ドレミコードの従者は元人間   作:プロッター

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引き続き、オリジナルカードが登場いたします。
ご承知おきください。


第37話:途絶えた奏

バトレアス LP4000 手札2

【モンスターゾーン】

ラドレミコード・エンジェリア DEF1400 レベル6

ソドレミコード・グレーシア DEF1400 レベル5

 

【魔法&罠ゾーン】

伏せカード1

 

【ペンデュラムゾーン】

右:ドドレミコード・クーリア スケール1

左:ドドレミコード・キューティア スケール8

 

 

ヴァーディクト LP4000 手札3

【モンスターゾーン】

聖騎天(セイクリッター)クロト ATK2400 レベル8

聖騎天ラケシス ATK2400 レベル8

聖騎天アトロポス ATK2400 ランク8 ORU(オーバーレイ・ユニット)2

 

【魔法&罠ゾーン】

伏せカード1

 

【フィールドゾーン】

聖騎天の神域(セイクリッター・サンクチュアリ)

 

 

 目の前に立ち塞がる3体の天使は、俺に対して感情の読めない目を向けている。特に何かされたわけでもないのに、威圧感が凄まじい。

 ただ、それを従えているのは自分の都合で世界全てを巻き込み破滅させる男と考えると、そんなモンスターに対しても同情心を多少は抱いた。

 

「アトロポスの効果発動! 1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、デッキから『セイクリッター』と名のつくモンスター1体を手札に加える!」

 

 その男、ヴァーディクトが宣言すると、周囲を漂うオーバーレイ・ユニットのひとつをアトロポスが剣で叩き斬る。その剣が光り輝き、ヴァーディクトはデッキからカードを選んで手札に加えた。

 

聖騎天アトロポス

ORU2→1

 

「僕が手札に加えるのは《聖騎天ケイオス》。このカードは、エクストラデッキから特殊召喚された『セイクリッター』が2体以上僕の場に存在する場合、手札から特殊召喚できる!」

 

 手札に加えたモンスターが即座に現れる。その姿はアトロポスやラケシスなどと違い、人の姿とはかけ離れていた。細長い身体に細い腕、顔に当たる部分からはクワガタのように2つの湾曲した角が生えた異形そのもの。頭部につく単眼がぎらついている。

 

聖騎天ケイオス

ATK2400 レベル7

 

「教えておくよ。アトロポスがいる限り、僕の場の他の『セイクリッター』は君の魔法・罠カードの効果を受けない。さらにケイオスの効果で、他の『セイクリッター』は君のモンスター効果を受けない!」

 

 バスター・ブレイダーのようなロックを仕掛けるのとは違い、ヴァーディクトは自分のモンスターに盤石な守りを付与する戦術。この布陣を突破するのは簡単ではなさそうだ。

 

「バトル! まずはクロトでグレーシアを攻撃!」

 

 攻撃宣言を受けて、クロトがその腕に嵌めている大きな銀の環を、ブーメランのようにグレーシアへと投げる。その環を腹部に受けて、グレーシアは霧散してしまった。ただのひとつも声を出さず。

 

「続いてラケシスでエンジェリアを攻撃!」

 

 今度はラケシスがレイピアを構え、一瞬でエンジェリアに肉薄してその胸を刺し貫く。やはりエンジェリアも、表情をほとんど変えず姿を消してしまった。

 精霊界に来てから、俺がデュエルでドレミコードの皆と戦う際、決してソリッドビジョンというだけではなく、感情が籠っているかのような仕草を見せていた。けれど今は、それがない。やはり、ヴァーディクトの手で本体の動きが封じられているせいだろう。

 

「これで君の場にモンスターはもういない! アトロポスでダイレクトアタック!」

「罠カード《ペンデュラム・リボーン》発動! エクストラデッキのグレーシアを守備表示で特殊召喚!」

 

 「セイクリッター」がほとんどの耐性を持っている事で勝利を確信していたらしい。ヴァーディクトが笑いながら攻撃宣言をした直後に、最後の伏せカードを発動させる。

 輝いた《ペンデュラム・リボーン》のカードからグレーシアが姿を見せ、先ほどと同じように守備の姿勢を取った。壁にするのは心苦しいが、こうしないと負ける。

 

ソドレミコード・グレーシア

DEF1400 レベル5

 

「グレーシアの効果で、デッキから《ドレミコード・ハルモニア》を手札に加える」

「なら、アトロポスでグレーシアを攻撃!」

 

