お察しの通りですが、ディアボロス教団は負けます。
負けます。(圧倒的ネタバレ)
あと、くそ長タイトルはただ100文字埋めたいだけにあそこまで伸ばしました。
まあ各員の要素は含んでるし、無駄ではないはず。
それから、幾つもの日が経った。
結構長かった気がする…多分3年ぐらい経ったかな?
もちろんその間も、色んなことがあったよ。
特に大きいのは、三人の新しいメンバーだ。
それぞれイプシロン、ゼータ、イータという名前をつけた。
順調にメンバーが揃ってきて、僕とシドは歓喜した。
そしてこのタイミングで、シドは新たな要素を追加した。
シャドウガーデンを支える七人の幹部『七陰』だ。
アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータ。
最初に仲間となった七人が、その地位につくことになった。
七人のシャドウガーデン幹部だから七陰、わりとそのまま。
ちなみに、もしも七陰が七人じゃなくなった時を考えて、
僕は新たな意味を即興でつけた。
陰の叡智(前世の記憶)より、『七つの大罪』である。
傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。
人の心の奥底にある性質であるそれらに飲まれ、
邪智暴虐の限りを尽くさんとする闇を咎め、断罪する。
…とまあ、僕ながら中々いい意味をつけたと思う。
そんな感じでシャドウガーデンの活動が活発になる一方、
普段の生活は限りなく平穏で、ちょっとびっくりした。
当たり前と言えばそうかもしれないが、それでもだ。
オトンとオカンは相変わらずの調子で安心するし。
クレアは流石に疲れてきたのか、毎日何回も挑んでくることはなくなったよ。
それでも、毎日1回は挑んでくるけどさ。
シドは相変わらずモブムーブを続けている。
一応互いに話し合って、モブムーブが何かを決めた。
シドの思考が割とぶっ飛んでいたのには凄いびっくりしたよ…
と、そんな風に呑気に過ごしていたんだけど…
今日、事件が起きた。
なんと、あのクレアが誘拐されてしまったのだ!
しかもよりによって、王都出発の日にだ!!
正直すごいびっくりしたし、慌てたよ。
状況をまとめた結果、犯行時刻は夜中…まぁ、それ以外ありえないし。
僕は慌てて飛び出して探し出そうとしたけど、流石に止められた。
そりゃクレアより強いとはいえ、ね?
その気持ちは理解できるので、大人しく部屋に戻ることにした。
さーて…潰すか、ディアボロス教団。
いやまあ、こんな気軽に言うことではないがな…
クレアに手を出したんだ、ただで済むとは思わないほうがいい。
一刻も早く、場所を特定しないとな。
といっても、多分今頃七陰たちが調べて…
コンコン
…どうやら、ちょうど終わったらしいな。
ナイスタイミングだ、おかげで暇せずに済む。
「…失礼します。」
「イプシロンか。てっきりベータが来るかと…シャドウの方に?」
「はい。ベータ様は今、シャドウ様の元に向かっています。」
「なるほど。で、場所はつかめたのか?」
「はい…こちらを。」
地図…と、暗号か。
地図上には、ポイントがいくつか…これ全部アジトか、多いな。
かたっぱしから襲撃するわけにもいかないし…
「これが現状か?」
「…すみません。複数のアジトを突き止めたものの、どこにクレア様がいるかまでは…」
「別に謝らなくていい…とはいえ、厄介だな。」
暗号から導き出したんだ、この中にいるのは間違いないのだろうが…
………うん?
待てよ、この暗号……これって…そう、なのか?
