ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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前話のあとがきにも記載した通り、
今回から始まるデュエルではオリジナルカードが登場いたします。
予めご了承ください。


第36話:裁定者

 フードを外した男は、俺に向かって気色悪い笑みを浮かべると、左手をくいっと捻る。

 すると、そばで横たわっていたミューゼシアの身体が勝手に浮かび上がり、その両腕を広げて近くに聳える白い十字架の前に移動する。そして、十字架から伸びた白い鎖が、ミューゼシアの両手首、脚、胴、さらには首を固定して磔にした。他のドレミコードたちがされているのと、同じように。

 ミューゼシアはうめき声のひとつも出さず、何の抵抗もせず、されるがままだ。やはり彼女も意識を失っているらしい。

 

「大丈夫、殺してはいないよ。君と話をするうえで、彼女たちはとても大切だからね」

 

 それを見届けてから、男は俺に話しかけてきた。声は穏やかな感じだが、不快感が凄まじい。鼻持ちならない話し方だ。

 

「さて、と。会えて嬉しいよ、バトレアス」

「……」

「っと、そうだ。まだ名乗っていなかった」

 

 わざとらしく告げて、その男は胸に手を当てて腰を折り、挨拶をする。

 

「初めまして。僕の名前はヴァーディクト、どうぞよろしく」

「ヴァーディクト……」

 

 慇懃無礼な自己紹介を聞き、ブライターの話を思い出す。彼が戦って負けた、俺と同じオーラがすると言っていたデュエリスト。そいつと同じ名前のこの男は、多分赤の他人ではないだろう。

 

「おや、その反応……僕の名前を聞いた事があるのかな?」

「これは何の真似だ?」

 

 興味を示してきたヴァーディクトなど二の次に、俺はその後ろにある9つの十字架に視線を送る。そこに磔にされたドレミコードの皆は、俺の声を聞いても何の反応も示さない。

 

「言っただろう、君と話をするためさ。そのために、まずはちょっと話の場を整えようと思ってね」

「どうやってここへ来た?」

「彼女……銀髪の子だね。あの子に()()()、連れてきてもらったのさ」

 

 ヴァーディクトが示したのはエンジェリア。着ている服は、街を一緒に歩いていた時と同じだ。多分、あの街の爆発ではぐれてしまった際に、こいつに捕まってしまったのだろう。そして今の状況から、決して物腰丁寧に頼み込んだのではないのが明らかだ。こんな真似をする時点で、何ひとつ信用できない。

 

「俺とお前が何の話をする?」

「改めて、手を組みたいと思ってね。今度は直接、話をしようかなあって」

「歪な世を正し、秩序を成すために……か?」

 

 手を組みたい理由を、最早聞き飽きたそれを先んじて尋ねてみると、ヴァーディクトは笑った。

 

「その通りだ。これまでは、さほど僕も大した見返りや力を示せなかったから、聞き入れてもらうのは難しかった」

「……」

「だがこの状況、僕の力も多少は分かったはずだ。どうだろう、改めて僕と手を組まないかい?」

「断る。皆をこんな目に遭わせる奴の言う事を聞くとでも思ってるのか?」

 

 元からこいつと手を組むつもりなど微塵もない。ましてや、俺の大切な仲間にこんな仕打ちをした奴には、猫の手さえも貸したくはなかった。

 すると、一瞬だけヴァーディクトの表情が完全な「無」になる。

 けれどすぐに、にこりと笑う。

 

「……バトレアス。君は転生した人間だろう?」

 

 そしてあっけなく、精霊界でそれを知っている存在は限られているであろう事実を、ヴァーディクトは言い当てた。

 しかし、それについて驚きはしない。

 

「それなら、僕の狙いも分かるはずだ」

「お前が転生した存在だからか?」

 

 俺と同じで、このヴァーディクトも転生した人間。「S-Force(セキュリティ・フォース)-ブリッジヘッド」でテータに見せてもらった画像と同じで、同じ「人類二種」の反応がある人間だ。

 それを告げると、ヴァーディクトがきょとんとする。その事実を俺が知らないと思っていたのだろう。何であれ、言うべき事は変わらない。

 

「同じ転生した存在だからお前についていく、なんて事は無い。そしてお前の目的は抽象的過ぎて、本当は何を狙っているのか全く持って理解もできない」

「……そうか、そこから話さなきゃダメか」

 

 首を小さく横に振り、顎に指をやるヴァーディクト。

 そして少しだけ目を閉じてから、もう一度俺を見ると。

 

「僕はね、この世界を――精霊界をやり直したいんだよ」

「やり直す?」

「ありていに言えば、一度白紙に戻して、新しく作り直す」

 

 白紙に戻す。

 要するに、今の精霊界を全て滅ぼすという事だ。

 

「……それが、お前が言う『歪な世を正して秩序を成す』事にどう繋がる?」

「じゃあ、僕たちが元居た世界の話を少ししよう」

 

 そう言いながら、ヴァーディクトはゆっくりと、十字架の周りを歩き始めた。それに合わせて俺も歩く、なんて真似はしない。

 