 アトロポスは剣を構えなおし、頭上から振り下ろしてグレーシアを真っ二つに叩き斬る。いくら反応を見せないとはいえ、自分のモンスターが、現実では一緒に暮らす仲間が痛ましいやられ方をするのは気分が悪い。未だ磔にされているグレーシアを見上げ、必ず助け出すと改めて決意を固める。

 

「よそ見している余裕があるのか? ケイオスでダイレクトアタック!」

 

 ケイオスが細い両腕を広げると、それぞれの腕から黒いエネルギーの奔流を放つ。雷を帯びたそれを防ぐ手立てはなく、それは受け止めるしかなかった。

 

「ぐっ、があああああああ……!?」

 

 しかし、ケイオスの攻撃で発生する衝撃は、これまで経験したものとはまたレベルが違った。クルヌギアスとのデュエルで受けた攻撃もかなり効いたが、今受けた攻撃は本当に命を奪い取らんとする感覚がする。全身が熱い。

 

バトレアス LP4000→1600

 

「痛いだろう? そりゃそうだ、僕のモンスターは他と一味違うからね」

 

 愉しそうに語るヴァーディクトは、さらに俺に指を差した。

 

「ケイオスが相手に戦闘ダメージを与えた事で効果発動! 君のデッキの上から3枚のカードを除外し、僕は1枚ドローする!」

 

 ケイオスの目が光ると、俺のデッキの上から3枚のカードが勝手に取り出されて虚空へ消え去る。除外されたのは《団結の力》《和睦の使者》《神風のバリア—エア・フォース—》。いずれも、精霊界でのデュエルで窮地を助けられたカードばかりだ。

 

「僕は永続魔法《聖騎天の呪鎖(セイクリッター・バインド)》を発動!」

 

 そして、ドローしたカードをそのままヴァーディクトが発動すると、俺のフィールドを取り囲むように光り輝く鎖が伸びてきた。さながら、テントの骨組みのような形に展開される。

 

「このカードがフィールドにある限り、僕の場の《聖騎天の神域》は破壊されない!」

 

 これはまた厄介なカードを使われた。ただでさえ、ヴァーディクトの「セイクリッター」はそれぞれを守る効果で除去する事が一切不可能なのに、その柱であるフィールド魔法までも守ってくるとは。

 ただ、効果はこれだけではないような気配もする。

 

「僕はこれでターンエンド! さあ、君のターンだ」

 

 先制攻撃を決め、優位に立てた事が嬉しいのか、それとも何かまだ企んでいるのか、歯を見せて笑うヴァーディクト。

 

「俺のターン、ドロー」

 

 引いたカードを見る。それは、クーリアの部屋でデッキ調整を行った際に新しくデッキに加えたカードだ。

 

「この瞬間、《聖騎天の呪鎖》のもうひとつの効果発動! 僕の場に『セイクリッター』の融合・シンクロ・エクシーズモンスターが存在する時、君が通常のドローで引いたカードを確認する。さぁ、見せてもらおう」

 

 何が来るかと思えば、ドローカードのピーピング。発動条件の難易度は分かりかねるが、小賢しい真似をすると思いつつ引いたカードを見せる。

 

「ドローしたのは《守護天霊ロガエス》だ」

「おっと、モンスターカードか。なら君には、魔法か罠のどちらかを選んでもらう。そしてこのターン、《聖騎天の呪鎖》が存在する間、君は選んだ種類の効果しか使えない!」

「っ……!」

 

 明かされた厄介な効果は、事実上ドローカードの無力化と、効果の発動制限。これは俺のデッキに限らず、様々なデッキに刺さる効果だろう。しかも、その効果を使うのに必要な融合・シンクロ・エクシーズモンスターを揃えやすい構築なのがなお性質が悪い。かつて彼と戦ったというブライターや天老は、この戦術にやられたのだろうか。

 それにしても、ピーピングに加えて効果の発動制限。どこかの社長がやられたらブチギレそうだ。

 

「さあ、使いたい効果を選ぶがいい!」

 

 選択を迫るヴァーディクト。しかし幸いな事に、このロックを破るカードは既に手札にあった。

 

「俺は魔法カードを宣言する。そして、フィールド魔法《ドレミコード・ハルモニア》を発動!」

 

 まずは先のターンに手札に加えていた、このデッキにおける中核のフィールド魔法を発動する。

 ドレミコードの皆のイラストは元に戻ってしまい、フィールドに呼び出しても反応を示さないが、それでもフィールド魔法の演出はいつも通りだ。音楽をモチーフとした景色は、見慣れているが故に見ていて何だか安心する。

 

