ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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前回のあとがきでもお伝えしました通り、今回はオリジナルカードが登場いたします。
予めご了承ください。


第21話:悔い

バトレアス LP4000 手札0

【モンスターゾーン】

ミドレミコード・エリーティア ATK1100 レベル3

ドドレミコード・クーリア ATK2700 レベル8

 

【エクストラモンスターゾーン(右)】

□□□ グランドレミコード・ミューゼシア

□◇□ ATK1900

■□■ リンク2

 

【魔法&罠ゾーン】

伏せカード2

 

【ペンデュラムゾーン】

右∶シドレミコード・ビューティア スケール2

左∶レドレミコード・ドリーミア スケール7

 

【フィールドゾーン】

ドレミコード・ハルモニア

 

 

ラベンダー LP100 手札0

【モンスターゾーン】

カード無し

 

【魔法&罠ゾーン】

恵みの風

導きの風

 

【フィールドゾーン】

アロマガーデン

 

 

 そのカード……《導きの風》が発動した瞬間に、妙な感覚に襲われた。これまでに見た事のないカードだからだろうが、不思議な空気を感じる。

 

「私のライフがあなたより2000以上少なく、《アロマガーデン》が発動している場合、私のフィールドの《恵みの風》《潤いの風》《渇きの風》のいずれか1枚を墓地へ送って発動します」

 

 そのカードが発動すると、効果が無効になり石版となっていた《恵みの風》が崩れ落ちる。

 

「そして、墓地の『アロマ』モンスターの属性の種類だけドローします!」

「!」

「私の墓地の『アロマ』の属性は水・光・闇の3種類、よって3枚ドロー!」

 

 この状況で、オリジナルとは言え一気に3枚ものドロー。勝負はまた分からなくなったと思うと同時、変に楽しくなっている自分がいる。

 

「さらにドローしたカード1枚につき、800ポイントのライフを回復します」

 

ラベンダー LP100→2500

 

 これで、せっかく減らしたライフポイントもあまり意味をなさなくなってしまった。

 

「《導きの風》の効果を使った場合、次のあなたのターンが終わるまで、あなたが受けるダメージは半分になり、私は『アロマ』モンスターしか召喚・特殊召喚できません。けれど私は《死者蘇生》発動し、墓地のロザリーナを特殊召喚!」

 

 フィールドに現れた魔法陣から、ロザリーナが軽く跳んで姿を現す。3枚も引いていれば、蘇生札の1枚は引いていてもおかしくはない。

 

アロマリリス-ロザリーナ

DEF0 レベル1

 

「そしてロザリーナの効果を発動。特殊召喚が成功した時、デッキからチューナー以外の『アロマ』を特殊召喚します!」

 

 だが、その効果は前のターンに1度見ている。またシンクロ召喚をさせるわけにはいかない。

 

「クーリアの効果発動! 俺のペンデュラムゾーンの一番高いペンデュラムスケール×300以下の攻撃力を持つ、相手フィールドのモンスターの効果が発動した時、そのモンスターを破壊する!」

 

 ロザリーナが杖を振ろうとするよりも早く、クーリアがタクトを振り風を巻き起こす。そこで、俺の方を振り向いてきた。何を求めているかはもう分かるので、俺は少しだけ笑った。

 

「エフェクト・スタッカート!!」

 

 効果名を告げると、クーリアが起こした風は疾風となり、ロザリーナを吹き飛ばす。

 

「けれど効果は無効にしない、でしょう?」

 

 それを見てもなお余裕を崩さないラベンダー。その通りで、クーリアの効果は発動したモンスターを破壊するだけで、効果を無効にはしない。それでも、これでラベンダーの戦略は狭まるはずだ。

 目の前で、ロザリーナの手から離れた杖が輝きを放つ。

 

「来てください、ベルガモット様!」

 

 輝きが収まり、そこにいたのは、彼女が慕っているであろうアロマの青年だ。

 

アロマージ-ベルガモット

ATK2400 レベル6

 

「さらに魔法カード《アロマブレンド》発動。手札を1枚捨てて、手札・デッキから《恵みの風》《潤いの風》《渇きの風》のいずれか1枚を私の魔法・罠ゾーンに表側で置きます。私が選ぶのは、デッキの《潤いの風》!」

 

 手札からコストで捨てたのは《アロマヒーリング》。デッキから直接カードを置くのは、《灰流うらら》でも妨害できない優秀な効果だ。

 

「そして、今捨てた《アロマヒーリング》を墓地から除外して効果発動! 墓地より《アロマ》モンスター1体を特殊召喚し、500ポイントのライフを回復します。ただし、そのモンスターはフィールドを離れた場合除外されます。《アロマセラフィ-ローズマリー》を墓地から特殊召喚!」

 

 再び現れた魔法陣から姿を現す、白い翼を生やすローズマリー。やっとの思いで破壊したのに、もう復活してしまうとは。

 

アロマセラフィ-ローズマリー

ATK2000 レベル5

 

ラベンダー LP2500→3000

 

「ライフポイントが回復した事で、ローズマリー、さらにベルガモット様の効果を発動! ベルガモット様の攻撃力・守備力は、次のあなたのターン終了時まで1000ポイントアップ!」

