散々引っ張っておいた伏線がこれってマジ?
俺とシドが出会ってからさらに数日。
未だにディアボロス教団に関する情報をつかめてない、割とやばい状態だった。
そりゃまぁ、一人から二人になったとはいえ、お互いに探し物は苦手だし…
とはいえ、前の時と違ってそこまで焦ってはいない。
何故なら、シドがいるからだ。
やっぱり、同じ目標を持った仲間がいるってだけで安心感が凄い。
あと、他にも理由はいくつかあるな。
で、俺が今どうしているかというと…
シドの家にて暮らしています。
あはい、どうしてこんなことになっているのかというと…
まず、忘れているかもしれませんが、僕は絶賛家無し状態です。
それに気づいたシドがどうにかしようとした結果、
シドの両親…オトン=カゲノーとオカン=カゲノーをシドが説得して、
シドの家に居候させてもらおうということになりました。
最初両親の名前を聞いた時はびっくりしましたよ、あまりにもドストレートすぎて。
で、いざ実行ということでお願いした結果、割とあっさり受け入れてくれました。
まぁ自分で言うのもあれですが、僕の背景が背景ですからねぇ。
ほぼほぼ成功するとは思っていましたが、それでも安心しました。
ただ…シドの姉のクレア=カゲノーだけはどうも納得してくれなくて。
あれ単純にブラコンってだけなんでしょうけど、にしても凄いですね。
…あ、僕の姿と一人称ですか?
姿はほら、化けることができる能力があるでしょう?
他人に化けられないとはいえ、普通の自分の姿になれるだけで万々歳です。
で、一人称が僕になっているのは印象をよくするためと、単純に意識の切り替えです。
シドも表裏で一人称を使い分けているでしょう?
つまりはそういうことです。
あと説得するときに話したことは、実際の出来事と比べてだいぶ変わってます。
流石に全部正直に話しても混乱させるだけだと思いますし、カゲノー家が危険にさらされるかもですし。
内容は『家と家族を何者かにすべて奪われて、暮らす場所がない』って感じです。
真実が足りないだけで、嘘は言ってないでしょう?
そういうわけで、のんびりと暮らしています。
オトンとオカンは優しいですし、クレアはいい練習相手にもなります。
とはいってももちろん、全戦全勝です。
一応化け物になる前の僕の最高スペックで戦っているのですが…
どうやら僕は化け物になる前でも、十分強かったようです。
そう、護るための強さは十分にあったんです…この話はやめましょう、気分が悪くなります。
あぁ、あと勉強も再び学ばせてもらってますね。
シドと一緒に勉強してると、割と楽しいですよ。
演技だとしてもしょっちゅう聞きすぎな部分はあると思いますが。
今日もクレアさんとの練習試合をします。
今日もというか毎日、しかも数回挑んでくるんですよね。
まあ気晴らしにもいいし、これも欠かせないルーティーンの一つです。
「それでは、よろしくお願いします。」
「ふん…来なさい。」
よくあんなことを恥ずかしげもなく言えますよね…全戦全敗のはずなのに。
どうやら、僕も見習うべき…かはわかりませんが、プライドがかなり高いようです。
後恐らく、シドにいいとこを見せたいというのもあるのでしょう。
やっぱりクレアは重度のブラコンのようですね。
現に今も、シドが自分ではなく僕を見ていてむすっとしてますし。
「…はぁっ!」
「っ!」
剣を振るい、一撃で仕留めにかかる。
流石に止められるものの、良い線は行ってる。
間違いなくクレアさんも、少しずつ成長してますね。
「そこっ!」
「甘い!」
「もう一回!」
「counter!」
「きゃっ!?」
反撃を避け、追撃に対して反撃してクレアの剣を弾き飛ばす。
そのままクレアの首に剣を振るい…首に触れる直前で止める。
この勝負は、僕の勝ちで終わった。
ちなみに「counter!」はすごい流暢に言ってる…シドの案だ。
ぱっと見モブで、周りに優しく、その実戦闘では燃え上がる…というキャラ付けをリクエストされた。
まあ元々の僕と大して変わらないし、面白そうだから引き受けました。
その演技の楽しさもまた、精神安定に関わっていると言えるでしょうね。
「僕の勝ち、ですね。対戦ありがとうございました。」
「…くっ、覚えておきなさい!」
そう言うとクレアさんは弾き飛ばされた剣を取りに向かった。
このセリフもまた、いつもの流れである。
で、この後にカゲノー家の両親が一言いうのもいつもの。
「やはり、ルミナスの強さは段違いだな…」
「前にご両親から聞いてた通り、かなり腕が熟達してるみたいね。」
…ゑ?