「ハルモニアの1つ目の効果発動! エクストラデッキのビューティアを手札に加える。続いて、2つ目の効果を発動! キューティアのペンデュラムスケールを、そのレベル1つ分だけ上げる!」

 

ドドレミコード・キューティア

スケール:8→9

 

「これでレベル2から8のモンスターが同時に召喚可能!」

 

 改めて、俺のフィールドの両端に聳える光の柱、その中に佇む2人のドレミコードを見上げる。やはり、こちらに対して何らリアクションを示さない。

 それでも、俺は口を開いた。

 

「天に宿る麗しの天使たちよ、淀みを濯ぐ浄化の旋律を今高らかに奏でよ! ペンデュラム召喚!」

 

 宣言すると、ハルモニアの空に大きな穴が開き、その中から3つの光が降り注がれる。

 

「エクストラデッキより《ラドレミコード・エンジェリア》!」

 

ラドレミコード・エンジェリア

ATK2300 レベル6

 

「手札より《シドレミコード・ビューティア》!」

 

シドレミコード・ビューティア

ATK2500 レベル7

 

 この2体は、これまでペンデュラム召喚した事が何度もあった。しかし残る1体は、ペンデュラム召喚で呼び出すのは初めてである。

 

「さらに、《守護天霊ロガエス》!」

 

 最後に現れたのは、二対四枚の赤みがかった羽根を生やす女性の天使。白をベースにした衣を纏い、金髪をなびかせ、右手には金の装飾が施された杖を持っている。さっきドローしたカードだ。

 

守護天霊ロガエス

ATK2700 レベル7

 

「君は既に魔法カードを宣言している。エンジェリアの効果は使えないぞ?」

 

 小憎たらしい事に、いちいち指摘してくる。そんな事は分かりきっているので、無視してデュエルを進めた。

 

「ハルモニアの3つ目の効果発動! 俺の場の『ドレミコード』のペンデュラムスケールが奇数3種類以上、または偶数3種類以上の場合、お前のフィールドのカード1枚を破壊する。俺は《聖騎天の呪鎖》を破壊!」

 

 天空に浮かぶ円形の五線譜が光り、雷が《聖騎天の呪鎖》のカードを焼き焦がす。俺のフィールドを覆っていた鎖のテントは消滅し、さらにデュエルディスクもモンスター効果が使えるようになった事を示した。

 

「エンジェリアの効果発動! 俺のフィールドの『ドレミコード』1体を対象としてリリースし、そのモンスターとペンデュラムスケールの差が2つの『ドレミコード』1体をデッキから特殊召喚する。俺はスケール3のエンジェリア自身をリリースし、デッキからスケール5の《ファドレミコード・ファンシア》を特殊召喚!」

 

 エンジェリアの姿がどこかへ転送されるかのように消え、新たにファンシアがフィールドに現れる。力強くタクトを構えるが、特にこちらに対して反応を見せはしなかった。

 

ファドレミコード・ファンシア

ATK1600 レベル4

 

「ファンシアの効果発動! デッキの《レドレミコード・ドリーミア》をエクストラデッキに加える」

 

 ここでデッキからエクストラデッキに加えるカードは少し悩んだが、いざとなれば手札から自力で特殊召喚ができるドリーミアにしておく。

 

「さらにロガエスの効果発動! 1ターンに1度、自分フィールドの攻撃表示モンスター1体を守備表示にし、相手の表側表示カード1枚を除外する!」

「何?」

「俺はファンシアを守備表示にし、《聖騎天の神域》を除外する!」

 

 ロガエスが天に杖を掲げると、その先端の装飾が輝きを放つ。それを受けてファンシアは守備表示になり、ヴァーディクトが展開していた白い街並みは消失した。

 

ファドレミコード・ファンシア

ATK1600→DEF400

 

 これで、ヴァーディクトのフィールドのモンスターの効果は使えなくなり、強固な守りも崩れる。

 

「ビューティアの効果発動! 1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象とし、このターン、そのモンスターがフィールドを離れた場合には除外させる! 俺はラケシスを選ぶ!」

 

 指さすと、ビューティアはタクトを振り、無数の連符をけしかける。ラケシスはそれに縛られて簀巻き状態になった。

 これでこのまま攻撃すれば、2体のモンスターを葬る事ができる。だが、まだ発動する気配のない伏せカードが1枚あった。それを考えると、やるべき事は。

 

「現れろ、清らかな旋律のサーキット!」

 

 手を伸ばした先に、リンクサーキットが出現する。

 

「召喚条件はペンデュラムモンスターを含むモンスター2体以上。ファンシア、ビューティア、ロガエスの3体をリンクマーカーにセット!」

 

