陰の守護者になるために。   作:某キル

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(シャドウガーデンがここから始まるので)初投稿です。
内容は実にシンプルだけど中々な難産だった。
まあその原因の大半は後々の展開をどうするか考えてたわけですが。


4:陰より生まれし者たち

夜の森。かすかに虫の音が響く静寂の中、廃村の一角で三つの影が蠢いた。

古びた木箱の上に腰を下ろす何者かの影と、壁にもたれかかってそれを見下ろすもう一人の影。

二人は微動だにせず、ただ目の前の「何か」を見つめていた。

 

やがて、その「何か」――金髪のエルフの少女が、ゆっくりと目を開けた。

 

「……?」

 

光を嫌うように瞳を細め、瞬きを繰り返す。

次第に視界がはっきりし、自らの手を凝視した。

 

「……えっ?」

 

震える指先をたどり、両手を握りしめ、目を見開く。

かつては腐敗した肉塊と化していたその身体は、今は完全に人間の姿を取り戻していた。

 

「嘘……これ……わたし……?」

 

狼狽する少女に、静かな声が降り注ぐ。

 

「目が覚めたか。」

 

少女が声の方に振り向けば、そこには二人の少年がいた。

いや、あれは…人と呼んでいいのだろうか?

 

片方の少年は黒衣をまとい、深くフードを被っており、その顔や表情は見えない。

しかし、どこまでも深い闇のような気配を感じることはできた。

それも、その闇が自分を飲み込んでいくような錯覚を起こすほどに。

 

そしてもう片方の少年は…到底、人とは言えないような見た目だった。

妖狐族の風貌に加え、狼のような目と鋭く大きい爪を持っている。

更にそれらの色は純白と漆黒の、入り混じることのない二色だった。

 

普通の人であれば、その感じる気配と見た目から、恐怖で逃げだしてもおかしくはない。

しかし彼女は逃げることはせず、ただ見つめていた。

…もっともそれは、彼女の理解が追いついていないだけなのだが。

 

少年――黒衣の少年は、微かに口角を上げる。

化け物のような姿のもう一人の少年も、静かに腕を組んだまま見つめている。

 

「君を蝕んでいた『呪い』は、すでに解けた。」

 

「呪い……?」

 

少女は困惑しながら、震える声で問いかける。

 

「あなたが……わたしを……?」

 

黒衣の少年は小さく首を振った。

 

「いや、君を救ったのは……」

 

言葉とともに、もう一人の少年に視線が向けられる。

 

化け物の少年は、微かに目を伏せ、静かに息を吐いた。

 

「……俺だな。最も、俺たちのどちらが行ったにしても、結果は同じだと思うがな。」

 

それだけ呟き、腕を組み直す。

 

少女は混乱しながらも、化け物の少年を見上げた。

 

「あなたが……?」

 

「落ち着け。」

 

黒衣の少年が低く言う。

 

「話せば長くなる。だが……今はそれを聞くべき時だ。」

 

少し間をおいて、黒衣の少年がゆっくりと口を開く。

 

「…呪いとは、君たち『英雄の子孫』にかけられた、忌まわしき枷。」

 

少女の瞳が揺れた。

 

「英雄の…子孫……?」

 

「そう。君は知っているはずだ。」

 

黒衣の少年は、一冊の古びた書物を木箱から取り出す。

それはかつて、彼が「拾った」教典だった。

 

「教典にはこうある。『三人の英雄が魔人ディアボロスを倒し、世界を救った』と。」

「まるでおとぎ話のようだが…これは決しておとぎ話ではなく、実際にあった出来事だ。」

 

「ぇ?」

 

少女は驚きの声を微かに漏らすが、しかしすぐにその口を閉じ、真剣な表情となる。

未だなお理解しきれていない現状で、彼女がとった行動。

それは、すべての話を記憶に刻み付けること…奇しくも彼と、同じ行動だった。

 

「魔人は死の間際に呪いをかけた。それが君を……いや、君たちを、腐った肉塊のような物へと変えたのだ。」

 

少女は愕然とする。

 

「そんな……そんなこと、今まで誰も……」

 

化け物の少年が静かに続ける。

 

「何故なら、真実が隠されたから。」

 

黒衣の少年が言葉を引き継ぐ。

 