 

アロマージ-ベルガモット

ATK2400→3400

 

「さらにローズマリーの効果で、エリーティアの効果を無効にします!」

 

 またしても吹く青い風。それを浴びたエリーティアを構成するすべてが灰色に染まってしまう。これで戦闘ダメージはもう防げないが、まだ《神風のバリア-エア・フォース》を伏せてあるため、パニックになったりはしない。

 

「《潤いの風》の効果発動! 1ターンに1度、1000ポイントのライフを払い、デッキから『アロマ』モンスターを1体手札に加えます。私が手札に加えるのは《アロマセラフィ-アンゼリカ》!」

 

ラベンダー LP3000→2000

 

「そして《潤いの風》のもう一つの効果を発動。私のライフがあなたのライフを下回っている場合、1ターンに1度、500ポイントのライフを回復できます」

 

ラベンダー LP2000→2500

 

「墓地のスイート・マジョラムを対象に、手札のアンゼリカを捨てて効果発動! 対象のモンスターの攻撃力分だけライフを回復します!」

「う……」

 

 スイート・マジョラムの元々の攻撃力は2200。これで、またライフの逆転を許してしまった。

 

ラベンダー LP2500→4700

 

「私のライフがあなたのライフを超えたため、ローズマリーの効果で、私の場の植物族モンスターの攻撃力と守備力は500ポイントアップ!」

 

アロマージ-ベルガモット

ATK3400→3900

 

アロマセラフィ-ローズマリー

ATK2000→2500

 

「そして、墓地のアンゼリカの効果発動! 私の場に『アロマ』モンスターが存在し、私のライフがあなたのライフを超えている場合、このカードを墓地から特殊召喚します!」

 

 ローズマリーの足元に魔法陣が浮かび上がり、その中から白い髪の小さな妖精が姿を見せる。以前見た《六花のひとひら》のような大きさだが、ローズマリーが背から生やしているような白い翼が特徴的だ。

 

アロマセラフィ-アンゼリカ

ATK0→500 レベル1

 

「私はレベル5のローズマリーにレベル1のアンゼリカをチューニング!」

 

 アンゼリカがくるりと一回転し、光の環を形作る。その環をローズマリーがくぐると、白い光が放たれた。

 

「シンクロ召喚!《アロマセラフィ-スイート・マジョラム》!!」

 

 現れたのは2体目のスイート・マジョラム。また厄介なモンスターを呼び出されてしまった。だが、ローズマリーがいなくなった事で、微弱ながらもパンプアップはなくなる。

 

アロマセラフィ-スイート・マジョラム

ATK2200 レベル6

 

アロマージ-ベルガモット

ATK3900→3400

 

「自身の効果で特殊召喚したアンゼリカ、《アロマヒーリング》の効果で特殊召喚したローズマリーは除外されます。そして、シンクロ召喚したスイート・マジョラムの効果発動! デッキから《恵みの風》《潤いの風》《渇きの風》のいずれか1枚を手札に加えます。私は《渇きの風》を手札に」

 

 最初に《異界共鳴-シンクロ・フュージョン》で呼んだ時は正規のシンクロ召喚扱いではないから、サーチ効果は使えなかったわけか。

 

「墓地の《アロマブレンド》を除外して、効果発動! 手札・フィールドのモンスターを融合素材として除外し、植物族の融合召喚を行います。ただし、私のライフがあなたを超えていれば、墓地のモンスターも融合素材にできます!」

「何!?」

 

 フィールドに魔法陣が現れ、その中からロザリーナと《アロマージ-ローズマリー》が姿を見せると、ラベンダーの背後に広がる融合の渦へと飛び込む。

 

「融合召喚! 再び我が下に……《アロマリリス-マグノリア》!!」

 

アロマリリス-マグノリア

ATK2600 レベル8

 

 また、最初のターンと同じ厄介な布陣を敷かれた。しかも、どのモンスターも攻撃力は俺のモンスターを上回っている。攻めてくるか、と身構えるが。

 

「そして私はレベル6のベルガモット様とスイート・マジョラムでオーバーレイ!」

「!」

 

 ラベンダーが腕を突き上げて、エクシーズ召喚の存在を忘れていた事に気づく。ベルガモットが赤、スイート・マジョラムが黄色い光となり、絡み合いながら青空へと舞い上がった。

 

「2体の植物族モンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 

 地面に出現するエクシーズの渦に2つの光が飲み込まれ、爆発を起こす。心なしか、感じる風や光がこれまでより強く感じた。

 

「遠き二つの心が結ばれし時、何者をも寄せ付けぬ新たな香りが誕生する!《アロマリージ-ストエカス・ラベンダー》!!」

 

 光の渦から現れたのは、赤と紫のドレスを纏う女性。グレーのロングヘアだが、デュエルをしているラベンダーと顔立ちがどことなく似ている気がする。そして手に持つ杖は、他の【アロマ】と同じく木でできていた。

 

アロマリージ-ストエカス・ラベンダー

ATK2300 ランク6

 

 そしてこのモンスターから感じる雰囲気は、今までフィールドに出てきた【アロマ】とはまた違う。思うに、これもきっと何らかの力で作り出された新しいカードだ。

 

