだった2人の繋がりを、"異物"によって断ち切ってしまっても良いのか?何らかの悪影響が出るんじゃないか?」

 

「志人、お前。また1人で、」

 

「なるほど、相談内容は分かった」

 

 

 と、承太郎が何か言いかけたのを遮って、露伴がそう言った。

 

 

「では、僕の答えを言おう――悪影響?そんなもの知るかッ!!」

 

「え、」

 

「君が懸念している件は、見方を変えれば君が元いた世界でも起こり得る事のはずだ。

 

 例えるなら……恋愛関係には至っていないが、お互いにそうなる可能性を無意識に感じている男女の間に。

 それを知った上で、意図しない形で婚約者としてその女の隣に収まる事になった別の男……という三角関係か?ほら、なんかありそうな話だろ?」

 

「そう、だな……?いや、でも何かが違う気が、」

 

「そうなんだよ!そういう事にしておけ!……とにかく。

 君が懸念している事が、君の世界でも起こり得るという事はつまり、君の世界とこの世界はそういった意味では同列だという事だ!」

 

「同列……?それはさすがに極論、」

 

「僕がそう言うならそれで良いんだよ!……で、それを踏まえて君が言う悪影響について考えると……

 

 そんなものは知らん。誰にも予想できない――未来は、決まっていない。という結論に至る訳だ。

 志人君もよく言ってたじゃないか、"未来は突然変化するものだ"と」

 

 

 そう言われて、先程まで口出ししていた自分の口を完全に閉じる。……確かに、俺は以前から自分で言っていた。未来は突然変化するものだと。

 

 

「ところで、君は自分の事をこの世界の"異物"だと言ったな?」

 

「……あぁ、言った。それが何か?」

 

「あり得ない」

 

「は?」

 

「君が"異物"だと?僕にも承太郎さんにも、仗助達にも、他の誰かにも……

 ――もはや無くてはならない存在だと認識され、必要とされている君が"異物"だと!?あり得ない!ナンセンスだッ!!」

 

 

 ……他ならぬ岸辺露伴から、そんな事を言われるとは思わなかった。俺が、無くてはならない存在?必要とされている?

 

 

「この世界が君を"異物"だと判断するなら、それはもう世界として終わっている。いっそのこと滅んでしまえ」

 

「…………露伴先生……?何言ってんだ、あんた」

 

「……そうだな。俺も露伴に賛成だ」

 

「承太郎さん??」

 

「志人の存在を認めない世界、認めない神など滅んでしまえ。今すぐに」

 

「承太郎さんっ!?」

 

 

 なに馬鹿な事言ってんだ!?……と焦っておろおろしていたら、真顔だった2人が俺を見て笑った。あっ、冗談か。そうだよな!

 

 

「……俺達が真顔でそう言ってしまう程に、お前は俺達から必要とされているのだと、いい加減自覚しろよ」

 

「その通りだ。志人君には本当に自覚が足りない。……さて、承太郎さん。

 ここまでの話の締めとして、彼に止めとなる言葉をどうぞ。おそらく、先ほど僕が遮る前に言おうとした言葉がそれに当たるはず」

 

「…………ああ、なるほど。……志人」

 

「は、はい?」

 

 

 

 

 

 

「――また1人で抱え込むつもりか?」

 

「――――」

 

「"物語"は終わった。何でもかんでも自分の責任だと1人で抱え込んだり、頑張り過ぎたりするような事は……

 そういうのはもう止めてもいいんじゃないか?と。俺は昨日そう言ったはずだよな?」

 

 

 ぐさっ、と。止めを刺された。

 

 

「……おや、お見事。今のは露伴の話も含めて、志人の心にしっかりと刺さったよ。効果抜群だ!」

 

「ほう?イージスがそういうなら、それは確かだろうな」

 

「うん。特に、他でもない承太郎から言われた事で、より深く心に刺さったよ!

