ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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第25話:一線

バトレアス LP4000 手札1

【モンスターゾーン】

ラドレミコード・エンジェリア ATK2900 レベル6

ファドレミコード・ファンシア DEF400 レベル4

ドドレミコード・クーリア ATK3300 レベル8

ミドレミコード・エリーティア DEF400 レベル3

 

【エクストラモンスターゾーン】

右:ソドレミコード・グレーシア ATK2700 レベル5

 

【魔法&罠ゾーン】

魂のペンデュラム(カウンター2)

 

【ペンデュラムゾーン】

右:ラドレミコード・エンジェリア スケール1

左:ドドレミコード・キューティア スケール10

 

【フィールドゾーン】

ドレミコード・ハルモニア

 

 

バスター・ブレイダー LP4000 手札6

【モンスターゾーン】

カード無し

 

【魔法&罠ゾーン】

ソウル・レヴィ

伏せカード1

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 手札を爆発的に増やしたバスター・ブレイダー。ターンが始まり、手札は7枚。まずどういう一手を取ってくるのかが非常に気になると同時に怖い。

 潤沢な手札を見てバスター・ブレイダーは満足げに頷き、1枚を手にする。

 

「魔法カード《サンダー・ショート》発動。君のフィールドのモンスター1体につき400ポイントのダメージを与える!」

 

 瞬間、発動したカードから雷が放たれ、フィールドにいる「ドレミコード」を器用に避けながら俺に直撃した。

 

「ぐあああああああっ……!?」

 

バトレアス LP4000→2000

 

 デュエルで実際のダメージを喰らう事は何度もあったが、雷に打たれるのは初めてだ。実際の雷に当たったら痛みを感じる前に死んでしまうだろうが、疑似的に受ける雷は痛い。身体が痺れて、声が出るのを押さえられない。

 

「この程度で音を上げては、これからの攻撃には耐えられないぞ?」

 

 雷を受けて全身が熱くなるが、それでもバスター・ブレイダーは冷淡にカードを切っていく。

 

「魔法カード《復活の福音》発動。私の墓地のレベル7・8のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。戻れ、バスター・ドラゴン!」

 

 ドラゴン族を狩る癖にドラゴン族サポートを入れているのか、と言いがかり甚だしい感想が頭に浮かぶ。多分あのカードは、バスター・ドラゴンのためだけに入れているものだ。

 

破戒蛮竜-バスター・ドラゴン

DEF2800 レベル8

 

 フィールドに再び現れる禍々しい巨大なドラゴン。それが吼えると、俺のフィールドにいる「ドレミコード」たちが、また苦しそうな声を洩らしながら竜へ姿を変えてしまう。背中から毒々しい色の翼を生やし、爪は鋭く伸び、整った顔立ちもドラゴンのそれへと変わり果てた。影響を受けないペンデュラムゾーンのエンジェリアとキューティアも、その様子を見て表情を胸を押さえている。

 俺に至っては、こちらのターンにロックと妨害を幾度もされ、さっきの雷の衝撃もあって頭の奥が熱くなってきていた。

 

「さらに魔法カード《破壊剣士融合》発動。私の手札及びお互いのフィールドのモンスターを素材とし、《バスター・ブレイダー》を素材とする融合モンスターを融合召喚する。私は手札の《バスター・ブレイダー》と、ドラゴン族となった君のフィールドの《ドドレミコード・クーリア》を融合する!」

「ッ!!」

 

 お互いのフィールドの中央部分に巨大な融合の渦が現れ、実体化した《バスター・ブレイダー》と、醜いドラゴンとなってしまったクーリアが吸い込まれる。

 さっきのターンに効果を無効にする効果を披露してしまったから、先に除去しようと思っての事だろう。だが俺からすれば、頼れるリーダーにしてエースを目を塞ぎたくなるほどの姿に変えさせられ、挙句の果てに融合素材に利用された事に心臓が怒りで震えだす。

 

「融合召喚! 再び出でよ、《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》!!」

 

 そしてフィールドに現れるのは、非常に厄介なロック効果を持つ剣士。降り立つと、剣をこちらへと向けた。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK2800 レベル8

 

「歯向かうドラゴンたちよ、最強の剣士の前にひれ伏すがいい!」

 

 バスター・ブレイダーが宣言すると、俺のフィールドの「ドレミコード」は防御姿勢を取った。人の形をしていれば跪くだけだろうが、ドラゴン態となってしまった今は獣のように地面に臥している。

 

ソドレミコード・グレーシア

ATK2700→DEF1400

 

ラドレミコード・エンジェリア

ATK2900→DEF1400

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK2800→6800

 

「攻撃力6800……」

 