「ストエカス・ラベンダーの効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、デッキから『アロマ』モンスター1体を墓地へ送り、その攻撃力分のライフポイントを回復します!」

 

 ストエカス・ラベンダーの周囲を漂うオーバーレイ・ユニットの1つが、その手に持つ杖に吸い込まれる。杖が赤い輝きを放ち始めた。

 

アロマリージ-ストエカス・ラベンダー

ORU2→1

 

「私はデッキから攻撃力2000の《アロマージ-マジョラム》を墓地へ送り、2000ポイントのライフを回復します!」

 

ラベンダー LP4700→6700

 

「ライフが回復した事で、ストエカス・ラベンダーとマグノリアの効果発動! マグノリアの効果で、私の植物族モンスターの攻撃力をターン終了時まで、回復した2000ポイント分アップ!」

 

アロマリリス-マグノリア

ATK2600→4600

 

アロマリージ-ストエカス・ラベンダー

ATK2300→4300

 

「さらに、ストエカス・ラベンダーの効果! 私のライフが回復した時、その数値だけ相手フィールドのモンスターの攻撃力と守備力をダウンします!」

「なっ……!?」

 

 ストエカス・ラベンダーが杖を掲げると、先端が妖しく紫色に光る。それを浴びて、フィールドの「ドレミコード」たちは苦しそうに身体を屈めた。

 

グランドレミコード・ミューゼシア

ATK1900→0

 

ミドレミコード・エリーティア

ATK1100→0

 

ドドレミコード・クーリア

ATK2700→700

 

 2体のモンスターの攻撃力が0にまで落ちた。このまま攻撃を受けたら、ダイレクトアタックも同然。ダメージが半分になっても意味がない。

 こうなったらエア・フォースで迎撃する以外に――

 

「マグノリアのさらなる効果発動! 2000ポイントをライフから支払い、私の場の《恵みの風》《潤いの風》《渇きの風》の数だけ、フィールドのカードを除外します!」

「―――――」

 

 頭の中で、お寺の鐘のような音が鳴った。

 

ラベンダー LP6700→4700

 

「……カウンター罠――」

「ストエカス・ラベンダーの効果で、私のライフがあなたのライフを超えている限り、私の植物族モンスターの効果発動に対してあなたは効果を発動できません」

 

 最後の悪あがきもできなかった。さっきライフを回復した時のチェーンを組む順番は、《ドレミコード・フォーマル》を回避するためのものだと思ったが、あのストエカス・ラベンダーが出た時点で、どのみち俺は手を打てなかったのだ。

 ラベンダーが除外するカードを間違えるのを頭の隅っこで期待してしまう。が、最初から伏せてあるカードがどちらかを、ラベンダーはちゃんと覚えていたらしい。マグノリアが杖を振ると、伏せていたエア・フォースに紫の粒子が降り掛かり、除外される。

 

「バトルです! まずはストエカス・ラベンダーでミューゼシアを攻撃! リラクゼーション・ウィンド!!」

 

 ストエカス・ラベンダーが杖を振ると、紫の風が巻き起こり、ミューゼシアに襲い掛かる。その風を凌ごうと腕を構えるミューゼシアだが、なすすべもなく風に吹き飛ばされ破壊されてしまった。

 

バトレアス LP4000→1850

 

 超過ダメージとして、俺にも攻撃の衝撃が届く。砂利が混じった風のように、服や肌にびりびりとした感触がした。

 

「マグノリアでエリーティアを攻撃! サブライム・ストーム!!」

 

 オレンジ色の突風を、エリーティアに向けて発生させるマグノリア。

 するとその時、攻撃対象になってしまったエリーティア、そしてクーリアまでもがこちらを振り向いた。2人は、不安そうな、案じるような、恐れるような顔をしている。

 それは攻撃が向かってくる事に対してではなく、このデュエルがどうなってしまうのかを全て理解しているかのようだ。

 けれど俺には、もうどうする事もできなくて。

 

「……ごめん」

 

 そうとしか言えなかった。

 

バトレアス LP1850→0

 

◆ ◇ ◇

 

「2人ともお疲れ様」

 

 デュエルを終え、お茶会の席に戻ってきたバトレアスとラベンダーを、マジョラムが優しく迎えた。2人はそれに会釈して応えるが、そこでベルガモットが立ち上がるとラベンダーの横に立ち。

 

「バトレアス、悪かった」

 

 自ら頭を下げると同時、ラベンダーの頭に手を置いて同じように下げさせた。バトレアスは突然の行動に驚いているようだが、ベルガモットは頭を下げたまま続ける。

 

「ラベンダーが使ったカードは、お前たちがいた世界には存在しない、こいつだけが持っているカードだ。それは自分の身を守るために使うべきであって、今回みたいな親睦を深めるデュエルで使うカードじゃない」

 

 ベルガモットは、侵略者のような輩に襲われた際に身を守るために、ラベンダーにデュエルの稽古をつけたと言っていた。あのカードも、生み出した経緯は不明だが身を守るために作られたカードというわけだ。

 

「俺が前もって言うのを忘れていたのも原因だ。すまない」

 

 改めて頭を下げるが、バトレアスは首を横に振って「いいえ」と返す。

 

