空条承太郎の友人~原作介入~   作:herz

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・男主達がプッチ神父と面会した日の翌日。脱獄組との会話。ご都合主義、捏造過多、キャラ崩壊あり

・原作キャラ達の心情を捏造しています。男主×徐倫の描写あり。また、アナスイの扱いが悪くなっています。申し訳ありませんm(_ _)m

・前半はF・F視点、後半は男主視点




恋模様の行く末

 

 

 

 

 ある日。あたし達は承太郎さんと志人さんに呼び出されて、彼らがいる客室へ向かった。……昨日、彼らはプッチ神父と面会したという。その件であたし達と話したい事があるそうだ。

 客室に到着すると、承太郎さんが出迎えてくれた。そして何故かいきなり紅茶の好みを聞かれたので、順番に答えていく。

 

 

「で、徐倫はいつもので良いな?」

 

「うん!昨日も話し合いの時に淹れてくれたけど、今日も飲めるのね?やった!」

 

「えっ?まさか、承太郎さんが……!?」

 

「いや、違う……志人が淹れてくれる」

 

 

 志人さんが?……そういえば、彼は料理も上手いし紅茶などの飲み物を淹れるのも上手いのだと、財団本部に向かう車の中で話したあの時に、仗助がそう言ってたな。

 

 

「奴が紅茶を?…………あのムカつく顔にそれをぶっかけてやればさぞかしスッキリするだろうな」

 

「アナスイ、よせ。……承太郎さんに聞こえるぞ」

 

「ちっ……」

 

 

 と、後ろでアナスイとウェザーがぼそぼそと会話しているのが聞こえた。……困った奴だな。

 

 

 先日。アナスイから約束を守れ、徐倫と結婚するために協力しろと言われたが、あたしは断った。

 どれだけ文句を言われても、協力はできない――だって、アナスイの命が掛かってるから。

 

 志人さんに殺意を抱くあいつには、敵が多過ぎるのだ。2日前にアナスイを襲ったリゾットだけでなく、あの場にいたあたし達以外のスタンド使い全員が、アナスイの動きを常に警戒しているのは既に分かっている。

 それがどんな方法であろうと、志人さんに手を出したら最後。あいつは彼らによる集中放火を受けて……最悪の場合、殺されてしまうだろう。

 

 そう伝えてアナスイの命を心配すると、あいつはそれ以降、あたしに協力を求めなくなった。……ちょっと距離が出来てしまったのが寂しい。

 

 

(……正直に言ってしまえば、あたしとしてはアナスイには徐倫の気持ちをちゃんと考えて欲しいんだよな……

 どう考えても徐倫は志人さんの事しか見えてないし、早く諦めた方が傷は浅くて済むんじゃないか?いろんな意味で)

 

 

 でも、アナスイが徐倫の事を彼なりに本気で愛している事も分かるから……結局、そこまでは言えなかった。

 

 

 それはさておき……部屋の奥へ進むと、志人さんが紅茶の準備をしていた。徐倫がその側に立つ。

 

 

「……相変わらず手際が良いわね」

 

「まぁ、何年も続けてやっていれば……っ、こら、いきなり抱き着くな!お湯が跳ねて火傷するぞ!」

 

「志人さんならそんなミスしないわ」

 

「しないように気を付けるが、絶対じゃないだろ。危ないから、離れなさい」

 

「…………心臓、ドキドキしてるわよ?」

 

「っ、……徐倫ちゃん!!」

 

 

 積極的に攻める徐倫と、彼女の猛攻に押される志人さん……そんな様子を目撃したあたしは、エルメェスと目を合わせて2人揃ってこっそり笑った。

 このホテルでの滞在が始まって以来、徐倫から恋話を何度も聞いているあたし達としては、あれを見るとついニヤニヤしてしまうのだ。

 

 なんせ、志人さんはスキンシップに弱そうだからそれで落とせ、と。そうアドバイスしたのはあたし達だからな。

 ……徐倫があの人を落として早く両思いになれば、さすがにアナスイも諦めてくれるんじゃないか、なんて打算もあるし、彼女にはぜひ頑張って欲しい。

 

 で、そのアナスイはというと……あーあ、目が怖いなあ!凄い目付きで志人さんを睨んでる……!!

 

 

「…………視線も痛いし、動き辛いし。本当に申し訳ないんだが離れてくれないか……?」

 

「困った顔で見つめてくる志人さんも良いわね、可愛い」

 

「徐倫ちゃんっ!マジで勘弁してくれ!!」

 

「ふふふ。はいはい、分かったわよ」

 

 

 そんな会話の後、徐倫はさらっと志人さんの頬にキスをして離れて行った。それをやられた方は、いっそ可哀想な程に真っ赤になって固まっている。

 ……アナスイの表情と目付きがさらに怖くなった。殺気が漏れてるぞ!!