あり得る、だってそうならここが変わって…
「…どう、しましたか?」
「あぁ…この暗号、ブラフじゃないかと思ってな。」
「え?この暗号、が……!」
「気づいたか?」
「言われてみれば、少し不自然です…!」
「だな。だからここをブラフとすると、ここが変わって………ここの違和感がなくなる。そして、そのまま続けると……」
俺は普段から隠し持っているスライムを変形させ、投げナイフに変えて投げた。
それは地図上の、ある一点を刺している。
「そこだな。この地点に、アジトがある。」
「流石ピエルデ様…!今すぐ報告に向かいます!」
「わかった…あぁ、あともう一つ…決行は今夜にしないかと、シャドウに伝えてくれ。」
「畏まりました!」
そういうや否や、イプシロンは地図と暗号を持って慌てて出て行った。
…はぁー、いろいろ勉強しといて本当に良かった。
下手すりゃカッコ悪いとこ見せてたからな、そしたらシドがうるさくなるに違いない。
あと自分としても、そんな真似は嫌だしな。
とりあえず特定したんだ、決行までに準備を整えておこう。
ただで済むと思うなよ、馬鹿野郎共。
俺への非人道的行いに対する、復讐の一歩とさせてもらおう。
…余談だが、シドもこのアジトを突き止めていたそうだ。
方法は…勘と運命力、とのこと。
……確かに、前に「とてつもない運命力を持っている」とは言ったけどさ…言ったけどさ!
それを当てにして突き止めるってどうなんだよ!?
あー、軽く頭が痛い…決行は今夜に決まったし、それまでに収まってくれればいいが。
無事頭痛も収まり、決行直前。
訓練しててわずかに遅れたが、集合地点には既にシャドウメンバーが勢揃いだ。
…一人、この中のリーダーであるシャドウがいない点を除けば、だが。
あいつ、もしかしなくても先行ったろ…まあいい。
十中八九道に迷ってるだろうけど、あいつなら大丈夫だろ。
「すまない、遅れたな…シャドウは先に?」
「えぇ。」
「わかった…今から俺が指揮をとろう。各自、準備はできてるな?」
「大丈夫、もう準備はできてるわ。」
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第一席『烈鋼』の『アルファ』(α)
俺が治療した、元悪魔付きの一人。
恐らく俺の話の影響も相まって、七陰で最も強い意志を持っている。
その強さは折り紙つきで、訓練前から相当なものだった。
そこに訓練を加えた結果、その強さにさらに磨きがかかった。
下手すれば、俺やシャドウの足下に届くほどだ。
今後の戦闘において、頼れる存在となるだろう。
「完璧です、ピエルデ様!」
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第二席『堅実』の『ベータ』(β)
シャドウが治療した、元悪魔付きの一人。
その美貌はトップクラスで、正直カワイイとしか感想が出ない。
その強さは確かなものの、人殺しに対する恐怖があった。
そこに訓練を加えた結果、その恐怖は大幅に薄れた。
終わってから少し弱音を吐くぐらいには残っているが、少なくとも戦闘中にそれはなくなった。
今後の戦闘を経て、より慣れてくれることを願う。
「事前に準備運動も済ませました…大丈夫です。」
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第三席『変転』の『ガンマ』(γ)
シャドウが治療した、元悪魔付きの一人。
その頭脳はピカイチで、分析力・発想力・記憶力等があまりにも優れすぎている。
その反面強さに関してはダメダメ、というかそもそもまともに歩けないレベルの運動音痴。
そこに訓練を加えた結果、ある程度は普通に歩けるし四足歩行も
その動きはなかなか厄介で、四足歩行に移行するきっかけが『転ぶ』だから予測しようがない。
今後の戦闘においても、十分まともな戦力となるはずだ。
「デルタも準備万端なのです!」
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第四席『暴君』の『デルタ』(δ)
俺が治療した、元悪魔付きの一人。