 これ以降はもう自分が結婚する事で悪影響が、とか。自分がこの世界の"異物"だ、とかは言わなくなると思う」

 

「ハハッ!自我がこうもはっきりしていると、本体の心は他人に筒抜けだなあ?」

 

 

 やめて……俺のライフがゼロになってるところに追い討ち掛けるのやめて……!!

 

 

「……と、そんな事をやってるうちに、迎えが来たようだ」

 

「おっと、そのようですね。行きましょうか。……ほら、志人君!いつまでも沈んでないで、さっさと行くぞ!バリアを解除しろ!」

 

「…………はい……」

 

 

 迎えの車がやって来たようなので、露伴に急かされてバリアを解除した。

 

 

「……悪いな、六車。忙しい時に余計な仕事を増やしてしまった」

 

「いえいえ、お気になさらず……あなた方からの申し出は、財団側にとってもメリットがありましたから」

 

 

 迎えに来てくれた六車さんに促され、車の助手席に露伴が、後部座席に俺と承太郎が座る。

 

 

「……ああ、そうだ。志人。今のうちに渡しておく」

 

「はい?……何ですか?この紙」

 

「開けてみろ」

 

 

 車が発車してからしばらくして、承太郎が俺に折り畳まれた小さな紙を渡して来た。首を傾げつつ、言われた通り紙を開く。

 

 

 ――そこに書かれていた内容を見て一瞬固まり、それから思わず両手でパン!と音を立ててそれを閉じた。

 

 

「……園原さん?」

 

「なんだ?どうした?」

 

 

 六車さんと露伴から声を掛けられたが、それに応じる余裕は無い。閉じた紙を持ったまま両手で顔を覆い、唸り声を上げた。

 

 

「…………承太郎さん、あんた、これ……いつ、どうやって……!?」

 

「……スタンド能力の特訓を重ねた結果。俺がスタンド像を出さなくても、1、2秒程度なら時止めを使えるようになった事は知ってるだろ?

 あの話し合いの最中に隙を見てそれを使って、こっそりとな」

 

「時止めの無駄使いっ!!つーか、さっきの話の後にこれ出すってあんたなぁ!?そんなに追い討ち掛けて俺に何か恨みでもあるのか!?」

 

「俺には別に恨みは無いが……まあ、娘の気持ちに長年気づかなかった助手への軽いお仕置きだとでも思ってくれ」

 

「ぐうの音も出ないっ!!」

 

「…………先程から何の話をしているんですか?」

 

「そうだ、そうだ。僕にも教えろ!」

 

「それはな、」

 

「え、承太郎さん待っ、」

 

「志人。……お前から相談されたもう1つの件を実行するには、財団側にも協力者が必要だ。その点、六車なら口が堅いし信用できる。

 そして露伴は……今言わないと、後が面倒になるぞ?こいつの機嫌が悪くなる」

 

「…………分かりました……決して誰にも言わないと約束してくれるなら、教えます」

 

 

 その後。誰にも言わないと誓った2人を信じて、俺が何をしようとしているのかを語ると……六車さんは驚愕の声を上げて、露伴は大爆笑した。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 やがて、目的地に到着した。とある建物の周辺は、財団職員達によって厳重に警備されているせいか、物々しい雰囲気が漂っている。

 六車さんの案内で建物の中に入り、その地下へと進んでいく。……幾つものセキュリティを抜けて、最奥までやって来た。

 

 

「ご要望通り、人払いは済ませてあります。それから、監視カメラも一時的に停止させました」

 

「ああ、ありがとう。……奴は、この奥か?」

 

「はい。……最強のスタンド使いと最強の盾が揃っていますし、きっと心配はいらないかと思いますが……どうか、お気をつけて」

 

 

 最強云々と呼ばれた承太郎と俺は、揃って一瞬眉をひそめたが……それ以上は顔に出さないようにした。

 六車さんが離れて行くのを見送り、それから3人で重厚な扉の前に立った。……承太郎が俺と露伴に目配せをしたので、頷きを返す。

 

 

 承太郎が開けた扉の先では――牢屋の中で、プッチ神父が拘束されていた。

 