 指さすと、3体の天使たちが光の軌跡を描きながらリンクサーキットへと飛び込み、サーキットが光を放った。

 

「リンク召喚! 現れろ、リンク3! 流麗にして偉大なる音階の大天使、《グランドレミコード・クーリア》!!」

 

 現れたのは、今もペンデュラムゾーンにいるクーリアと同じ名を冠するモンスター。しかしながら、着ているのはチョコレート色のチューブドレスで、腰からはピアノの鍵盤のような金色の翼を生やす。グランドレミコードの力を授かった、頼もしい天使だ。

 

□□□ グランドレミコード・クーリア

□◆□ ATK2700

■■■ リンク3

 

 けれどやはり、フィールドに現れたクーリアは反応を見せてくれない。

 もう、デュエルに勝ってヴァーディクトから解放しない限りはダメなのだろう。歯ぎしりをして、デュエルを続行する。

 

「……このクーリアの攻撃力は、エクストラデッキの表側のペンデュラムモンスター1体につき、100ポイントアップする。今エクストラデッキにいる表側のペンデュラムモンスターは5体!」

 

グランドレミコード・クーリア

ATK2700→3200

 

「バトルだ!《グランドレミコード・クーリア》で、《聖騎天ラケシス》を攻撃!」

 

 その時だった。

 

「罠カード《聖騎天の反響(セイクリッター・エコー)》発動! 僕の場に『セイクリッター』が2体以上存在する場合、相手モンスターの攻撃を無効にし、相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する!」

 

 やはり攻撃反応系のカード。さっきのターンはエンジェリアがいたから使えなかったのだ。

 だが、それを予測してこちらはこのクーリアを召喚しているのだ。

 

「《グランドレミコード・クーリア》の効果発動! 1ターンに1度、相手の効果が発動した時、ペンデュラムゾーンのスケールが奇数の『ドレミコード』1体をリンク先に特殊召喚し、その発動を無効にする!」

「何?」

 

 召喚するのは、ハルモニアの効果でスケールが9になっているキューティア。スケールを変えたのは、《聖騎天の呪鎖》を破壊するためだけでなく、この効果を有効に使うためでもあった。

 

ドドレミコード・キューティア

DEF400 レベル1

 

 クーリアの左斜め後ろにキューティアが跪くと同時、ヴァーディクトが発動した《聖騎天の反響》は色を失って砕け散った。

 

「そして《グランドレミコード・クーリア》の効果で、デッキからスケールが偶数の『ドレミコード』1体をエクストラデッキに加える事ができる。俺は《ミドレミコード・エリーティア》をエクストラデッキに。エクストラデッキのペンデュラムモンスターが増えた事で、クーリアの攻撃力はさらにアップ!」

 

グランドレミコード・クーリア

ATK3200→3300

 

「さらに特殊召喚したキューティアの効果発動! デッキからもう1体のドリーミアを手札に加える!」

 

 そのカードを大切に手札に加えて、俺はラケシスを指さす。攻撃はまだ終わっていない。

 

「グランド・アンサンブル!!」

 

 攻撃名は、以前クーリアがミューゼシアとのデュエルで告げたものと同じ。それを宣言すると、クーリアの翼がはためき、金色の粒子が彼女のタクトに集まっていく。そして集まった粒子を放つと、ラケシスは叫びながら消え去った。

 

「ぐっ……」

 

ヴァーディクト LP4000→3100

 

「速攻魔法《ドレミコード・シンフォニア》発動! 俺のエクストラデッキの『ドレミコード』ペンデュラムモンスターは6種類。よって、お前のフィールドのアトロポスを破壊! さらに奇数のスケールが存在するため、1枚ドローする!」

 

 バトルが終わる前にそのカードを発動すると、音符を纏った突風が吹き荒れ、剣を携える天使を吹き飛ばして破壊する。オーバーレイ・ユニットさえあればサーチができるモンスターを残しておくのは危険だ。

 また、シンフォニアには「ドレミコード」の攻撃力をアップさせる効果がある。キューティアを攻撃表示で特殊召喚していれば、攻撃力はかなり上がるものの、次のターンに低い攻撃力を晒したまま攻撃表示にしてしまう。エリーティアがいない上、こちらのライフは1600と安心できる数値ではない。このターンで勝利できないのであれば、リスクは避けるべきだった。

 けれどドローしたカードのおかげで、まだ次のターンの防御はできる。

 

「俺はスケール7の《レドレミコード・ドリーミア》をペンデュラムゾーンにセッティング」

 