「君も知っているだろうけれど、僕らがいた世界は確実に悪化の一途をたどっていたね。自然破壊、枯渇する資源、紛争、貧困、差別、暗い未来、その他諸々……。明るい話題もなくはなかったし、多少改善の目処は立ってはいたが、所詮は亀の歩み。欠陥ばかりでいずれは死ぬ世界だった」

「……」

「それは分かっていても、僕は単なる一般人に過ぎなかった。だから、そんな世界規模の大きな問題に対して力になんてなれやしなかった」

 

 十字架のひとつに、ヴァーディクトが手を添える。それは奇しくも、クーリアが磔にされているものだ。

 

「けれど僕はある日、事故に遭い、死んで、どういうわけかこの精霊界に転生した。これはチャンスだと思ったよ」

「チャンス?」

「ああ。きっと神様は、この世界で僕にやり直しを求めているんだとね」

 

 眉を顰める。ずいぶんな思い込みだ。

 けれど俺の事などお構いなしに、ヴァーディクトはさらに歩きながら続けた。

 

「色々と精霊界を見て回ったけれど、やはりどこの世界も同じだ。抱えている問題は、僕らが前に生きていた世界とほとんど変わらない。資源には限りがあるし、争いは激しくて、差別も貧困も当たり前にある。違うのは、デュエルモンスターが現実にいて、前の世界で非科学的な事象も存在する事だけ」

「……」

「君も、前の世界でデュエルモンスターズに触れていたならわかるはずさ。そんな救いようのない世界も存在するって」

 

 言わんとする事は分かる。

 精霊界――つまりデュエルモンスターズにも、設定があまりに悲惨すぎるカードやテーマは数多くある。《竜角の狩猟者》だけでなく、ひとりの科学者が私利私欲で神になるために星ひとつを巻き込んだり、ゾンビが溢れて秩序が崩壊した世界だったり、百鬼夜行が跳梁跋扈する世界だったり、つらく悲しいストーリーには事欠かない。

 そしてここは、そのデュエルモンスターの精霊界。俺が見ていないだけで、並行して存在する世界ではそんな事が実際に起きているのだろう。

 

「だからさ」

 

 そしてヴァーディクトは、また俺と向かい合う位置につくと、脚を止めて。

 

「一度全部をゼロにして、もう一度新しい世界を作り直す。それが、この精霊界が抱えている問題全てを解決できる一番の手段だと気付いた」

 

 ヴァーディクトは両腕を広げた。

 

「僕には、それができる力がある。その力を授かった。であれば、それを十分に活かすのが筋ってものだと思わないかい?」

「……お前に、何があった?」

 

 ヴァーディクトの話を聞いて、どうするかはもう決めている。

 それでもひとつ気になるのは、それだけの力を有している理由だ。同じ転生者である俺は勿論、ラベンダーやテータには世界を作り直すほどの力はないと思う。ラベンダーは唯一無二のカードを有している点で異なるが、ヴァーディクトはそれとはまた違うように思える。

 であれば、その力を宿すきっかけというものがあるはずだ。

 その疑問が口を突いて出ると、ヴァーディクトは悲し気な笑顔を浮かべた。

 

「……僕にも、大切な人がいたんだ。この世界でね」

 

* * *

 

 目が醒めたら、そこはどこか滅びた街のようだった。

 いつの間にか背を預けていたのも建物の残骸で、見渡す限り、傷ひとつない建物は皆無。もっと言えば、僕が今まで暮らしていた世界で見るような、近代的な建物や家も見当たらない。どれもこれも、異国情緒あふれる、異世界にあるようなものばかりだ。

 

――怪我人だ

――まぁ……先の戦闘の生き残りでしょうか?

 

 目の前の状況が飲み込めない僕に話しかけてきたのは、修道服を着た女性たちだ。その腕には、デュエルモンスターズのカードとそれを収めている機械のようなものを嵌めている。

 夢か幻か分からないけれど、ここはデュエルモンスターズの世界なのかなと気づいた。僕も遊んでいたからそれは分かる。

 

 取り敢えず、他に頼れる誰かもいなさそうだったから、僕は自分の事を覚えている限り、知っている限りその女性たちに全て話した。全部を信じてもらえるかは疑問だったけれど、彼女たちは僕の言葉を信じてくれた。そのうえで、行く当てがない僕に「一緒に来ませんか」と告げて、僕はそれに頷き、一緒に行動する事にした。

 聞けばその女性たちは、仲間と共に世界の至るところを歩き、戦争や貧困、飢餓などで恵まれない人々に救いの手を差し伸べる活動をしているのだという。

 この世界でも、そのような暗い問題はやはり存在するのかと、話を聞いて悲しい気持ちになった。そして実際に、その目でその実態を目の当たりにした事で余計つらくなった。

 テレビの向こうで、海を越えたはるか先で起きていたような惨状が、目の前で起きていた。

 

――人の命に貴賤はないとはよく言いますし、それは私も理解していますが……人の心が均一ではないからこそ、このような事は起こってしまうのです

 

 そんな話をしてくれたのは、度重なる理不尽に僕が潰れかけた日の夜の事だ。

 長い髪の彼女は、身寄りがない僕の事を特に気にかけてくれていた。

 