 

 

「……おい、アナスイ」

 

「っ、」

 

「この俺の目の前で、俺の助手に……いや、俺の未来の義息(むすこ)に殺気を飛ばすとは……いい度胸だな。ここから叩き出してやろうか?」

 

「…………くっ……」

 

 

 すると、威圧感たっぷりの承太郎さんの一声で、アナスイが大人しくなった。……未来の義息(むすこ)、ね。分かってはいたが、やっぱり父親公認か。

 

 アナスイに勝ち目は無い。本人も早くそれを理解してくれればいいのに……心配だなあ。

 どういう形になるかは分からないが、もしもアナスイが一番傷つく結末を迎えてしまったらと思うと……

 

 その時はエルメェスとウェザーにも声を掛けて、3人で慰めてやるしかないか?

 それとも……あいつの心が傷ついてしまう前に、あたし達が説得して、徐倫の事を諦めさせた方がいいんだろうか?

 

 …………あー、駄目だな。あたしは自分が知性を持っている事を誇りに思っているが、そんなあたしでもこういう複雑な人間関係について考えるのは難しい。

 これは後でエルメェスとウェザーに相談しようかな?……うん、そうしよう。

 

 

 その後。志人さんが用意してくれた紅茶――水分を取れるなら味は何でもいいと思っていたが撤回する。これはうまいッ!――を飲みながら。

 承太郎さんの携帯で隠し撮りされた、プッチ神父と志人さんのやり取りの全てを見た。

 あの神父を言葉だけで打ち負かし、自分が悪であると認めさせるとは……志人さんの話術と、その頭の回転の早さに驚いた。

 

 なお。この記録は既に財団本部に送られているため、今はそこで保護されているエンポリオにも見せる予定だという。

 あいつ、確か母親が神父に殺されてるんだよな?これを聞いたらどう思うんだろうか?そっちもちょっと心配だな。

 

 

「さて……今見せたやり取りの事も踏まえて、君達の意見を聞かせて欲しい。今日君達を呼んだのは、それを聞くためだ」

 

「意見?」

 

「――エンリコ・プッチの、今後について……奴にはどんな処分を下すべきか。君達なら、どう考える?」

 

 

 ……神父と志人さんのやり取りを見てざわついていた皆が、承太郎さんの言葉を聞いて一斉に黙り込んだ。

 

 

「…………ちなみに、お父さんの考えは?」

 

「……俺の考えは、あえて誰にも言わない」

 

「え、どうして?」

 

「……俺では、財団に対する発言力が強過ぎるのだ。俺の意見がそのまま、神父への処分になってしまう可能性がある……

 俺以上に奴に振り回されたであろうお前達の意見をまったく聞かずに、勝手に処分が決定されてしまうのは……さすがに嫌だろう?」

 

「それは……確かに、そうね」

 

 

 なるほど。承太郎さんなりに、あたし達に配慮してくれたって事か。

 

 

「とはいえ、あたしとしては奴にスタンドと記憶を奪われたお父さんも、奴に狙われた志人さんも無事だったし、エルメェス達もみんな結果的に無事だったから……

 具体的にどんな処分を下して欲しいかとか、あまり思い浮かばないのよね。強いて言えば、あたし達の前に二度と顔を見せなければ、それでいいかな」

 

 

 徐倫の意見は、なんともあっさりしたものだった。……もしも承太郎さんや志人さんが無事じゃなかったら、話は違っていたかもな。

 2人の事が大好きな徐倫なら、自分の手で始末するとか言いそうだ。

 

 うーん……あたしの意見も、徐倫と大体同じかな。

 

 一応これでも奴に殺されかけた身だが、あたしの恩人である彼女が神父をそこまで恨んでいないのなら、特に思う事はない。

 ……プッチ神父のスタンド能力のおかげで知性を得られた事だけは、感謝しているが。

 今後。あたし達の目の前に現れなければ、奴への処分は何でもいい。

 

 

「……そういえば、お父さんの考えを聞けないのは分かったけど、志人さんの意見は?」

 

 

 と、徐倫がそんな事を口にする。……志人さんの意見か。それはあたしも気になる。

 

 

「俺の?……俺なんかの考えを聞いてどうするんだ?」

 

「いいから、聞かせてよ」

 