 ミューゼシアが驚嘆の声を洩らす。この状況であの攻撃力を突破するのは至難の業だ。しかも、《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》は貫通効果があるからこそ、守備モンスターも意味を為さない。

 

「今度こそ終わりだ、《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》で《ファドレミコード・ファンシア》を攻撃。破壊真剣・烈閃!!」

 

 《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》の一閃が、ドラゴンとなったファンシアの首を斬る。ドラゴン態になったとしても「ドレミコード」に変わりはないため、仲間が切られえてしまうと俺自身も斬られたように胸が痛くなった。

 

◆ ◇

 

「う……?」

 

 外から衝撃音が聞こえて、エリーティアが外の様子を窺う。それと同時に、眠っていた鎧の女性が目を覚ました。

 

「あ、大丈夫ですか……?」

「だい、じょうぶ……」

 

 上体を起こす女性は、頭を押さえてはいるものの、表情はさっきよりもかなり穏やかだ。

 

「今の、何……?」

「恐らくは、デュエルかと……先ほど、何者かがこの世界に入り込んできたようで……」

 

 エリーティアも、誰かが来たのは感知できたが正体までは知らない。それでもデュエルと思しき音が聞こえるという事は、穏便に事は済まなかったようだ。

 すると、女性がまたベッドから降りようとしたので、エリーティアはそれを手で制する。

 

「ダメですよ! 安静にしていなきゃ……」

「多分、ここに来た奴は、私を追っている奴だと思う。だから、私が行かなきゃ……」

 

 さっきよりも言葉は多少はっきりしているが、危なっかしいのは変わらない。

 訪問者がこの女性を狙っているかもしれないという事実に、ミューゼシアたちは気づいているだろうか。

 

「ダメですって、怪我しているのに!」

 

 それでもエリーティアは女性を何とか押し留めようとする。

 治療に関しては本で読んだからどうにかなったが、こうして怪我人が無理を通そうとしているときにどうすればいいのかまでは本でも知らない。ただ心配だから押しとどめているのだが、女性も引くつもりがないらしい。

 

「……私がここに来たせいで、あなたたちに迷惑が掛かってる。なら、私がそいつと話をする。そうすれば、あなたたちも大丈夫なはずよ」

「それはそうかもしれませんけど、脚が折れてるのに!」

 

 女性はやはり戦士として鍛えているからか、エリーティアだけでは止められそうにない。それに女性の意思は固そうだ。

 悩みに悩んで、エリーティアはやがて決めた。

 

「……でしたら、私が一緒に支えていきますから。それでいいでしょう?」

「それでいい」

 

 強情なところがある女性を押しとどめるのはエリーティア1人では限界だ。だから仕方なく、その訪問者の下へエリーティアが連れて行くしかない。そこにはミューゼシアやグレーシアもいるはずだから、すぐにおかしな事にはならないはずだ。

 

「行きますよ……」

 

 エリーティアはバトレアスほど上背がないため、女性を背負って行くことができない。だから、彼女の折れてしまった左脚を支えるように歩いていく。

 だが、怪我の治りが早いという言葉は本当らしく、添え木をしてエリーティアが支えているとしても、女性はさっきより怪我がつらそうではない。

 本当にこの女性は何者なんだろうか。

 

◇ ◆

 

 

バトレアス LP2000

 

「……なぜライフが減らない?」

「エリーティアの効果で、俺のペンデュラムゾーンに偶数のスケールが存在する場合、『ドレミコード』ペンデュラムモンスターのバトルで俺が受けるダメージは0になる。これは発動を伴わない効果、禁止されてはいない」

 

 今の攻撃で勝つつもりだったのか、バスター・ブレイダーは疑問丸出しで尋ねてきた。いつの時も、こうして相手の意表を突けるのは気持ちがいい。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK6800→5800

 

 そして、俺のフィールドのモンスターが減れば、バスター・ブレイダーの攻撃力も下がる。これがペンデュラムモンスターでなかったら墓地へ送られていたので、攻撃力が減る事はなかった。

 

「ならば永続罠《リビングデッドの呼び声》発動! 墓地より甦れ、我が分身《バスター・ブレイダー》!」

 

 フィールドに現れた魔法陣から、竜破壊の剣士が飛び出して着地し、剣を構える。

 

バスター・ブレイダー

ATK2600 レベル7

 

「その効果で攻撃力がアップする!」

 

バスター・ブレイダー

ATK2600→4100

 

「《バスター・ブレイダー》でエリーティアを攻撃。破壊剣・一閃!!」

 

 徹底的にモンスターを減らしにかかってきた。続く斬撃がエリーティアを容赦なく両断し、こちらもまた胸を引き裂くような感覚を俺に与える。

 

バスター・ブレイダー

ATK4100→3600

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK5800→4800

 