――誰もかれもが同じ性格ではない。だからこそ、怒りや妬みを抱きやすく、他人と自分を比べて、やがて他者を攻撃するようになる

――今のこの世界の状況とは、そう言った個人が点在して出来上がったものです

 

 悔しくなるほどの現実だ。言っている事が理解できてしまう。みんなちがってみんないいとは言うが、だからこそ、今こうしてこの世界は負の感情に支配されている。

 

――そうした負の面を持つ一方、希望に満ちた世界もまたそうした人々が集まって完成するのです

――この世界の光と影、二つを知る私たちは、尚の事皆の幸せや希望、発展を願わずにはいられない

 

 星空を見上げながら女性は語る。僕が出会う前からそうしてきたというのだから、きっと僕なんかには想像できないほどの苦しみや悲しみをその中に持っているのだろう。

 

――私は……私たちは、戦いに頼らず平和を実現したい。皆が手を取り合える世界を作りたい

 

 その理想には、一本芯の通っているような強さがあったのは覚えている。

 

――理想論だと、偽善だと、夢を見ていると何度も言われました。それでもこれは、あきらめたくない。いつか、人々が幸せでいられる世界は訪れると、私は願っているんです

――その願いを胸に、今の私たちはいる

 

 そう言って女性は、僕の事を見てくれた。

 

――悪い面を全て真正面から受けるのはとても苦しい事です。だから、不安になったら泣いてもいい、目を背けてもいい、蹲って立ち止まっても構わない。私たちも最初はそうだったから

――だからいつか、貴方も私たちのように世界を救える。今日はその第一歩ですよ

 

 女性がそう言ってくれた事に心が緩んで、僕はその日初めて、その胸の中で泣いた。

 

 その女性の言葉を胸に、僕もまた皆と一緒に世界を渡り、様々な苦しみや痛みを目にしてきた。

 そして、一緒に旅をする女性たちとも親睦を深め、親しくなれた事で、少しずつでも気持ちは前向きになっていた。それでも、あの夜その人と話した事は忘れていないし、どうすれば世界はよりよくできるだろうかと考える夜も多かった。

 そんな折、「特別な力」が僕に宿った。

 

――それは、平和を願う貴方に神様が応えてくれたのかもしれませんね

 

 その力を目にした女性は、微笑んでくれた。

 この世界は、そんな不可思議な事象も起こってしまう世界。それを僕は既に理解していた。だからこそ、この力があれば世界を平和にできるかもしれない、そう思えた。

 だけど。

 

――逃げて……早く……!

 

 そんな希望は、踏みつぶされた。

 紛争が起きていた地域で、救護活動をしていた時。敵国の攻撃で建物が崩れ、民間人は勿論、大切な僕の仲間も犠牲になった。

 それでもせめて、彼女だけは助けたかった。瓦礫の下敷きになった彼女を、どうにか引っ張り出そうとした。

 それでも、彼女は助けを拒んだ。

 

――貴方なら、この世界を変えられる! だから……行って!!

 

 その言葉に弾かれるように、僕は街を後にした。

 そして、遠くまで逃げたところで、その街が大爆発を起こしたのが見えてしまった。

 原因は……何でもいい。

 僕の大切な仲間は、全員死んでしまったと理解するのには十分だ。

 

 膝をつき、乾いた土に爪を立てて泣き叫ぶ。

 もう限界だった。

 平和なんて、希望なんて、願っているだけでは叶わない。

 行動を起こさないと。

 神様から受け取った、この力で。

 

* * *

 

「それから、僕の中の力はどんどん強くなった。まるで、その時感じた沢山の感情が、そのまま力に変わったみたいに」

「……」

「そして、この力を使って、精霊界が抱えている問題を全部リセットする。そして僕が、新しい世界を作り上げる。紛争も、差別も、貧困もない、綺麗な世界だ」

「……なるほど」

 

 ヴァーディクトは、相応につらい経験をして、その結果が今なのだろう。

 転生したのは同じだが、俺はすぐにこのドレミ界に引き取られた。いきなりつらい現実を目の当たりにさせられたヴァーディクトの方が、よりつらい環境に身を置かれた点についてだけは気の毒に思う。

 

「さて、改めて聞くよ。バトレアス、君は僕と一緒に新しい世界を作るつもりはないかい?」

「……お前の言いたい事はよく分かった」

「そうか! それなら――」

「だが、お前のやる事に納得はできない」

 

 けれど、俺はヴァーディクトのやる事は認められなかった。協力なんてもってのほかだ。

 

「平和を願うお前の気持ちは分かる。世界が抱えている色々な問題を解決したいってのも、理解できる。俺だって、その手の問題は無視したくないと思っていた」

「だったら――」

「だけどお前の言う『リセット』は、そんな世界でどうにか手に届く幸せを掴んで生きている人たちを、今を懸命に生きる無数の人をも踏みにじる。お前の大切な人の理念とは矛盾しているよ」

 

 ヴァーディクトが凍り付いた。

 