 

「――――ッ!!」

 

 

 奴は俺達を視界に捉えた瞬間、何かを叫んで暴れ出した。

 だが、口も体も拘束具を付けられているせいで何を言ってるか分からないし、あまり身動きも取れないようだ。

 

 六車さんから借りた牢屋の鍵を使って中に入り、神父の前に立つ。血走った目で睨まれているがそれを無視して、俺は念のため周囲に防音バリアを張った。

 

 

「さて……露伴先生、お願いします」

 

「了解。――ヘブンズ・ドアー」

 

 

 ……露伴のスタンド能力で本にされた神父は気を失い、静かになった。それをやった本人は、さっそく中身を読んでいる。

 

 

「ほう……大体の事は既に知っていたが、やはり実際に本人の記憶を見た方がリアリティがあるな!素晴らしい、」

 

「また俺に蹴られたいのか?センセイ」

 

「…………ちっ……」

 

 

 露伴が夢中になってしまう前に止めようとしたが、それよりも先に承太郎が止めてくれた。

 ……んん?"また俺に蹴られたいのか"って、承太郎!?あんた露伴を蹴ったのか!?いつの話だ!?

 

 

「それで。最初に確認すべき事は、こいつが見たジョナサン・ジョースターの夢の詳細と……それから、昨日どういった経緯で志人君が狙われる事になったのか、でしたね?」

 

「ああ」

 

 

 おっと、そうだった。俺達がここに来たのは、露伴のスタンド能力でそれを知るため……

 ……というのは表向きの理由で、本当の目的は別にあるのだが。先に表向きの理由の方を済ませるとしよう。

 

 

 例の夢についての話し合いが終わった後。俺は承太郎に"プッチ神父と一度話がしたいので、ついて来てもらえないか?"とお願いした。

 彼は当然、俺が神父と会う事に難色を示した。だが、どうしてもそうしたいと頼み込んで、ようやく許してもらった。

 

 しかし。例えジョースター家の人間である承太郎とその助手である俺でも、ただ話したいというだけでは面会の許可がなかなか下りないかもしれない。

 そこで、露伴にも協力してもらって表向きの理由を作り、そのついでにプッチ神父と少し話したいと財団側に伝えた。

 

 さらに。露伴の能力で、奴の錯乱が落ち着くように何かしら書き込んでもらい、まともに取り調べが出来るようにするか?

 なんて提案もしたら、むしろ財団側からそうして欲しいと依頼された。

 

 こうして俺達は、財団側が神父の身柄を拘束するために用意したこの場所までやって来た訳だ。

 

 

「……ふむ。ジョナサン・ジョースターの夢については、事前に君達から聞いていた情報と比べても、特に新しい情報は無さそうだな。しかし……」

 

「……志人が狙われた経緯の方は……やはり、俺達がこいつを追い詰め過ぎた結果、そうなってしまったようだな」

 

「あぁ……承太郎さんの記憶にある、杜王町組や他のスタンド使い達の戦闘能力に関する記憶を封じた事。

 血の繋がりで仗助の存在をギリギリまで感知できないようにした事。

 

 それらは神父が想定外の行動に出ないように、出来る限り原作通りに進めるためにやった事だが……

 結果的に、それが原因で神父を必要以上に追い詰めてしまった訳か……完全に裏目に出たな」

 

 

 プッチ神父の記憶を見てみると、原作が始まる前からフレッダメンテの奴らと接触していた事が分かった。

 最初は俺を足留めする事だけを依頼していたようだが、追い詰められた神父は予定を変更して、ケープ・カナベラルに行く前に俺を捕らえようと、フレッダメンテに襲撃を仕掛けるよう命令した……

 

 俺を捕らえた後は人質にするか、あるいは命令を書き込んだDISCを差し込んで神父を守らせるか。

 それとも――承太郎達の目の前で俺を殺して彼らを絶望させるか。……そういった形で、俺を利用するつもりだったらしい。

 

 それを知った承太郎の顔が能面のようになって、無言でスタプラさんを召喚した時は焦った。

 待て待て待て待てその拳は下ろしちゃ駄目だって!?プッチ神父が一撃で死んじゃうからっ!!