「メインフェイズ2で、私は手札の《破壊剣-ドラゴンバスターブレード》の効果を発動。このカードを私のフィールドの《バスター・ブレイダー》に装備する」

 

 そしてバスター・ブレイダーが手札から発動したのは、《バスター・ブレイダー》が持つ剣のミニチュアサイズを首から下げた《破壊剣士の伴竜》だ。それは《バスター・ブレイダー》の肩に乗り、首筋にすり寄る。

 

「このドラゴンバスターブレードが装備カードとなっている限り、君はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない!」

「……」

「そしてカードを2枚伏せてターンエンド。《ソウル・レヴィ》の効果も復活する」

 

 種族変更からの強制守備、効果発動の禁止、デッキ破壊、さらにエクストラデッキ封じ。

 完全制圧とまではいかないにしろ、これだけのロックを仕掛けられるのは久方ぶりだ。しかも、自分の信頼する仲間を醜い姿に変えられてしまい、ストレスは最高潮に達していると言ってもいい。

 

「バトレアスとやら、諦めたまえ。こうなった以上、君に勝ち目はもうない」

 

 バスター・ブレイダーは、自分の布陣が完璧だと自負しているのか、俺にサレンダーを促してくる。

 失笑ものだ。

 

「……ライフも、仲間も、まだ残っています」

「それでこの状況をどう逆転すると?」

 

 苦手な戦術をいくつも展開されて腹が立つ事は何度もある。それでも、机の上のデュエルなら何とか噛みしめて我慢はできた。

 だが、こうしてソリッドビジョンでまざまざと見せつけられると、怒りを抑えるので精いっぱいだ。言葉を発する事にさえも慎重になる。

 

「バトレアスよ。私は君や君の仲間を貶めたり、痛めつけたいわけではない。ただこちらの希望を聞いてくれればそれでよいのだ」

「……彼女の事を言っているのであれば、なおさら渡せません」

「なぜそこまで彼女に肩入れする? 一目惚れでもしたか?」

「は?」

 

 不用意な質問をされて、感情を取り繕えなくなってきた。言葉遣いが強くなってしまう。

 けれどバスター・ブレイダーは、それについて気を悪くしたようでもない。

 

「……怪我人を助けたいという心遣いは敬服に値する。だが、それを向ける相手はよく考えるべきだと私は言いたい」

「……バスター・ブレイダー殿。貴方はなぜ、彼女をそこまで執拗に狙うのです?」

 

 すると、デュエルを観ていたミューゼシアが同じ質問をもう一度投げかけた。大した答えは得られないと思ったが、バスター・ブレイダーは、息を吐いて腕を下ろした。先ほどとは違う態度、もしや何かを話す気になったのだろうか。

 

「さっき言ったな。私は悪竜を討つために世界を渡っていると」

「ええ。ですが彼女は人間です」

「今はまだ、だ」

「……どういう事ですか」

 

 含みのある言い方にグレーシアが異を唱える。バスター・ブレイダーは視線を、俺のフィールドのモンスターへと移した。ドラゴンと化してしまったドレミコードたちを。

 

「ある時、各地で悪竜を狩っていた私に一つの依頼が届いた。住処を荒らされた竜が集落を襲い、被害が出ていると。その悪竜を討ってほしい、とな」

「……」

「私は現地へ向かい、その荒れ果てた集落に残された痕跡を辿り、被害を出した竜を倒す事はできた。しかし……」

 

 バスター・ブレイダーの告げる事実に唇を噛む。

 違っていてほしかった。

 だけど、本当にそうなのか。

 こちらの世界でも、そうなってしまっているのか。

 

「その竜たちを追う際、同じように竜を追う女戦士を見つけた」

「それがあの人であると?」

「その通りだ。だが、それだけではない」

 

 目を伏せる。

 知っている通りの話過ぎて、悲しい。

 

「その滅ぼされた村に残されていた村章と、彼女の鎧に刻まれていた村章は、同じものだった」

「……まさか」

 

 グレーシアが気づいたように、声を洩らした。狩猟者の鎧の首元に刻まれていたのは、村章だったのか。

 俺はもう、脳が揺さぶられているように錯覚する。

 そしてバスター・ブレイダーは、告げた。

 

 

「つまり、彼女が竜を狩る事によって、彼女の故郷は住処を荒らされた竜に滅ぼされてしまったのだ」

 

 

 がたん、と音が聞こえた。

 嫌な予感がし、当たらないでほしいと思いつつそちらを見た。だが、音がした玄関の方には、エリーティアと《竜角の狩猟者》が玄関に立っている。予感が的中してしまっていた。