「あたしも聞きたい!」

 

「あの神父を言葉だけで追い詰めたあんたの考えなら、ぜひ聞かせて欲しいな」

 

「……俺も、お前の考えには興味がある」

 

 

 徐倫やあたしに続いて、エルメェスとウェザーも興味を示した。アナスイは……不満そうだが、まあ多数決という事で。

 

 

「…………分かった、話そう。……ただし、これはあくまでも俺の個人的な考えであり、君達にその考えを押し付けるつもりは全くない。それを理解した上で、聞いてくれ」

 

 

 そう前置きしてから、彼は自分の考えを明かした。

 

 

「まず、大前提として。プッチ神父を殺す事で罪を償わせるのは無しだ。奴には生きたまま、罪を償ってもらいたい。何故なら――」

 

 

 ふーん?志人さんはそう考えてるのか。その理由は何なのか、多分ちゃんと話してくれると思うけど。

 そしてあたしの予想通り、彼は"何故なら"と続けた。……しかし志人さんがその理由を話す前に、口出しする奴がいた。

 

 

「――甘い!甘過ぎるッ!!奴を殺さずに生かすだと!?阿呆か、テメーは!!」

 

「おい、アナスイ!落ち着け!」

 

 

 そう、アナスイである。ウェザーはソファーから立ち上がったアナスイの腕を掴んで再び座らせようとするが、あいつはそれに従おうとしない。

 

 この場には承太郎さんも徐倫もいるし、アナスイが表立って志人さんを攻撃する事は無いだろうと思っていた。

 先程の殺気混じりの視線はさておき、ここ数日は比較的大人しかったし……それが今になって何故?急にどうしたんだ!?

 

 

「いや、それとも……プッチ神父と何か取引でもしたのか!?」

 

「はぁ?」

 

「そうだな、そうに違いないッ!奴と何か取引をして、そのために奴を生かそうとしてるんだろ!?

 さっきのやり取りだって、神父と話を合わせて芝居でも打ったんだろ!?あれは奴を生かす理由を作るためにやった芝居なんだッ!!」

 

「アナスイ、何言ってるの!?志人さんがそんな事をする訳が無い!言いがかりをつけるのは止めて!!」

 

「ちょっと待ってくれアナスイくん!俺の話を聞いて、」

 

「テメーの話なんざ聞く価値も無いッ!!」

 

 

 駄目だ、完全に頭に血が上ってる!徐倫の声も志人さんの声も届かない……!!

 

 

「自分の利益のためなら悪人であっても生かすのか!?この性悪野郎がッ!!――てめえの親の顔が見てみたいなあッ!!」

 

「は、」

 

「どうせてめえと同じでたちの悪い両親なんだろうなァッ!?例えば口の上手い父親と、顔の良さで男を手玉に取る母親とか――」

 

 

 

 

 

 

「――俺の母さんを、侮辱するな」

 

「――――」

 

「そして、俺を父親と――――あのクソ野郎と一緒にするんじゃねぇ……っ!!」

 

 

 その声は大きな声ではなかったはずなのに、何故か体中に響いた。……否、響いた、ではなく。体が勝手に震えているからそう感じただけだった。

 憎しみ、怒り、悲しみ、苦しみ……それら全てがない交ぜにされたような、怨嗟の声だ。

 

 

 ……そう。2日前、承太郎さんの口から吐き出されたそれと、同じくらい恐ろしい怨嗟の声だった。

 

 

「…………承太郎さん、すみません……しばらく、頭を冷やして来ます。このままここにいたら、俺は彼を殴ってしまう」

 

「…………分かった。行って来い」

 

「ありがとうございます」

 

 

 あたし達が誰も口を開けなくなった中。志人さんは承太郎さんに声を掛けて、部屋から出て行った。

 ……そんな志人さんを見送った承太郎さんが、勢いよく振り向いてアナスイを睨む。

 

 

「アナスイ、てめえ――」

 

「――ナルシソ・アナスイッ!!」

 

「え、――ッ!?」

 

 

 しかし、その時。承太郎さんの言葉を遮って、徐倫がアナスイの名を叫び……その顔を思い切りぶん殴ったッ!?

 

 

「えええええェーッ!?」

 

「徐倫ッ!?」

 

「な、なにやってんだあァッ!?」

 

 

 まさか承太郎さんよりも先に徐倫がアナスイを殴るなんて!?