僕の両親、カゲノー家の両親と知り合いだったの?
初耳だぞそれ…まあ多分修行に打ち込みすぎてて気づいてない僕もいたんだろうけど。
…いけない、切り替えが雑になってた。僕は今、”表”のモードだ。
「で、シドはどうだ?少しは上達したか?」
「もちろん…って言いたいところだけど、全然。」
「そうか…ふーむ、何かいい方法はないものか…」
まあもちろん嘘でして、この人しれっと上達しているのですよね。
まあシドは表向きは『どこにでもいるいたって普通のモブ』を演じていて、
完璧なモブを目指しているらしいです。
でも、明らかに普通のモブではありえないセリフや行動もちょくちょくあるんですよ。
まあ、ギリギリモブ足りえている…のかな?
僕にはどうも、普通のモブがどういうものなのかわからないです。
夜遅くになれば、俺らの秘密の修行の時間がやってくる。
今までと違って普通に生活している都合上、使える時間はここぐらい。
睡眠時間を大きく削られそうで困っていたのだが…シドが教えてくれた睡眠法で解決した。
話によると、魔力による超回復と瞑想を組み合わせた、独自の睡眠法だとか。
やはり魔力の扱い方となれば、シドの右に出るものはそうそういないだろう。
実際、俺はシドから魔力の扱い方について教えてもらっている。
おかげで魔力を使ったアレコレが更に強く、使いやすくなった。
そのお返しとして、俺のファンタジー系能力を教えようとしたが…うまくいかなかった。
まあ俺の持つファンタジー系能力は実験によるものだから、仕方ない部分はある。
とはいえ何も成果がないわけではなく、俺の能力を参考とした新技が生まれた。
その名も『シャドウチェーン』…鎖の形の魔力を放出し、敵を捕らえる技だ。
その締め付け具合は中々に強力で、俺でもある程度力を出さないとちぎれなかった。
というか俺はともかく、なんでシドは魔力を飛ばせるんですか?
確か魔力を飛ばせる人って、ほとんどいないはずじゃ…
と思って色々聞いてみたけど…うん、想像以上にやばかったわこいつ。
化け物になる前の俺とは比べ物にならんし、なんなら今の俺と比べてもやばい。
前世の記憶を頼りに効率的に肉体を鍛え上げるのはわかる、俺もやったし。
でもよ、魔力を使って肉体そのものに改造施すってなんだよ?
ていうか、魔力の扱いや身体能力が化け物なのはそれが原因だったのか。
多分人間を優に超えて獣人をも上回って、下手したら俺よりもわずかに早い説がある。
まああくまでも人間だから、嗅覚や聴力では明確に劣るものの、それでもだよ。
…というか、そういや俺も嗅覚が鋭いのか、あんまり意識してないから自分でも知らなかった。
とまあ、いったんこいつの事は置いておこう。
これ以上解説しようものなら俺の頭が壊れる…
要するに、こいつは俺並みかそれ以上の化け物だ。
ん、化け物同士仲良くいこうって?
やかましいわ…って言いたいけど、まあ仲良くいくのは賛成だな。
そうしていくらか修行した後、俺たちはとある場所に向かった。
なんでも最近、盗賊が廃村に住み着いたらしい。
年に一度の一大イベントってぐらいなかなか出会えない盗賊を狩れる、とはシドの言葉だ。
いったいどこからそんな情報を得たのか…まあ、そこは別にそこまで重要でもない。
それほどまでにレアな盗賊となれば、持っている金品も豪華だろうというわけだ。
…あぁ、シドと一緒に盗賊狩りをするようになってからは、盗品も遠慮なく持って行った。
よっぽどの代物じゃない限りは、盗品は基本的にあきらめてるそう。
だからそのまま腐っていくよりは、僕たちで使ってあげた方がいい、ともシドは言った。
こっちに関しては正直悩んだが…まぁ、その通りかと思って乗っかった。
元々偽善活動だったから、大して変わらないと言えば変わらない。
あと、今回はシドが作ったスライムボディスーツの実践投入日でもある。
にしても、名前だけ見ると訳が分からないな…
魔力を武器に流すときにどうしてもロスが生まれてしまうというのは知っている。
普通の鉄剣だと九割、ミスリル剣でも五割のロスが生まれる。
そこでシドが注目したのは、まさかのスライムだ。
スライムは魔力を使って形を変え、動き回る魔法生物。
シドが調べたところ、魔力伝導率は驚異の99%だそう。
まあ言われてみれば納得だが、にしても驚いた。
しかも液体故に自由に形態を変えられるということで、汎用性も高い。
