陰の守護者になるために。   作:某キル

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(0と書いてはじまりと読むので)初投稿です。
前話に出てきた化け物君の過去になります。
言ってしまえば、彼がオリ主ですね。


0:重なる運命、化け物を添えて

…あれは、俺がまだ10歳になる少し前のことだった。

あの日、俺の人生は一変した。いや、正直に言えば――壊れた、と言ったほうがいいかもしれないな。

 

俺の家族は、ごく普通だった。

父と母はいつも笑顔で、妹は少しだけ生意気だったけど、そんな日常が心地よかった。

何の変哲もない、平和な日々だったんだ。

けれど、あの日――あのお出かけの日、それは一瞬で崩れ去った。

 

家族全員で出かけて、スーパーに行った時のこと。

突然、三人の男が現れた。

彼らは、手に武器を持っていた。その時の俺は、何が起きているのか全く分からなかった。

ただ、次の瞬間には――俺の家族が、その手によって無惨に殺された。

 

あの時の光景は、今でも忘れられない。

妹の泣き声、母の叫び、父の怒声…そして、それらが一瞬で掻き消される音――。

周りには、俺の家族だけじゃない。その他にも、たくさんの被害者がいた。

誰もが苦しみ、叫び、そして絶望した。

 

けど、俺は――何もできなかった。

ただ、その場で立ち尽くし、目の前の惨状を見ているだけだった。

どうしていいか分からなかったんだ。

足はすくみ、頭は真っ白で――。

家族を「護る」ことなんて、できやしなかった。

 

その後、三人の男は捕まった。

けれど、そんなことが俺の何かを変えるわけじゃなかった。

家族が戻るわけでもないし、心に空いた穴が埋まるわけでもなかった。

 

それでも…俺は思ったんだ。

「もう二度と、大切な人を失いたくない」ってな。

だから決めた。俺は強くなるって。

どんなに苦しくても、どんなに辛くても、俺は――「護れる人間」になるんだって。

 

そのために俺は、様々な武術を学んだ。剣道、弓道、柔道、フェンシング…なんでもだ。

「護る」ために必要なものは、全て身に着けるつもりだった。

そしてそれは、俺の全てだった。

 

……その努力の途中で、俺は「彼」と出会った。

そう、影野 実――「中二病患者」とでも言うべき、奇妙な奴だった。

最初は『なんだこいつ…』と思ったよ。でも、話してみてわかった。

彼はただの「おかしな奴」じゃない…自分の目標のために、ひたむきに努力している奴だってな。

俺もまた、彼の影響を受けた。いや、もしかするとお互い様だったのかもしれないな。

…確か、彼の目標は「陰の実力者」…だっけ?

彼は無事、目標を達成できたのか…気になるな。

 

だが、そんな日々も――長くは続かなかった。

俺は、ある雪の日に命を落とすことになる。

トラックの前に飛び出した少女を守ろうとしてな。

 

正直、あれはほとんど本能でやったことだ。

気づいた時には、とっくに飛び出していたんだよ。

でもその時の俺は、後悔はしていなかった。

「最後に誰かを護ることができてよかった」――そう思いながら、俺の意識は消えた。

そして次に目覚めた時、俺は……

 

 

転生、したらしい。

 

 

俺はノクターン家の長男『ルミナス=ノクターン』として生まれ変わっていた。

流石にちょっと混乱したけど…これは、俺にとってのチャンスでもあった。

まだ、誰かを護ることができるというだけで、うれしかったんだ。

 

6歳になって初めて戦う練習を始めたけど…自分でも驚くほどに、すらすらと成長した。

どうやら、転生前に武術を学んだ経験は確かなようで、本当に良かった。

あと、この世界には前世にはない、『魔力』というものが存在した。

彼が、実が追い求めいていた魔力…彼がこの世界で生まれていればよかったのに。

それはともかく、俺はどうやら魔力の扱いにも長けていたようで、いとも簡単にコツを掴めた。

 