「使われる際に、ラベンダー様にはそういうカードを使うと聞いていましたし、その上で自分は使って良いと頷いたんです。何も、謝る事はありませんよ」

「だが……」

「それに、あのデュエルで自分も改善すべき事に気付けましたから。それが分かったので、十分価値がありました」

 

 そう言って、バトレアスも頭を下げる。

 普通なら苦言の一つや二つを呈しても良いだろうが、バトレアスはそうしなかった。本当にそう思っているように、微笑を携えて2人にお辞儀をした。その姿勢はビューティアから見ても「大人な対応」だと思う。

 だが、ビューティアはそんなバトレアスが、まだ何かを抱えているように感じた。未知のカードを使われた事に対してではない、何かを考えている。

 

「本当に、申し訳ありませんでした」

 

 最後にラベンダーがもう一度お詫びをし、シリアスな空気はそこまでとなって、お茶会を再開した。

 

「残念でしたね……って、僕が言うのも何ですが」

「いえ、お気になさらないでくださいませ。自分が不甲斐ないばかりに……」

 

 そして悪い事をした自覚があるらしく、カナンガがバトレアスの分の席とお茶を用意してくれた。その恩恵をありがたくバトレアスは受け止めている。そしてハーブティーを一口飲むと、「美味しいです」とカナンガに伝えた。

 やはりその表情は、一見しただけでは変化が見られない。負けてしまった事で眉は下がっているが、それは当たり前でもあろう。親睦を深めるためとは言え、オリジナルのカードを使うのも同意の上とは言え、デュエルに負けたのは確かだから。

 その事実を、敗北した事をバトレアスはしっかりと受け止めている。

 それでもなお、不自然なほどに表情が普通だった。別に落ち込んだり、泣いて悔しがってほしいわけではないのだが、違和感が強い。

 もっと言うなら、何かを必死に自分の中で抑え込んでいる。

 

「……バトレアス」

 

 そこで声をかけると、バトレアスははっとしたようにティーカップを置き、立ち上がってビューティアに対し頭を下げる。

 

「大変失礼いたしました、ビューティア様。そして申し訳ございません、不甲斐ない結果となってしまって」

「いえ、それについて責めてはいないのだけれど……」

 

 従者という立場である以上、仕えるビューティアの前で負けてしまった事で、余計責任を感じているらしい。だが、そこまで重く受け止めなくていい、というのがビューティアの本音だ。

 そして、ここまでの違和感をバトレアスに抱いた事もない。

 

「……カナンガさん、少し席を外してもいいかしら?」

「? はい、構いませんが……」

「じゃあバトレアス、ちょっと来て」

「かしこまりました」

 

 ビューティアは許可をもらい、バトレアスを連れてその席を離れる。

 後ろからは、結果はともかくデュエルの内容について真剣に語り合っているラベンダーとベルガモットの声が聞こえた。

 

 ビューティアはこの庭に来るのが初めてではないようで、【アロマ】がいないにもかかわらず、慣れた足取りで庭を歩いていく。

 そして俺を連れてきたのは、庭のはずれにある水場だった。外国、特にヨーロッパで見るようなレンガの立水栓があり、それだけでも雰囲気がある。

 

「ねぇ、バトレアス」

 

 振り向いたビューティアは、やはりいつものように糸目の笑顔だ。

 しかしながら、雰囲気はあまり穏やかとは言えない。

 

「さっきのデュエルの事なのだけれど……」

「……改めて、お詫びをさせてください。打てるだけの手は打ったのですが――」

「結果について話をしたいんじゃないの」

 

 正直な話、負けた事を叱責されると思った。さっきも謝ったが、あれは【アロマ】の皆がいる手前、糾弾などをすると雰囲気が悪くなるからしなかったのだろうと。

 けれどビューティアは、俺の謝罪をぴしゃりと止める。

 

「……負けたのは、本当に残念だと私も思う。けれど、だからと言ってあなたが謝る必要はない。戦ううえで敗北は必ず存在するし、あなたがあの時できる限りのデュエルをしていたのは見て分かった。だからもう、謝らなくていいわ」

「……はい」

「それで、私が話したい事は別にあるの」

 

 ビューティアはそう言って、閉じていた目を開いた。淡い紫色の瞳が、俺の顔を見据える。

 

「あのデュエルが終わった時、あなたは心に何かを抱え込んだ。そうでしょう?」

 

 そんな事まで分かってしまうのか。いや、それも天使族だからかもしれない。それ以前に、心に少なからず作用する旋律を操るドレミコードだからこそ、心の変化には敏いのだろう。

 事実、俺はさっきのデュエルで負ける直前に、気づいた……というより実感した事があった。それで今、俺の中で感情がないまぜになってしまっている。それを口にするのは、ドレミコードの従者だからというよりも、ひとりの人間として口にするのが憚られた。

 

「バトレアス」

 

 だが、ビューティアは俺の頬に手を添えてきた。ビンタされるのではないか、と邪推してしまうほどに、今俺の心は不安定である。

 

「何か抱えているのなら、話してほしい」

「……」

「私はドレミコードの皆を大切に思っている。あなたの事も」

 