「お前はその目的のために、既に多くの命を傷つけ、汚して、憎しみを振り撒いてる。お前やその大切な人が嫌っていた事を、お前自身がそのままやっているんだ」

 

 天老、六花、アロマ、ヌーベルズ。俺が知っている限りでも、それだけの人たちが傷つけられた。さらにテータの話が確かなら、それ以上の人々が、様々な世界の人々が、ヴァーディクトやその仲間の手で傷つけられている。精霊界全体を巻き込んで、負の感情を助長させているのだ。

 それこそ、デュエルモンスターの悲惨なストーリーと何も変わらない。

 しかしそれを聞いても、ヴァーディクトは薄ら寒いほどの爽やかな笑顔を向けてくる。

 

「理想を目指すのに、綺麗事だけでは達成できやしないよ。分かるだろう? 僕等がいた世界の過去に起きた戦争だって、多くの犠牲者が出た。そのうえで今の平和が成り立っているんだ」

「……」

「だからね、僕や僕の()()のやっている事は、必要な事なんだよ。世界をよりよくするためのね」

「手下?」

 

 言い方に引っかかりを抱くと、ヴァーディクトはコートのポケットに手を突っ込み、中身を俺に向けてばら撒いた。

 それは、遊戯王のカードだ。それも、最初期に刷られたデザインの通常モンスターばかり。それらはやがて、燃え尽きた灰のように崩れ去る。

 

「僕の目的を告げても、誰も理解しようとしなかった。協力しようとしなかった。けど僕の目標はひとりで成し得るのは難しい」

「……」

「だから、僕の力を使ったのさ。僕の意思をカードに宿し、手下として使って」

 

 「À Table(ア・ターブル)」での侵略者とのデュエルの後、その場には《エンゼル・イヤーズ》のカードが落ちていた。あれも、同じやり方で手下に仕立て上げられたものだったわけだ。

 つまり、黒い鎧の侵略者の正体とは、バニラモンスターを媒体に、ヴァーディクトの力と意思が宿ったもの。だから、テータたちも侵略者から人類二種の反応を感知し、その強さがヴァーディクト本人より弱かったのか。

 

「僕は君の力を買っているんだ。僕の手下を二度も退けたその力、このまま放っておくのは惜しい」

「……」

「いや、それどころか、かの有名なバスター・ブレイダーさえ退けたんだって?」

 

 頭の中で火花が弾けるような感覚。

 そして、気付く。

 

「……あいつも、お前が差し向けたのか」

「その通り。彼と戦っていた《竜角の狩猟者》をここに誘導し、バスター・ブレイダーも導いてやったのさ。それで、ここで戦闘すれば君たちも巻き込まれると思ったけど……」

 

 《竜角の狩猟者》……ディアナは、悲しい境遇に置かれ、大切なものを忘れかけるほどに、村の人達を助けたい一心で、命を賭して戦っていた。そんな彼女の叫びも、屈託のない笑顔も、全部覚えている。

 バスター・ブレイダーも、俺たちとは考えこそ違ったが、それでも悪竜を狩って人々を守るという信念の下で戦っていた。その姿勢は、他人には簡単にできないそれは、尊敬せざるを得ない。

 2人とも、それぞれが守りたいものを守るため、助けるために戦っていた。歪んだ思想のためにそんな2人を利用し、世界を破滅に追いやろうとするヴァーディクトなんかとは比べものにならない。

 

「……どうして、このドレミ界の場所が分かった」

「君という転生者が、目印になった」

 

 ヴァーディクトが仕組んだ事と分かったなら、何故ドレミ界の場所を察知できたのかという疑問がまたできる。

 けれどヴァーディクトは、得意げに俺を指差してきた。

 

「どうやら、僕の手下が侵入した後でこの場所はさらに深く隠されたみたいだけど、転生者の持っているエネルギー……輝きが教えてくれたのさ」

「……」

「まあ、バスター・ブレイダーの事件の後で、それすら分からないほどこの世界はさらに厳重に隠されたみたいだね」

 

 ミューゼシアは、空間の隠蔽と防御の結界を組み直したと言っていた。それがどういう感じなのかはいまいち想像できなかったが、ヴァーディクトの話でそれも理解できた。

 そのうえで、俺という転生者の存在が、ヴァーディクトに場所を教えてしまった事にも気付かされた。間接的にドレミ界に危機を招いてしまっていたのだ。

 無意識に拳を握る。

 

「さあ、どうだいバトレアス。同じ転生者同士、力を合わせて世界をやり直さないか? その暁には、君にも世界を意のままに操れる力を与えようじゃないか」

「……」

「そうだ!」

 

 何を思いついたのか、ヴァーディクトは磔にされているドレミコードたちを見上げると。

 

「僕の力で、彼女たちが身も心も君に尽くして愛するようにしてあげようじゃないか! どうだ、男としてこれ以上とない夢、幸せで――」

 

 

 

「ブチ殺すぞ、ゴミクズ」

 

 

 

 我ながら、理性というフィルターを通さずに、よくこれだけの言葉が口から出たと思う。

 けれど、それぐらいには怒りを抑え込むのがもう限界だった。

 