 光の柱が再び現れ、その中にドリーミアが姿を見せる。やはり、こちらには目をむけなかった。

 

「そしてカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 ターンを終えたところで、ヴァーディクトはわざとらしく手を叩いてきた。

 

「お見事。さっきのロックをこうも易々と突破されるとはね、今までなかったから新鮮だ」

「《F・G・D(ファイブ・ゴッド・ドラゴン)》か? それとも、デュエルアリーナの事か?」

「なんだ、知っていたのか」

 

 天老やブライターから、ヴァーディクトと戦った時の事は聞いている。特にブライターからは先攻制圧をされたと聞いたが、それがあの《聖騎天の呪鎖》かどうかはまだ分からない。しかし、ヴァーディクトの言う「今まで」には、それも含まれていたのではないだろうか。

 

「あの時のデュエルは、まぁつまらなかったね。僕の力を披露し、その力があれば世界を変えられるってアピールしたかったのに、観客はブーイングしか寄こさなかった」

「生憎、あのアリーナで求められているデュエルは、そんなのじゃなかったんだよ」

「どうでもいい。結局、誰も彼も僕の力を理解しなかったし、どうせあの世界も僕がやり直すんだから」

 

 求められているデュエルのスタイルが違ったのを知っても、ヴァーディクトにとっては最早何の心残りもないらしい。そしてやはり、あの世界にも危機が迫るとなれば、なおの事ヴァーディクトはここで止めなければならない。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 守りを固めていても、未知数の力を持つヴァーディクトの一手には、用心しなければならない。

 

「魔法カード《テラ・フォーミング》発動。デッキからフィールド魔法1枚を手札に加える」

 

 しかし発動したのは、かなり馴染み深いサーチカードだった。そして手札に加えるのは、十中八九《聖騎天の神域》だろう。フィールドには蘇生効果を持つクロトが残っているから、それを手札に加えさせるわけにはいかない。

 

「《グランドレミコード・クーリア》の効果発動! ペンデュラムゾーンのクーリアを特殊召喚し、その発動を無効にする!」

 

 《グランドレミコード・クーリア》がタクトを振ると、発動した《テラ・フォーミング》のカードに金色の粒子が纏わりつき、消失する。そして、ペンデュラムゾーンで光の柱の中にいたクーリアが軽やかにモンスターゾーンに降り立つ。

 

ドドレミコード・クーリア

ATK2700 レベル8

 

「さらにデッキよりグレーシアをエクストラデッキに加える。そして、《グランドレミコード・クーリア》の攻撃力はさらにアップ!」

 

グランドレミコード・クーリア

ATK3300→3400

 

 しかしながら、サーチを妨害されてもなおヴァーディクトは笑っていた。

 

「そう来ると思ったよ」

「何?」

「僕のターンに君がモンスターを特殊召喚した事で、墓地の《聖騎天の反響》を除外して効果発動! 君のフィールドの特殊召喚されたモンスターの数まで、墓地及び除外状態の『セイクリッター』を特殊召喚する!」

「!?」

「よって僕は、墓地のアトロポスとアリオン、除外されているラケシスを特殊召喚!」

 

 空に巨大な魔法陣が出現し、その中から3体のモンスターたちが降り立つ。さっきのターンにやっとこさ除去したモンスターたちを、こうも易々と復活させられてしまうなんて。

 俺は、ヴァーディクトの狙った通りに妨害を使わされてしまったわけだ。

 

聖騎天ラケシス

ATK2400 レベル8

 

聖騎天アトロポス

ATK2400 ランク8

 

聖騎天アリオン

ATK1000 レベル4

 

「そして特殊召喚したアリオンの効果発動! 僕のフィールドに《聖騎天の神域》が存在しないため、それを1枚デッキからフィールドゾーンに表側で置く」

「《ドドレミコード・クーリア》の効果発動! 俺のペンデュラムゾーンの一番高いペンデュラムスケール×300以下の攻撃力を持つ相手フィールドのモンスター効果が発動した時、そのモンスターを破壊する! エフェクト・スタッカート!!」

 

 嘶いたアリオンを指さすと、クーリアがタクトを振り、その先端から音符が混じる緑の風が発生してアリオンを吹き飛ばす。

 

「それがどうした。《聖騎天の神域》発動!」

 

 しかし効果自体は止められないため、厄介なフィールド魔法の発動は再三許してしまう。ヴァーディクトの陣地は、またしても白い街並みに彩られた。

 これでまた、ヴァーディクトのモンスターたちは強固な守りを得た事になる。それでも、あちらのモンスターの攻撃力はいずれも2400。守備表示のキューティアは唯一守備表示で破壊できてしまうが、戦闘ダメージが発生しなければケイオスの効果も発動しないはずだ。