 以前、同じような言葉を聞いた。クルヌギアスの件の後、ミューゼシアやクーリアから言われた事だ。あの時は、少なくとも2人がそう思ってくれているだけで嬉しかったが、改めてそう言われると心の緊張が解れる。

 だからこそ、閉じていた口が開いて、内心が溢れ出す。

 

「……あのデュエルで負ける直前。『ドレミコード』が、俺の方を振り向いたんです。不安そうに」

 

 最後のマグノリアの攻撃は、エリーティアに対してのものだった。しかしその攻撃を受ける直前で、フィールドにいた2人の「ドレミコード」が俺の方を向いたのだ。それも、デュエル中どころか現実でも見せた事がない、不安や恐れといったものを。

 

「そんな顔を見て……まるで、本当にそこにいて()()()()()()()()顔を見て、胸が苦しくなったんです」

 

 今まで、「ドレミコード」に限らず様々なデッキを使うにあたり、自分が使ったモンスターが相手によって破壊される事は幾度となくあった。そして、デュエルディスクを使って、ソリッドビジョンの(あるいは実体化した)モンスターが破壊される際には、やりきれない気持ちになった。胸が痛んだ。

 けれど今回、俺は初めてこの世界のデュエルで負けた。世界の運命や自分の命など、かかるものがないにしたって、負けた事に変わりはない。

 そしてそんな負けが確定する直前で、一緒に戦っていたドレミコードの皆の表情を見て思ったのだ。

 

 俺は、ドレミコードの皆を守れなかった。

 

 

「今回戦ったラベンダーさんは、前世から『ドレミコード』の効果を知っていて、かつ俺が知らないカードを使ったから勝てたのかもしれませんが……それは言い訳にしかなりません」

「……」

「負けたのも、『ドレミコード』の力を活かせなかったのも事実。それが、俺にとっては悔しいのです」

 

 以前、ドリーミアと一緒に「六花」の世界へ行った際。ヘレボラスに力をつけるために、俺は【六花】の効果を全て知っていたうえでヘレボラスとデュエルをし、勝利した。つまり今日は、それと真逆の事が起きたわけだ。

 オリジナルのカードを使われた事に不満はない。直前とは言え、使う事には確認があった。そして俺は頷いたから、それはいい。

 負け自体も初めてじゃない。前世で紙のデュエルは勿論、マスターデュエルでもそうだった。環境デッキを相手にした時だけでなく、引きが悪く負けてしまった事も何度かある。その時はいつも、あの時ああすればよかったとか、あのカードが引けたら勝てたとか、相手の方がカードの使い方が上手かったとか、色々考える事が多かった。

 けれど今日の敗北は、そう言う反省点を考えるより、負け際の「ドレミコード」の顔や、守れなかったという事実を重く受け止めていた。ビューティアが俺に抱いていた違和感は、そんな事を俺が考えていたからだろう。

 

「……なるほどね」

 

 ビューティアが、合点がいったかように頷く。

 

「……真剣に私たちの事を考えてくれているのは嬉しく思う。だけど、現実とデュエルの線引きはちゃんとした方がいいわ」

「ええ、それは勿論考えております」

 

 クルヌギアスとのデュエルで、ビューティアが見ている前で《シドレミコード・ビューティア》を破壊された。その際に、デュエルを見ていたビューティアが口元を押さえて衝撃を受けていたのは覚えている。さらに、普段から生活を共にしていたが故に、ダメージを避けるためにキューティアを壁にする事ができず大ダメージを受けた。

 現実として、俺は愛用している「ドレミコード」の皆と一緒にこの世界で生き、苦楽を共にしている。だから余計、「ドレミコード」を使う際には、愛用しているという理由だけでない、感情移入をするようになってしまっていた。

 ただ、この事態を真剣に受け止めすぎると、俺は多分「ドレミコード」で戦えなくなる。だからビューティアの言う通り、デュエルはデュエル、現実は現実で区別しなければならないだろう。

 

「後は、デッキの構築を少し見直しができたら」

「ああ、なるほどね……」

 

 そして、今回のデュエルでデッキ構築においての課題点も洗い出せた。ベルガモットたちに言ったのは、決して建前なんかじゃない。

 その課題点を克服ないしカバーできるように、デッキの構築を見直す必要がある。ただし、それにはひとつ問題があった。

 

「まあ、調整すると言ったところで、カードを調達する手段がないわけですが……」

 

 自宅なら、使っていないカードがたくさんあるのでそこから見繕えるし、カードショップでストレージを見てもいい。しかし、ここは精霊界のため勝手が全然違う。だからどうしたものかと思っていたのだが、そこでビューティアは人差し指を立てた。

 

「確かクーリア様が、使っていないカードを保管していたはずだわ。だから、帰ってみたら聞いてみるといいわよ」

「なるほど……ありがとうございます」

 

 正直、従者の身であるため、自分のデッキを調整するのに主が持っているカードを使わせてもらうのは少し図々しい気がしなくもない。けれど、今のところはそれ以外に頼れる伝手がない。もしダメだったら、この間ファンシアと一緒に行った、現代日本のような世界でカードショップを探すしかない。

 するとビューティアは、小さく息を吐いた。

 