強さだけで言うなら、覇権をとれるほどまでに強い『最強』足りうる獣人だ。
しかしいかんせん頭脳が足りず、その強さは空回りしていた。
そこに訓練を加えた結果、ほぼ頭脳は育ってないものの戦闘における論理的思考を身に着けた。
特に近接戦における命中率及び回避率が大きく育ち、ますます近接戦向きになっている。
今後の戦闘の中で、より成長してくれることを願っている。
「
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第五席『綿密』の『イプシロン』(ε)
俺が治療した、元悪魔付きの一人。
その魔力制御と人心掌握術はすさまじく、すごいカリスマ性を感じる。
強さは元々そこまでではあるが、スライムスーツの扱いがかなり上手だ。
そこに訓練を加えた結果、スライムスーツを華麗に使いこなしている。
…まあ、それが子供体型をごまかすために使われているのはおいとこう、あれは地雷だ。
今後の戦闘等を通じて、スライムスーツの使い方の参考にしよう。
「あとは、全力を尽くすだけ。」
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第六席『天賦』の『ゼータ』(ζ)
シャドウが治療した、元悪魔付きの一人。
悪魔付きの中でも異例の経歴を持ち、多分俺と同じぐらい重い過去がある。
その強さはなかなかだが、とにかくラーニングが早すぎる。
そこに訓練を加えた結果、普通にかなり強くなったし特に隠密が大きく伸びた。
俺やシャドウでも少し苦戦しかねないその隠密力は、諜報活動にぴったりだ。
そうなると将来的に別行動となるが、きっとうまくやってくれる。
「…さっさと終わらせて、実験したい。だから、頑張る。」
答えるはシャドウガーデン幹部『七陰』の第七席『禍工』の『イータ』(η)
俺が治療した、元悪魔付きの一人。
所謂マッドサイエンティストで、その技術力や、あと建築力も意外と優れている。
強さもまた意外とあり、研究者でその強さにはちょっと驚いた。
そこに訓練を加えた結果、まあ普通に強くなったが…よく実験体にされそうになる。
その気持ちはわからなくはないが、マイペースだしサイコパスだしで正直怖い。
とはいえ、役立ちそうではあるし…そろそろ決心して、付き合うべきか。
「もちろん俺も準備は万端だ…では、始めよう。」
「敵の数は把握できているか?」
「敵の数はおよそ50、リーダーは『教団』の幹部クラスよ。」
「なるほど…よし、こうしよう。」
「デルタ、とりあえず一番手として雑に突っ込んであいつらを蹴散らせ。ただ、一番最後の強いやつは攻撃せず、相手の攻撃をよけて遊んでやれ。」
「イプシロン、ゼータ、イータは二番手としてデルタに続き、同じくあいつらを蹴散らせ。あとは、デルタが話を忘れて終わらせないようにサポートだな。」
「アルファ、ベータ、ガンマは俺と一緒に三番手として続き、攻める過程で先の4人が仕留めそこねた奴を2人程拘束するんだ。誰を拘束するかは任せる、そこは君たちの腕の見せ所だ。」
「俺は先ほど言ったように三番手の後方から続き、道中の不要な雑魚を片付け…幹部を、この手で仕留める。悪いが、ここは譲れないぞ。」
「わかったのです!じゃあ早速、蹴散らして遊んでくるのです!」
「わかりましたわ、私に任せてください。」
「了解、余裕があれば適度に残しておくね。」
「うん。ついでにいくつか、実験台や実験道具も…」
「わかったわ、あなたの怒りをぶつけてきなさい。」
「はい!ピエルデ様も頑張ってください!」
「承知しました、遅れないよう留意します。」
各々は返事ののち、順にアジトへ向かっていった。
「さーて…どのように仕留めてやろうか……」
混沌に苛まれたその心についた炎を消す方法は、今のところ一つしかないだろう。
ディアボロス教団のとあるアジト。
英雄の子である疑いによって捕らえられたクレアがいるそこは…
阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
「くそっ、何の騒ぎだ!」
『ディアボロス教団』の幹部の1人であり、ここのリーダーでもある彼『オルバ』は、現状このアジトに起きている異変についての詳細を問いただしていた。