 あたし達全員が……承太郎さんも含めて驚いていると、殴られた勢いで床に倒れ込むアナスイを見下ろして、徐倫はこう言った。

 

 

「今のは……あんたを殴れなかった優しい志人さんの代わりに、あたしがぶん殴ってやったのよ」

 

「じょ、徐倫……?」

 

「あんたは!あの人には何よりも言ってはならない言葉を言ったッ!!よりによって!あの人の両親の話を出すなんて……!!」

 

「徐り、」

 

「最低ッ!!信じられないッ!!……ああ、もういい……あんたから直接告白されるまでは何も言わないつもりだったけど、こうなったらあたしからはっきり言ってやる!!」

 

 

 嫌な予感がした。この流れは、まずい!!

 

 

「徐倫、待って!落ち着いて――」

 

「――ごめんなさいね、アナスイ!!あんたの気持ちには応えられない!あたしがあんたと結婚する事は一生無いわッ!!」

 

「――――」

 

「ああああァーッ!!」

 

「オーマイガー……」

 

「…………なんてこった……」

 

 

 あたしは思わず叫んでしまい、エルメェスとウェザーも天を仰ぐ。……徐倫から振られたアナスイは、世界の終わりを見たかのような表情になった。

 嫌な予感が的中してしまった!エルメェス達に相談する前に、アナスイが一番傷つく結末を迎えてしまった……!!

 

 

「あたしが生涯を共にする相手は!園原志人ただ1人よッ!!……お父さん!あたし、志人さんのところに行って来る!」

 

「よし、行け。……あの子を頼む」

 

「うん!」

 

 

 徐倫は一切振り向く事なく、立ち去って行く。……その後、承太郎さんが口を開いた。

 

 

「志人の父親は、幼い志人とその母親に日常的に暴力を振るっていた」

 

「な、なに……!?」

 

「だが、20年以上前のある日……志人に暴力を振るおうとした父親からあの子を庇って、母親が父親と共に階段から落ちた。

 父親は即死。母親は……志人に形見を残して、あの子の目の前で亡くなった」

 

「…………」

 

「……自分の妻と子供に暴力を振るうような男と、2日前に俺達全員を護ってみせた男の、どこが同じなんだ?

 自分の子供を護ってから死んでしまった母親の、どこが性悪なんだ?」

 

「…………」

 

「さあ……言ってみろよ、アナスイ」

 

 

 アナスイは、何も言えなかった。…………自業自得だけど、とりあえず。殴られた顔の治療だけはやってやろうかな……

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「殴っちゃえば良かったのに」

 

「……イージス、」

 

「なんならバリアで顔を覆って空気を通さないようにしてやればよかった」

 

「いや、あの、イージスくん?それやったらアナスイが酸欠で死んじゃうよ??」

 

「いいんじゃない?別に」

 

「…………イージス……」

 

「…………そんな困った顔するなよ、本体……まったくどうしようもないお人好しだなぁ、君は……」

 

 

 ……あの後。客室から出た俺は、同じ階の廊下の奥にある扉の先……非常階段に座り込み、イージスと話していた。

 

 

(やっちまった……)

 

 

 アナスイはきっと、徐倫の事で俺に嫉妬して暴言を吐いてしまったのだろう。それがたまたま、俺にとっての地雷だっただけだ。

 肉体年齢的にも精神年齢的にも、俺の方が年上なのに……大人気ない態度を取ってしまった。

 

 

「彼には後で謝らないと、」

 

「どうしてこの流れで君が謝ろうとするかなぁ!?」

 

「え、だって俺が、」

 

「志人は何も悪くないんだよ!!」

 

「でも、」

 

「それに今のアナスイに謝ったら、また変な勘違いされて逆ギレされるんじゃないか?」

 

「…………確かに……」

 

「そうだろう?だから今まで通り、志人からは何も言わないのが無難だと思う」

 

「……そう、だな」

 

 

 罪悪感はあるが、イージスの言う通りにした方が良さそうだ。

 

 

 そう考えて納得した時、背後から扉が開く音が聞こえた。

 

 

「志人さん、見つけたッ!!」

 

「!?」

 

 

 振り向くと、そこには徐倫がいた。わざわざ追い掛けて来たのか!?

