陰の守護者になるために。   作:某キル

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(陰実は初めてなので)初投稿です。
最初から変じゃなければいいのですが…


0章:終わり、始まり、終わるまで
-1:闇夜を駆ける異形


それは、月明かりに照らされた静かな森のどこか。

とある盗賊たちの拠点付近で起きた、とある日常の一部分。

 

「いやー…凄い数っすね、ボス!」

 

「これらを全部売れば…あぁ、きっとすごいだろうよ!」

 

「問題になるのが分配だ、売って手に入れた金をどう分けるか…」

 

「おい、お前ら!」

 

「「「は、はい!!」」」

 

「今浮かれるのはいいが、最後まで油断はするなよ?」

「盗品を売って金にするまでが仕事なんだ、ここでやらかしたらとんでもないことになる。」

「とりあえず、それらを種類ごとにある程度分けておけ、売る時に多少印象がよくなる。」

 

手下たちはボスに言われた通り、金品の仕分けを始める。

彼らにとって、今回の襲撃は大勝利だった。

沢山の金品を運んでいた護衛のいない商人という、まさに完璧な狙い目だったからだ。

恐らく今後二度と起こりえない、奇跡のような出会いだったと言える。

…もっとも、商人からすれば悪夢のような出会いだったが。

 

そして、今日は終わると思っていた。

あれだけ部下に注意を促していたボスも、実際には油断していた。

彼らがそれなりに強いため、今までに何度か襲われても平気だったから。

近頃噂になり始めた「盗賊を狩る存在」とやらも、浮かれて軽視していた。

盗賊を狩る存在――その正体は、噂が広まるばかりで誰も知らない。

いったいどんな輩なのかと、のんびり考えていた。

 

「うわぁぁ!!?」

 

「「「「!?」」」」

 

外で見張りをしていた手下の悲鳴が聞こえてくるまでは。

 

「おい!大丈夫か!?ッチ、おいお前ら、今すぐ準備してこい!」

 

「「「は、はい!」」」

 

ボスがいの一番に外に出てみると、そこには…殺された部下の姿があった。

その胸には、爪で引き裂かれた跡がはっきりと残されている。

恐らくたった一撃で部下を仕留められたとわかると、ボスの心に、恐怖心が沸いてきた。

 

「お、おい!しっかりしろ!!」

 

「こ、これ、生きてるんでしょうか…?」

 

「…だめだ、もう死んでいる。いったい誰がこんな惨状を…?」

 

無残な仲間の死体を見た部下も同じく、恐怖心が沸いた。

…しかし、ボスはうっすらとだが感じていた。

仲間を一方的に殺されたという事実に対する恐怖心とは、また別。

どこかから感じる、言葉では言い表せないような、強いて言うなら『恐怖』そのものを。

 

「…俺が一人で探ってくる。お前ら三人は全員で見張りをしておけ、いいな?」

 

「で、でもボス…」

 

「いいな?」

 

「「「…はい。」」」

 

強く言い聞かせると、ボスはその『恐怖』を漂わせているヤツを探しに向かった。

実は彼がここまで強く言った理由は、部下が大切だからというものだった。

とはいえ、その理由などは今この状況において特に関係がない。

その理由を…彼はすぐに知ることになるだろう。

 

(…!見つけた…)

 

そこに、いる。

『恐怖』を漂わせ、微かに存在感も漏らしている何者かの姿を、草むら越しに感じた。

息を整え、斧を構え、そして再び息を整えて…その武器を振り下ろす。

迫りくる高速の一撃、今からでは決して避けられない不可避の攻撃。

 

その、はずだった。

攻撃が当たる直前で、その存在感が一瞬にして消えるまでは。

攻撃に手ごたえはない…当たらなかったという、何よりの証拠だった。

移動したなら姿が見えると思ったが、見えるのは漆黒の闇だけ。

 

「なっ…」

 

ボスは驚愕していた。

あまりにもあり得ない事態、あり得るとしたら…罠。

 

「「「うわ」ぁぁ」ぁぁ!?」

 

「バカな!?」

 

その考察を肯定するかのように聞こえる、部下の悲鳴。

急いで向かえば…先程と同じ、爪で引き裂かれた部下の姿があった。

三人相手に、一瞬にして仕留めるほどの力…人並外れた何かが、ある。

その事実を認識したボスは、更なる恐怖心をその身に感じていた。

『油断すれば、一瞬にして殺される』『急いで逃げれば、命だけは助かるかもしれない』

様々な思考が頭のなかで錯綜し、どうするべきかわからず立ち尽くしていた。

 

その、背後から。

何者かが歩く、足跡が聞こえる。

一歩、一歩、また一歩…その気配は、先程ボスが感じたのと同じ。

月明かりに照らされた何者かの影が、ゆっくりと近づいてくる。

恐る恐る振り向くと、そこには…

 

人と化け物の中間とも言える容姿の、何者かが立っていた。

妖狐族のような姿に加え、爪はクローのように伸び、目は狼のように鋭い。

更にその爪と左目は夜の闇そのもののような漆黒で、耳と尾、そして右目は月光を思わせるほど純白。

妖狐族の美しさと狼の荒々しさを併せ持ち、闇と光が織りなす異形の存在感が漂っていた。

それを見ただけで…心の中でうごめいていた『恐怖』が、一気に爆発した。

 

「っひ……!」

 

思わず腰が抜けて、武器を落としそうになる。

その圧倒的な『恐怖』を前に、心を折られそうになる…が、勢いでごまかした。

 

「せめて…一撃でも食らいやがれ!!」

 

その『恐怖』を押しつぶして放った攻撃は、しかし目の前の敵には届かず。

受け止められ、弾かれ、武器を手放してしまう。

直後、自身の体に爪がかけられ、引き裂かれる、その時。

 

「…さようなら。」

 

何よりも冷たい別れの言葉を告げた、それだけが理解できた。

爪が漆黒の軌跡を描き、空気を裂く音と共に、ボスの胸を一瞬で引き裂いた。

…一瞬にして、盗賊たちは全滅した。

 

その原因である彼が盗賊の死体に近づくと、彼らが持っていた金だけを奪い、その場を去った。

すぐそばの洞窟にある、盗品の数々を無視して。

 

 

後に残されたのは、無残な盗賊の死体と、その盗品だけだった。




書き方を試行錯誤してはいるけど、やはり難しい。
もう少しいい表現があるのではないかと、常に不安になりますね。

はてさて、いったい何者なのでしょうか…?
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