「世界を渡り歩いて、神様から力を貰って、仲間を喪って、学習したのはそんな下らない固定概念か?」

「何を言って――」

「俺が皆にそんな事を望んでいると、本当に思っていると? とんだ思い違いだ」

 

 経験した事に嘘はないのだろう。

 仲間を喪って、限界を感じたのも確かなのだろう。

 だがヴァーディクトは、その大切な仲間の遺志継がずに捨て、好き放題に世界を巻き込んで、トンチキな思い込みまでしている。その事実に、虫唾が走った。

 この世界でドレミコードの皆は、俺を引き取ってくれた恩人であり、家族のような存在であり、とても大切な仲間でもある。前世においても、愛用するデュエルモンスターズの仲間だ。侍らせて好き放題にしたいなんて思った事はない。

 そんな個人の感情も推し量れずに、夢だ幸せだとほざいて、俺がそうしたいと望んでいるように決めつけているこのヴァーディクトは、的外れもいいところだ。

 

「それとお前は、口で御大層な事をどれだけ言っても、その実問題を解決しようなんてそこまで真剣に考えていない」

 

 怒りに流されて、言葉が脳から溢れてくる。

 だが、ヴァーディクトと話すのはこれが最初で最後になるだろう。だから全部言わせてもらう。

 

「それは違う。聞いていなかったのか、僕は――」

「天老――《F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)》に勝ったのに仲間にしなかったのはどうしてだ?」

「……」

「あの人は強かったよ。なのに、お前は目的を実現するのに仲間が必要だとか言ったくせに、弱くて老いぼれだからと決めつけて止めたんだろ? こんな事言うのもなんだが、あの人の力があれば、お前の目的にも多少は近づけたかもしれないぞ」

 

 実際にデュエルをしたから分かる。天老は強かった。負けたら命を取られるデュエルで、敗北間際まで追い込まれたのだから。

 だがヴァーディクトは、無遠慮に戦いを挑み、自分が快勝したから天老を勝手に弱いと決めつけて力を見誤り、自分から言い出した事をも撤回した。

 真っ当な性格の天老が、精霊界の破滅に従うとは考えにくい。だが、結局ヴァーディクトはやりたい放題をして建設的な事を何一つしなかったのは事実だ。

 

「そして、大切な仲間を喪ってなお好き勝手に人を傷つけて、前世からどうにかしたいと思っていた問題を、解決するどころか自分で新しく作ってる。しかも、それを正当化してる。そんな自分勝手な奴が新しく作る世界なんて、今以上の地獄だ」

 

 今ある問題をひとつひとつ解決しようとせず、問題を無かった事にするのは、現実逃避のひとつだ。

 そして、そんな自分本位で他人を傷つけ、無関係の人や世界を滅ぼそうとする奴が作る世界には、それこそ希望なんてありはしない。

 それでもヴァーディクトは、笑いを引っ込めなかった。

 

「やってみなければ分からないだろう?」

「分かるさ」

「何を根拠に?」

「今この状況だよ」

 

 十字架に磔にされたドレミコードの皆を見上げる。

 

「お前は本当に、世界を変える力とやらを持っているのかもしれない。その力を平和的に使って見本を見せれば、考える余地はまだあった」

「……」

「だがお前は、俺たちだけじゃなく、多くの人と世界を襲い、傷つけて、その力と痛みで言い聞かせようとした。中途半端に恐怖で従わせようとするから、自分が作った都合のいい奴しかついてこないんだよ」

 

 出会い頭に攻撃し、人様の世界に土足で無礼に踏み込んだ黒い鎧の男は、ヴァーディクトと同じ存在だった。他人を傷つける事をよしとし、それを最良だと考えている時点で、まともではない。

 言葉を告げられないヴァーディクトに、言い放つ。

 

「つまるところ、お前はやることなす事考える事、全部がちゃらんぽらんだ。そんな奴が、今より良い世界なんて作れるわけがない」

 

 ヴァーディクトから笑顔が消えた。

 そして、息を吐いて。

 

「……平行線なら、方法はひとつだけだね」

 

 左腕を構えた。そこに現れたのは、剣を模した黒いデュエルディスク。

 この精霊界において、白黒はっきり決着をつける唯一の方法はデュエルしかなかった。同じ転生者だが、それはもう嫌と言うほど理解している。

 

「僕が勝ったら……徹底的に君を消す。生かしておけば、どうせ僕の邪魔をするだろうからね。二度とそんな真似はさせない」

 

 これがヴァーディクトの本性らしい。やはり、最初から聞き入れないでいたのは大正解だ。

 

「俺が勝ったら?」

「考えるだけ無駄だよ。君に僕は倒せない」

 

 なるほど、相応の自信があるらしい。

 とはいえ、神様に認められたとかいう力があるのだ。ただのデュエルにならない事は明らかだし、もしかしたらラベンダーのような独自のカードを持っているかもしれない。

 それでも、ここで退くわけにはいかなかった。ヴァーディクトの思想は極めて危険だし、野放しにはできない。

 

「ここで僕は君を倒し、ここを新しい世界の拠点にしよう。そして彼女たちは、力を使って世界を滅ぼすもよし、僕のモノにするもよし。夢が広がるね」

「御託はいい、やるならさっさと始めろ」

「ああ、これが僕が新しい世界を作る第一歩だ」

 