 

 

 ……その後、なんとか承太郎を落ち着かせてから、ちょっと気になった点について話し合う。

 

 

「承太郎さんの記憶を見ても違和感を感じないように、確かに細工を施したはずだが……

 何故こいつは、違和感を感じているんだ?こいつの中の何か(・・)が警鐘を鳴らしていた、との事だが……?」

 

「……徐倫の方は、その細工の効果が出ている。俺の記憶の中で多くのスタンド使い達の存在を知ったはずだが、戦闘能力についての記憶は露伴が封じたから、それは知らないはず……

 そして俺が目にした限りでは、あの子がそれに対して違和感を感じたような素振りを見せた事は無かった」

 

 

 そう……俺達は確かに、露伴のスタンド能力で一部の記憶に鍵を掛けてもらい、その記憶を見た誰かが所々穴の開いた記憶に対して違和感を感じないよう、細工を施してもらったはずだ。

 承太郎によると、徐倫にはしっかりとその効果が出ていたらしい。それなのに、プッチ神父は違和感を感じている……何故だ?

 

 

「…………この場で考えても答えが出ない件は、後回しだ。面会の時間は限られているからな」

 

「そうですね。……さて、何かしら書き込んでこいつがもう錯乱しないようにしてから、スタンド能力を解除するとしよう。後は志人君の目的を達成するだけだよな?」

 

「あぁ。それ以外で、もうやるべき事はないはず」

 

「よし、さっさと済ませるぞ」

 

「……あっ、そうだ。露伴先生」

 

「ん?」

 

「ついでに、"素数を数えて心を落ち着かせる事はできない"とでも書き込んでくれないか?……こいつに現実を思い知らせてやるためには、逃げ道を与えてはいけないんだ」

 

「…………なるほど。分かった、そうしよう」

 

「あぁ、頼む。……で、承太郎さんは、」

 

「これ以降のやり取りを、携帯を使って録画すればいいんだろ?大丈夫だ、分かってる」

 

「んん、任せた」

 

 

 監視カメラは、俺達のさっきまでの会話を記録させないために予め止めてもらったので使えない。

 これ以降は承太郎の携帯で、神父に気づかれないように隠し撮りで記録してもらう。このデータは後程、六車さんを通して財団にも送る予定だ。

 

 そして、露伴に必要な事を書き込んでもらった後……ヘブンズ・ドアーの能力が解除された。

 

 目を覚ましたプッチ神父は、俺達を睨んではいるが、錯乱を起こす様子は無い……

 露伴に書いてもらった内容が、ちゃんと効果を発揮しているようだ。それを確認してから、口の拘束具だけ外してやった。

 

 

「…………ジョースターの血統にして最強のスタンド使い。"天国"を目指す私の力を、天国への扉(ヘブンズ・ドアー)で封印した者。

 そして……天使をその身に宿し、私の企みを尽く潰してみせた最強の盾。

 

 ――まるで、私自身とその目的を打ち砕くためだけに集結したかのような組み合わせだ……私が真に克服すべき運命は、この3人だったのか……」

 

 

 おっと……あながち間違いではないので、ちょっとだけドキッとした。

 

 

「揃いも揃って、私に何の用だ?」

 

「……エンリコ・プッチ。俺は、お前と話がしたい」

 

「話……?お前達という運命を前に敗北した私と、今さら何を話すというんだ?馬鹿馬鹿しい」

 

「面会時間は限られているし、単刀直入に聞こう――お前には、自分が"悪"だという自覚はあるか?」

 

 

 そう問い掛けると、神父は虚を突かれたのか一瞬目を見開き……その直後、眉間に皺を寄せる。

 

 