もちろん戦う練習だけではなく、勉強もしっかりとした。

とはいえ、前世が前世だったからそこまで賢くはなかったけど…

それでも、人並以上の頭脳は持っていた。

勉強も楽しいし、できることが増えるのはもっと楽しいからな。

 

魔力を乗せた体の動きで相手を追い詰め、突き詰めた剣術を揮って倒す。

9歳になることには、そんなこともできるようになっていた。

今の僕なら、何でもできそうだった。

もちろん、これを暴力なりなんなりに使うつもりはない。

これは、『護るための力』なのだから。

 

気づけば、あと一か月で10歳…前世の記憶が、脳裏にちらついた。

前世も今世も、両親がいて、妹がいる。

なら、また家族を失うことになるのか?

ふざけるな。絶対にそうはさせない。

今の俺には戦う力が、『護るために戦う力』がある。

例え何が襲い掛かろうとも、俺が絶対に守って見せる!!

そんな、固い決意を持っていた。

 

 

 

 

家族が殺され、家が荒らされ、金品が全て取られた、悲惨な光景を見るまでは。

 

 

 

 

その日も俺は、戦闘訓練に勤しんでいた。

斬り、突き、叩き、斬り、突き、叩き…流れるような連続攻撃の練習だ。

だいぶ夢中でやっていたせいか、気づけばとっくに夜だった。

これはいけないと思い、急いで帰ってきて…母が玄関で倒れているのを見た。

 

剣が手から外れ、音を立てて落ちるが、そんなことはどうでもいい。

俺は急いで駆け寄り、助けようとするが…もう、死んでいた。

家に入れば、中は執拗に荒らされ、金品が全て奪い取られていた。

当たり前のように、父も妹も殺されていた。

そのすべての光景を目にして、外に出た俺は…その場で崩れ落ちた。

 

あぁ、あぁ…どうして、こんなことになるんだ。

家族を護れず、生まれ変わり、力を積んで、なお家族を護れなかった。

例えいくら強くなったとしても、殺されそうなときにそばにいなければ、ないと同じ。

当たり前の話で…それでもなお、理不尽としか感じなかった。

せめて、もっと早くに帰っていれば…なんて、今ではもう遅い後悔をして。

そんな状態では、背後に迫りくる何者かの気配を察知することなんてできず…

 

俺は不意打ちを喰らって、意識を失った。

 

目が覚めると、そこは実験室のような場所だった。

俺の体は固定され、装置に貼り付けられていた。

…正直、このあたりの記憶はよく覚えていない。

大切なものを失った直後で、何も感じられなくなっていたんだと思う。

でも、それでもわかったことはある。

家族を殺し、家を荒らし、金品を奪い、俺を実験体にしたのは、すべて同一の集団の仕業だということ。

 

あいつらはこう名乗った…『ディアボロス教団』と。

 

全部うまくいって上機嫌だった幹部っぽい人は、ペラペラと色々話していた。

俺は必至にその言葉を記憶に刻み込んで、忘れないようにした。

それでも、正直全然覚えてなくて、記憶できたのはほんの僅か。

『魔人ディアボロスの復活』『英雄の子・子孫』『悪魔憑きの真実』

これらのワードと、それに関する途切れ途切れの話だけ。

まぁ、何も知らないよりはだいぶマシだけど。

 

そして遂に話が終わると、実験が始まった。

その内容は、最強の手駒を作り上げること。

狼、狐(九尾)、闇、光の四つの概念的エネルギーを注入するという内容だ。

幹部曰く、準備するのに途方もない時間がかかったらしい。

この実験に対する適正の高い人物を探しており、それが俺だったようだ。

俺を攫うついでに、俺の家族を殺し、金品を奪った、とも…

 