そうしてシドがスライムゼリーの研究を進め、ついに完成したのがスライムボディスーツ。
鎧と違い、軽く音も鳴らず快適、むしろ身体の動きを補助してくれる優れものとのこと。
元がスライムだから耐久性は高いを通り越して破損しても再生可能で、
スライムの量が減っても魔力を流せば元通りに再生するように無尽蔵に生成できる。
まあ無尽蔵とは言っても魔力には限界があるが、それでもだいぶ修復できる。
小さな状態にすることで持ち運びでき、別の服の中に隠すこともできる携帯性もある。
そして最大の特徴が、魔力を流して形状を自在に変化できる点だ。
使用者の意思によって、瞬時に形状・硬度・強度・密度を自由に変えることが可能。
しかも好きな場所から剣や刃を生成することもできる。
更には一部を千切って弾丸や鎖を生成したり、
千切った後からでも離れた位置から遠隔操作でそれらを生成することすら可能だとか…
そう聞くと訳が分からないぐらい優秀だな…本当に、本当によくやった、シド。
ただし、このスライムボディスーツ…
「…長いからスライムスーツでいいか?」
「確かにそうだね、採用。」
スライムスーツにももちろん弱点が存在する。
それが、先程挙げた話は全て理論上での話であることだ。
その性能の殆どが魔力に依存している故に、実際の性能は着用者の魔力制御能力次第。
俺やシドでも発揮できる性能はまあまあくらいで、一般人が着ても効果はないだろう。
魔力切れや魔力封じの状況下ともなれば、完全に使用不可能になってしまう。
…あとその時、形を保てずに溶けてしまうから中に服を着てないと社会的に死ぬ。
詰まるところ、スライムスーツはお手軽無双アイテムなんかではない。
一定量の実力を持つ人の強さを底上げするようなものということだ。
「んじゃ、いい加減変装を解いて…蹂躙と行くか。」
「おお、やっぱりその姿いいね。背景の月とよく似合っているよ。」
「……まぁ、最近はこの姿に対する忌避感が薄れてきてるな。」
「その調子その調子!というか、考えてみなよ…」
「その圧倒的な姿と力で、ディアボロス教団をボコボコにできると考えたら、さ?」
「…なるほど、そう考えれば悪くないな。」
「よし!んじゃ盗賊狩りを始めようか。ということでー?」
「「ヒャッハー!!!金出せ盗賊共ー!!!」」
「な、なんだこいつら!?」
まぁ、本気の俺とシド相手に盗賊が抗えるはずもなく。
一瞬にして、恐らく四十秒くらいで盗賊は全滅した…RTAかな?
「おしまい!いやー、凄い楽勝だったね。」
「そりゃそうだろ、逆に想像つくか?盗賊相手に苦戦してる俺ら。」
「うーん、それもそっか。」
「あーまぁでも…スライムスーツの防御性能はあんまり試せなかったな。」
「んじゃ後で互いに試してみようよ。」
「了解…あ、d「もちろん、ちゃんと加減はするよ?」おい、先読みして答えを置くな。」
本当になんだこいつ(n回目)
いつものことだし突っ込んでも無駄だとわかっているけど、だとしてもよ。
まあそれは置いといて、回収回収ー。
「ふーむ、割と値打ち物が多いな…お、これとかいいんじゃないか?」
「いいねいいね、『陰の実力者』コレクションに相応しい物がまだまだありそうだ。」
流石レア盗賊、値打ち物が出るわ出るわで大量だ。
これだけあったら、当分の間は盗賊狩りをしなくても大丈夫そうだし。
シドのほうも沢山あったそうで、見てみればこれまたすごい…すごい(語彙力の喪失)
で、最後に二人で馬車の荷台を調べるところで…『それ』を見つけた。
「っ!?これって…」
「悪魔憑きだね。」
それは、悪魔憑きと呼ばれる肉塊だった。
そう、悪魔憑き…ディアボロス教団に関係する、何かしらだ。
記憶違いでなければ、悪魔憑きは魔人ディアボロスが死の間際にかけた呪い。
やっと、手がかりがつかめるかもしれない。
「…うん?この波長って…」
「言われてみれば…確かに、この波長は…」
「魔力暴走だね」「魔力暴走か」
そう確信する根拠はもちろんある。
前にシドが、魔力暴走を意図的に起こしたことがあるからだ。
コツさえ掴めば肉体に魔力を馴染ませ、さらなるパワーアップが望めた。
が、あまりにも危険すぎるがゆえに中止、断念したのだ。
ちなみに俺はすでにその段階にあるらしく、特に何もなかった。
つまりだ、俺はすでにパワーアップ済みなのに対して、シドは未パワーアップなのにあれだ。