 

 

「……悪い、気を遣わせたな。俺ならもう大丈夫だから、部屋に戻、」

 

「まだ戻っちゃ駄目!!」

 

「えっ?」

 

「あ、……ああー、その、えっと、そう!アナスイの怒りがまだ収まってないから!もうちょっとだけここにいて!!」

 

「そうか……分かった。それなら、もう少し待とう」

 

 

 一度立ち上がったが、再び階段に座る事にした。……そんな俺の隣にくっついて、徐倫も座り込む。

 

 

「……あー、徐倫ちゃん?君は先に戻っていいんだぞ?」

 

「やだ。志人さんと一緒にいる」

 

「…………やれやれだな、まったく……」

 

 

 何を言っても離れそうにないので、早々に諦めた。視線だけは、彼女を直視しないように逸らしておく。

 

 

「さーて、お邪魔虫は退散退散、っと」

 

「は?ちょっ、イージス待て!おい!?」

 

 

 すると、イージスが勝手に中に戻ってしまった。心の中で再び出て来いと呼んだが、無視されている。スタンドの反抗期だ!!

 

 

「くそっ、あいつめ……!!」

 

「ふふ、2人きりにしてくれたのね?気が利くじゃない」

 

 

 ますます身を寄せて来る徐倫から、さらに目を逸らす。そわそわする気持ちを紛らそうと、別の事を考えて……

 ふと、嫌な考えが頭に浮かんだ。……以前から意識的に考えないようにしていたが、一度それに気づくとその事しか考えられなくなった。

 

 

(――俺は、あのクソ野郎の血を引いている)

 

 

 そんな事実と、俺との結婚を望んでいる徐倫。その2つが結び付き……つい、聞いてしまった。

 

 

「もしも、……もしも、俺と君が結婚したら……その後の事は、どう考えている?」

 

「…………後の事?」

 

「――子供、とか……」

 

 

 俺がそう言うと、徐倫は……微笑んだ。何故笑う?

 

 

「やっぱりね……」

 

「やっぱり、って?」

 

「あんな事を言われた後だもの。志人さんがそうなるのも仕方ないわ……自分の妻と子供に暴力を振るうような男の血を引いている事を、気にしてるんでしょう?」

 

「…………そうか……君はもう、知ってるんだったな」

 

「ええ……あなたが話してくれた事よ」

 

「あぁ。そうだったな」

 

 

 まだ徐倫が幼かった頃。彼女と承太郎にエリンさん、それからポルナレフと共に杜王町へ行った時。

 墓参りについて来てくれた彼らに、俺の過去について語った事がある。……徐倫は、その時の事をちゃんと覚えていたらしい。

 

 

「……志人さんからその話を聞いて……数年後、だったかな?」

 

「んん?」

 

「お父さんが、あたしとお母さんにこう言ったの……もしもこの先、あたしと志人さんが結婚したその時は――あなたに、子供や孫の事で無理を言わないように、と」

 

「は……?」

 

「志人さんは絶対に、自分が暴力的な父親の血を引いている事を気にするはずだから。子作りに関してはあなたのペースに合わせろ、って……そう言ってたわ。

 もちろん、あたしとお母さんは納得済みよ。あたしは志人さんに子作りを強要しないし、お父さんとお母さんも孫の催促なんてしないから、安心してね」

 

「…………あの人は……本当に、どこまで俺の事を分かってるんだ……?」

 

「さあ?志人さんがあの人の事を理解しているように、あの人も志人さんの事を理解してるんでしょう?羨ましくて仕方ないわ、まったく……」

 

 

 まさか、俺の知らない所でそんな会話をしていたとは……その気遣いが嬉し過ぎて、涙が出そうになった。慌てて目頭を押さえる。

 

 

「…………あたし、子供が出来なくても全然構わないのよ」

 

「えっ?」

 

「結婚したら絶対に子作りしなきゃいけない訳でもないし、なんなら死ぬまで2人きりの夫婦でもいい」

 

「…………本当に……?」

 

「うん。――だって、一度結婚すれば子供がいなくても、志人さんなら死ぬまで側にいてくれるでしょう?……あなたは、そういう誠実な人だもの」

 

「――――」

 

「それに、皆が大好きな志人さんをあたしが独り占め出来るなんて最高じゃない!2人きり、上等よ!

 志人さんさえ側にいてくれたら、後はなんでもいいわ」

 

「――――」

 

 

 …………本当に子供がいなくても良いのか、とか。俺が原因で離婚になる心配はしないのか、とか。

 俺なんかを独り占めにするのが最高ってどういう事だ、とか。

 いろいろ、突っ込みたい事はあった。でも……彼女の、心底嬉しそうな笑顔を見た途端、何も言えなくなった。

 

 

 そして――唐突に、"覚悟"が決まった。

 

 

「…………徐倫ちゃん」

 

「なに?」

 

「もう少し……もう少しだけ、待っててもらえるか?必ず、君に返事をするから」

 

「……うん。待ってるわ」

 

 