「……何を言っている?結果的にお前達によって阻止されたが、私は人類の幸福のために"天国"を目指していた。

 "天国"へは、誰かはいつか到達しなくてはならない……私は人類のために、正しい事をやろうとしていたのだ」

 

「本当に?……本気で、そうだと言い切れるのか?人類の幸福のためとか言いながら、自分以外の人間を犠牲にする事を躊躇わなかったお前が?」

 

「ふん……何を言われようが、私の考えは変わらないぞ。少しばかりの人間が犠牲になったところで、私は歩みを止めなかっただろう」

 

 

 ……やはり、正攻法で糾弾しても効果は無さそうだな。

 このまま自分が正しいと心から信じている奴と言い争いになれば、向こうはますます意固地になってしまうはず。

 

 だったら、わざわざ口論に付き合う必要は無い。搦め手を使おう。淡々と現実を突き付けてやればいい。

 

 

「――"敵を愛し、迫害する者のために祈れ"」

 

「…………は?」

 

「神は、悪人にも善人にも太陽を昇らせて、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らせてくれるそうだな?

 お前は自分の敵を愛する事が出来たか?祈る事が出来たか?……全然出来てねぇよな、神父サマのくせに」

 

「……っ、この私を相手に、よりによって聖書の言葉を振りかざすのか!?」

 

「振りかざしてはいないさ。俺はただ、知っている言葉を口にしただけだ」

 

 

 母と祖母がクリスチャンだったせいか、キリスト教については幾らか知識を身に付けている。

 ……あまり良くないやり方だが、神父であるこいつを煽るには打ってつけだ。母さんと婆ちゃんには申し訳ないが、有効活用させてもらおう。

 それに、今の俺の背後には防音バリアを張っているイージスが……天使のような見た目のスタンドがいる。それも重なってかなりの皮肉になるだろう。

 

 その後も数回、キリスト教に関わる言葉で相手を煽り……頃合いを見て、搦め手を仕掛けた。

 

 

「よーし、分かった。このままではいつまで経っても話が終わらないし、時間も限られているし。

 お前が今から俺が言う言葉を躊躇なく復唱する事が出来たら、お前の正義を認めてこの場から潔く立ち去るとしよう」

 

「さっさと言え!お前の顔は二度と見たくない!今なら言う通りに復唱してやろう!!」

 

 

 言質は取った。では、さっそく復唱してもらおう。

 

 

 

 

 

 

「人類の幸福のためならば――万が一、今は亡き妹が今日まで生存していたとしても!自分の邪魔をするなら彼女を迷いなく排除する事が出来る!!」

 

「人類の幸福のためならば――ッ、なに……?今、なんと言った……?」

 

 

 あぁ、躊躇ったな?やっぱりそうだ。こいつにはまだ、亡き妹……ペルラ・プッチへの情が残っている。

 しかし……原作では双子の弟であるウェザーを躊躇いなく排除したくせに、妹が相手だと動揺するのか。原作ファンとしてはちょっと複雑だな。

 

 

「聞こえなかったか?では、一言一句違う事なくもう一度言ってやろう。

 "人類の幸福のためならば、万が一、今は亡き妹が今日まで生存していたとしても、自分の邪魔をするなら彼女を迷いなく排除する事が出来る"。

 

 ……ほら、復唱しろよ。お前は悪ではなく、人類のために正しい事をやろうとしたんだろ?だったら自分の身内でさえも犠牲に出来るんだよな?」

 

「なにを、」

 

「"少しばかりの人間が犠牲になったところで、私は歩みを止めなかっただろう"……お前は、自分でそう言ったはずだ。

 ならば妹1人が犠牲になったところで、それでも歩みは止めないって事だろ?

 

 あるいは……お前がやろうとしていた正しい行いに不満を持った奴らが、お前の妹を人質にとっても構わないんだよな?

 人類の幸福のためならば、妹がどうなっても良いって事だよな!?」

 

「っ、ふざけるなッ!!ペルラは何も関係無いだろう!?私の妹を人質に取るなんて!それこそ"悪"ではないかッ!?」

 

「あぁ、そうだ!それこそ"悪"だ!!