 俺と同じようにバスター・ブレイダーが視線を向けると、狩猟者は膝から崩れ落ちる。

 そして。

 

「あ、ああ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 頭を掻きむしりながら、絶叫した。

 グレーシアとミューゼシアが駆け寄り、そばにいたエリーティアも落ち着かせようと背中をさするが、狩猟者は蹲り泣き叫ぶ。

 間違いなく、バスター・ブレイダーの話は聞こえてしまっていた。

 

「そして彼女は、竜を狩る過程でその返り血を浴び続け、ゆっくりと、しかし確実に竜へ変わりつつある」

「バスター・ブレイダー様」

「今はまだ人の形を保ち、記憶も残している。しかしいずれは、完全に竜と化してしまう。そうなればもう――」

「やめろ!」

 

 平然と話を続けるバスター・ブレイダーに怒鳴る。誰かに向けて声を大にする事など、クーリアが倒れた時以来だ。しかしその時と違って、バスター・ブレイダーに対する心配の情などひとかけらもない。

 《竜角の狩猟者》が最後にどうなるのかは知っている。返り血を浴び続けた結果ドラゴンとなり、村の皆を助けるという目的を忘れ、ただ呪いを振り撒く存在《竜核の呪霊者》となってしまうのだ。バスター・ブレイダーに言わせなかった結末を、俺は知っている。

 

「バトレアス、改めて聞こう。君はそんな彼女のために私と戦っている。いずれは竜になり助からない、帰る場所もない彼女のために、自分の身を危険に晒している。しかし彼女の真実を知ってもなお、君はまだ続ける気か?」

 

 恐らくバスター・ブレイダーは、俺に対して敵意や悪意を抱いていない。善意のつもりで、俺を含めドレミコードに狩猟者を差し出すように促している。

 一番厄介なパターンだ。

 

「あああああ……ああああああああ……!」

 

 やがて狩猟者は、声を上げるあまり喉を痛めたのか絶叫すしなくなったものの、声を上げて涙を流している。

 胸に刃を突き立てられる感覚がして、思わず胸を押さえる。そばにいるエリーティアも涙ぐんでいるし、グレーシアとミューゼシアも気の毒そうに目を伏せている。

 

「もっと分かりやすく言う。君は、()()()()()()()()()()()のためにまだ戦うつもりか?」

 

 逆鱗に触れる、堪忍袋の緒が切れるとは、まさに今の事だろう。

 そう考えられるぐらいに、怒りで俺の頭は一周回って冷静になった。

 

「……バスター・ブレイダー様」

「なんだ?」

「これからの自分の言葉は、『ドレミ界の言葉』ではなく、『自分個人の言葉』として聞いていただきたい」

 

 最後に残った理性で、これからは俺個人の考えを伝える。俺がミューゼシアの身代わりで戦っている以上は、俺の言葉もドレミコードの総意と思われかねないから。

 精霊界で生きている年月はミューゼシアたちの方が上だ。だからもしかしたら、そうであると思うのは怖いけれど、考えはバスター・ブレイダーと同じかもしれない。

 ミューゼシアたちの真意が分からないからこそ、この言葉は現状俺だけの考えとして話す。

 

「お前が言っている事は、正しいのかもしれない。殺した方が手っ取り早く事は解決するし、周りに被害も出さなくて済む。賢くて、合理的な判断なんだろうな」

 

 狩猟者の泣き声が止んだ。

 俺の言葉が、バスター・ブレイダーに賛同すると思っての事だろう。裏切られたショックで、泣くのを忘れてしまったのかもしれない。

 だが俺は、バスター・ブレイダーに従う気はさらさらなかった。

 

「だけど俺は、お前みたいにすぐに『殺すかどうか』で物を判断するような世界に生きちゃいない」

 

 前世で一般小市民だった俺は、憎たらしいムカつく人が身近にいたりしても「殺すか殺さないか」で判断した事はない。せいぜい「距離を置く」「心の中で文句を垂れる」「我慢して仕方なく現状を維持する」だった。

 ただ、この精霊界はデュエルモンスターのものだからこそ、決闘(デュエル)が身近で、誰かと誰かが命を取り合う「戦い」という行為は珍しくないのだろう。特に、バスター・ブレイダーみたく竜を狩ってきた身からすれば、生き物を殺す事についてのハードルも一般人より低いのかもしれない。

 だけど、それは頭で理解していても。

 やっぱり俺は転生した人間だ。精霊界で数か月生活していようと、「殺す」なんて判断を下せない。

 

「あの人はまだ人間だ。たとえ、お前の言う通りいずれ竜になるとしても、まだ引き返せるのなら俺は助けたい。助けられるかもしれないのに殺すなんて、できない」

 