 既に答えは決まっている。だが、今はまだそれを言う時ではない……伝えるのは、全ての準備が整ってからだ。

 

 

「…………そうだ」

 

「んん?」

 

「結局、志人さんの考えは?プッチ神父には生きたまま罪を償ってもらいたいって、どういう事?」

 

「あぁ、その話か。それは――」

 

 

 徐倫が上手く話を変えてくれたので、ありがたくそれに乗っかる事にした。

 何故、神父に生きたまま罪を償ってもらいたいのか。……同情心からそうしてもらいたい、というのも嘘ではないが。実は、他にも理由がある。

 

 

 人間は、死んでしまえばそれで終わりだ。……死者は、生者の手の届かない場所へ逝ってしまう。

 

 例えば、そいつをすぐにでも殺さないと周囲に甚大な被害が出るとなれば……殺すしかない。お人好しだなんだとよく言われる俺でも、それは理解できるし納得する。

 だが。捕まえる前ならまだしも、今のプッチ神父はすぐにでも殺さなければならない状態だろうか?

 ……否、だ。奴はヘブンズ・ドアーによって、スタンド能力を封印された。そういう意味では無害なのだ。

 

 さらに、本人は自分が悪である事を認めている。泣きながら妹に謝罪していたあの姿が演技だったとは到底思えない。

 今の神父ならきっと、自分に下される罰がどんな物であっても、素直に受け入れてくれるはず。

 

 だからこそ、死刑――殺すだけで終わりという、ある意味簡単な罰で済ませてはいけない。

 

 何らかの罰を生きたまま償わせるようにすれば、おそらく俺達が望むなら、その様子を定期的に確認できるだろう。

 目に見える形で、あるいは耳で聞く形で。奴がちゃんと罪を償っているかどうかを確かめる……少なくとも俺の場合は、それだけで満足できると思う。

 

 

「――というのが俺の意見だが、さっきも言ったようにこれはあくまでも個人的な考えだ。君達に押し付けるつもりはない」

 

「そっか……なるほどね。

 

 

 ――って、志人さんはそう言ってるけど、どう思う?扉の向こうで盗み聞きしてる人達」

 

「えっ??」

 

 

 徐倫の言葉を聞き、振り向くと……扉が開いて人が顔を出した。承太郎、エルメェス、F・F、ウェザー……アナスイ。客室にいるはずの彼らが、何故ここに?

 というか俺よ!原作6部が終わったからって平和ボケし過ぎじゃねぇか!?背後にいる複数の気配にまったく気づけなかったなんて!!次からはちゃんと警戒しよう!

 

 

「徐倫ちゃんは、いつから気づいて……?」

 

「最初からよ。……あの話の後、あたしが志人さんの考えを聞いた辺りで、お父さんがすぐ近くまで来ているのを感じたの。

 それでこっそり扉の向こうまでストーン・フリーの糸を伸ばしたら、エルメェス達の声も聞こえて来たから」

 

 

 そうか……星の痣が無くなっても、血縁者同士で居場所を感じ取れる力だけはそのままだったな。それで気づいたのか。

 あと、結婚と子供の話は彼らに聞かれずに済んだようだ。ギリギリセーフ!

 

 

「で?どう思ったの?」

 

「…………なんというか――頭をガツン、とぶん殴られたような感じがしたな。スポーツ・マックスを自分の手で殺して復讐した、あたしとしては」

 

「!」

 

 

 最初に口を開いたのは、エルメェスだった。……そうだな。

 俺の考えは、既に復讐を済ませた彼女にとって、自分のやり方を否定されたように感じてしまったのかもしれない……

 

 そう思って、彼女の様子を窺っていると……目が合った。

 

 

「……そんな顔すんなよ、志人さん。あんたのはあくまでも個人的な考え、だろ?分かってるよ。

 

 でもなあ……悔しい事に納得しちまった。確かに、殺すだけで済ませるのは簡単過ぎるよな……

 グロリアのためにも、奴の事はあえて生かして死ぬまで罪を償わせた方が良かったかもしれない」

 

「…………」

 

「だが、あの時の状況じゃそれが難しいのは分かってるし、奴を自分の手で殺した事も後悔してない。

 ――復讐とは、自分の運命への決着をつけるためにある……あの時、あたしは自分の運命に決着をつけた。それでいいんだ」

 

 

 ……俺の考えを否定する事なく、それどころか理解して、納得して……しかしそれでも自分がやった事を後悔しない、か……強いな。

 

 

 実際に言ったら怒られそうだから決して口には出さないが、さすがはエルメェス"兄貴"。

 

 

「……ってことで、あたしの復讐の事はともかく。プッチ神父を生かしたまま罪を償わせる事については、反対しない。つーか、割と賛成」

 

「…………俺も、どちらかというと志人の考えに賛成だな」

 

 

 と、意外な事にウェザーも賛成だと言い出した。原作ではあれほど神父を憎んでいたのに……現実では復讐心を乗り越えた事で、それもマシなったのか?