 

 

 ――つまり!承太郎さん達を相手に!俺を人質に取ろうとしたてめぇも"悪"なんだよぉっ!!」

 

「――――」

 

 

 俺の思惑通りの言葉を口にしてくれたので、ここぞとばかりに現実を突き付ける。……やれやれ、だな。ここまで煽った甲斐があった。

 プッチ神父は見るからに動揺しており、何かを言おうとして……口をパクパクさせて、驚愕の表情。何やら焦っているようだ。……もしかして、

 

 

「素数を数えて落ち着こうとしたのか?それなら、さっき露伴先生のスタンド能力で禁止してもらったから、無理だぞ」

 

「な、なにッ!?」

 

「現実逃避なんてさせない……お前には、自分が"悪"である事を心の底から認めてもらう」

 

 

 そう……これが、俺の目的だ。俺はプッチ神父に自分が"悪"である事を認めさせるために、こいつとの会話を求めたのだ。

 承太郎と露伴には、事前に口出ししないようにと頼んでいたため、彼らは先程からずっと見守ってくれている。

 

 

(――今まで何度も原作に介入して来た俺の、最後の仕事だ)

 

 

 これさえ終わらせれば、後の人生は自分の好きなように過ごせるよう努力する……そう伝えたら、2人は俺の頼みを聞き入れてくれた。

 

 神父に今後どのような処分が下されるのかは、俺もまだ知らない。

 だがその処分が決まる前に、こいつには自分が"悪"である事を自覚させてやりたい。自覚した方が、素直に罪を償ってくれるはず。

 

 プッチ神父もまた、悲惨な運命に振り回された者だ。……俺個人としては、出来れば死んで罪を償うのでなく、生きたまま罪を償ってもらいたい。

 身内を失う悲しみは、痛いほど理解できるから……こいつには罪を償いながらも、前を向いて生きて欲しい。

 

 

 …………まぁそれはそれとして、こいつを許せない気持ちもあるからな。申し訳ないが、今からそれを吐き出させてもらう。

 

 

「さて。聖書には、こんな言葉もあったな。"人にしてもらいたいと思う事は何でも、あなた方も人にしなさい"……

 よく考えてみろ。"天国"を目指す事はさておき、それ以外でお前が他人にやった事は、自分にもやって欲しい事だったのか?」

 

「う、ぐっ……!!」

 

「それに……"剣を取る者は、剣で滅びる"。お前やDIOと、ジョースター家の者達……そのどちらが先に剣を取ったのか?

 当然、お前達の方が先だ。お前達が先に剣を向けて来たから、ジョースター家の者達も剣を取った!彼らの大切な人達を、守るためにな!!」

 

 

 お前も、DIOも。それぞれの理由で剣を取った。その理由自体を非難するつもりは無い。おそらくお前達にとって、その理由はどうしても譲れないものだったのだろう……

 父親に虐待されていたり、大事な家族を失っていたりするお前らの過去には、正直に言ってかなり同情している。

 

 

 だがしかし!その後の行動が駄目だっ!!

 

 

「お前らの身勝手な行動によって!ジョースター家の者達やそれ以外の人間達が巻き込まれてしまった!だから彼らも剣を取らざるを得なかった!!」

 

 

 その中にはきっと――承太郎や徐倫のように!本当なら剣を取りたくない者も少なからずいたはずなのに……っ!!

 

 

「先に剣を取ったからには、その時点で剣によって滅ぼされる可能性もある事を、覚悟をしておかなければならない……!

 

 

 ――エンリコ・プッチ!てめぇにはその覚悟があったか!?