 

「現れろ、新世界の先駆けたるサーキット!」

 

 だが、新たな動きをヴァーディクトは見せた。

 

「召喚条件は融合・シンクロ・エクシーズモンスターを含む『セイクリッター』4体。クロト、ラケシス、アトロポス、ケイオスの4体をリンクマーカーにセット!」

 

 名を呼ばれた4体の天使がサーキットへと飛び込む。盤石な布陣を捨ててでも呼び出すモンスターは、リンク4。

 

「リンク召喚! 希望に満ちた新たな世界の神話になれ!《聖騎天ミュートロギア》!!」

 

 現れたのは、全身を金属の装甲で覆った巨人。背中からは翼のようにパイプが何本も生え、肩や膝、肘などの関節部分には機械的な目玉が埋め込まれており、天使族というより機械族のような印象が強い。

 

□■□ 聖騎天ミュートロギア

■◆■ ATK3500

□■□ リンク4

 

 その攻撃力は3500。見た目だけでなく、ステータスもこれまでの「セイクリッター」とはまた違った。

 

「ミュートロギアがリンク召喚した事で効果発動! 君のフィールドのモンスターを全て除外する!」

「カウンター罠《ドレミコード・フォーマル》発動! ペンデュラムゾーンに『ドレミコード』が存在する場合、俺のエクストラデッキの『ドレミコード』1体をデッキに戻して発動! お前が発動したその効果を、俺の『ドレミコード』ペンデュラムモンスターは受けず、その効果でペンデュラムゾーンの『ドレミコード』は破壊も除外もされない!」

 

 デッキに戻すのは、ダブっているグレーシア。そのカードを戻すと、群青色の音符や五線譜が俺のフィールドを覆いつくす。これまで使う機会に中々恵まれなかったが、今回は何とか役立てる事ができた。

 

「だが、君の偉大な天使とやらは除外させてもらうぞ」

 

 しかし、残念ながら《ドレミコード・フォーマル》で守れるのはペンデュラムモンスターカードのみ。よって、リンクモンスターの《グランドレミコード・クーリア》は守れず除外されてしまう。

 このデッキにはただ1枚しかなく、さらにクーリアが「グランドレミコード」という特別な力を宿した証のモンスターを失うのは、戦術的な意味以上にとてもつらい。

 

「それじゃ、残りのモンスターも失敬するとしよう」

「?」

「ミュートロギアの効果発動! このモンスターは《聖騎天の神域》が発動している時、1ターンに1度、自らの攻撃を放棄する事で君のモンスター1体を奪い取る! クーリアのコントロールを貰い受けるよ!」

「ッ!!」

 

 瞬間、ミュートロギアの腹部が開き、その中から機械のアームがいくつも伸びてくる。それはモンスターゾーンにいるクーリアの首、腕、身体、脚を無造作に、乱暴に掴むと、一気にその身をヴァーディクトの下へと引き寄せた。

 バスター・ブレイダーとのデュエルで融合素材に利用された時以上の怒りが湧き上がるのを実感する。同時に、クーリアが全くの無表情なのが、とてつもない絶望感を与えてきた。

 

「ほうほう、中々いい効果を持っているじゃないか」

 

 そしてヴァーディクトは、コントロールを得たクーリアの姿を舐めまわすように見上げながら、カードのテキストを確認している。反吐が出そうな言動だ。

 

「では、クーリアの効果を発動! 君のハルモニアの効果を、次の君のターン終了時まで無効にする!」

 

 さっきのターンに効果を披露しているからとはいえ、一番やられては困る事をやられた。

 ヴァーディクトの下についたクーリアは、表情一つ変えずにタクトを天に向け、その先から休符を無数に生み出し放つ。それで空に浮かぶ五線譜や音符は消え去ってしまった。

 

「バトルだ! クーリアでキューティアを攻撃!」

 

 そしてやはり、クーリアは一切の躊躇も反応もなく、キューティアに向けて緑色の奔流を放出する。同様にキューティアも、防御姿勢を保ったままその奔流に飲み込まれ、姿を消してしまった。無力感に苛まれる。

 

「僕はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 これで、俺のフィールドのモンスターはいなくなった。しかもペンデュラムゾーンは半分欠け、ハルモニアの効果も封じられている。かなり危険な状況だ。

 

「いやしかし、彼女は素晴らしい人じゃないか」

 

 するとヴァーディクトは、クーリアを見上げてそんな評価をした。

 