「……よかった」

「え?」

「あまりに落ち込んでいたらどうしようと思っていたけれど、そこまででもなさそうだったから」

「まあ、それは……」

 

 負けた事は何度もあるから、それについての遺恨はない。ドレミコードに感情移入した事によるショックもある。悔しさだって感じている。だけど、それで再起不能になるほど心は弱くないと自負していた。精霊界での生活やデュエルで、精神的な部分は強くなっている。それに、負けたからと言って癇癪を起こすほど子供でもない。

 

「あなたがより強くなれるよう、応援しているわ」

「……はい」

 

 そう言って、ビューティアは俺の頭に手を載せてきた。とんと経験した事がないそれだが、何だか妙に安心感が湧いてくる。むやみに突っぱねると逆に傷つけてしまいそうだから、とりあえずビューティアの気が済むまでさせておこう。

 そう思っていたのだが。

 

「あら、お邪魔だったかしら?」

 

 何やらにやにやと笑顔で姿を現したのは、さっきのデュエルでも登場した《アロマリリス-マグノリア》だ。

 その姿と声を視認してもなお、ビューティアは全く動じずに手を下ろす。こちらとしては、かなり恥ずかしい場面を見られたと軽く後悔しているのだが。

 

「ごきげんよう、マグノリア様。お邪魔しております」

「どうもビューティアさん。そちらは新入りかしら?」

 

 マグノリアに興味を示されて、俺は一歩前へ出て挨拶をする。

 

「初めまして、ドレミコードの従者のバトレアスです。よろしくお願いいたします、マグノリア様」

「あら、ご丁寧にどうも」

 

 そう言ってマグノリアは俺に手を伸ばし、握手を求めてくるかと思いきや、俺の頭を撫でてきた。初対面のはずだが、いきなりそんな行動に出てくるとは思わなくて、勢いよく顔を上げてしまった。

 

「あら、驚かせちゃった?」

「驚きますってそれは……」

「ごめんなさい、いつもの癖でつい、ね」

「いつも……?」

 

 てへ、と笑うマグノリアからはお茶目な印象がする。さっきのデュエルでは随分と苦戦させられたが、その効果に依らず随分とフレンドリーだ。

 そしてマグノリアは、俺の顔を見て小首を傾げる。

 

「あら、あなた……ただの人間じゃないっぽい? 何か、ラベンダーちゃんと同じ」

「ええ、そうなんですよマグノリア様。彼もまた、別の世界から転生したんです」

「へぇ~……世界は何でも起きるのねぇ」

 

 同じ転生者を擁し、また付き合いもある事から、ビューティアが素直に明かすとマグノリアは頷く。そして、俺が転生者と知ったところで、マグノリアの余裕は消えなかった。

 

「ラベンダーちゃんにはもう会ったかしら?」

「ええ。さっきまでデュエルもしてました」

「ああ、そうだったのね。で、こんなところで何をしてたの?」

「ちょっとお話をしていました。けれど終わったので大丈夫です」

 

 ビューティアは俺の真意を確かめたかっただけらしいので、さっきのお茶会の席に戻る事にする。マグノリアも一緒についてきた。

 

「マグノリア様は、どちらにいらしてたのかしら?」

「ちょっと、ナチュルの森の方へ用事でね」

「お忙しそうですね」

「慣れれば楽しいものよ」

 

 気さくな感じで話してくれるマグノリア。ベクトル的には迷宮姫の雰囲気に近い。

 やがてお茶会の席に戻ると、未だベルガモットと熱心に話をしているラベンダーの姿を見て、マグノリアが小走りに駆け寄った。

 

「ラベンダーちゃんただいま~」

「わっ、マグノリア様、お帰りなさいませ……」

 

 そしてマグノリアに頭を撫でられすり寄られるラベンダー。飼い猫を溺愛している飼い主に見えなくもない。とりあえずラベンダーの意識がそっちに割かれたので、ベルガモットも一息吐きながらハーブティーを飲む。

 それを見て、カナンガが立ち上がった。

 

「おかえりなさいませ、マグノリア様。今お茶をご用意いたします」

「ありがとう、カナンガ。と言っても、もうじきお昼ご飯だけれどね」

 

 そこで、この【アロマ】の世界に飛んだのは昼前だったのを思い出す。この場にとどまっていては迷惑だろう。ビューティアも、時間について聞いたところで、俺を見て頷く。そろそろ帰った方がいい、という意見は合致した。

 だがそれについてを話す前に、マグノリアが手を叩いた。

 

「せっかくだから、2人も食べて行ったらどうかしら?」

「え、ですが……ご迷惑では?」

「いいのいいの、大勢で食べるご飯は美味しいもの」

「……ボクらだけでも十分多くない?」

 

 マグノリアの言葉に、ぼそっとローリエがツッコむ。ここにいるだけでも、【アロマ】はマグノリアを合わせて7人。ドレミコードよりも1人少ないが、それでも十分大所帯と言っていいだろう。

 

「折角だし、食べて行くといい。さっきのお詫びもあるしな」

「お詫び?」

「実はさっき、ラベンダーさんがバトレアスさんとのデュエルで、あのカードを使ってしまいまして……」

「あら」

 