ますますシドの化け物具合が増していく…のはおいとこう、いつものことだ。
「ねぇルミナス…この悪魔憑き、治療してみない?」
「俺がか?どっちかというとお前のほうだろ。」
「それはそうだけど…君の治癒能力をもっと伸ばせば、有事の際により安全でしょ?」
「僕はそばで見ながら自分でやって、それを基に成長すればいい話だし。」
「それに…護るための力、欲しいでしょ?」
「!?はぁ、お前ってやつは…」
「何であきれられたの?僕。」
「まぁ、その好意はありがたく受け取るよ。」
「この悪魔憑きは、俺が責任をもって治療する。」
「うん、よろしくね!」
というわけで、俺は悪魔憑きの治療を始めた。
悪魔憑きの魔力の流れは、ぐちゃぐちゃに乱れていた。
ただ魔力を流すだけじゃダメだ…下手に力を加えれば、むしろ悪化するかもしれない。
慎重に、慎重に…少しずつ、本来の流れへと導いていく。
一応能力によるアシストがあるとはいえ、かなり難しい。
まあ魔力操作の勉強としてはかなりいいと思うが、俺の目的はそれじゃない。
悪魔憑きを治してやることだ。
「…なぁ、ちょっと思ったんだが。」
「どうした?」
「悪魔憑きが治ったら、どうなるんだろうな?」
「元に戻るのか、それとも…なんだ、他に何かあるか?」
「さぁね…でもまぁ、元に戻るんじゃない?」
「あまり想像つかないけど、かといって他はさらに予想つかないし。」
「よし…なら、より気合を入れないとな。」
そのまま一週間、二週間…そして、三週間が経った。
ちなみに途中で思い出したが、この程度では生命力を消費しすぎることはないようだ。
流し続けるといっても、夜の間だけしか流せないのがここで生きた…と言えばいいのか?
とまあ、今日もじっくりと魔力を流し続け…そしてようやく。
「!これは…なるほど、ならこうして…」
「もしかして、掴んだの?」
「多分な、この調子ならもうすぐだ。」
「やっぱりルミナスは、成長速度が速いね。」
「それを言うならシドも大概だけどな?」
「っと、そしたらこれで…どうだ?」
最後の仕上げをすれば、ようやく悪魔憑きの魔力の流れが綺麗に元通りになった。
同時に悪魔憑きの姿が変わりはじめ、少しずつ人の形を取り戻していき…
遂には完全に元に戻り、そこには金髪美少女エルフの姿があった。
「ふぅ…本当に、元に戻ったな。」
「そうだね…あ、服はそこにあるからね。」
「はいはい…つっても、妹の着替えの手伝いをほんの一時期やったぐらいだが…」
流石に裸はまずいので、誰でも合いそうな服を買って持ってきたのを着せた。
…うん、よく似合ってる。
とにかく着せるためだから極論何でもいいが、それでも選んで正解だった。
「よし、これですっかり元通りだ。」
「というか、よく興奮しなかったな。言っちゃあれだが、女の裸だぞ?」
「『陰の実力者』たるものが、それぐらいで興奮してるのもカッコ悪いでしょ?」
「まあそれはそうか。」
「そういう不必要な物は、前世の時点で捨てたしね。」
「……俺には聞かないのか?」
「流石にここで聞くほど僕は馬鹿じゃないよ…以前まではともかく。」
「わかってるならヨシ。」
…さてと、結局この子をどうしようか?
一応考えていた選択肢は、ある。
彼女を俺たちの仲間に加えるんだ。
悪魔憑きの件もあるし、決して無関係じゃない。
後何より、このままだと何の進展も見込めない。
断るなら止めはしないけど、ついてくるなら遠慮なく頼るつもりだ。
「…やる?」
「うん、やろう。前に話してくれたので全部だよね?」
「あぁ、それ以外は覚えてないなすまない。」
「流れるように謝罪しなくてもいいよ。」
「重要な背景はしっかりと捉えたんだ、それだけで十分。」
「…ぅ、ぅん…」
「そろそろ起きそうか。」
「よし、なら…始めようか。」
ここに今、新たなる陰が生まれようとしている。
割と展開に悩んだのですが、こうなりました。
シドはルミナスの能力を参考に新技を作り出し、
ルミナスが悪魔憑きを治したのでルミナスの魔力コントロールが超強化されました。
ちなみに横で見てたり自分でやったり、後で聞いたりしたのでシドも普通に強化です。
んじゃ、毎回やる事にした催促をば…
もしよければ評価に感想にお気に入り登録、ここ好きや誤字報告もよろしくお願いします!
さぁ、とうとうこの刻が来ましたよ?