「優秀な効果に申し分ない攻撃力、しかも非常に美人だ。君もこんな彼女の傍にいられて幸せだっただろう」

「……黙れ」

「まぁ、それも今日までだ。君が消えたら、この子はどうするかな。ただの駒にするのも消すのも惜しい、何なら僕の伴侶にでも――」

「俺のターン!!」

 

 ヴァーディクトがどんなつもりでそう言ったのかは知らない。俺の冷静を欠くためか、それとも本心で告げているのか。後者だったら正気の沙汰とは思えない。

 いずれにしろ、怒りで頭がかっとなったのは確かだ。「寝取り」と揶揄されるコントロール奪取をされた末に、俺が負けた後でどうこうするなど、聞いていられない。その先を聞いてしまったら気が狂いそうになる。

 乱暴にカードを引いた俺を見て嘲笑うヴァーディクト。しかし俺は、ドローしたカードに視線を落とし、冷静になる。そのカードに向けて小さく「ごめん」と謝ってから動いた。

 

「《ドドレミコード・キューティア》召喚!」

 

 このデュエルでは展開の起点や守りに酷使させてしまっている。ヴァーディクトに勝ったら、ちゃんと労わらなければ。

 

ドドレミコード・キューティア

ATK100 レベル1

 

「その効果でデッキのビューティアを手札に加えて、ペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

 手札に加えたビューティアを即座にペンデュラムゾーンに置く。盤面に「PENDULUM」の文字が現れ、ビューティアが光の柱と共に現れた。そのスケールは2。

 

「偶数のスケールが存在するため、『ドレミコード』ペンデュラムモンスターの攻撃力は、キューティアの効果で自身のスケール1つにつき100ポイントアップ!」

 

ドドレミコード・キューティア

ATK100→900

 

「そしてセッティングしたスケールを使い、ペンデュラム召喚! エクストラデッキより《ラドレミコード・エンジェリア》、《ソドレミコード・グレーシア》!」

 

ラドレミコード・エンジェリア

ATK2300→2600 レベル6

 

ソドレミコード・グレーシア

ATK2100→2500 レベル5

 

「チッ……」

 

 このデッキでは非常に心強い2人の「ドレミコード」を見て、ヴァーディクトが苦虫を嚙み潰したような顔をした。それもそのはず、ミュートロギアのリンクマーカーの1つは俺のメインモンスターゾーンに向いている。よって俺は、空いているエクストラモンスターゾーンに加えて、そこにもエクストラデッキからペンデュラム召喚ができるのだ。

 

「グレーシアの効果で、デッキからもう1枚のハルモニアを手札に加える。そして発動!」

 

 フィールド魔法を張り替えると、再び音楽をイメージした景色が頭上に広がった。それを見て頷き、次の手を打つ。

 

「1つ目の効果で、エクストラデッキのドリーミアを手札に加える。そして、このドリーミアは俺のペンデュラムゾーンに『ドレミコード』が存在する場合、手札から特殊召喚できる!」

 

レドレミコード・ドリーミア

DEF400 レベル2

 

 片膝をついた状態で現れるドリーミア。ペンデュラムゾーンにも同じカードが存在するこの状況は、ミューゼシアとのデュエルと同じだ。あれも、随分昔の事に感じる。

 

「エンジェリアの効果発動! スケール7のドリーミアをリリースし、デッキからスケール5のファンシアを特殊召喚!」

 

 エンジェリアがタクトを向けると、ドリーミアはそのまま姿を消し、ファンシアが代わりにフィールドに現れると片膝をついた。

 

ファドレミコード・ファンシア

DEF400 レベル4

 

「ハルモニアの3つ目の効果! フィールドの『ドレミコード』のスケールは奇数と偶数が3種類ずつ! よって、お前の伏せカード1枚を破壊する!」

 

 再び五線譜から雷が落ち、裏側だった伏せカードが一度表になってから消える。一瞬見えたカード名は《聖騎天の崩御(セイクリッター・フォール)》とあった。

 

「続いて《ドレミコード・スケール》発動! 俺のフィールドの『ドレミコード』ペンデュラムモンスターカードの種類によって効果を発動できる」

 

 ヴァーディクトの場のカードを減らし、確実にダメージを通すために、最初の手札からあった魔法カードを発動する。

 

「3種類以上の『ドレミコード』が存在するため、ペンデュラムゾーンのビューティアを手札に戻し、エクストラデッキのエリーティアをペンデュラムゾーンにセット!」

 

 ビューティアが光の柱から退き、そこに新たにエリーティアが姿を現す。スケールは2から6に変わった。

 