「侵入者です、侵入者がこのアジトを荒らしています!」
「敵の人数は!戦闘員はどうした!」
「て、敵は恐らく八人!各員が圧倒的な強さで、我々では歯が立ちませんっ!」
「馬鹿な、ここには王都の近衛に匹敵する騎士を配備したはずだ!」
「その騎士でさえ抵抗すらできていません!!」
「…ありえぬ、そいつらは何者だ!?」
「不明です!とにかく私たちが時間を稼いでいる間に、オルバ様は避難を!」
そう伝え、時間稼ぎに向かおうとした教団員は、しかしすでに向かってきていた侵入者に一瞬で首を切り落とされた。
かすかに聞こえた絶命の声を聴きオルバが向かえば、そこには悲惨な光景が広がっていた。
あちこちに散乱し、地面にも大きく広がりゆく血に、容易く葬られた選りすぐりの部下達の死体。
そして漆黒のスーツに身を包み、異様な存在感を放つ、部下からの報告にいた8人の侵入者。
「…あぁ、特に平気だったか。ちょっと予定外だが、まあ丁度いい。」
「…貴様ら、何者だぁぁぁっ!!」
オルバは直感し、そうでなくとも理解していた。
全員自身より相当年齢が下だが、かなりの実力があると。
特に七人の侵入者の前に立っている、フード付きの漆黒のコートを着たリーダーと思わしき男の雰囲気は、他とは段違いであり…底知れぬ闇を、そこに見た気がした。
「…我らは『シャドウガーデン』。陰に潜み、陰を狩る者。」
「今宵、お前たちを狩りに来た。」
リーダーはそう、淡々と告げた。
「貴様ら、此処がどういう場所か分かっていてこんな真似を」
「『ディアボロス教団』のアジト。」
「なっ!?」
「『魔人ディアボロス』『英雄の子孫』『悪魔憑き』……それ以上は、必要ないだろう?」
「き、貴様っ!どこでそれをっ!?」
「『どこでそれをっ!?』か…笑えるな。お前たちの幹部が、上機嫌でペラペラとしゃべったんだぞ。」
「何!?誰だ、そんな馬鹿げたことをした…」
そこで言葉は途切れた。
何故なら、オルバが凝視していたリーダーらしき男。
そのわずかに見える顔に、既視感を覚えたからだ。
「待て…貴様、どこかで見覚えがあるな?」
「へぇ、お前は俺に会ったことがあるのか。なら、これでわかるだろう?」
その言葉とともに、男の雰囲気が急変し…
直後、大きすぎる変化が起きた。
「なっ!?」
「…!!」
突然の事態にオルバはもちろん、他七人の侵入者も目を見開いた。
その理由は至極単純…リーダーらしき男が、化け物へと変化したからだ。
男に純白の、妖狐族と同じ耳と尻尾が生え、横に突き出した右手からは漆黒の爪が伸びていた。
さらに目は狼の目そのものと化し、純白と漆黒にそれぞれ染まっていた。
その異様な光景と雰囲気に恐怖が湧くその前に、理解が来た。
異様な姿もそうだが、何より露わになった顔に…かつての日の記憶が、重なった。
「そうか…貴様、あの時の実験体!!」
それは、かなり前のこと。
とうとう最強の手駒を作り上げる実験を行うと聞いて、軽く顔を出した時。
その時に見た、実験体の顔そのものであった。
あの後、実験の過負荷によって施設が爆破、跡形も残らなかったと報告されていた。
よって、実験も実験体も灰と化したかと思われていたが…
「まさか生きていたとは…なるほど、それが実験の成果というわけか。」
「あぁ。これがその実験の成果とやらだ。」
「俺の家族を奪い、このような化け物へと変えた責任…この場で少しでも多く、払ってもらうぞ。」
「面白い…ならばこちらも手を抜かん。」
オルバは懐から赤い薬みたいな物が入った瓶を取り出し、その中身を躊躇いなく飲んだ。
それも一錠二錠ではなく、十錠近くを一気に。
直後、男の肉体が一回り膨張する。
それでは止まらず、そこから更に二回りも膨張した。
肌は浅黒く、筋肉は大きく張り、眼は赤く輝く。
そしてその身に秘めた魔力も極大し、大きな塊と化した。
「…私はオルバ。このアジトのリーダーであり、『ディアボロス教団』の幹部である。」
「実験体…貴様の名は、何だ?」
オルバのその問いに、実験体はその右手の爪を引っ込め、代わりと言わんばかりに一本の剣を生み出す。
「…俺の名は、ピエルデ。混沌の力で、全てを暴かんとする者。」