 たとえ救いようがないと言われても、《竜角の狩猟者》とはまだコミュニケーションが取れるし、言葉も交わせる。れっきとした人間だ。もしかしたら、助けられるかもしれない。竜になりつつあるとしても、完全な人間に戻せるかもしれない。可能性がまだゼロとも言い切れないのに、殺すなんて嫌だ。いや、可能性がないにしたって、殺すという冷酷な判断を俺は下せない。

 けれどバスター・ブレイダーは、態度を変えなかった。

 

「そんな希望に、可能性に縋るなど愚かとは思わないか?」

「思わない! そして、そんな希望や可能性を愚かだって吐き捨てて殺そうとする奴に従うぐらいなら、俺はその希望を信じる!」

 

 言いたい事はもう言った。

 あとはデュエルで勝つ事だけだ。

 

「俺のターン、ドロー!!」

 

 ドローカードを見る。

 啖呵を切ったはいいが、状況はこちらが圧倒的に不利。気を抜けばすぐに負けてしまう状況だ。

 相手のフィールドのモンスターの攻撃力・守備力はいずれも高い。バスター・ドラゴンがいる限りこちらの攻撃はできないも同然。さらにドラゴンバスターブレードがいるためエクストラデッキからの特殊召喚もできない。

 こうなった以上やるべき事は、エクストラデッキからの特殊召喚をできるようにし、このターンで勝負を決められるほどの力を有しているモンスターを並べる事。

 そうなると、あのカードを使う以外に選択肢はない。

 けれど、もうなりふりに構っている場合ではなかった。

 

「《ペンデュラム・ホルト》発動! 俺のエクストラデッキにペンデュラムモンスターが表側で3種類以上存在する場合、このターンに他の方法でデッキからカードを手札に加えられなくなる代わりに、カードを2枚ドローする!」

 

 状況次第だが、ノーコストで2枚もドローできる。さっきのターンで発動条件はクリアしていた。デメリットは痛いが、もうこのターンはサーチに頼らない。

 ドローした2枚を見て頷く。

 

「《ドドレミコード・キューティア》を召喚!」

 

 さっきのターンに手札に戻していたキューティアをまず呼び出す。

 だが、すぐにバスター・ドラゴンと《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》の影響を受けて、醜い龍の姿に変わってしまい、さらに守備表示になって効果も発動できなくなる。どのみち、《ペンデュラム・ホルト》のデメリットでサーチはできないが。

 

ドドレミコード・キューティア

ATK100→DEF400

 

バスター・ブレイダー

ATK3600→4100

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK4800→5800

 

 すぐにその姿から解放する事を心の中で誓い、空に浮かぶ五線譜を指差す。

 

「ハルモニアの効果発動! 俺のフィールドのドレミコードのスケールは、奇数2種類に偶数3種類! よって相手フィールドのカード1枚を破壊する!」

「ならば私は永続罠《輪廻独断》を発動。このカードは1ターンに1度、種族を宣言する事で、互いの墓地のモンスターの種族をそのターンの間だけ宣言した種族に変える。私はドラゴン族を宣言!」

 

 バスター・ブレイダーが発動した《輪廻独断》のカードが紫色のオーラを放つ。

 

「君の墓地には、確か3体のモンスターがいたな。つまり、フィールドの《バスター・ブレイダー》と《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》の攻撃力はさらにアップする!」

 

バスター・ブレイダー

ATK4100→5600

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK5800→8800

 

 《手札抹殺》や《ソウル・レヴィ》で執拗にカードを墓地送りにしたのは、この《輪廻独断》でのサポートを得るためでもあったのだと気づく。口惜しいが、自身のサポートと相手の妨害を両立する、理想的な構築だ。

 

「さあ、バトレアス。どれを破壊する?」

 

 そしてハルモニアの効果発動に合わせて発動したのは、破壊される前に自分のモンスターの打点を上げるためだ。俺への選択肢を増やして破壊するカードを悩ませる狙いもあるのかもしれないが、破壊するカードは最初から決めている。

 

「俺はドラゴンバスターブレードを装備した《バスター・ブレイダー》を破壊する!」

 

 ハルモニアの五線譜から雷が落ち、側につく小さな竜ともども《バスター・ブレイダー》が燃え尽きる。

 バスター・ドラゴンを破壊すれば俺のモンスターはドラゴン族ではなくなり、効果を発動できるようになる。だが、バスター・ブレイダーの墓地には《復活の福音》があった。あれは墓地から除外する事でドラゴン族の破壊を免れる効果がある。他のドラゴンデッキでよく見るため効果は知っていた。

 《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》を破壊しても、ドレミコードたちの効果は使えるようになる。けれど、エクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない縛りは消えない。それに、バトルではバスター・ドラゴンを2回攻撃する手間が生じ、攻撃の手数が微妙に足りなくなる。