 ジョースター家の人間を相手に!確固たる信念を持って立ち向かう覚悟はあったのかぁっ!?」

 

「うう、っ、うううゥゥ……ッ!!」

 

 

 神父が呻き声を上げている。……先程よりも、俺の言葉がこいつの心に刺さっているのを感じた。手応えはある。

 今から言う言葉が止めになると信じて、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……剣によって滅ぼされる覚悟が出来ていないにも関わらず、自分にはやって欲しくない事を他人には平気で行う……

 自分は他人の身内に手を出しておきながら、その他人が自分の身内に手を出す事は許さない……

 人類のために正しい事をしていると言いながら、その人類の一部を犠牲にする事を厭わない……

 

 随分と、我が儘だな。身勝手な奴だ。そういう、他人を好き勝手に利用するお前みたいな奴の事を何と呼ぶのか……もう分かるだろ?」

 

「――――」

 

「ペルラさんは既に亡くなっているが……そんな人間に成り下がってしまった男の妹なのだと、今後もそう言われる事になるであろう彼女に対して。

 ほんの少しでも、申し訳ないと思う気持ちがあるならば……

 自分で、言えるはずだぞ。今のお前が、世間一般では何と呼ばれる存在なのかを、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――"悪"だ……」

 

「…………」

 

「やはり、呪われるべきはこの私だった……ペルラ……っ、嗚呼、ペルラ!すまない……!!

 

 

 ――自分が"悪"である事に気づけなかった私こそが!最もドス黒い"悪"だった……ッ!!」

 

 

 ついに自分が"悪"だと認めた神父が、涙を流しながら口にした、亡き妹への懺悔の言葉。

 

 

 ……それは奇しくも、原作で彼の双子の弟が言い放ったセリフと、ほとんど同じだった。

 

 

 

 

 

 

 






・原作介入、最後の仕事を行う助手君

 身内にクリスチャンがいるのに聖書の言葉を利用して神父を煽る悪い子()

 自分がジョジョの原作世界の"異物"である事、徐倫とアナスイの間に意図しない形で割って入る事になってしまったのを悩んでいた。
 しかし露伴の話を聞き、最後に他でもない承太郎に止めを刺された事で、今後は考えを改める予定。

 承太郎にある紙を渡され、その中身を確認して顔を覆った。時止めの無駄使いっ!!……さて、紙の中には何が書かれていたのだろうか――?

 原作とは違ってプッチ神父が生き残ったため、こいつに"悪"だと認めさせるのは、今まで原作に介入して未来を変えて来た自分の仕事だろうと考え、行動に出た。
 神父に対する怒りはあるが、それは承太郎達を巻き込んだ事に対する怒りであり、自分が大出血する事になった件については恨んでいない。

 むしろ、怒りよりも同情の方が強い。身内を失う悲しみは痛いほど理解できるため、神父には罪を償いながらも前を向いて生きて欲しいと願っている。


・助手君を見守った共犯者組

 後に園原が、自分を大出血させたプッチ神父に対して同情している事を知り、"このお人好しがァッ!!"と怒鳴る事になる人達。

 園原の悩みを聞いて、また1人で抱え込んでるな、と呆れながらも相談に乗ってあげた。とっても優しい。
 まず露伴が論破して、次に承太郎にパスを回してからの、止め。長年共犯者として付き合って来たせいか、連携には慣れている。

 プッチ神父と会話する園原を見守っていた……というよりも、神父を見事に説き伏せてみせたその巧みな話術に対し、舌を巻く。その後は最後の仕事を終えた園原を労った。お疲れ様!


・ついに自分が"悪"だと認めた神父

 ――自分が"悪"である事に気づけなかった私こそが!最もドス黒い"悪"だった……ッ!!

 最初は園原に反発していたが、その言葉の刃によって徐々に追い詰められていき、最終的に自分が"悪"である事を認めた。
 これを認めた要因としては、亡き妹に対しての情が残っていた事が大きい。それが無ければ、園原の言葉は全く届かなかっただろう。
 彼が今後どうなるかは、本人に罪を償う意思があるかどうかと……徐倫達、脱獄組がどう判断するかによって決まる。

 なお。露伴が承太郎の記憶に細工を施していたにも関わらず、彼に対して警鐘を鳴らしていた何か(・・)によって違和感を感じていた件については――?






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