 こちらもデュエルディスクを展開する。

 ミューゼシアに直してもらって以来初めてこのディスクでデュエルをするが、盤面のデザインは変わらず五線譜をイメージしたものだ。

 ただ、さっきブリッジヘッドからこのドレミ界に転送されたのは、きっとミューゼシアが何か細工をした事によるものだろう。それについて悪くは思っていないが、きっとミューゼシアもいずれこんな事が起きると予期していたのだ。

 そのミューゼシアも、今や磔にされている。そんな不埒な真似を働き、今もなお飄々と笑うヴァーディクトに怒りと気色悪さを感じながらも、口を開いた。

 

「「デュエル!」」

 

バトレアス LP4000

VS

ヴァーディクト LP4000

 

 今までもほとんどがそうだったが、このデュエルは特に負けられない。そう強く自分に言い聞かせつつ、最初の手札をドローする。

 その初手は、決して悪いとは言えなかったが、気になるところもあった。

 だが、それよりもまず先攻のヴァーディクトの動きを見極めなければ。

 

「先攻は僕。僕はフィールド魔法《聖騎天の神域(セイクリッター・サンクチュアリ)》を発動!」

 

 いきなり発動するフィールド魔法。白い石造りの街並みが周りを囲み、ヴァーディクトの背後には柱のような銀色のモニュメントが出現し、空は淡いピンク色から不気味なほどの青に染まった。

 そして、ドレミコードの皆が磔にされている十字架は、モニュメントのさらに後ろに立ったままだ。フィールドが変わっても目につくようにしているのは、仕様なのかわざとなのか。

 同時に、妙な感覚も抱く。それは、以前ラベンダーと戦った時に感じたようなものだ。

 

「手札より《聖騎天(セイクリッター)アリオン》を召喚!」

 

 続いてヴァーディクトが呼び出したのは、白い兜を頭につけた白銀の馬。フィールドに降り立つと嘶いた。

 

聖騎天アリオン

ATK1000 レベル4

 

「召喚したアリオンの効果を発動。デッキから自身以外の『セイクリッター』を手札に加える事ができる。僕が選ぶのは《聖騎天ネレウス》。そしてネレウスは、僕の場に《聖騎天の神域》が存在する場合、手札から特殊召喚できる!」

 

 さらに現れたのは、青い衣を着て三叉の槍を持つ、長い白髪の男。背中からは細い翼を生やしている。

 

聖騎天ネレウス

ATK1000 レベル4

 

 「セイクリッター」なんてテーマは、見た事も聞いた事もない。これまでのデュエルでも俺が効果を把握しきれていないカードはかなり見てきたが、ヴァーディクトの使うカードはまた違う。

 さっきの感覚や、ヴァーディクトの言った「力」も考えると、恐らくは独自に作り出したカードだ。それもラベンダーの【アロマ】みたく、特定のテーマに属する数枚ではなく、ヴァーディクトだけが持つ新しいデッキ。かなりヤバそうだ。

 

「ネレウスの効果発動! 1ターンに1度、ネレウスを含む手札・フィールドのモンスターを素材に、『セイクリッター』の融合召喚を行う!」

 

 ヴァーディクトが腕を広げると、その背に立つモニュメントの上部に融合の渦が出現し、ネレウスとアリオンが飲み込まれた。

 

「融合召喚! 出でよ、運命の糸を紡ぐ慈愛の天使!《聖騎天クロト》!!」

 

 現れたのは、赤い衣を着る金髪の女神。周囲には、糸のように細い金属の輪がいくつも浮かんでいる。

 

聖騎天クロト

ATK2400 レベル8

 

「この瞬間、《聖騎天の神域》の効果発動。僕がエクストラデッキから『セイクリッター』を特殊召喚した場合、墓地のレベル4以下の『セイクリッター』1体を守備表示で特殊召喚できる。甦れ、ネレウス!」

 

 ヴァーディクトが手をかざした先に魔法陣が広がり、中から青い衣の天使が舞い上がった。

 

聖騎天ネレウス

DEF1000 レベル4

 

「さらに、クロトの効果発動! 1ターンに1度、墓地の『セイクリッター』1体を特殊召喚できる! 再びアリオンを特殊召喚!」

 

 すると、フィールドに白い十字架が現れ、それはさっき墓地へ送られたアリオンへと姿を変える。白銀の馬が再び嘶いた。

 

聖騎天アリオン

ATK1000 レベル4

 

 そして、姿を変える直前の十字架は、ドレミコードの皆を磔にしているそれと非常によく似ていた。という事は、あれもデュエルモンスターの力を利用したものなのか。

 

「レベル4のネレウスに、レベル4のアリオンをチューニング!」

 

 アリオンが再び嘶き、4つの光の環へ姿を変える。その縦に並んだ環を、ネレウスが翼をはためかせながらくぐった。

 

「シンクロ召喚! 運命の糸を見定める、厳粛なる天使!《聖騎天ラケシス》!!」

 