エネルギーが注入され始める。

それと同時に、体の奥から何かがこみ上げてくる。

その感覚は膨らみ続け、とうとう弾けると…身体全体に激痛が走った。

身体が千切れそうで、首が締まりそうで、頭が弾けそうで。

死が目の前に幾度となく接近する感覚を味わい続けた。

その最中、身体の感覚にも異変が訪れた。

頭と腰当たりに強烈な違和感を感じ、そこを重点的にさらに痛みが増す。

機械音もどんどん大きく、高くなっていく。

もうほとんど何も考えられなくて、本当に死んでしまいそうで。

早く終わってほしいと何度も祈っているその時、研究員であろう人物が入ってきた。

それも全力疾走でやってきて、顔面蒼白の状態で。

機械が限界を超え、周囲に火花と煙が噴き出しているのがかろうじてわかる中、

早口でまくし立てるせいでほとんど聞こえなかったけど、最後の言葉は聞こえた。

 

 

 

『この研究所は間もなく爆発します!』と。

 

 

 

そう、いわゆる爆発オチだった。

爆発に巻き込まれて再び気を失い、次に目が覚めた時には瓦礫の中だった。

研究所は跡形もなく消えており、ここに何かが建っていて何かがあったことしかわからない。

研究資料も機械もすべて灰と化していて、何かを知ることもできない。

あたりを見渡しても、無事なのは鏡一つだけ…むしろ、なぜ鏡が無事なのかが謎だ。

さっきから感じる違和感を確かめに、鏡の前に立つと、そこには…

 

化け物が、映っていた。

その目に映ったのは自分のはずなのに、それが自分だと信じたくない――そんな矛盾した感情に襲われた。

 

頭には狐の耳が生え、腰から…正確には尾てい骨からは九つの尻尾が生えていた。

それは紛れもない、妖狐族の姿。

しかし、それだけではなかった。

瞳の色が白と黒になっており、よく見ると爪も黒く染まっていた。

爪の部分がうずうずしていて、なんとなく腕を振るえば、爪がクローのようになる始末。

…これのどこに、化け物ではない部分があるのだろうか。

いやまぁ、妖狐族の部分だけならまだ何とかなっただろう。

というより、それはもう妖狐族そのものであるわけだし。

しかし、この白黒の両目がまずい…よく見れば、これ狼の目だ。

どうやら、あいつらの実験は成功したみたいだ…代償として研究所が吹っ飛んだが。

 

あぁ…俺はこれから、どう生きていけばいいのだろうか。

とは思ってみたものの、そんなものは決まっている。

もちろん、ディアボロス教団への復讐だ。

護るものをすべて失い、化け物へと成ってしまった俺の、やぶれかぶれの復讐だ。

俺に残されていた『護るための力』は、そのまま『復讐するための力』へと成り、

与えられた力はそのままあいつらに地獄を見せるために使ってやろう。

 

とはいえ、それだけではダメだ。

それだけでは…ディアボロス教団への復讐が完了して、すべてが終わった時。

俺は…生きる意味を失ってしまう。

そしたらきっと、俺は…

あーもう、そんなネガティブなことを考えてる場合じゃない。

とりあえず生きよう、生きて生きて生き延びよう。

その中でディアボロス教団の情報を集めつつ、偽善活動でもすればいい。

生きていればきっと、良いことがあるはずだから。

 

 

 

一人心の中で独白して、気持ちを切り替える。

とりあえず、あいつらの持っていた金でしばらくは安泰だろう。

盗品は…いつものことながら、見つけてくれることを祈るか。

俺が渡すわけにも、僕が渡すわけにもいかないからな。

 

にしても、これで盗賊狩りも何回目になるのか…

暇さえあればしていたからな、そもそも数えてないから覚えてないな。

ま、そんなことはどうでもいいや。

とりあえず今日は遅いし寝よう。

 

 

きっといつか、良いことが起きると信じて。




長い、いきなり長い!
とはいえ、これぐらいの過去を込めているのでね…仕方なし。
ここまで長いと誤字が怖いので、もしあれば教えてください。

ん?最後、俺と僕が混ざってるって?あの部分は仕様です、ハイ。
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