 だから、バスター・ドラゴンは別の方法で除去する。そのためにまずはロックをひとつ解除した。

 しかし、それを見てもバスター・ブレイダーはまるで嘲笑うように肩を揺らす。

 

「バスター・ドラゴンの効果発動! 相手ターンに1度、墓地の『破壊剣』モンスター1体を、装備カード扱いとして私の場の『バスター・ブレイダー』と名のつくモンスターに装備させる!」

 

 天に向かって吼えるバスター・ドラゴン。これでまた、ドラゴンバスターブレードを装備させ、エクストラデッキを封じるつもりだろうがそんな真似はさせない。

 

「速攻魔法《墓穴の指名者》発動! お前の墓地のドラゴンバスターブレードを除外する!」

「チッ……」

 

 フィールドに悪魔のような腕が現れ、バスター・ブレイダーの墓地を指さすと、指の先端が妖しく光る。そしてバスター・ブレイダーの墓地から、ドラゴンバスターブレードのカードが排出されて黒い渦に飲み込まれた。

 これで何の憂いもなく、エクストラデッキから特殊召喚ができる。

 

「現れろ、清らかな旋律のサーキット!」

 

 手を突き出し、リンクサーキットを展開する。音符と音楽記号の軌跡が輝いた。

 

「召喚条件はペンデュラムモンスター2体。グレーシアとエンジェリアをリンクマーカーにセット!」

 

 広がったリンクサーキットに、ドラゴンと化した2体のドレミコードが飛び込むと、サーキットが輝きを放った。

 

「リンク召喚! 優雅にして偉大なる音階の天使、《グランドレミコード・ミューゼシア》!!」

 

□□□ グランドレミコード・ミューゼシア

□◆□ ATK1900

■□■ リンク2

 

 だが、ミューゼシアがフィールドに現れた瞬間、バスター・ドラゴンの目が輝き、さらには《ソウル・レヴィ》も効果を忘れるなとばかりに輝く。

 ミューゼシアもまた、他の「ドレミコード」と同じように竜へと変貌し、それを見て俺は苦しくなりながらもデッキからカードを墓地へ送る。《団結の力》《ソドレミコード・グレーシア》《シドレミコード・ビューティア》が墓地へと送られてしまった。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK8800→7800→9800

 

「罠カード《奈落の落とし穴》発動! 召喚・反転召喚・特殊召喚された、攻撃力1500以上のモンスター1体を破壊してゲームから除外する!」

 

 そしてバスター・ブレイダーはさらにカードを発動する。リンクモンスターは守備表示にはならず、また展開の起点にもなりうる。だからバスター・ブレイダーは除去する事を選んだらしい。何ともえげつないカードを使う。

 すると、ミューゼシアの足元に赤い穴が空き、その中から影のような黒く平面の腕がいくつも伸び、ミューゼシアを穴の中に引きずり込もうとした。

 

「速攻魔法《我が身を盾に》発動! 1500のライフを払い、『フィールドのモンスターを破壊する効果』を持つカードの発動を無効にする!」

 

バトレアス LP2000→500

 

 瞬間、身体から力が抜け落ちるような感覚に襲われる。思えば、ライフコストが必要なカードを精霊界で使ったのは初めてだ。文字通り命と引き換えに使ったから、こんな感覚になってしまうのだろうか。

 だが、力が抜けたと同時、まるで脱皮のように俺の体から光のシルエットが現れると、そのシルエットはミューゼシアに触れていた黒い腕を根こそぎ引き千切る。そして、足元に空いた赤い穴も塞がった。

 その時、ドラゴンの姿になってしまったミューゼシアが、こちらを振り向いた気がしたのは気のせいだろうか。

 とにかく、これでミューゼシアを守る事はできた。展開が続けられる。

 

「セッティング済みのペンデュラムスケールは1と10! よってレベル2から9のモンスターが同時に召喚可能! ペンデュラム召喚!」

 

 手札はもうないため、エクストラデッキから呼び出すしかなかった。呼び出すのは、このデッキでは攻撃に強いグレーシアとエンジェリア。だが、バスター・ブレイダーの布陣により守備を余儀なくされる。

 

ソドレミコード・グレーシア

DEF1400 レベル5

 

ラドレミコード・エンジェリア

DEF1400 レベル6

 

「さらにペンデュラム召喚が成功したため、《魂のペンデュラム》にカウンターが1つ置かれる」

 

魂のペンデュラム

カウンター:2→3

 

 しかしながら、《ソウル・レヴィ》のカードも輝きを放ち、こちらにデッキ破壊を強いてくる。墓地へ送られたのは《ドレミコード・シンフォニア》《ラドレミコード・エンジェリア》《サイクロン》だった。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK9800→11800→12800