「そして今は…ただ目の前の敵に、復讐せんとする者。」
ピエルデは少し俯いていた顔を上げ、右手の剣をオルバへと差し向ける。
「…行くぞ、オルバ!」
「来い、ピエルデ!」
今ここに、二体の化け物の争いが始まる。
同時に駆け出し、互いに武器を振るう。
その力は…拮抗していた。
「なっ、これを耐えるか!?」
「負けてたまるか!」
素早く下がり、すぐさま攻撃に移る。
その一撃は容易く通るものの、効き目が薄い。
これは、少しばかり長期戦になりそうだ。
「くそっ、ならば!」
後ろに下がって…なるほど、突進か。
であれば…構えて、待つ。
「………ここ!」
「ぐぬう!?」
完璧なカウンター、流石にある程度は効いたはずだ。
事実、少し体制を崩した。
なら話は簡単…できる限り繰り返すだけだ。
一方その頃、地下の避難経路にて。
シャドウは当てもなく、適当に彷徨っていた。
つまるところ、そう…
「完全に迷っちゃった…どうしよう?」
先にボスを倒して待っておいて「もう終わらせたぞ。」とかカッコいいセリフを言いたかっただけであったシャドウは、先に一人で向かうにも関わらず、地形把握を全く行っていなかったのだ。
故に、こうなるのは必然だったと言える。
ちなみにアルファは「事前に把握してるなんて、流石ね。」とか見当違いな想像をしているが、実は他の七陰も似たような考えをしており、シャドウが道に迷っていると理解しているのはピエルデだけである。
シャドウの真の意思を知っているのはピエルデだけである。
「せっかくボスに遭遇した時の演出を練習してきたのに、出てくるのは雑魚敵ばっかり。その上でここら辺には雑魚敵すらいないし、一体どこに…」
…不意に背後から、強烈な何かを感じた。
反射的に回避行動を取り、その正体を確かめんとする。
しかしそこには誰もおらず、よく感じると覚えがある。
「…ピエルデが、全力を出した?うん、だってこれ『恐怖』だよね。」
「ってことは…なるほどボスか!こうしちゃいられない、急いで向かわないと!」
感じ慣れてきた『恐怖』の発生源へ向かうと、そこは何の変哲もない通路だった…が、上からはっきりと音、そして声が聞こえる。
「死ねぃ!!」
「死ねるか!!」
「ピエルデ、と…ボスかな?」
実際、それは合っていた。
シャドウは今、ピエルデとオルバが戦っている部屋の真下にいたのだ。
「うーん、せっかくなら僕も入りたいけど…流石にやめておこっか。」
「それより、万が一の準備を進めよう。そうだな…」
「もしここに落ちてきたら、とか?」
「ちっ、まさかここまでとは…」
「おかしな話だ、お前らが計画したんだろう?」
「くそっ…くそっ!」
「そんなに攻撃したところで無意味だ、届かないぞ。」
「…ついでだ、精一杯喰らっておけ。」
連撃をかわした直後、すぐさま闇と同化する。
それと同時に、陰陽炎の準備を進めよう。
「なっ…どこに消えた!?」
「ここだ。」
「っ!?」
「喰らえ。」
陰陽炎をばら撒きつつ、一部はオルガへと集中させる。
燃費は悪いが…さっさと蹴りをつけないとな。
下手すりゃ、自分の感情…というか憎悪が抑えきれない。
あと、ずっと七陰に待機してもらってるのも悪いし。
「なっ、この炎は…!?」
「燃やしてやるよ、全部な。」
「…何故だ?何故あいつらは燃えず、俺や施設だけを…!?」
陰陽炎は、敵を滅し呪う陰と味方を癒し祝う陽が合体した炎だ。
故にオルガには痛みと呪いを、俺や七陰には癒しと祝福をもたらす。
それに、そのような効果抜きにこれは炎なんだ。
敵味方問わず地形や施設を燃やすのも当然というわけだ。
「その苦しみ、増やしてやる。」
「ぐうっ!?何だ、力が抜けていく…」
「おまけだ、その輝く目をハリボテにしてやる。」
「なっ、目が…!」
闇には闇だ、徹底的にデバフをかけて苦しませてやる。
…中々に効果的だな、感覚でもわかるほどより攻撃が通る。
一応、こちらを捕捉してはいるようだが…
まあ目が潰れてるせいで当たらんな、無意味だ。
「これほどまでとは、予想外だ…!」
「そろそろ終わらせよう、もう面倒くさい。」
「………くそっ!」
次は何の攻撃を…は、地面を攻撃している?