 ベルガモットの言葉にマグノリアが首を傾げると、マジョラムが答える。すると、ラベンダーが縮こまるようにし、マグノリアが顔を自らへ向かせる。どうやら、マグノリアもあのオリジナルカードの存在、そしてその意味を知っているようだ。

 

「ラベンダーちゃん」

「……はい」

「今夜は私のお部屋で()()()()()()ね?」

「……分かりました」

 

 何らかの罰のつもりなんだろうか、マグノリアが告げるとラベンダーが項垂れた。

 

◇ ◆ ◇

 

 この後の予定はドレミ界に戻るだけで、やらねばならない事と言えばクーリアにデッキ調整用のカードを提供してもらえるかを確認するぐらいだ。しかし、クーリアは今日「浄化」に行っているため、この時間に戻ってもいない可能性が高い。そして今日のお休みはビューティアだけなので、誰かが待っているわけでもない。

 だからマグノリアの提案に甘えて、昼食をご馳走になる事にした。

 昼食はワンプレートの料理で、五穀米とサラダ、小ぶりなハンバーグに根菜のピクルスと、バランスの良い献立だ。ただ用意してもらうだけなのは悪かったため、配膳だけは手伝わさせてもらう。

 そして作ったのはラベンダーとマグノリアなのだが。

 

「ベルガモット様、如何ですか? 私が作ったハンバーグは」

「ああ、美味い美味い」

「それは良かったです! おかわりもご用意しておりますので、是非どうぞ!」

 

 やはりベルガモットの隣に座るラベンダーの圧が強い。他の【アロマ】たちが和やかに食事をしているのに対し、なんかあそこだけ雰囲気が違う。

 

「……既にお気づきかとは思いますが、彼女はベルガモット様にぞっこんなんです」

「ああ、やっぱり」

 

 俺が気にしているのに気づいたのか、隣に座るカナンガが当人たちに聞こえない程度の声で話しかけてくる。確かにベルガモットの顔立ちはイケメンと言って差し支えないし、ラベンダーの話によれば物理的な攻撃力もある。そんな男に命を救われたのなら、惚れてもおかしくはないだろう。

 

「しかしカードをいただくだけでなく、作ってもらうだなんて……どういう方法で作ったんです?」

「それは私も興味があるわ。もしも私たちにも可能な方法なら、知っておいて損はないし」

 

 先のデュエルで使われた2枚のオリジナルのカード。俺もオリジナルカードがどうしても欲しいというわけではないが、手段だけでも知っていれば後々役に立つかもしれない。俺の隣に座るビューティアも、興味を持ってカナンガを見る。

 だが、聞かれたカナンガは気まずそうに視線を逸らした。しかもどういうわけか、彼の隣に座るローズマリーも顔を赤らめている。

 

「……申し訳ありませんが、おいそれと他人に勧められる方法じゃありません。覚悟と、慎重な決断が必要な方法です」

 

 ベルガモットとラベンダーを横目にそう言うカナンガを見て、重要な情報らしい事は伺えた。ビューティアと視線を合わせ、詮索はやめておこうと結論づける。

 

「食事はお口に合っているかしら?」

 

 すると、マグノリアが尋ねてきた。俺は自信を持って頷く。

 

「ええ、とても」

「本当、何だか優しい味がすると言うか……」

 

 ビューティアもにんじんのピクルスを食べて笑顔を深めた。ドレミ界で皆が作る料理もおいしいが、この料理はビューティアの言う通りで味が柔らかい。決してパンチがないというわけではなく、優しく味を脳に感じさせるものだ。

 

「そのピクルスとサラダに使っている野菜ね、私が育ててるの。だから美味しいって言ってもらえて嬉しいわ~」

「マグノリア様が、ですか?」

「ええ。お野菜のお世話をするのって、何だか気持ちが安らぐのよねぇ」

 

 そう言って、マグノリアは同席するアロマの面々を見る。

 

「勿論、皆のお世話をするのも楽しいものよ」

 

 そう告げられて、ジャスミンとマジョラム、ローズマリーとラベンダーが微笑み、ベルガモットとカナンガは少しだけ困ったように笑い、ローリエは渋い顔をしていた。多分、ローリエは可愛がられる事に慣れていないのだろう。

 

「そうだわ。後で是非私の菜園も見て行ってちょうだいな」

「まあ、よろしいのかしら? じゃあぜひ」

 

 手を合わせてさらに提案するマグノリアに対し、ビューティアも微笑む。

 そこでまた、カナンガが話しかけてきた。

 

「ごめんなさい、マグノリア様はお世話好きで大体あんな感じなんです。もしもご迷惑でしたら言いますので」

「いえ、そんな気になさらず」

 

 さっきから、カナンガがすごい苦労人に見えてきてものすごい同情する。何となく、仲良くなれそうな気がした。

 

◇ ◇ ◆

 

 食後はマグノリアの個人的な菜園を見せてもらった。来た時にも見えた、赤い屋根の家の裏手にあるそこは、8畳ぐらいの広さでにんじんやダイコン、キュウリなどの野菜を育てている。デュエルモンスターズの精霊界は、転生した立場からすれば異世界なので、人間界でも流通していた植物や野菜をじかに見ると妙な安心感を抱いた。