 

 ついに攻撃力が10000を超えた。こんな数値は中々見られない。

 それを使役するバスター・ブレイダーも当然理解しているらしく、こちらを見て首を横に振った。

 

「いくらモンスターを並べようと、最強の剣士の前にはいかなるドラゴンも――」

「再び現れろ、清らかな旋律のサーキット!」

 

 何か諦めを促すような事をバスター・ブレイダーが言うが、無視して次に進める。

 これから呼び出すモンスターは、前世なら何の躊躇いもなかった。しかし今は、出自を考えるとどうしても緊張してしまう。それでも、そうしなければ勝てない。

 

「召喚条件は効果モンスター4体以上。ただしこのカードをリンク召喚する際、相手フィールドのモンスターも1体までリンク素材にできる!」

「何だと!?」

「俺はグレーシアとエンジェリア、リンク2のミューゼシア、そしてお前のバスター・ドラゴンをリンクマーカーにセット!」

 

 その変則的なリンク素材に、バスター・ブレイダーは明らかに余裕を失った。

 リンクサーキットが展開し、3人のドレミコードがサーキットへと飛び込む。ただしバスター・ドラゴンは、相手方に利用されるのが嫌なのか抵抗するように鳴き声を上げるも、リンクサーキットに引きずり込まれる。

 そして、リンクサーキットが放ったのは光ではなく、黒い煙だ。

 

「浄化の旋律が途絶える時、冥府の美神が降臨する。混沌を携え、抗う敵を圧倒せよ!」

 

 召喚口上をつけておかないと、後々何かしらの形で文句を言われそうだ。なので口上はつけておく。

 

「リンク召喚! 現れ出でよ、リンク5!《閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)》!!」

 

 リンクサーキットからあふれる黒い煙の中から姿を現す、冥府の女神。以前会った時と違うのは、影のような黒いドラゴンを背に従えている事だ。

 ミューゼシアたちは、フィールドに現れたクルヌギアスを畏怖じみた顔で見ていた。一方のクルヌギアス自身は、フィールドに現れるとバスター・ブレイダーを見て鼻で笑う。

 

□■■ 閉ザサレシ世界ノ冥神

□◇■ ATK3000

□■■ リンク5

 

「リンク5だと……? それにこのモンスターは……」

 

 さすがのバスター・ブレイダーも、リンク5を目にする機会はなかったらしい。

 そしてクルヌギアスが場に出た途端、空気が少し重くなった気がする。やはり冥界の神だからこそ、オーラが全く違う。レジェンドデュエリストが神のカードを使った時も、こんな感じだったのだろうか。

 

「だが、《ソウル・レヴィ》の効果で君はデッキから3枚のカードを墓地へ送る!」

 

 言われて俺は《ファドレミコード・ファンシア》《シドレミコード・ビューティア》《ドレミコード・ムジカ》を墓地へ送った。

 ただし、バスター・ドラゴンがいなくなった事で種族変更効果もなくなり、フィールドに残ってたキューティアの姿は元に戻る。さらに、クルヌギアスもドラゴンの姿にはならない。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK12800→8800→10800

 

 そしてショックから立ち直ったのか、バスター・ブレイダーは自分の場に残る最後のモンスターを指差す。

 

「少々驚かされたが、攻撃力3000程度でこの最強の剣士は――」

「クルヌギアスの効果発動! このカードがリンク召喚した時、相手フィールドの表側表示モンスターの効果を全て無効にする!」

「なっ……!?」

「コーリング・ショック!!」

 

 効果名を告げると、クルヌギアスが従えていた黒い龍が、怒号とも取れる鋭い鳴き声を上げた。それはただ鼓膜に響くだけでなく、精神的なダメージもあるようで、《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》は身体を支えるように剣を地面に刺し、色を失った。

 

竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー

ATK10800→2800

 

 これで障害はほぼ消えた。

 あとは、もう一度仲間を呼ぶだけだ。

 

「ハルモニアの効果発動! エクストラデッキのクーリアを手札に加える!」

「手札に加えたところで、君はもう通常召喚とペンデュラム召喚を終えている! 無駄な事を――」

「《魂のペンデュラム》の更なる効果発動! このカードのカウンターを3つ取り除き、このターン、俺はもう1度ペンデュラム召喚を行う権利を得る!」

「!!」

 

魂のペンデュラム

カウンター:3→0

 

 ハルモニアの五線譜が煌めき、それを見て俺は両腕を天に広げた。

 

「天に宿る麗しの天使たちよ、希望をもたらす清らかな旋律を今一度高らかに奏でよ!」

 