「誰かが歴史を書き換え、君たちを『悪魔憑き』という怪物へと仕立て上げたのだ。」

 

少女の顔色が変わる。

脳の許容量を超えた情報の暴力で伝えられるのは、理解しがたい内容の数々。

それらを真実と認めるなど、そう簡単にはできなかった。

 

「……そんな……嘘……」

 

「嘘かどうか、君が確かめるといい。最も、その方法は限られているが。」

 

黒衣の少年が静かに立ち上がる。

 

「…さて、ここまで話をしておいてだが…君に二つの選択肢をやろう。」

 

「選択肢…?」

 

少女の顔は、突然与えられることとなった選択肢に対して、不安で満ち溢れている。

果たして、どのような選択を強いられるのか…という、無視できない不安が。

 

「一つは、ここで聞いたすべてを忘れ、元の日常へと帰ること。そして…」

 

継ぐようにして、化け物の少年が話す。

 

「もう一つは、元の日常を捨て、起きうる激闘へと身を投じながら、この先へと進むこと。」

「ここから先の話は、決して軽くはない。」

「知ってしまえば、もう元には戻れないんだ。」

 

その問いかけには、どこか悲痛な叫び声がこもっている気がして。

少女は冷静になり、落ち着いた頭で情報をまとめ始める。

 

「………」

 

「もちろん、君の選択肢に対して俺らは何も言わない。」

 

「これは、君が決めねばならない選択なのだ。」

 

「…わかっているわ……」

 

二人の少年の言葉を受け取り、更に思考する。

今までの情報を整理し、理解し、把握する。

その間実に三十七秒…そしてついに、答えが出た。

 

「私は…先に進む、そう決めた。」

 

「なるほど。うるさく聞くようで悪いが、これでもう後戻りはできない…いいな?」

 

「構わないわ!」

 

「…ふっ、その決意、しかと受け取った。ならば教えよう。」

「その黒幕の名は――」

 

化け物の少年が一歩踏み出し、低い声で言った。

 

「…ディアボロス教団。」

 

少女の表情が凍りつく。

 

「ディアボロス…教団……?」

 

「そう。魔人ディアボロスの復活を目論む者たちだ。」

「奴らは決して表舞台に出てこない。俺たちの使命はその野望を陰ながら阻止することだ。」

 

少女はまるで、今にも殺されそうな感覚に陥る。

 

「今更ではあるが…ひとまず、俺たちの自己紹介をしよう。」

 

「ならば我からだ…我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者。」

 

「俺の名は、ピエルデ…混沌の力で、全てを暴かんとする者。」

 

言葉では言い表せない『恐怖』が、心を蝕む。

真剣に聞こうとしても、『恐怖』が邪魔をしてくる。

ついには体にも影響が出始め、微かに震えている。

 

「…ん?」

 

体の震えは、少しずつ大きくなっていく。

頭の中で、逃げなければいけないという衝動が走る。

でも、何故か足が動かない。

 

「おいピエルデ、『抑えろ』。」

 

「あぁ、すまない…」

 

化け物の少年…ピエルデが謝罪すると同時、『恐怖』が消えていった。

先程の会話からして、今までの『恐怖』はピエルデのせいなのだろう。

黒衣の少年…シャドウは少女に問いかける。

 

「すまない、怖がらせてしまったか?」

 

「っぁ、いえ…」

 

ひとまず答えるも、未だに体は震えていた。

理解してなお、その『恐怖』は消えそうになかった。

 

「ふむ…ピエルデ、気持ちはわかるが落ち着け。」

 

「悪いなシャドウ、だが正直難しいな…」

「なにせ、俺の家族を殺した相手だし。」

 

「っ!?」

 

いたって普通のように言った、衝撃の事実。

『恐怖』が残る彼女は、再び混乱しかけていた。

 

「…それは、秘密にするのではなかったのか?」

 

「最初はその予定だったが…このまま黙っていたとて、いつか知る日が来る。」

「であれば、最初から隠さずに話すべきだと思ってな。」

「…聞くか?」

 

「…はい。」

 

少女は覚悟を決めて頷いた。

それを見たピエルデは、過去を語りだす。

 