 それから、マグノリアの案内でアロマガーデンを見させてもらう。さっきは適当に見ていただけだったので、アロマそれぞれの効能なども懇切丁寧に教えてもらったので、ほんの少し詳しくなれたかもしれない。

 

「今日はありがとう、とても楽しい時間を過ごせたわ」

「いいえ、こちらこそ」

 

 そしてアロマの庭を後にする事になったのは、15時過ぎだ。随分長居してしまったが、マグノリアやカナンガたちは全く気を悪くした感じではない。

 

「すみません、アロマだけでなく、ピクルスまでいただいちゃうなんて」

「いいのいいの、持って行ってちょうだいな」

 

 そして、本来の目的であるアロマだけでなく、マグノリアお手製のピクルスまでもらう事になった。お金を払うべきだとは思ったが、厚意100パーセントで渡されてしまったのでどうしようもない。ただ、お昼に食べた時は確かに美味しかったので、嬉しいのも事実だ。

 

「それじゃあ、またいつでもいらしてちょうだい」

「ええ、ありがとうございます」

 

 手を振るマグノリアに挨拶をして、俺とビューティアはアロマガーデンの門をくぐる。カナンガも頭を下げてくれた。

 そこでビューティアがタクトを振り、ドレミ界へのゲートを開く。それを通って、俺とビューティアはドレミ界の屋敷に戻った。

 

「すっかり長居しちゃいましたね」

「ええ、でも楽しかったわ。それに実りも多くあったし」

 

 ビューティアが、ピクルスの入った瓶を抱えて笑う。最初に行くときはここまでかかるとは思わなかったが、新たな転生者に会えた事、【ドレミコード】デッキの課題に気づいた事、今後のデュエルで気を付ける事等、こちらも学びが多かった。なので、無駄な時間を過ごしたとは全く思わない。

 

「このアロマはどうしておきますか?」

「一旦食堂に置いておきましょう」

 

 本来の目的だったアロマは俺が持っている。ビューティアの言う通り、まずは食堂へ向かう事にした。

 そして食堂に行くと。

 

「クーリア様、グレーシア様、エンジェリア様、お帰りなさいませ」

「……ただいま、バトレアス」

 

 席のひとつにクーリアが腰かけており、その隣にはグレーシア、反対側にエンジェリアが座っていた。だが、先んじて挨拶をしても、クーリアの返事はどことなく暗い。隣に座るグレーシアは俺に対して目礼をするだけ、エンジェリアはこちらを見向きもしない。

 何かがおかしい。不審に思ったのか、俺の後ろのビューティアも足を止める。

 

「あの、どうかされましたか……?」

「そうね、ちょっと……ね。バトレアスに、聞きたい事があるの」

「?」

 

 尋ねてみると、クーリアがゆっくり立ち上がる。仕草も言葉も、怒っているというか不機嫌というか、とにかく負の方面に向いている気がしてならない。

 俺は何かやってしまったのか。備品を壊したり着替えを覗いたりなど不埒な真似を犯した事は記憶にない。もしかしたら、ビューティアが一緒にいても帰りが遅くなったのを怒っているのか。

 とにかく、クーリアが何について怒っているのかを知るのが先だ。次の言葉を待っていると、クーリアはエンジェリアから何かを受け取って俺の前にやってきた。

 

「ねぇ、バトレアス」

 

 そして、話しかけながらクーリアが見せたのは、封筒だった。

 A4サイズの用紙がすっぽり収まりそうなその封筒、少し破けているが見覚えがある。封がしてあった部分に牛の角を模した封蝋の跡があるのも、記憶にある気がする。

 

「これは、何?」

 

 そしてその封筒から取り出したものを、クーリアが俺に突き付ける。

 《白銀の城のラビュリンス》のイラストそのままのポーズを取っている迷宮姫。そんな彼女が表紙を飾っているA4サイズの薄い本――もとい写真集。

 

「……あ」

 

 頭の中で、ライフポイントが0になった時の効果音が響き渡った。

 


 

《導きの風》

通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分のフィールドゾーンに「アロマガーデン」が存在し、

自分のLPが相手より2000以上少ない場合、

自分フィールド(表側)の「恵みの風」「潤いの風」「渇きの風」のいずれか1枚を墓地へ送って発動できる。

自分の墓地の「アロマ」モンスターの属性の種類だけ自分はドローし、

自分はその数×800LP回復する。

この効果の発動後、次の相手ターン終了時まで、

自分は「アロマ」モンスターしか召喚・反転召喚・特殊召喚できず、

相手が受ける全てのダメージは半分になる。

 

《アロマリージ-ストエカス・ラベンダー》

ランク6/光属性/植物族/攻2300/守1900

エクシーズ/効果

植物族レベル6モンスター×2

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分のLPが相手よりも多く、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、

自分の植物族モンスターの効果の発動に対して相手は効果を発動できない。

(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。

デッキから「アロマ」モンスター1体を墓地へ送り、

自分はその攻撃力分のLPを回復する。

(3):自分のLPが回復した場合に発動できる(ダメージステップでも発動可能)。

その数値分だけ、相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力はターン終了時までダウンする。

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