 迸る光の中から姿を見せたのは、緑の衣を纏う長い銀髪の女神。レイピアのように細長い剣を右手に持っていた。

 

聖騎天ラケシス

ATK2400 レベル8

 

「神域の効果で特殊召喚したネレウスは、フィールドを離れた場合にデッキの一番下に戻る。そして僕はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 1ターン目から、最低限のカードだけでシンクロ召喚と融合召喚を仕掛けてきた。ヴァーディクト独自のカードだからそういう事も容易くできるのだろう。何とも戦いにくい相手だ。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 そしてこちらも、ドローしたカードを見てみる。

 展開自体に問題はないが、やはり気になる事があった。しかし進行自体に問題はないため、カードをプレイする。

 

「魔法カード《ドレミコード・エレガンス》発動。その2つ目の効果で、手札の《シドレミコード・ビューティア》をエクストラデッキに加える。そしてデッキより、スケール1の《ドドレミコード・クーリア》と、スケール8の《ドドレミコード・キューティア》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「やっぱり【ドレミコード】か」

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能になる!」

 

 手札にあったビューティアのカードをエクストラデッキに加え、デッキから直接ペンデュラムゾーンに置くのは、デュエルでも現実でも身近な存在となった2人のドレミコード。けれど、デッキから取り出したカードを見て、違和感は強まった。

 だが、盤面に「PENDULUM」の文字が現れたのを見て、空に手を突き上げる。

 

「ペンデュラム召喚! エクストラデッキより《シドレミコード・ビューティア》、手札より《ラドレミコード・エンジェリア》!」

 

 そしてフィールドに現れる、2体のドレミコード。2人ともに笑顔を浮かべていて、目の前の敵に対しての恐れや怒りと言った感情は見られない。

 

シドレミコード・ビューティア

ATK2500 レベル7

 

ラドレミコード・エンジェリア

DEF1400 レベル6

 

「どうした? せっかく可愛いモンスターをペンデュラム召喚したのに、そんなしょぼくれた顔をして」

 

 ヴァーディクトの質問は無視する。だが、思うところがあるのは確かだ。

 今フィールドに出した「ドレミコード」のカードだが、どれもイラストが元に戻ってしまっている。

 俺がドレミ界に来てからこっち、一緒に時間を過ごしてきたドレミコードたちのカードのイラストは、表情が変化していた。けれど今、それはドレミ界に来る前……つまり本来のイラストに戻っている。

 多分、今は本人たちがヴァーディクトによって捕らえられてしまっているからだろう。しかし、そればかりに気を取られてデュエルが疎かになってはならない。

 

「バトルだ!」

「クロトの効果により、僕の場に神域が存在する限り、君はクロト以外の『セイクリッター』を攻撃及び効果の対象にできない」

「なら、ビューティアでクロトを攻撃! そして同時に、ビューティアの効果発動! 相手フィールドのモンスター1体を対象とし、このターンにそのモンスターがフィールドを離れた場合は除外させる!」

 

 クロトを指さすと、ビューティアがタクトを振り、その先端から黒い連符が伸びる。それはクロトを雁字搦めに縛り上げた。

 

「ビューティフル・アラベスク!!」

 

 今度はビィーティア自身に攻撃させる。さらにタクトを振ると、今度は音符を纏った波動がタクトから放たれて、クロトの身体を震わせる。

 

「この瞬間、ビューティアの効果を発動! このカードが、俺のペンデュラムゾーンの一番低いスケール×300以上の攻撃力を持つ相手モンスターとバトルする時、その相手モンスターを破壊する!」

 

 本当ならダメージを少しでも通したいところだが、この効果は強制であるため仕方がない。今のペンデュラムゾーンで一番低いスケールはクーリアの1。よって問題なく破壊できる。

 そう思ったが。

 

「残念だが、ラケシスの効果によって、僕の場に神域が存在する限り他の『セイクリッター』は戦闘及び効果では破壊されない!」

「チッ……!」

 

 クロトとラケシスは互いを補い合う効果を持っていた。これではビューティアの効果も活かされない。それでもバトルは成立するため、破壊できなくともダメージを少しは通させてもらう。

 

「そして神域の効果で、僕の『セイクリッター』のバトルで受ける僕へのダメージは0になる!」

 

ヴァーディクト LP4000

 

 しかしながら、ダメージさえも通せなかった。100ポイントも削れないのは中々厄介だ。

 

「メインフェイズ2で、エンジェリアの効果発動! スケール2のビューティアをリリースし、デッキからスケール4の《ソドレミコード・グレーシア》を守備表示で特殊召喚!」

 

 ビューティアは、糸目で微笑んだまま姿を消し、新たにグレーシアが防御姿勢を取って現れる。そしてやはり、グレーシアのカードのイラストも元に戻ってしまっていた。

 

ソドレミコード・グレーシア

DEF1400 レベル5

 

「グレーシアが特殊召喚した事で効果発動。デッキから《ドレミコード・ムジカ》を手札に加える。そしてカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

 最初のターンで有効な手をほとんど打てなかった。ヴァーディクトのライフもフィールドも傷ひとつついておらず、こちらは仮初の防衛線を作るしかない。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 ヴァーディクトのターンが回った。