 召喚口上を告げると、ペンデュラムゾーンにいるキューティアとエンジェリアが、俺を見て力強く頷いてくれた。そしてフィールドにいるクルヌギアスは、俺の方を振り向いて、にやりと笑う。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ、《ソドレミコード・グレーシア》、《ラドレミコード・エンジェリア》、《ドドレミコード・クーリア》!!」

 

 空に浮かぶ五線譜に穴が開き、3つの光が降り注ぐ。

 醜い龍へと姿を変えられていた音階の天使たちは、その姿のままに凛とした顔で前を見据えていた。

 

ソドレミコード・グレーシア

ATK2100 レベル5

 

ラドレミコード・エンジェリア

ATK2300 レベル6

 

ドドレミコード・クーリア

ATK2700 レベル8

 

 そこで《ソウル・レヴィ》のカードが再び輝き、俺はデッキから《ドレミコード・ハルモニア》《レドレミコード・ドリーミア》《和睦の使者》を墓地へ送る。

 その直後、デュエルディスクが警告音を鳴らした。そして、ディスプレイには『CAUTION! DECK:7』の文字。デッキの枚数が残り少ないから気をつけろ、という事らしい。とはいえ、もうドローする機会はない。

 

「ペンデュラム召喚成功により、《魂のペンデュラム》にカウンターが置かれる。そしてキューティアの効果と合わせて攻撃力がアップする!」

 

魂のペンデュラム

カウンター∶0→1

 

ソドレミコード・グレーシア

ATK2100→2500→2800

 

ラドレミコード・エンジェリア

ATK2300→2600→2900

 

ドドレミコード・クーリア

ATK2700→2800→3100

 

「バトル! まずはエンジェリアで《竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー》を攻撃! エンジェリック・マーチ!!」

 

 エンジェリアが自信満々に笑いタクトを振る。オレンジに輝く光球を生み出すと、それをためらいなく発射した。こちらを終始苦しめた最強の剣士は剣で防御しようとしたが、やがて打ち砕かれる。

 

「ぐっ……!」

 

バスター・ブレイダー LP4000→3900

 

 グレーシアとエンジェリアがフィールドにいて、ペンデュラムゾーンにも奇数と偶数のスケールが揃っている。だから「ドレミコード」ペンデュラムモンスターで攻撃すれば妨害はされない。クルヌギアスで攻撃してもいいが、念には念だ。よって攻撃はさせられないが、バスター・ブレイダーの布陣を崩してくれた恩は大きい。今度菓子折りでも渡したいところだ。

 

「グレーシアでダイレクトアタック! グレースフル・ノクターン!!」

 

 続いてグレーシアがタクトを振り、今度は四分音符を纏った群青色のエネルギー弾を放つ。鎧で全身を覆っていてもデュエルの衝撃は別なのか、バスター・ブレイダーはのけぞった。

 

「ぐおおおおお……っ!?」

 

バスター・ブレイダー LP3900→1100

 

「これで終わりだ! クーリアでダイレクトアタック! クーリー・レクイエム!!」

 

 最後に残ったのはドレミコードの誇るリーダー。とどめを託したのは、最初のターンに姿を竜に変えさせられて気分を害した事と、融合素材に利用された事へのお返しも込めていた。

 クーリアが頷いてタクトを振り、穏やかな緑色の奔流をバスター・ブレイダーへと撃った。

 

「ぐあああああああ!!」

 

バスター・ブレイダー LP1100→0

 

 直撃したエネルギーをもろに食らい、バスター・ブレイダーは後ろへと吹き飛ばされる。デュエルの決着がついた事でデュエルアンカーの効力も切れたのか、俺のデュエルディスクもカードを回収すると自動で収納された。

 そして姿を消す直前、クルヌギアスは俺を見て頷いた。

 

「……なるほど」

 

 バスター・ブレイダーは、何かに納得したのかそう呟きながら起き上がる。

 

「君の意思は、固いようだな」

「……ああ」

「いいのだな? たとえ、彼女がこの先苦しむ事になろうとも」

 

 言われて俺は、玄関先にいる狩猟者を振り返る。エリーティアたちに支えられている彼女は、先ほどよりも気分は落ち着いてたようで、俺とバスター・ブレイダーの事を見ていた。少し、不安そうに。

 俺はその顔を見てから、バスター・ブレイダーに向き直る。

 

「まだ、彼女は苦しむと決まったわけじゃない。俺は、できる限りの事をする。あの人が苦しまないように」

 

 そう告げると、バスター・ブレイダーの後ろに光のゲートが出現する。 

 

「……後悔は先に立たんぞ」

 

 それだけ言って、バスター・ブレイダーは光のゲートに身を滑り込ませ、姿を消した。

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