「…それはある日、俺が外で鍛錬をしていた時のことだった。」

「その日は鍛錬に集中しすぎて、気づけば夜までやっていたんだ。」

「急いで家に帰ると…家族が殺され、家が荒らされ、金品が奪われた後だった。」

「そのあと俺も不意打ちで捕まって、実験体にされた。」

 

「…!もしかして、それが…」

 

「そう、その結果がこれ…異常な力と姿を持たされたわけだ。」

 

「………」

 

「だから俺は復讐する。」

「この姿と力で、ディアボロス教団を滅ぼすんだ。」

 

「………」

 

「これが、俺がここにいる理由…とでも言えばいいのかな。」

「それで……?」

 

少女の体は再び震え始める。

しかし、それは『恐怖』ではなく…激しい怒りによるものだった。

 

「…そんなの…」

「そんな…そんなことが…そんな非道な行いが……許されるはずがない……!」

 

シャドウはゆっくりと頷く。

 

「君の憤りはもっともだ。だが、奴らの存在は決して表に出ることはない。」

 

シャドウは立ち上がり、少女へと告げる。

 

「困難な道のりになるだろう。だが、我らは成し遂げなければならない。」

 

続くように、ピエルデが問いかける。

 

「英雄の子よ。我らと共に歩む覚悟はあるか?」

 

それに、少女は答える。

 

「病……いえ、呪いに侵されたあの日。私は総てを失いました。醜く腐り落ちるしかなかった私を救ってくれたのはあなたたちです。だから、あなたたちがそれを望むなら、私はこの命をかけましょう! そして罪人には死の制裁を!」

 

その決意は、確かなものであった。

 

「決まりだな。」

 

その決意を受け取るピエルデを横目に、シャドウは話を続ける。

 

「敵は恐らく、強大な権力者とかだろう…真実を知らずに、操られている人も沢山いるはずだ。」

 

「でも、立ち塞がる者に容赦は出来ない」

 

「ああ、敵である者に情けは不要…俺にとっては特にだな。」

 

「他の『英雄の子孫』を探し出して、保護する必要もあるわね。」

 

「そうだな。我とピエルデがいるとはいえ、三人では数が足りん。」

 

「組織の拡張と並行して拠点を整備して、その為の資金集めも!」

 

少女はまだ見ぬディアボロス教団に対する怒りのまま、できることを挙げていく。

それはもう大量に…少女一人では、決して成し遂げられないようなことまで。

 

「はぁ…いったん落ち着け。」

「君はまず最初に、君自身を鍛えるべきだ。」

「確かにやるべきことはたくさんあるが、それらは後回しでも構わない。」

 

「ご、ごめんなさい……怒りで熱くなりすぎてしまったようね。」

 

「別にいいよ…それだけ、真剣に向き合おうと考えてくれているわけだし。」

「俺たちとしても、非常に助かるからな。」

 

そう言うと、ピエルデは微笑んだ。

それは、彼の恐ろしい姿に似合わないほどに優しく、幸せそうであった。

 

「ふむ、それでは…我らの組織の名は『シャドウガーデン』だ。」

「そして君は『アルファ』と名乗れ。」

「それが君の、新しい名だ。」

 

「アルファ…えぇ、わかったわ。」

 

少女…アルファは頷いた。

 

「『アルファ』…いい名だな。」

「さて、それでは…」

 

「あぁ、では…」

 

そう言うとシャドウとピエルデは横に並ぶ。

 

 

シャドウが静かにフードを深くかぶる。

 

ピエルデが、白黒の目でアルファをじっと見つめる。

 

夜風が吹き、闇の中に一切の音が混じらない中。

 

彼らは、言った。

 

 

「「今ここに、シャドウガーデンの誕生を宣言する。」」

 

 

そして、陰より新たなる産声が上がった。




めっちゃ時間空けてごめんなさい orz
いやー…正直まずいですよ?
やりたいことはうっすらと決まってはいるけども、
それをいつやるか、それによってどうなるか、その後の展開の変化は…
それらを考えれば考えるほど沼にはまっていくんですよ…HELP!
もしよければ評価に感想にお気に入り登録、ここ好きや誤字報告もよろしくお願いします!

そうだな…5話書く前にアレ作るか。

~追記~
編集保存のつもりがいつの間にか投稿してたわ…
みんなも、事故には気を付けようね!☆
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