 だが、また厄介な動きをされる前に、先に手を打つべきだと判断する。

 

「罠カード《ドレミコード・ムジカ》発動! 俺のフィールドの『ドレミコード』のスケールは奇数と偶数がそれぞれ2枚ずつある。よって、フィールドのカード1枚……《聖騎天の神域》を破壊する!」

 

 カードを選ぶと、《ドレミコード・ムジカ》のカードから音符を纏った竜巻が発生し、フィールドに吹き荒れる。それを受けて、フィールドに現れていた石造りの白い街並みや、ヴァーディクトの後ろにあったモニュメントは跡形もなく消滅する。そして、見慣れたドレミ界の景色が再び見えるようになった。

 さっきの一連のターンで、ヴァーディクトのデッキはあのフィールド魔法を軸に動いているように見受けられた。であれば、それを破壊して少しでも機能しなくなるようにする。そのために破壊した。

 しかしヴァーディクトは、それを見てにやりと笑う。

 

「魔法カード《聖騎天の再建(セイクリッター・リビルド)》発動。墓地の《聖騎天の神域》を手札に戻す」

「げ……」

「そして僕は、手札に加えたこの神域を再び発動!」

 

 今しがた破壊したばかりのフィールドがもう復活してしまう。《ドレミコード・ムジカ》を無駄遣いしてしまった。このデュエルでこの手のミスは痛手になるであろう事は容易に想像できる。

 

「さらにもう1枚《聖騎天の宝札(セイクリッター・ブレス)》を発動。神域が発動している時、僕の場の『セイクリッター』1体を除外して、さらに2枚ドローする」

 

 足元に白い穴が開き、その中へと物言わず沈んでいったのはクロト。そしてヴァーディクトは、新たに引いた2枚のカードを見て頷き、手を掲げる。

 

「ラケシスの効果発動! 1ターンに1度、除外されている『セイクリッター』1体を特殊召喚できる! 戻ってこい、クロト!」

 

 天空に黒い穴が開き、その中からクロトが再び舞い降りる。これでは実質ノーコストで2枚ドローしたも同然だった。

 

聖騎天クロト

ATK2400 レベル8

 

「そしてクロトの効果発動! 墓地のアリオンを特殊召喚!」

 

 クロトが腕を広げると、地面に魔法陣が出現する。その中から白い鎧の馬が勢いよく飛び出し、嘶いた。

 

聖騎天アリオン

ATK1000 レベル4

 

「アリオンの効果発動! デッキから《聖騎天クレイオ》を手札に加えて、召喚!」

 

 新たに現れたのは、月桂樹の冠を被る黄色い衣を着た女性の天使だ。

 

聖騎天クレイオ

ATK1000 レベル4

 

「クレイオの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの全ての『セイクリッター』を、対象のフィールドのモンスター1体と同じレベル扱いにする。僕が対象に選ぶのは、レベル8のクロト!」

 

聖騎天アリオン

レベル∶4→8

 

聖騎天クレイオ

レベル∶4→8

 

「この効果は……」

「レベル8のアリオンとクレイオでオーバーレイ!」

 

 レベルを揃える効果を使う時点でおおよそ予想できたが、ヴァーディクトが誇らしげに宣言すると、2体の天使が黄色い光となって天に舞い上がる。そしてその先に、光の渦が出現した。

 

「2体の『セイクリッター』でオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 

 二つの光を飲み込んだ渦が弾け、その中からまた新しいモンスターが姿を見せた。

 

「現れろ、運命の糸を分かつ荘厳なる天使!《聖騎天アトロポス》!!」

 

 露わになったその姿は、緑の衣を着た赤毛の天使。手には西洋の剣を携えていて、クロトやラケシスと異なり鎧のような装飾品も身に着けている。

 

聖騎天アトロポス

ATK2400 ランク8

 

 これで、融合・シンクロ・エクシーズモンスターがヴァーディクトのフィールドに並んだ。3種類の召喚法を駆使し、かつ同じフィールドに並びやすいテーマと言えば【DD】だが、やはりヴァーディクトが独自に作ったカードだからこそ、そう言う展開もしやすいようにできているのだろう。

 目の前に待ち構える3体の天使を見て、身体がこわばるのが自分で分かった。

 


 

聖騎天の神域(セイクリッター・サンクチュアリ)

フィールド魔法

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分は「セイクリッター」モンスターしか召喚・反転召喚・特殊召喚できない。

この効果は無効化されない。

(2):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、

「セイクリッター」モンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

(3):自分がEXデッキから「セイクリッター」モンスターを特殊召喚した場合、

自分の墓地のレベル4以下の「セイクリッター」モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターは、フィールドから離れた場合にデッキの一番下に戻る。




今回のデュエルで登場するオリジナルカードですが、改めてまとめて紹介の場を設けさせていただきます。

Q.なぜヴァーディクトは手下に【シャドール】を持たせていたのか?
A.①プレイングセンスに左右されるとは言え一定の強さを持っているから
 ②所詮手下はヴァーディクトにとっての操り人形だから
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