なるほど、その下に避難用通路があったのか。
でも、俺の速さがあれば簡単に追いつける。
どれだけ逃げても無駄だということを
「ふ、来たか。」
「!?先回りだと!?」
…教える必要もなかったみたいだな。
アイツ、いつの間に…そうか、俺の『恐怖』と戦闘音か。
いや、にしても何でこの付近に…は、完全に運だろうな。
女神に好かれてるからってやりたい放題にも程があるな…
「っならば!」
「逃がさん。」
「…挟まれた、か。」
シャドウが少し奥で待ち構えていたおかげで、無事挟めた。
これでもう逃げ場はない…チェックメイトだ。
「………何故だ。」
「ん?」
「何故だ!何故、それほどの強さを持ってして!」
「「…陰に潜み、陰を狩る。我等はただそのために在る」」
「くっ……無駄だ…どれほど貴様らが強くとも、世界の闇は、貴様らが思っているよりも遥かに深い!!そこに果ては存在しないのだ!!!」
「「ならば潜ろう、どこまでも…」」
そう言うと同時、シャドウが素早く距離を詰め…一撃。
恐らく心臓があるであろう場所を、貫いていた。
「ぐっ!?」
…やっと、終わるのか。
俺は跳躍し、オルバの背中にしがみつき、そして…
「たとえそれが…地獄への片道切符だとしても、な。」
「っな!?!?」
「さようなら。」
オルバの体の中心に、深々と剣を…ではなく、爪を突き刺した。
これで、終わりだ。
「あ、ぁ…ミ、リア……」
オルバはそれだけ言うと、地面へと倒れ伏した。
…終わった、のか。
そうか…終わったんだな。
とりあえず、これで一歩進んだな。
でも、まだだ…目指す先はもっと遠く、この先に。
ここで止まってる暇なんて、あってもあまり使いたくない。
オルバ戦が終わり、戦後処理の最中。
俺とシドは一旦、クレアを家まで届けることにした。
他に捕まってる子はいないから、届けたら戻って続きをやる。
ちなみに、アルファ以外の七陰の様子が暗かったのだが…そこでやっと俺は、アルファ以外の七陰に俺がこの姿になった理由等を話していなかったことを思い出した。
なんか微妙に忘れていることがあった気がしたが、これだったか。
そしてオルバ戦中にアルファが他の七陰にそれらを伝えたそうで、それであの暗さということだった。
うん、これまた後処理が大変になるだろうけど…これは俺の責任だから仕方ないな。
と、そんなことを思いつつシドと話していたら、無事クレアのいる牢に着いた。
ぱっと見は起きてなさそうだが、ひとまずは牢を開けて、体を揺さぶってみる。
…よし、反応がないってことは気絶で良さそうだな。
一応確認するが、息はある、心臓も動いてる…ちゃんと、生きている。
それを確認し、ふうと一息吐いた。
「よし、治療しながら運ぶぞ」
「ああ。」
ということで、シドがクレアを運び、俺が横から回復させる形で移動を開始した。
クレアの傷は中々ではあるが、致命傷には至ってない。
これなら、道中で治るはずだ。
……しかし、何も話が出てこないな。
まあクレアを起こすと面倒だし、それに…
「まだ、スッキリしない?」
「え!?あ、あぁ……未だに感じるんだ、心についた炎を。でも勢いよく燃えてるわけじゃなくて、燻ってる感じ。」
「そっか。まあ、まだ終わったわけじゃないもんね。」
「そう、まだ始まったばかりだ。それに、あいつにも…オルバにも、それなりの事情があったって知っちまったからな。」
戦後処理を始めて早々に分かったことだが、オルバにはかつて悪魔憑きになってしまったミリアという娘がいて、その子を救うために仕方なく教団に入り加担していたという事だった。
あと、オルバが身につけていたペンダントには写真が入っていて、そこにはオルバと、ミリアと思われる娘の姿があった。
「あいつは決して許されることはないし、俺自身が許せない。でも…それでも、ああいったものを見ると、どうしても心が痛む自分がいるんだよ。」
「…別にそれで良くない?」
「は?」
「人って大体そんなもんだと思うよ。何もかも合理的なわけじゃなくて、そこに感情なり思いなりが混ざって、結果的には合理とはかけ離れた選択肢が生まれることもよくある話さ。」