 

 

「殺すだけで済ませるのは生ぬるい……生きたまま、死ぬまで過酷な罰を受けさせればいい。それも、ギリギリ死なずに済む程度に加減された罰を。……そう簡単には死なせねえ」

 

 

 おおう……全然マシになってなかった。乗り越えはしたが、復讐心はまだ消えていないようだ。

 ウェザーさんウェザーさん?後ろでF・Fがドン引きしてますよ??

 

 

「…………それに、」

 

「?」

 

「――ペルラなら、プッチ神父を殺すよりも生かす方を望むだろう……兄を大切に想っていた、彼女なら」

 

 

 …………あぁ、なるほど。これが俺の考えに賛成した、一番の理由だな?自分の感情よりも、今は亡き恋人の気持ちを優先させたいのだろう。良い男だ。

 

 

「……F・Fは?志人さんの考えを聞いてどう思った?」

 

「あたし?……うーん、そうだな。あたしは最初から、さっきの徐倫の考えに賛成だったからなあ。

 あたし達の前に二度と顔を見せなければそれでいいけど、それに加えて生きたまま罪を償ってくれたらなおのこと良し、って感じ?」

 

「そうよね。あたしもF・Fと同じよ。あたし達の前に現れずに、生きたまま罪を償ってくれればそれで良し」

 

 

 ふむ。F・Fと徐倫の意見は同じか。では、最後にアナスイの考えを聞けばこの話は終わり、

 

 

「じゃあ、そういう事で。……お父さん、志人さん。今のあたし達の考えを、財団に伝えてくれる?

 あと、エンポリオにもあたし達と同じように志人さんの考えを伝えた上で、彼の意見を聞いて欲しい」

 

「分かった。……今回は志人の考えも含まれているし、俺が財団に伝えた方がいいだろう。今日中に連絡しておく」

 

「うん。お願いね」

 

 

 ……って、あれ?徐倫も承太郎も普通にスルー!?アナスイには聞かないのか!?

 

 

「じょっ、徐倫ッ!!」

 

「――ああ"?」

 

 

 その時、アナスイが徐倫を呼んだ。しかし彼女は恐ろしい表情でアナスイを睨み付ける。

 おかしい。徐倫は彼に対して複雑な感情を抱きながらも、邪険にはしていなかったはずだ。それが何故いきなりこんな事に?

 

 

「っ、……徐倫、すまない!俺は、」

 

「はい、失格」

 

「は……?」

 

「あんたは今、順番を間違えた。だから罰を与える。

 あんたがあたしの考える正しい順番に気づいて行動を起こさない限り、あたしはあんたと二度と口を利かないわ」

 

「そ、そんな!?徐倫、頼む!それだけは勘弁してくれッ!!」

 

「…………」

 

「徐倫?……徐倫!徐倫ッ!?」

 

「…………」

 

 

 ……徐倫は、本気のようだ。アナスイが徐倫の考えている通りの行動を取らない限り、本当に口を利かないつもりなのだろう。それを理解したアナスイは、真っ青になっていた。

 

 

「徐倫、ちゃん……?」

 

「なあに?志人さん」

 

 

 あまりの事に思わず声を掛けると、彼女は俺には普通に返事をしてくれた。ニコニコ笑顔だ。さっきの般若顔は何処に行った?

 

 

「いや、あの……俺が客室から出て行った後に、何かあったのか?」

 

「何も無かったわよ?」

 

「えっ?」

 

「何も、無かったの。……お父さん、エルメェス、F・F、ウェザー。そうよね?別に何も起こって無いわよね?」

 

「徐倫?何言ってるんだ?さっきのは、」

 

「馬鹿ッ!F・F!!」

 

「黙ってろ!!」

 

「ええッ!?」

 

「…………あー……大丈夫だ、徐倫。さっきは何も無かった……そう、何も、無かったんだ。分かってる」

 

「ありがとう、お父さん!……ほら、志人さん。お父さんもこう言ってるでしょ?何も無かったのよ」

 

「…………そ……そう、か……うん……了解」

 

 