「さらに5種類の『ドレミコード』が存在するため、手札のビューティアを特殊召喚!」

 

シドレミコード・ビューティア

ATK2500→2700 レベル7

 

 これで、俺のフィールドにいるドレミコードは、クーリアを除く7人。クーリアも同じフィールドに立っていたらどれだけ嬉しかった事か。それができない、エースモンスターを守れなかった自分の不甲斐なさを呪う。

 

「最後に『ドレミコード』が7種類存在するため、お前のフィールドの表側表示カードを全て破壊する!」

「!」

 

 そして発動する、《ドレミコード・スケール》の最たる効果。それを発動させると、「ドレミコード」たちが一斉にタクトを取り出し、ヴァーディクトに向けて突き出す。7つのタクトの先端から色とりどりの光の筋が放たれ、それらは合わさると虹色の光線となりヴァーディクトのフィールドを縦横無尽に交差した。

 やがて虹色の光線が収まる。しかし、ヴァーディクトの場にはミュートロギアが残っていた。

 

「残念だったねぇ。ミュートロギアは聖域がなくとも君の効果では破壊されない、効果対象にもならない」

 

 舌打ちをする。それなら、別の手段で倒す他ない。

 そしてクーリアは今の効果で破壊され、俺のエクストラデッキに加わった。愛用するエースを自分の手で破壊してしまうのは、とてつもない罪悪感が伴う。俺がクーリアのカードをエクストラデッキに加えたのを見て、ヴァーディクトはけらけらと笑った。

 

「いやはや、従者が主を自ら破壊するとはね。いや、敵の手に落ちたのならいっそ自らの手で葬ろうというのは、ある意味従者の鑑――」

「現れろ、清らかな旋律のサーキット!」

 

 何か戯言をほざいているが、無視してこちらもリンクサーキットを展開する。

 

「召喚条件は効果モンスター4体以上。そしてこのモンスターをリンク召喚する際、相手モンスター1体も素材に利用できる!」

「!?」

「俺はキューティア、ファンシア、グレーシア、ビューティア、お前のミュートロギアをリンクマーカーにセット!」

 

 名前を呼ばれた4人のドレミコードがリンクサーキットに飛び込む。ミュートロギアに関しては、サーキットから伸びる黒い腕に鷲掴みにされてリンクサーキットへと引きずり込まれた。

 効果対象にならず、効果で破壊できないとしても、リンク素材として利用する事はできる。完全耐性をものともしない召喚条件は非常に頼もしく、本当に「この人」には足を向けて寝られない。

 

「浄化の旋律が途絶える時、冥府の美神が君臨する。混沌を携え、抗う敵を圧倒せよ! リンク召喚!《閉ザサレシ世界ノ冥神(サロス=エレス・クルヌギアス)》!!」

 

 リンクサーキットが黒い煙を吐き出し、その中から姿を現す妙齢の女神。身体を起こした彼女は、背に聳える影のようなドラゴンの頭を撫でて、フィールドを睥睨した。

 

□■■ 閉ザサレシ世界ノ冥神

□◆■ ATK3000

□■■ リンク5

 


 

聖騎天の呪鎖(セイクリッター・バインド)

永続魔法

自分フィールドに「聖騎天の神域」が存在する場合にこのカードを発動できる。

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1)∶このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、

フィールドゾーンの「聖騎天の神域」は効果では破壊されない。

(2)∶相手のドローフェイズに相手が通常のドローをした時、

自分フィールドに「セイクリッター」融合・S・Xモンスターがそれぞれ存在していれば発動できる。

その相手がドローしたカードをお互いに確認し、

相手は確認したカードと異なるカードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言する。

このターン、このカードがフィールドに表側表示で存在する間、

相手は宣言した種類以外の効果を発動できない。

 

□■□ 《聖騎天(セイクリッター)ミュートロギア》

■◆■ リンク4/光属性/天使族

□■□ 攻3500

リンク/効果

融合・S・Xモンスターを含む「セイクリッター」モンスター4体

このカードはL召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。

このカード名の(4)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがL召喚した場合に発動できる。

相手フィールドのモンスターを全て除外する。

(2):このカードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。

(3):1ターンに1度、自分フィールドに「聖騎天の神域」が存在する場合に発動できる(この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない)。

相手フィールドのモンスター1体を選び、そのコントロールを得る。

(4):このカードが相手によって墓地へ送られた場合に発動できる。

このカードを特殊召喚する。

【リンクマーカー:上/左/右/下】




次回、主人公もオリジナルカードを手にします。
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