「ピエルデの…ルミナスのそれも、似たようなものだと思うよ。オルバは決して許されないことをしたから許さない。それはそれとして、教団に入るしか選択肢がなかった彼には少しばかり同情の念を覚える。別にそこに、ダメな要素は無くない?」
「…そう、なのか?」
「多分ね。」
「多分って…まあでも、大体はそんなもんか。」
「そうそう、案外そういうものなんだよ。」
「それにさ、多分あれが『オルバにとっての正義』だったんだと思うよ。」
「オルバにとっての、正義…?」
「そうそう。結局さ、この世界に完全な善や悪は存在しないんだよ。いろんな人が色々言ってる善悪なんか、全部その人の『
「エゴ…そうか、エゴか。」
「そう、
「文字通り、最『善』の選択肢だったってことか。」
「そういうこと。」
「…なら、さ。」
「うん?」
「俺とお前が、死をきっかけにこの世界で生まれる前…ルミナスとシドの前の、護と実の時。」
「…この世界と同じように、俺が十歳になる直前で家族を奪って行った、あの三人組。」
「あいつらにも、何かしらのエゴがあったのか…?」
「……あるよ。多分『どんな手を使っても金を稼ぐこと』が善だった、とかね。」
「他人から見た悪が、自分が見た善だったんだと思うよ。」
「…そっか。」
「まぁ他人の気持ちを汲み取ろうとしたところで、結局は本人しか知り得ないんだけどさ。」
「それも…そうか。話に付き合ってくれてありがとな、シド。」
「いつも助けられてるからね、お互い様だよ。」
そんな、ちょっぴりくだらなくてためになる話を交わしながら、俺たちは家に着いた。
「…そういや、ここからどうするんだ!」
「普通に君が助けたことにしたらいいんじゃない?」
「まあそうなるか。」
「それじゃ、僕はこっそり部屋に戻るからちょっと待ってから帰ってね。」
「わかった。」
シドからクレアを受け取…る寸前でシドが動きを止めた。
「ん、どした?」
「いや、ちょっと気になってね。」
「何が?」
「その尻尾あるでしょ、九尾の。」
「あるけど…」
「それでクレアを持つことってできたりする?」
「お前は何を言ってるんだ…」
「大丈夫、僕も構えておくからさ。」
「そういう問題じゃないんだが?」
「んじゃ、やるよ。」
「ちょ待て…ふぅ、いくぞ。」
強行する気を察しておとなしく尻尾を構える。
果たしてその結果は…普通にできてしまった。
「おお、案外力持ちなんだね。」
「みたいだな…使うかどうかもわからん尻尾に、こんな使い道があったのか。」
実は、訓練の一つとして尻尾を自由に動かす訓練もしていたのだ。
その時にペンやノートなんかは持ったことがあるが…ここまでとはな。
ちなみに訓練の結果だが、割といい線行ってると思う。
九本それぞれ違う動きなんかもできるが…すごい集中力を使う。
戦闘とかに活かすには、さすがに実力不足だ。
「で、なんで急にこんなことを?」
「ちょっと気になったから、それだけ。」
「それだけかよ…まあいい、さっさと返すぞ。」
「そうだね。」
その後、俺はルミナスとして無事にクレアを取り返したことを報告した。
もちろん無断で向かったことは怒られたけど…それ以上に、感謝してくれた。
…うん、こういうのは好きだな。
とりあえずクレアの部屋に向かい、そのまま布団に寝かせておいた。
一応急いでいる身だし、布団とか姿勢とかは気にしない方向で。
その後は部屋に戻り、カゲノー両親が寝たことを確認してシドと一緒に再びアジトに向かった。
さすがに全部部下に任せっきりはメンツが立たない。
一応念のためにクレアの部屋を覗き、布団をかぶって寝ているクレアを確認してからだが。
本ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ当にすいませんでした!!(デジャヴ)
またこんなに開いちゃった…すいません。
今後は改善…改善できるかな、これ。
まあできる限りはやっておきます、多分そこまで変わりませんが()
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あと小説の腕が鈍ってないかもお願いします!(デジャヴ再び)
疲れてるのとあの心境とはいえ、さすがに不自然だったかな…