 F・Fはいまいち分かって無さそうなので、承太郎とエルメェスとウェザーの3人と目を合わせる。

 ……全員が俺に向かって小さく、しかし小刻みに頭を振った。心なしか、顔色も悪い。

 

 OK、把握。つまり俺だけは知ってはならない事なんだな?彼らには小さく頷きを返して、それ以上は何も聞かない事にした。

 

 

 後に、アナスイは真っ青どころか真っ白になってしまったので、ウェザーに回収されて去って行った。

 女囚トリオもそれに続いて立ち去り、残された俺と承太郎も客室へと戻る。

 

 

「……承太郎さん、」

 

「お前がいない間に何があったのかは言えない」

 

「あぁ、分かってる。それよりも――例の、もう1つの件……本格的に話を進めてもらえるか?」

 

「!」

 

 

 ばっとこちらに振り返った承太郎は、限界まで目を見開いていた。……やがて、ふっと微笑む。

 

 

「……"覚悟"は、決まったか?」

 

「…………あぁ」

 

「そうか。……よし、後は俺に任せろ。数日後には必ず実現させる。それまでに、お前も必要な物を用意しておけ」

 

「んん、ありがとう」

 

 

 承太郎にぐりぐりと頭を撫でられながら、昨日彼から手渡された小さな紙を握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 






・思わず叫んだプランクトン

 アナスイ……(´;ω;`)

 エルメェスと共に、徐倫の恋を応援している。徐倫が園原へのスキンシップを増やしたのは、彼女とエルメェスの助言がきっかけ。
 アナスイ(の命)を心配しており、早く諦めた方が身のためではないかと思っている。協力を拒否したのもそれが原因。

 アナスイが一番傷つく結末を迎えてしまったら……と心配していたら、本当にそんな結末を迎えてしまった。
 園原の過去には驚いているが、それ以上に徐倫がアナスイを明確に振ってしまった事が衝撃だった。アナスイ……(´;ω;`)


・思い切り地雷を踏まれた助手くん

 ――俺の母さんを、侮辱するな。

 アナスイが母を侮辱し、クソ野郎(父親)と一緒にされた事でキレそうになったが、なんとか我慢して頭を冷やすために外へ。

 後に徐倫との会話の中で、自分が知らない間に空条家で結婚や子供の取り決めがされていた事を知り、驚愕。承太郎の気遣いに涙が出そうになった。
 さらに。その後の徐倫の言葉と、彼女の笑顔を見た瞬間――唐突に、"覚悟"が決まった。

 既に答えは決まっている。だが、今はまだそれを言う時ではない……伝えるのは、全ての準備が整ってからだ。


・助手くん一筋の6部主人公

 あたしが生涯を共にする相手は!園原志人ただ1人よッ!!

 F・Fとエルメェスの助言も受けて、園原を恋愛的に攻略中。確かな手応えを感じている。
 その最中、アナスイが園原の地雷を踏んだ事に激怒。園原の代わりにぶん殴り、ついにはっきりと振ってしまった。

 園原が一生添い遂げてくれれば、子供はいてもいなくてもどちらでも良し。……あ、でも養子という手もあるわね?ちょうど身近にぴったりな子もいるし。

 アナスイがとある順番を間違った事で、しばらく口を利かないと決めた。また、園原にだけはアナスイを殴って振った事を知られたくない模様。承太郎達にも口封じ。
 何も、無かったの。……お父さん、エルメェス、F・F、ウェザー。そうよね?別に何も起こって無いわよね?(威圧)


・助手くんをこれでもかと気遣う海洋学者

 娘の威圧が怖過ぎるんだが……(・・;)

 園原の地雷を踏んだアナスイに激怒しようとしたら、徐倫に先を越されて珍しく唖然。俺も殴りたかったのに!
 だが、徐倫がきっぱりとアナスイを振った事に満足しながらも、その後のアナスイの扱いには実はほんのちょっとだけ同情している。

 徐倫による口封じの威圧が怖過ぎる……と思っていたのもつかの間、園原が"覚悟"を決めた事に驚愕。そして歓喜。早く例の件を進めなければ!


・盛大に失恋した元殺人鬼

 徐倫に振られて真っ青からの、口も利いてくれなくなって真っ白。

 園原に嫉妬して突っ掛かった結果、地雷を踏んで徐倫に激怒され殴られて振られて口も利いてくれなくなって……SAN値直葬。
 しばらくは立ち直れそうにないが、それでも徐倫の言う"正しい順番"について必死に考えている。

 果たしてアナスイは、徐倫との関係を修復する事ができるだろうか――?





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